異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜   作:raixip

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第126話 受け継ぐ一本

朝。

 

番小屋の外。

 

山の空気は冷たかった。

 

「今日は橋を見る。」

 

ガレスさんがゆっくり歩き出す。

 

「はい!」

 

僕たちは後を追った。

 

崩れた石橋まで来る。

 

昨日と変わらない。

 

石は崩れ。

 

橋桁は傾き。

 

川の流れだけが元気だった。

 

「近くで見ると。」

 

「もっとひどいね。」

 

僕はしゃがみ込む。

 

石を一つ持ち上げる。

 

重い。

 

「これは一人じゃ無理だ。」

 

「うん。」

 

「みんなで直さないと。」

 

その言葉に。

 

ガレスさんが僕を見た。

 

「ジョン。」

 

「はい。」

 

「お前は昨日。」

 

「何度も『みんなで』と言った。」

 

「うん。」

 

「一人じゃ無理だから。」

 

「違う。」

 

ガレスさんは首を横に振る。

 

「今の若い連中は。」

 

「一人で儲けようとする。」

 

「一人で宝を探す。」

 

「一人で掘ろうとする。」

 

「だが。」

 

「お前は違う。」

 

僕はきょとんとした。

 

「そうかな?」

 

「当たり前だと思うけど。」

 

おっさんが苦笑する。

 

「だから珍しいんだ。」

 

ガレスさんは橋の石へ腰を下ろした。

 

「昔。」

 

「この鉱山にも親方がおった。」

 

「口癖は。」

 

『みんなで帰るぞ』

 

「だった。」

 

「帰るぞ?」

 

「掘るじゃないんですか?」

 

「帰るだ。」

 

ガレスさんは少し笑う。

 

「掘るのは仕事。」

 

「帰るのは約束。」

 

「一人でも欠けたら。」

 

「親方は怒った。」

 

僕は静かに頷いた。

 

「いい親方だ。」

 

「そうだ。」

 

「だから皆ついていった。」

 

しばらく沈黙が流れる。

 

風だけが吹く。

 

ガレスさんはゆっくり立ち上がった。

 

番小屋へ戻る。

 

壁に掛かった古いツルハシを手に取る。

 

そして。

 

僕の前へ差し出した。

 

「ジョン。」

 

「これは。」

 

「貸す。」

 

僕は驚いた。

 

「えっ!」

 

「でも。」

 

「大事な物じゃ。」

 

「大事だからだ。」

 

ガレスさんは静かに答えた。

 

「お前なら。」

 

「売らん。」

 

「質にも入れん。」

 

「仲間を置いて逃げもせん。」

 

「だから貸す。」

 

僕は両手で受け取った。

 

ずっしり重い。

 

柄は滑らかだ。

 

何十年も握られた温もりが残っている気がした。

 

「ありがとうございます!」

 

深く頭を下げる。

 

ガレスさんは一本だけ指を立てた。

 

「条件がある。」

 

「条件?」

 

「壊すな。」

 

「はい!」

 

「違う。」

 

「道具じゃない。」

 

「約束だ。」

 

僕は顔を上げる。

 

「約束?」

 

「掘るなら。」

 

「皆で帰れ。」

 

その言葉は。

 

山の静けさの中へゆっくり溶けていった。

 

「……はい。」

 

僕は真剣に頷いた。

 

「約束します。」

 

その頃。

 

ポーシャ。

 

鍛冶屋。

 

「親方!」

 

「また注文です!」

 

「何本だ!」

 

「三十本!」

 

親方は頭を抱えた。

 

「またか!」

 

弟子が紙を見せる。

 

送り先。

 

王都中央商会

 

品名。

 

採掘用ツルハシ 三十本

 

親方は首をかしげた。

 

「ジョンの一本より。」

 

「町の注文の方が早いとは。」

 

銀行。

 

支店長も報告書を見る。

 

「ツルハシの価格。」

 

「一割上昇。」

 

「品薄です。」

 

支店長は苦笑した。

 

「まだ橋も渡っていないんだがな。」

 

夕方。

 

番小屋。

 

僕はツルハシを布で丁寧に磨いていた。

 

「古いけど。」

 

「すごく丈夫。」

 

キュ太郎が柄に乗る。

 

「きゅ。」

 

「ダメ。」

 

「傷が付くよ。」

 

キュ太郎は不満そうに降りる。

 

おっさんが笑う。

 

「もう自分の物みたいだな。」

 

「借り物だから。」

 

「もっと大事にしなきゃ。」

 

ガレスさんはその様子を見て、小さく目を閉じた。

 

「……大丈夫だ。」

 

「ようやく。」

 

「次の持ち主が現れた。」

 

夜。

 

番小屋のランタンが静かに揺れる。

 

その灯りは。

 

四十年前。

 

最後の採掘隊を送り出した夜と同じ色だった。

 

だが今回は違う。

 

送り出されるのは、一攫千金を夢見る男ではない。

 

「みんなで掘ろう。」

 

そう笑う、一人の初心者冒険者だった。




【あとがき:現在のステータス】

【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13

■生産系
料理スキル 13

■その他
鑑定スキル 0.3

【所持金】
171G(銀行預け金:250G(銅貨2枚、半銅貨5枚))

ジョン
「初めてツルハシを持った!」
おっさん
「借り物ほど大事に扱え。」

【所持アイテム】
???のスクロール 6枚
採掘計画書
旧マーカット鉱山の古地図
ガレスのツルハシ(借用中)
新しい帳簿 5冊
余り紙
ロープ
水筒
奴隷のマクダフの野郎
(「これ一本で金貨何枚だろ」と考えて怒られた)
武器破損した剣
???の指輪(バンステ金策で入手)
ゴブリン(テイム)
ケムトレイル群(保護対象)
キュ太郎
(ツルハシの柄がお昼寝スポット)

【投資・契約】
中立共栄大金庫投資案件(ポーシャ支店)
元本:金貨10枚
状態:運用中

ジョン
「橋を直したら運も良くなるかな?」
銀行
「因果関係は確認できません。」
おっさん
「珍しく正直だ。」

【本日の収支】
なし

ジョン
「信用を借りました!」
マクダフ
「財布は相変わらず空っぽですぜ。」

【M資金速報】
今回の出来事
✅ ガレスが最後のツルハシをジョンへ貸し出す
✅ 「みんなで帰る」という採掘隊の約束が受け継がれる
✅ 王都で採掘用ツルハシの大量注文が始まる
✅ ツルハシが品薄になり始める
⬜ 崩れた橋の修復方法
⬜ マーカット鉱山への初潜入

※ジョン個人の所持金に変動はありません。
ジョンの一言

ジョン
「このツルハシ、大切に使います!」
おっさん
「借りたのは道具じゃない。信用だ。」
マクダフ
「旦那ぁ……俺はツルハシより財布を貸してほしいですぜ。」
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