異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜 作:raixip
「ズ……。」
「ズ……。」
坑道の奥から。
何かを引きずる音がする。
僕はツルハシを握った。
「バルドさん。」
「この音。」
「何なんですか?」
バルドさんは答えない。
ただ。
奥をじっと見ている。
「……あれは。」
「掘削機械か何か?」
おっさんが聞く。
「そんなものはない。」
「じゃあ何だ?」
「分からん。」
「分からんのかい。」
僕が思わず突っ込んだ。
おっさんが僕を見る。
「そこは俺の台詞だ。」
バルドさんが立ち上がる。
「まず。」
「ここから離れる。」
「え?」
「今は近づくな。」
僕は奥を見る。
「でもキュ太郎が。」
「きゅ。」
声だけ聞こえた。
「キュ太郎!」
僕は走り出そうとした。
バルドさんが腕を掴む。
「待て!」
「離して!」
「危険だ!」
「でも!」
「キュ太郎は……。」
僕は止まる。
「……普通の毛玉だよ?」
おっさんが頭を抱えた。
「そこから説明しないといけないのか。」
その時。
「きゅ。」
暗闇から。
キュ太郎が戻ってきた。
僕の足元へ。
ころころ。
「キュ太郎!」
抱き上げる。
「どこ行ってたの?」
「きゅ。」
何事もなかったような顔をしている。
僕は安心した。
「良かった。」
バルドさんは。
キュ太郎を見たまま固まっていた。
「……その毛玉。」
「はい。」
「どこで拾った?」
「拾ったんじゃないよ。」
「ずっと一緒にいる。」
「そうか……。」
バルドさんは何か言いたそうだった。
だが。
何も言わなかった。
僕たちは作業場まで戻った。
そこでバルドさんが古い地図を広げる。
「ここが第七坑道。」
「ここが最後の採掘地点。」
「そして。」
指がさらに奥へ進む。
「ここから先が。」
「掘ってはいけない場所だ。」
地図には何も書かれていない。
ただ。
赤い線だけが引かれていた。
「どうして禁止なんですか?」
「壁があるからだ。」
「壁?」
「昔。」
「採掘隊が掘り進んだ。」
「すると。」
「自然の岩盤とは違う壁が出てきた。」
僕は驚いた。
「人工物?」
「分からん。」
「石を積んだ壁だった。」
「誰が作ったのか。」
「何のためなのか。」
「記録には残っていない。」
おっさんが地図を見る。
「それで?」
「そこから先は?」
バルドさんが答える。
「誰も掘らなかった。」
僕は少し考えた。
「でも。」
「紫色の鉱石は?」
「その壁の近くで見つかった。」
「じゃあ。」
「壁の向こうに鉱脈があるかもしれない。」
マクダフが目を輝かせる。
「旦那ぁ。」
「それは大金の匂いですぜ。」
おっさんがすぐに言う。
「お前は黙ってろ。」
「へい。」
僕は地図を見る。
「もし本当に鉱石があるなら。」
「掘る価値はある。」
バルドさんが首を振る。
「それが。」
「昔のわしらの考えだった。」
「掘ったんですか?」
「少しだけ。」
「すると。」
「振動が始まった。」
僕は息をのむ。
「昨日の?」
「同じだ。」
バルドさんは古い帳簿を開いた。
そこには。
細かな記録が残っている。
『壁面採掘開始』
『紫色鉱石を三個発見』
『振動発生』
『作業中止』
そして最後。
『壁の向こうから音あり』
僕はその文字を見る。
「音……。」
バルドさんが頷く。
「カン。」
「カン。」
「カン。」
「昔も聞こえた。」
「じゃあ。」
「さっきの音も……。」
「同じだ。」
僕は背筋が少し寒くなった。
その時。
マクダフが何かを拾った。
「旦那ぁ。」
「これ。」
「何?」
手のひらには。
小さな金属片。
古い。
表面に奇妙な模様がある。
「壁の近くに落ちてました。」
バルドさんが見る。
「……それは。」
「知ってるんですか?」
「昔。」
「壁を調べた時に見つけた。」
「何の部品ですか?」
「分からん。」
おっさんがため息をつく。
「また分からんか。」
「この鉱山。」
「分からないものが多すぎるな。」
僕は金属片を鑑定してみる。
【鑑定】
……。
表示されない。
「これも鑑定できない。」
バルドさんが驚く。
「お前もか。」
「はい。」
「なら。」
「この山にあるものは普通じゃない。」
僕は金属片を眺める。
そして。
ふと思った。
「だったら。」
「売れるかな?」
全員が僕を見る。
「……。」
「……。」
「旦那ぁ。」
マクダフが呆れた顔をする。
「今その話ですかい?」
「だって。」
「珍しい物なら高く売れるかもしれない。」
おっさんが笑う。
「さすがジョンだ。」
「何?」
「怖い話を聞いても最後は金になる。」
その時だった。
「ドン。」
坑道全体が揺れた。
ランタンの火が大きく揺れる。
砂が天井から落ちてくる。
「危ない!」
ガレスさんが叫ぶ。
僕たちは壁際へ寄った。
「ドン。」
二度目。
そして。
「カン。」
「カン。」
「カン。」
音が響く。
今度は。
明らかに近い。
バルドさんが顔を青くする。
「壁だ。」
「壁?」
「あの奥だ。」
僕たちは地図を見る。
赤い線。
その向こう。
掘ってはいけない場所。
「誰か。」
僕は呟いた。
「まだ掘ってる。」
すると。
僕の懐にいたキュ太郎が。
ぴょん。
と飛び出した。
「きゅ。」
そして。
赤い線の方へ。
真っ直ぐ転がっていく。
「キュ太郎!」
追いかける。
その瞬間。
キュ太郎が。
壁の前で止まった。
黒い毛玉が。
壁に触れる。
すると。
壁の一部が。
淡く紫色に光った。
バルドさんが叫ぶ。
「離れろ!」
遅かった。
壁から。
低い音が響いた。
ゴゴゴゴ……。
石が動く。
ゆっくりと。
長い年月閉ざされていた壁が。
開き始めた。
その向こうには。
暗闇ではなく。
無数の紫色の鉱石が輝く空間が広がっていた。
僕は思わず声を上げる。
「すごい……。」
マクダフが震えながら呟く。
「旦那ぁ。」
「これ。」
「大儲けじゃありませんか?」
おっさんは答えなかった。
ただ。
開いた入口の奥を見ている。
そこには。
鉱石だけではなかった。
床に。
何十本もの古いツルハシが並べられている。
そしてその奥。
壁いっぱいに。
同じ文字が刻まれていた。
『ここより先、掘るべからず』
僕はツルハシを握った。
目の前には。
今まで見たこともない鉱脈。
でも。
その先に。
何かがいる。
そんな気がした。
そして。
奥から。
カン。
カン。
カン。
また。
採掘音が聞こえた。
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
141G(銀行預け金:250G(銅貨2枚、半銅貨5枚))
ジョン
「今日はお金を使わなかった!」
おっさん
「増えてもいない。」
ジョン
「でも鉱脈を見つけた!」
マクダフ
「旦那ぁ、まだ売ってませんぜ。」
【所持アイテム】
・???のスクロール 6枚
・採掘計画書
・旧マーカット鉱山の古地図
・マーカット鉱山 最終採掘記録
・謎の紫色の鉱石
・謎の金属片(鑑定不能)
・ガレスのツルハシ(借用中)
・第七坑道作業責任者のツルハシ
・中古の斧(30Gで購入)
・新しい帳簿 5冊
・余り紙
・ロープ
・水筒
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)
・ケムトレイル群
立場:保護対象
詳細:不明
・キュ太郎
(なぜか封鎖された壁を開けた)
【投資・契約】
・中立共栄大金庫投資案件(ポーシャ支店)
元本:金貨10枚
状態:運用中
想定利回り:2倍〜5倍(説明ベース)
詳細:非公開/高リスク
ジョン
「鉱山にこんな鉱石があるなら。」
「投資も期待できるかも。」
おっさん
「その二つは別問題だ。」
銀行
「別途、手数料が発生いたします。」
おっさん
「やっぱりな。」
【M資金】
M資金券は引き続きジョンの手を離れて流通中。
現在では。
商人の決済。
商品との交換。
現金との交換。
転売。
投資。
さらに「マーカット鉱山復興記念券」まで登場している。
そして今回。
マーカット鉱山そのものに、まだ採掘可能な鉱脈が存在することが判明。
ただし。
ジョンはまだ知らない。
この情報が外へ漏れれば。
M資金券の価値がどう動くのか。
【本日の収支】
なし
鉱山奥に大量の紫色の鉱石を発見。
ジョン
「採掘できれば大儲け!」
マクダフ
「問題は生きて帰れるかですぜ。」
【今回の進展】
✅ 第七坑道の奥へ進む
✅ 「掘ってはいけない場所」の詳細が判明
✅ 紫色の鉱石が大量に存在する空間を発見
✅ 謎の金属片を発見
✅ 金属片は鑑定不能
✅ キュ太郎が封鎖された壁を開く
✅ 壁の奥から大量の紫色の鉱石を発見
✅ しかし奥から採掘音が続いている
ジョンの一言
ジョン
「こんなに鉱石があるなら、みんなで掘れば儲かる!」
おっさん
「……だから、その『みんな』に誰を入れるかが問題なんだ。」
マクダフ
「旦那ぁ。」
「俺は賛成ですぜ。」
ジョン
「本当?」
マクダフ
「はい。」
「ただし。」
「危険な場所は旦那ぁが先頭で――」
おっさん
「お前は後ろから逃げる気だろ。」
マクダフ
「バレましたか。」
次回、紫色の鉱脈を前に、ジョンはついに採掘を開始するのか。そして鉱山の奥で続く「カン、カン、カン」の正体が明らかになる。