異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜 作:raixip
「マーカット鉱山の採掘権を買わせてください」
商人は。
そう言った。
僕は。
ツルハシを肩に担いだまま。
商人を見る。
「いくらで?」
おっさんが。
ものすごい顔をした。
「ジョン。」
「何?」
「お前。」
「話を聞く前に値段を聞くな。」
「だって金策だよ?」
「それはそうだが……。」
商人が笑う。
「話が早くて助かります。」
「こちらとしても。」
「かなり魅力的な条件を用意しています。」
僕は期待した。
かなり魅力的。
つまり。
かなり儲かる。
「いくら?」
商人は。
指を三本立てた。
「三万Gです。」
「三万!」
僕は驚いた。
マクダフなら。
きっと大喜びする金額だ。
いや。
僕も大喜びする。
「それなら!」
おっさんが。
僕の口を塞いだ。
「待て。」
「んぐ。」
「まだ続きがある。」
商人は笑顔のまま。
もう一枚の紙を出した。
「三万Gは。」
「年間の採掘権料です。」
「……。」
「……。」
「……え?」
僕は。
紙を見る。
年間。
三万G。
つまり。
一年ごとに三万G。
「じゃあ。」
「毎年三万Gもらえるの?」
「違います。」
商人は首を振った。
「毎年三万Gを支払っていただきます。」
「……。」
僕は。
ツルハシを落としかけた。
「つまり。」
おっさんが言う。
「ジョンが採掘権を売るんじゃない。」
「借りる側が金を払う契約だ。」
「そういうことです。」
商人が頷く。
僕は混乱した。
「じゃあ。」
「僕たちが三万G払うの?」
「はい。」
「なんで?」
「採掘権ですから。」
「……。」
僕は考える。
「それ。」
「僕たちが買う必要ある?」
おっさんが。
少しだけ笑った。
「ようやく気づいたな。」
商人は慌てて説明を始めた。
「もちろん!」
「こちらからの提案もございます。」
「紫色の鉱石。」
「これを独占販売させていただければ。」
「採掘費用は回収できます。」
僕は。
紫色の鉱石を見る。
「独占?」
「はい。」
「全部そちらに売るの?」
「はい。」
「いくらで?」
商人は。
少し黙った。
「市場価格に合わせて。」
おっさんが即答する。
「つまり。」
「相手が値段を決めるってことだ。」
商人は笑った。
「適正価格です。」
僕は思った。
なんだか。
怪しい。
その時。
遠くから。
「旦那ぁ!」
聞き慣れた声がした。
マクダフだ。
走ってくる。
息を切らしている。
「旦那ぁ!」
「何してたの?」
「ちょっと。」
「裏の金策を。」
おっさんが睨む。
「裏M資金か?」
「……。」
マクダフは。
目を逸らした。
「まあ。」
「そんなところです。」
「何か問題でも?」
「大問題だ。」
「へ?」
おっさんが。
マクダフの服を指差した。
「それ。」
「何です?」
「胸ポケット。」
マクダフが。
恐る恐る触る。
紙が出てきた。
「……。」
そこには。
保証金請求書
と書かれている。
「……。」
マクダフが固まった。
「旦那ぁ。」
「俺。」
「ちょっと儲かる予定だったんですが。」
「うん。」
「なんで俺が金を払う側になってるんでしょう?」
「僕に聞かれても……。」
おっさんが。
深いため息をついた。
商人が。
マクダフの紙を見る。
「おや。」
「裏M資金ですか。」
マクダフが反応する。
「知ってるんですか?」
「もちろん。」
「最近。」
「かなり人気ですよ。」
「本当ですか!」
マクダフの顔が明るくなる。
「人気ってことは。」
「売れる?」
「ええ。」
「非常によく売れています。」
マクダフが笑った。
「やっぱり俺の金策は成功――」
商人は続けた。
「ただ。」
「現在、流通している裏M資金券の多くは。」
「あなたの発行したものではありません。」
「……え?」
マクダフの顔から。
笑顔が消えた。
「どういうことです?」
「コピーされたのでしょう。」
「コピー?」
「はい。」
商人は淡々と説明する。
「あなたが作った券を元に。」
「別の業者が似た券を大量に発行しています。」
「……。」
「しかも。」
「本物より安い。」
マクダフが震える。
「俺の券より?」
「はい。」
「なんで?」
「印刷費が安いからでしょう。」
「俺も紙に書いただけですぜ!」
「それより安いんです。」
マクダフは。
その場にしゃがみ込んだ。
僕は。
少し気の毒になった。
「マクダフ。」
「はい……。」
「また一から考えればいいよ。」
「旦那ぁ。」
「優しいですなぁ。」
「うん。」
僕は。
マクダフの肩を叩く。
「今度は。」
「みんなが儲かる金策にしよう。」
マクダフが涙を拭く。
「旦那ぁ……。」
おっさんが呟いた。
「それが一番危険なんだよ。」
その頃。
町の市場では。
M資金券が。
また一枚。
商人から商人へ渡っていた。
「これで払う。」
「M資金券か?」
「ああ。」
「なら受け取ろう。」
「最近は銀貨より便利だ。」
M資金券は軽い。
紙だから。
大量に持ち運べる。
そして。
額面が書いてある。
百G。
千G。
五千G。
いつの間にか。
商人たちは。
これを普通の決済手段として使い始めていた。
さらに。
「今日の相場は?」
「銀貨一枚でM資金券千二十G。」
「昨日より上がってる。」
「マーカット鉱山に新鉱脈があるらしい。」
「ならもっと上がるな。」
誰も。
採掘の話をしていない。
ただ。
M資金券の値段だけを見ている。
僕は。
目の前の商人を見る。
「採掘権は。」
「どうする?」
おっさんが聞く。
僕は。
紫色の鉱石を見る。
そして。
「売らない。」
商人が驚いた。
「なぜです?」
「だって。」
「まだ掘ってないから。」
「……。」
「まず。」
「みんなで掘ってみたい。」
おっさんが。
少しだけ笑った。
「それでいい。」
商人は。
残念そうに紙をしまった。
「そうですか。」
「では。」
「別の方法を考えましょう。」
その言葉が。
妙に引っかかった。
「別の方法?」
商人は答えない。
ただ。
にこやかに頭を下げた。
「また伺います。」
商人が去っていく。
僕は。
その背中を見送った。
そして。
ふと気づく。
「おっさん。」
「何だ?」
「あの人。」
「鉱山を欲しがってたんだよね?」
「ああ。」
「なのに。」
「どうしてあんなに簡単に帰ったの?」
おっさんは。
少し黙った。
「……。」
「それが俺も気になってる。」
その夜。
僕たちが休んでいると。
鉱山の奥から。
「カン。」
「カン。」
「カン。」
また音がした。
僕は起き上がる。
「まだ掘ってる。」
おっさんも。
目を覚ました。
「……誰が掘ってるんだ?」
僕たちは。
第七坑道の入口を見る。
その向こう。
誰もいないはずの場所から。
「カン。」
「カン。」
そして。
今度は。
別の音が混じった。
「ガン。」
「ガン。」
まるで。
こちらへ向かって。
何かが。
掘り進んでいるようだった。
僕は。
ツルハシを握る。
「おっさん。」
「ああ。」
「明日。」
「奥を調べよう。」
おっさんは。
しばらく黙ってから。
答えた。
「……仕方ないな。」
その時。
僕の懐のキュ太郎が。
「きゅ。」
と鳴いた。
そして。
第七坑道の奥を。
じっと見つめていた。
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
141G(銀行預け金:250G(銅貨2枚、半銅貨5枚))
ジョン
「今日もお金を使わなかった!」
おっさん
「増えてもいない。」
ジョン
「でも紫鉱石は二個!」
マクダフ
「旦那ぁ、売れば金になるかもしれませんぜ。」
【所持アイテム】
・???のスクロール 6枚
・採掘計画書
・旧マーカット鉱山の古地図
・マーカット鉱山 最終採掘記録
・謎の紫色の鉱石
・謎の金属片(鑑定不能)
・採掘した紫色の鉱石 2個
・ガレスのツルハシ(借用中)
・第七坑道作業責任者のツルハシ
・中古の斧(30Gで購入)
・新しい帳簿 5冊
・余り紙
・ロープ
・水筒
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)
・ケムトレイル群
立場:保護対象
詳細:不明
・キュ太郎
(第七坑道の奥をじっと見ている)
【投資・契約】
・中立共栄大金庫投資案件(ポーシャ支店)
元本:金貨10枚
状態:運用中
想定利回り:2倍〜5倍(説明ベース)
詳細:非公開/高リスク
ジョン
「鉱山に鉱脈があるなら。」
「投資も期待できるかも。」
おっさん
「だから別問題だ。」
銀行
「別途、手数料が発生いたします。」
おっさん
「知ってる。」
【M資金】
M資金券は引き続きジョンの手を離れて流通中。
現在では。
・商人の決済
・商品の購入
・現金との交換
・転売
・投資
などに利用されている。
さらに。
「マーカット鉱山復興記念券」
まで登場。
最近では。
M資金券そのものの相場が作られ始めている。
「採掘に使う券」ではなく。
「値上がりするかもしれない紙」
として売買されている。
ジョン
「僕はそんな券を作った覚えはないけど。」
おっさん
「もうお前の意思は関係なくなってきてる。」
【本日の収支】
なし
紫色の鉱石を追加採掘。
ジョン個人の所持金に変動はありません。
マクダフの裏M資金については。
本人が勝手に動いた結果。
別業者にコピーされ。
さらに保証金まで請求される状態になった。
ジョン
「マクダフ、大丈夫?」
マクダフ
「……大丈夫じゃありませんぜ、旦那ぁ。」
【今回の進展】
✅ 商人からマーカット鉱山の採掘権を持ちかけられる
✅ 年間3万Gの採掘権料を提示される
✅ 紫色の鉱石の独占販売契約を提案される
✅ ジョンは採掘権を売らないと判断
✅ マクダフの裏M資金がコピーされていたことが判明
✅ マクダフに保証金請求が発生
✅ M資金券の相場が作られ始める
✅ M資金券が貨幣のように決済へ利用される
✅ 第七坑道の奥から採掘音がさらに接近
✅ キュ太郎が奥を警戒する
ジョンの一言
ジョンの
「採掘権は売らない。」
「まずは自分たちで掘ってみよう!」
おっさん
「それでいい。」
マクダフ
「旦那ぁ。」
「俺の裏M資金も一緒に掘り返してくれませんかね?」
ジョン
「何を?」
マクダフ
「……。」
「いや。」
「何でもありません。」
次回、第七坑道の奥へ。そこでジョンたちが見つけるのは、古い採掘跡か。それとも――今も誰かが掘り続けている証拠なのか。