異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜 作:raixip
その暫定額は。
金貨八千四百枚。
ただし、これは古い記録を元にした暫定額であり、その全額が現在も有効な債務なのかはまだ分からない。
問題は。
古い契約。
採掘権の譲渡。
債権者の変更。
そして債務の消滅や更新。
一つずつ確認する必要があることだった。
しかし。
債務が存在するという情報だけで。
市場では新たな「旧債務連動券」が作られ。
関連券の価格はさらに動き始める。
そして。
債権者一覧に現れた。
【中立共栄大金庫】
さらに。
【回収担当:ポーシャ支店】
ジョンが現在運用している投資案件。
その銀行が。
マーカット鉱山の古い債務を管理している可能性が出てきた。
鉱山。
M資金。
旧採掘権。
銀行。
すべてが一本の線で繋がり始める。
その直後。
地下から三回の音。
まるで。
「まだあるぞ」
と知らせるように。
「旧債務って……いくら?」
僕が聞いた。
第零坑道の管理通信。
古い箱。
そして。
【旧債務を引き継ぐ意思があるか】
なんだか。
嫌な予感しかしない。
ゼロは腕を組んだ。
「正確な額は、まだ出せねぇ」
「まだ?」
「古い記録が一部欠けてる」
「じゃあ、どうするの?」
「残ってる記録を読む」
箱が光った。
【旧債務・計算開始】
カタカタカタ。
古い文字が次々に浮かんでいく。
【採掘設備建設費】
【坑道維持費】
【輸送路整備費】
【労働者未払金】
【設備損壊補償費】
【旧採掘権配当】
僕は順番に読む。
「いろいろあるね」
「企業ってのは、そんなもんだ」
おっさんが言った。
「でも」
僕は一番下を見る。
【未精算項目】
「まだある」
ゼロが嫌そうな顔をした。
「見たくねぇな」
そして。
最後の項目が表示された。
【遅延損害】
「……」
「……」
「……」
僕たちは黙った。
マクダフだけが。
「旦那ぁ」
「なに?」
「遅延損害って、何年分です?」
ゼロが答える。
「記録上」
一拍。
「百二十七年分」
「百二十七年!?」
マクダフが叫んだ。
僕も驚いた。
「そんなに?」
「マーカット鉱山は、一度止まったあと長期間再開されてねぇからな」
おっさんが頭を抱える。
「つまり、その間ずっと借金が増えたってことか?」
「単純計算ならな」
ゼロが言う。
「ただし、途中で権利が売られたり、債権者が変わったり、契約が更新されたりしてる」
「……」
僕は嫌な数字を想像した。
「いくら?」
箱が。
しばらく点滅した。
そして。
【暫定旧債務総額】
【金貨 8,400枚】
「……」
マクダフが固まる。
「……八千」
おっさんも黙る。
「四百……」
僕は計算した。
金貨五百枚でも大変そうだったのに。
その十六倍以上。
「そんなにお金があるの?」
僕が聞くと。
ゼロが鼻で笑った。
「ねぇから借金なんだろ」
「そっか」
「いや、納得すんな」
おっさんが突っ込む。
僕は帳簿を開いた。
八千四百枚。
でも。
「本当に払わなきゃいけないの?」
ゼロが少し黙った。
「そこだ」
「え?」
「この額が、そのまま全部現在の債務として有効かは分からねぇ」
箱に新しい文字が浮かぶ。
【旧契約:確認必要】
【権利譲渡:確認必要】
【債権消滅:確認必要】
【契約更新:確認必要】
「つまり」
おっさんが整理する。
「昔の借金が八千四百枚という記録はある」
「うん」
「でも、それが今も有効かは一件ずつ確認しないと分からない」
「そういうこと」
ゼロが頷く。
「契約ってのは、書いてある金額だけ見ても意味がねぇ」
僕は少し安心した。
「じゃあ、まだ八千四百枚払うって決まったわけじゃないんだ」
「そうだ」
すると。
マクダフが手を上げた。
「では旦那ぁ」
「なに?」
「借金八千四百枚は、とりあえず宣伝に使えますな」
「なんで?」
「『八千四百枚分の価値が眠る鉱山!』」
「……」
「『復活すれば巨大利益!』」
「……」
「『旧債務を整理できれば大逆転!』」
ゼロが飛んだ。
「お前は本当に反省しねぇな!」
バシッ!
「痛ぇ!」
すると。
外が騒がしくなった。
「八千四百枚だって!?」
「本当か!」
「だったら鉱山には、それ以上の価値があるはずだ!」
「券を買え!」
僕たちは顔を見合わせた。
「……聞こえた?」
「聞こえた」
おっさんが嫌そうに言った。
「さっきの情報、もう外に漏れてるぞ」
ゼロが頭を抱える。
「誰が喋った?」
全員がマクダフを見る。
「俺じゃありませんぜ!」
「本当か?」
「俺ならもう紙を作ってます!」
「そこを威張るな!」
僕は外を見る。
さっきまで十G。
五十G。
百G。
そんな価格だった券が。
今度は。
「三百G!」
「いや、五百Gで買う!」
「千Gでも欲しい!」
どんどん値段が上がっている。
「……どうして?」
僕には理解できなかった。
「借金が増えたのに、券の値段が上がるの?」
おっさんが苦笑した。
「市場は数字だけで動くんじゃない」
「どういうこと?」
「『八千四百枚の借金がある』じゃなくて」
一拍。
「『八千四百枚もの金が必要になるほど、昔は大規模な事業だった』と受け取る人間もいるんだ」
「……」
「借金そのものより、その裏にある『期待』を買ってる」
ゼロが頷いた。
「情報が一個出るだけで、人によって意味が変わる」
僕は券を見る。
確かに。
同じ八千四百枚でも。
「借金がすごい」
と思う人もいれば。
「それだけ大きな鉱山だった」
と思う人もいる。
「面白いね」
「面白くねぇよ」
ゼロが即答した。
「これ、悪化すると『借金が多いほど価値がある』とかいう、わけの分からねぇ市場になるぞ」
「もうなってますぜ」
マクダフが言った。
「何?」
「ほら」
彼が紙を差し出す。
そこには。
【マーカット鉱山・旧債務連動券】
と書かれていた。
「また作ったの?」
「俺じゃありません」
「……」
「今回は別の商人です」
おっさんが頭を抱えた。
「人が増えてる……」
「旦那ぁ」
マクダフが真面目な顔になる。
「俺、負けられません」
「何と?」
「金策です」
「その勝負、しなくていいよ」
そのときだった。
箱が再び光った。
【重要】
【旧債務確認のため、債権者一覧を表示します】
「債権者?」
僕が画面を見る。
名前が。
一つ。
二つ。
三つ。
どんどん増えていく。
商会。
鍛冶組合。
運送組合。
個人。
旧貴族家。
そして。
最後のほうに。
見覚えのない名前。
【中立共栄大金庫】
僕は思わず声を出した。
「……え?」
おっさんが振り返る。
「どうした?」
「これ」
僕は指差す。
【中立共栄大金庫】
「銀行じゃん」
ゼロが黙った。
「……そうだ」
「この銀行」
僕はさらに見る。
【旧マーカット鉱山債権】
【管理記録:継続中】
「継続中?」
おっさんの顔が険しくなる。
「まさか」
箱に最後の文字が浮かぶ。
【現行管理対象】
【中立共栄大金庫】
【第七支店群】
【回収担当:ポーシャ支店】
「……」
僕は。
自分がポーシャ支店に預けている投資案件を思い出した。
金貨十枚。
運用中。
「おっさん」
「なんだ?」
「僕の銀行」
「うん」
「この鉱山の借金を、今も管理してるの?」
ゼロが小さく答えた。
「どうやらな」
僕は固まった。
鉱山。
M資金。
旧採掘権。
そして。
中立共栄大金庫。
全部が。
一本の線で繋がり始めていた。
すると。
箱に。
新しい表示。
【所有者選定・第三段階】
【追加質問】
【現行債権者との契約関係を、候補者は理解しているか】
僕は。
ゆっくり手を上げた。
「……分からない」
ゼロが笑う。
「正直でよろしい」
「でも」
僕は箱を見る。
「分からないなら、調べればいいんだよね?」
「そうだ」
ゼロが頷く。
「そしてたぶん」
おっさんが言った。
「調べたら、もっと面倒なことが出てくるぞ」
ゴン。
地下から。
また一回。
ゴン。
今度は二回。
そして。
ゴン。
三回。
何かが。
合図している。
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
141G(銀行預け金:250G(銅貨2枚、半銅貨5枚))
ジョン
「借金、八千四百枚……」
おっさん
「暫定額だけどな」
マクダフ
「旦那ぁ、これを金策に――」
ジョン
「もうやめて」
ゼロ
「こいつには言っても無駄だ」
【所持アイテム】
・???のスクロール×6
・採掘計画書
・旧マーカット鉱山の古地図
・マーカット鉱山 最終採掘記録
・謎の紫色の鉱石
・謎の金属片(鑑定不能)
・採掘した紫色の鉱石×2
・新しく発見した謎の金属片
・「採掘は順調です。予定通り、地上へ出ます」と書かれた紙
・新M資金・マーカット鉱山復興応援券×1
・第零坑道採掘許可証0007
・第零坑道採掘管理記録
・第零坑道・旧採掘権証券×1
・マーカット鉱山・採掘権原簿(管理箱)
・ガレスのツルハシ(借用中)
・第七坑道作業責任者のツルハシ
・中古の斧(30Gで購入)
・新しい帳簿×5
・余り紙
・ロープ
・水筒
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)
・ケムトレイル群(立場:保護対象、詳細不明)
・キュ太郎
・原簿管理妖精「ゼロ」
【投資・契約】
・中立共栄大金庫投資案件(ポーシャ支店)
元本:金貨10枚
状態:運用中
想定利回り:2倍〜5倍(説明ベース)
詳細:非公開/高リスク
新判明:
・中立共栄大金庫が旧マーカット鉱山債権者一覧に存在
・旧債務の一部が現在も管理対象となっている可能性あり
・回収担当としてポーシャ支店の名前が記録されている
【M資金】
・小口M資金券が継続流通
・商人間の決済に使用
・商品購入に使用
・現金交換
・転売
・投資対象化
・信用の証明として流通
・第三者による派生券も発生
・マクダフ発行「赤字安心券」
・「採掘利益参加証」
・「旧債務連動券」
・マーカット鉱山関連券の取引市場
・M資金指数
・旧債務発表後、関連券の価格がさらに上昇
【所有者選定】
第一段階:経済的貢献度
→ジョンがトップ
第二段階:実地運用試験
→ジョン暫定首位
第三段階:所有責任審査
→継続中
今回確認:
✅旧債務の暫定総額:金貨8400枚
✅旧債務の有効性は未確認
✅旧採掘権・旧契約の精査が必要
✅現行債権者に中立共栄大金庫が含まれる
✅回収担当としてポーシャ支店の記録あり
【本日の収支】
141G(変動なし)
銀行預け金250G(変動なし)
※ジョン個人の所持金に変動はありません。
【今回の進展】
✅マーカット鉱山の旧債務が暫定8400Gではなく「金貨8400枚」と判明
✅ただし全額が現行債務として有効かは未確認
✅旧契約・権利譲渡・債権消滅などの調査が必要
✅旧債務の情報をきっかけに関連券の価格がさらに上昇
✅「旧債務連動券」が新たに登場
✅中立共栄大金庫が現行債権者一覧に存在
✅ポーシャ支店が回収担当として記録されている
✅所有者選定と銀行契約が繋がり始める
ジョンの一言
ジョン
「僕の投資してる銀行と、鉱山の借金が繋がってるの?」
ゼロ
「どうやらな」
おっさん
「世間は狭いな」
マクダフ
「旦那ぁ、銀行も鉱山も金策ですぜ」
ジョン
「その言葉で全部まとめないで」
次回。
「ポーシャ支店、鉱山債権回収に来る?」
ついに中立共栄大金庫側の担当者が登場。
そしてジョンは。
自分が知らないところで結ばれていた、百年以上前の「奇妙な金融契約」の存在を知ることになる。