異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜 作:raixip
八千四百枚という旧債務の記録は存在する。
しかし、そのすべてが現在も有効とは限らない。
債権が譲渡されたもの。
契約が更新されたもの。
すでに消滅している可能性があるもの。
一件ずつ確認する必要があることが分かった。
そして現在も有効性が確認されている特殊契約。
それが。
「マーカット鉱山・復旧時利益配分契約」
だった。
契約番号は。
0000。
第零坑道と同じ「ゼロ」。
しかも原始契約は。
第零坑道最下層に残されている。
鉱山の所有者になるため。
ジョンたちは、いよいよ最深部へ向かうことになる。
そこには。
M資金が生まれるよりずっと前。
百年以上前に作られた。
「最初の金策」の記録が眠っている。
「ポーシャ支店が来る?」
僕が聞き返す。
おっさんが頷いた。
「さっきの記録に、回収担当って書いてあったからな」
「じゃあ、もうすぐ来るの?」
ゼロが箱を見た。
「たぶんな」
マクダフが不安そうに言う。
「旦那ぁ」
「なに?」
「銀行の人って、借金を取り立てに来るんですよね?」
「そうじゃない?」
「では」
マクダフが真顔になる。
「俺、逃げます」
「なんで?」
「借金取りから逃げるのは基本でしょう」
「だから僕たちの借金じゃないって」
「でも鉱山の所有者候補でしょう?」
「まだなってないよ」
ゼロが呆れた。
「お前ら、所有権の話と債務者の話を一緒にするな」
そのとき。
遠くから。
カン。
カン。
金属の音が響いた。
やがて。
坑道の入口に、一台の馬車が止まった。
立派だ。
でも貴族の馬車ほど派手じゃない。
馬車から降りてきたのは。
黒い服の女性だった。
手には分厚い帳簿。
胸には。
【中立共栄大金庫・ポーシャ支店】
の紋章。
「担当者の方ですね?」
僕が聞く。
女性は僕を見る。
「はい」
そして。
一礼した。
「中立共栄大金庫ポーシャ支店、債権管理担当のリゼと申します」
「やっぱり銀行だ」
おっさんが呟く。
リゼさんは帳簿を開く。
「まず最初に申し上げます」
「うん」
「現時点で、私どもは皆様へ八千四百枚の金貨を請求するつもりはありません」
「……」
僕は安心した。
マクダフも胸を撫で下ろす。
「助かった」
「ただし」
リゼさんが続けた。
「八千四百枚という記録自体は確認されています」
「やっぱりあるんだ……」
「はい」
ゼロが尋ねる。
「債権者一覧に大金庫があった。どういう意味だ?」
「正確には」
リゼさんは帳簿をめくる。
「大金庫自身が最初から債権者だったわけではありません」
「え?」
「昔の採掘会社が、別の金融組織から借りていた」
「ふむ」
「その後、貸付債権の管理契約が何度か移転しました」
僕は首をかしげる。
「借金そのものが、別の人のところへ行ったの?」
「はい」
おっさんが補足する。
「債権の譲渡ってやつだな」
「そうです」
リゼさんが頷く。
「そして現在、その一部を中立共栄大金庫が管理しています」
「一部?」
僕が聞く。
「全部じゃないの?」
「全部ではありません」
リゼさんが帳簿を閉じた。
「それが問題なのです」
ゼロが目を細める。
「他にもいるのか」
「はい」
「誰だ?」
リゼさんは少し間を置いた。
「記録上、十八の債権者群があります」
「十八!?」
マクダフが叫ぶ。
「十八人で山分けですか?」
「人とは限りません」
「じゃあ何?」
「商会、組合、個人、相続組織、基金などです」
僕は思った。
「……鉱山より帳簿のほうが複雑そう」
おっさんが笑った。
「それは間違ってない」
リゼさんは僕に視線を向けた。
「そして」
「はい?」
「ジョン様」
僕はびっくりした。
「僕?」
「所有者選定の候補者として、登録が確認されています」
箱が反応した。
【第三段階・候補者確認】
【現行債権者:説明開始】
僕は思わずゼロを見る。
「これも試験なの?」
「そうだ」
「銀行の人と話すのも?」
「所有者になれば、こういう奴らと話すことになるからな」
リゼさんが静かに言う。
「質問があります」
「なに?」
「もしジョン様が所有者になった場合」
一枚の紙を差し出す。
「過去の債務を、すべて引き受けますか?」
「……全部?」
「いいえ」
「え?」
「契約上、有効であると確認されたものだけです」
僕は少し安心した。
「じゃあ、分からない借金まで払うわけじゃないんだ」
「当然です」
おっさんが頷く。
「そこを確認するのが大事なんだよ」
僕は紙を見る。
細かい文字がいっぱい。
でも。
「この紙、難しい」
「そうですか?」
「僕には分からない」
リゼさんが少し考えた。
「では、簡単に説明します」
紙を指で順番に示す。
「存在が確認できる借金」
「うん」
「今でも有効な借金」
「うん」
「相手が正当に請求できる借金」
「うん」
「この三つは、全部同じとは限りません」
僕は驚いた。
「同じじゃないの?」
「違います」
ゼロが笑った。
「それが契約の面倒くせぇところだ」
マクダフが手を上げた。
「じゃあ、死んだ借金もあります?」
リゼさんが答える。
「あります」
「おお!」
「ただし」
「はい」
「死んだと思われていた借金が、別の契約によって生きている場合もあります」
「……」
マクダフが手を下ろした。
「聞かなかったことにします」
おっさんが吹き出した。
そのとき。
リゼさんの表情が変わった。
「ですが、一件だけ」
「?」
「現在も有効性が確認されている特殊契約があります」
「特殊契約?」
「はい」
帳簿から。
古い一枚の紙を取り出す。
紙の端に。
古い印章。
そして。
【マーカット鉱山・復旧時利益配分契約】
と書かれていた。
僕は読む。
「利益配分?」
「鉱山が再開した場合、採掘利益の一部を一定期間、指定された権利者へ配分する契約です」
「それって……」
おっさんが嫌な顔をした。
「旧採掘権証券の元になった契約か」
「その可能性があります」
ゼロが紙を見て。
黙った。
「ゼロ?」
「……知ってる」
「え?」
「この契約、見たことがある」
「いつ?」
ゼロは答えなかった。
代わりに。
箱に文字が浮かぶ。
【契約番号:0000】
【原始契約】
僕は息を呑んだ。
0007じゃない。
0000。
第零坑道。
その数字が。
全部繋がっていく。
「ゼロ」
僕が聞く。
「この契約って――」
ゼロは。
珍しく目を逸らした。
「昔の俺が関わった」
「……」
「そして」
地下から。
ゴン。
一回。
ゴン。
二回。
ゴン。
三回。
箱が赤く光る。
【原始契約・保管場所】
【第零坑道・最下層】
僕は思わずツルハシを見る。
「下にあるの?」
リゼさんが頷く。
「はい」
おっさんが苦笑する。
「行くしかないな」
マクダフが即座に首を振る。
「俺は行きません」
「なんで?」
「借金の原本を見に行くって、どう考えても嫌な予感しかしませんぜ!」
ゼロがニヤリと笑った。
「安心しろ」
「何が?」
「たぶん」
「たぶん!?」
「もっと面倒な契約が出てくるだけだ」
「全然安心できねぇ!」
僕は地下を見る。
鉱山。
M資金。
旧採掘権。
大金庫。
そして。
原始契約。
僕はツルハシを握った。
「行こう」
おっさんが笑う。
「そう言うと思った」
次に何が出てくるのか。
僕にも。
もう分からなかった。
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
141G(銀行預け金:250G(銅貨2枚、半銅貨5枚))
ジョン
「借金って、存在してても払わなくていい場合があるんだね」
おっさん
「正確には、今も請求できるか確認が必要ってことだ」
マクダフ
「旦那ぁ。俺の借金も確認してくだせぇ」
ゼロ
「お前は普通に払え」
【所持アイテム】
・???のスクロール×6
・採掘計画書
・旧マーカット鉱山の古地図
・マーカット鉱山 最終採掘記録
・謎の紫色の鉱石
・謎の金属片(鑑定不能)
・採掘した紫色の鉱石×2
・新しく発見した謎の金属片
・「採掘は順調です。予定通り、地上へ出ます」と書かれた紙
・新M資金・マーカット鉱山復興応援券×1
・第零坑道採掘許可証0007
・第零坑道採掘管理記録
・第零坑道・旧採掘権証券×1
・マーカット鉱山・採掘権原簿(管理箱)
・ガレスのツルハシ(借用中)
・第七坑道作業責任者のツルハシ
・中古の斧(30Gで購入)
・新しい帳簿×5
・余り紙
・ロープ
・水筒
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)
・ケムトレイル群(立場:保護対象、詳細不明)
・キュ太郎
・原簿管理妖精「ゼロ」
【投資・契約】
・中立共栄大金庫投資案件(ポーシャ支店)
元本:金貨10枚
状態:運用中
想定利回り:2倍〜5倍(説明ベース)
詳細:非公開/高リスク
新判明:
・中立共栄大金庫は旧マーカット鉱山債権の一部を現在も管理
・現行債権者群は18組織前後
・旧債務の一部には有効性確認が必要
・現在も有効性が確認されている特殊契約が存在
・「マーカット鉱山・復旧時利益配分契約」
・契約番号:0000
・原始契約の保管場所は第零坑道最下層
【M資金】
・小口M資金券が継続流通
・商人間の決済に使用
・商品購入に使用
・現金交換
・転売
・投資対象化
・信用の証明として流通
・第三者による派生券も発生
・マクダフ発行「赤字安心券」
・「採掘利益参加証」
・「旧債務連動券」
・マーカット鉱山関連券の取引市場
・M資金指数
・旧債務発表後も関連券の売買が継続
【所有者選定】
第一段階:経済的貢献度
→ジョンがトップ
第二段階:実地運用試験
→ジョン暫定首位
第三段階:所有責任審査
→継続中
今回確認:
✅旧債務の法的有効性は個別確認が必要
✅現行債権者は複数存在
✅利益配分契約が現在も有効な可能性
✅原始契約番号「0000」が存在
✅所有者になるには過去の契約まで確認する必要がある
【本日の収支】
141G(変動なし)
銀行預け金250G(変動なし)
※ジョン個人の所持金に変動はありません。
【今回の進展】
✅ポーシャ支店の債権管理担当リゼが登場
✅旧債務8400枚の全額が現行債務とは限らないと判明
✅債権は過去に複数回譲渡されている可能性が判明
✅現行債権者群は18組織前後と判明
✅「復旧時利益配分契約」が現在も有効な可能性が浮上
✅契約番号「0000」の原始契約が存在
✅原始契約は第零坑道最下層に保管されている
ジョンの一言
ジョン
「0000ってことは……001とか002より前?」
ゼロ
「そういうこった」
おっさん
「第零坑道とも関係ありそうだな」
マクダフ
「旦那ぁ、ゼロって名前、ちゃんと意味があったんですな」
ゼロ
「今さら気づいたのか」
次回。
「第零坑道・最下層」
原始契約を探すジョンたち。
そこでゼロが隠していた、過去の秘密がついに明らかになる――。