異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜   作:raixip

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第零坑道の最下層。

そこに眠っていたのは、単なる鉱石でも宝物でもなかった。

百年以上前。

マーカット鉱山では、再開前の将来利益を「権利」として販売していた。

一口金貨一枚。

将来の採掘利益を分配する契約。

そして最低配当保証。

現在のM資金とよく似た仕組みだった。

しかし。

鉱山は再開しなかった。

集めた資金は設備や維持費へ消え。

契約を維持するための金まで必要になった。

やがて。

債務と権利だけが残った。

そして今。

原始契約が再認証された。

所有者候補となったジョンには。

旧契約を引き継ぐか。

候補資格を失うか。

二つの選択しか残されていない。

しかも。

承諾すれば。

旧債務。

旧権利者。

旧契約。

そして。

百年以上前の失敗まで。

すべて引き受けることになる。




第158話 第零坑道・最下層

僕たちは。

 

第零坑道へ向かった。

 

先頭はゼロ。

 

その後ろを僕。

 

おっさん。

 

マクダフ。

 

そして。

 

ポーシャ支店のリゼさん。

 

「銀行の人まで来るんだ」

 

僕が言うと。

 

リゼさんは淡々と答えた。

 

「債権管理担当ですので」

 

「危なくない?」

 

「危険な契約書を見るほうが、私は慣れています」

 

「そっちのほうが怖いよ……」

 

マクダフが小声で言う。

 

「旦那ぁ」

 

「なに?」

 

「この人、絶対に敵に回しちゃいけませんぜ」

 

リゼさんが聞こえないふりをした。

 

第零坑道は。

 

普通の坑道とは少し違っていた。

 

壁に古い金属板が埋め込まれている。

 

数字。

 

記号。

 

そして。

 

何かの契約文らしき文字。

 

「全部、契約?」

 

僕が聞く。

 

ゼロが頷いた。

 

「昔の連中はな」

 

「うん」

 

「鉱山そのものを、契約で管理しようとした」

 

「契約で?」

 

「採掘量」

 

「うん」

 

「利益」

 

「うん」

 

「修繕費」

 

「うん」

 

「労働者への配分」

 

ゼロは壁を見る。

 

「そして――」

 

一枚の古い金属板を指した。

 

「掘らない権利」

 

「掘らない権利?」

 

僕は首をかしげた。

 

「何それ?」

 

おっさんが笑う。

 

「掘らないことで価値を守る契約ってことだろ」

 

「そんなのあるの?」

 

「あるところにはある」

 

リゼさんが答えた。

 

「鉱山資源を保全する契約は、理屈としては成立します」

 

「へぇ」

 

僕は少し感心した。

 

でも。

 

ゼロは苦い顔をしていた。

 

「問題はだ」

 

「何?」

 

「昔の連中が、それを金策に使ったことだ」

 

「……」

 

「採掘しない」

 

「うん」

 

「採掘できる」

 

「うん」

 

「将来、採掘するかもしれない」

 

ゼロが指を振る。

 

「そういう『可能性』を権利として売った」

 

僕は。

 

M資金を思い出した。

 

「それって……」

 

「そうだ」

 

おっさんが言った。

 

「今のお前らがやってることと似てる」

 

「……」

 

地下の壁に。

 

古い文字が浮かぶ。

 

【将来採掘利益参加権】

 

【一口 金貨一枚】

 

僕は目を丸くした。

 

「昔から一口売ってたんだ」

 

「しかも」

 

リゼさんが壁を読む。

 

「配当率まで書かれています」

 

【採掘利益の一・五%】

 

「一・五%?」

 

マクダフが食いつく。

 

「何口まで売ったんです?」

 

ゼロが嫌そうに答えた。

 

「……記録上」

 

間を置く。

 

「六千口」

 

「六千!?」

 

マクダフが叫ぶ。

 

「待って」

 

僕も驚いた。

 

「一口が金貨一枚なら」

 

「六千枚だ」

 

おっさんが答える。

 

「でも」

 

リゼさんが静かに続けた。

 

「一・五%を六千口に配ったら」

 

全員が止まる。

 

僕は計算する。

 

一・五%。

 

それが六千口。

 

「……九千%?」

 

「そうなるな」

 

おっさんが苦笑した。

 

「鉱山の利益より配当のほうが大きい」

 

ゼロが頭を抱える。

 

「馬鹿どもが」

 

「じゃあ、その契約」

 

僕は聞いた。

 

「成立しないよね?」

 

リゼさんが首を振る。

 

「契約文上は、別の条件があります」

 

「どんな?」

 

彼女は壁の一番下を指す。

 

小さな文字。

 

僕には読みにくい。

 

リゼさんが読み上げた。

 

「『配当率は、全ての発行口数を基準として自動調整される』」

 

「……」

 

おっさんが笑った。

 

「なるほど」

 

「何が?」

 

「一口一・五%じゃなくて」

 

「うん」

 

「全員で一・五%を分ける契約だ」

 

僕は少し安心した。

 

「じゃあ、六千口でも大丈夫なんだ」

 

「いや」

 

リゼさんが答える。

 

「別の問題があります」

 

「まだあるの?」

 

「はい」

 

一枚。

 

さらに奥の板。

 

【最低配当保証】

 

僕たちは黙った。

 

「……保証?」

 

「はい」

 

「いくら?」

 

リゼさんが数字を読む。

 

【一口あたり年間金貨二枚】

 

マクダフが叫ぶ。

 

「何それぇ!?」

 

僕も驚いた。

 

「鉱山が掘れなくても払うの?」

 

「契約上、そのように読めます」

 

ゼロが頭を抱える。

 

「だから俺は止めろって言ったんだ」

 

僕が見る。

 

「ゼロ」

 

「なんだ」

 

「この契約」

 

「うん」

 

「誰が作ったの?」

 

ゼロは答えない。

 

リゼさんが代わりに壁の最後の署名欄を読む。

 

【原簿管理者】

 

【第零坑道管理者】

 

そして。

 

その下に。

 

小さな文字。

 

【承認:ゼロ】

 

僕は。

 

ゼロを見る。

 

「……」

 

おっさんを見る。

 

「……」

 

マクダフを見る。

 

「……」

 

リゼさんだけが。

 

静かにゼロを見ていた。

 

ゼロは。

 

しばらく黙っていた。

 

そして。

 

ため息をついた。

 

「そうだ」

 

「ゼロが作ったの?」

 

「一人じゃねぇ」

 

「でも署名してる」

 

「してる」

 

「じゃあ」

 

僕は聞く。

 

「何で、こんな契約にしたの?」

 

ゼロは壁にもたれた。

 

「昔な」

 

少しだけ。

 

声が低くなる。

 

「この鉱山には、採掘する金も、人も、設備もなかった」

 

「うん」

 

「だから将来の利益を先に売った」

 

「M資金みたいに?」

 

「そうだ」

 

「それでお金を集めた」

 

「そうだ」

 

「鉱山は再開した?」

 

ゼロは黙った。

 

「……しなかった」

 

僕は。

 

何も言えなかった。

 

「なら」

 

僕は思った。

 

「集めたお金は?」

 

ゼロが答える。

 

「使った」

 

「何に?」

 

「設備」

 

「うん」

 

「道」

 

「うん」

 

「人件費」

 

「うん」

 

「そして」

 

ゼロが苦笑する。

 

「契約を維持するための金」

 

僕は思わず頭を抱えた。

 

「それ、お金を集めて」

 

「うん」

 

「集めたお金を維持するために使って」

 

「そういうことだ」

 

おっさんが遠い目をする。

 

「完全に金融の沼だな」

 

マクダフが呟いた。

 

「旦那ぁ」

 

「なに?」

 

「これ、今のM資金と同じじゃありません?」

 

僕は。

 

壁を見る。

 

昔の一口券。

 

将来利益。

 

採掘前の資金調達。

 

そして。

 

現在のM資金。

 

「……似てる」

 

ゼロが笑った。

 

「似てるんじゃねぇ」

 

一拍。

 

「同じことを、また始めてやがる」

 

僕の背中に。

 

少し寒いものが走った。

 

その瞬間。

 

地下の奥から。

 

ゴン。

 

ゴン。

 

ゴン。

 

また三回。

 

そして。

 

壁に新しい文字が浮かんだ。

 

【原始契約・再認証】

 

【現行所有候補を確認】

 

【候補者:ジョン】

 

【契約承継手続きを開始】

 

「え?」

 

僕は固まる。

 

「ちょっと待って!」

 

箱が光る。

 

【第一条】

 

【所有者は旧契約を引き継ぐ】

 

【第二条】

 

【旧債務を確認する】

 

【第三条】

 

【将来利益を受給する権利者を保護する】

 

そして。

 

最後。

 

【承諾しますか?】

 

「……」

 

僕は。

 

手を伸ばしかけた。

 

でも。

 

おっさんが腕を掴んだ。

 

「待て」

 

「うん」

 

「サインするな」

 

ゼロも。

 

いつになく真剣な顔をしていた。

 

「ジョン」

 

「なに?」

 

「今だけは」

 

ゆっくり言った。

 

「俺の言うことを聞け」

 

僕は頷く。

 

「これは所有権じゃねぇ」

 

「じゃあ何?」

 

ゼロが答える。

 

「昔の金策を、そのままお前に引き継がせる契約だ」

 

僕は。

 

表示を見つめる。

 

【承諾しますか?】

 

まだ。

 

僕は何も押していない。

 

でも。

 

画面の下には。

 

新しい文字が浮かび始めていた。

 

【承諾しない場合】

 

【所有者候補資格を失います】

 

僕は。

 

言葉を失った。

 

所有者になるためには。

 

過去の契約を引き継がなければならない。

 

でも。

 

引き継げば。

 

八千四百枚の旧債務。

 

六千口の旧権利。

 

そして。

 

百年以上前の「金策の失敗」まで。

 

全部。

 

僕のものになる。




【あとがき:現在のステータス】

【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13

■生産系
料理スキル 13

■その他
鑑定スキル 0.3

【所持金】
141G(銀行預け金:250G(銅貨2枚、半銅貨5枚))

ジョン
「所有者になるって、大変だね」
おっさん
「だから責任があるんだよ」
マクダフ
「旦那ぁ……」
ジョン
「なに?」
マクダフ
「俺、今なら所有者候補辞退できますぜ」
ゼロ
「最初からお前は候補じゃねぇ」

【所持アイテム】
・???のスクロール×6
・採掘計画書
・旧マーカット鉱山の古地図
・マーカット鉱山 最終採掘記録
・謎の紫色の鉱石
・謎の金属片(鑑定不能)
・採掘した紫色の鉱石×2
・新しく発見した謎の金属片
・「採掘は順調です。予定通り、地上へ出ます」と書かれた紙
・新M資金・マーカット鉱山復興応援券×1
・第零坑道採掘許可証0007
・第零坑道採掘管理記録
・第零坑道・旧採掘権証券×1
・マーカット鉱山・採掘権原簿(管理箱)
・ガレスのツルハシ(借用中)
・第七坑道作業責任者のツルハシ
・中古の斧(30Gで購入)
・新しい帳簿×5
・余り紙
・ロープ
・水筒
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)
・ケムトレイル群(立場:保護対象、詳細不明)
・キュ太郎
・原簿管理妖精「ゼロ」

【投資・契約】
・中立共栄大金庫投資案件(ポーシャ支店)
 元本:金貨10枚
 状態:運用中
 想定利回り:2倍〜5倍(説明ベース)
 詳細:非公開/高リスク

新判明:
・第零坑道には百年以上前の利益配分契約が存在
・将来採掘利益参加権が発行されていた
・当時の最低配当保証契約が存在
・原始契約の承認欄に「ゼロ」の署名
・原始契約は現在も再認証可能な状態
・所有者候補は旧契約承継を求められる

【M資金】
・小口M資金券が継続流通
・商人間の決済に使用
・商品購入に使用
・現金交換
・転売
・投資対象化
・信用の証明として流通
・第三者による派生券も発生
・マクダフ発行「赤字安心券」
・「採掘利益参加証」
・「旧債務連動券」
・マーカット鉱山関連券の取引市場
・M資金指数
・旧採掘権証券とM資金が類似した構造を持つことが判明

【所有者選定】
第一段階:経済的貢献度
→ジョンがトップ

第二段階:実地運用試験
→ジョン暫定首位

第三段階:所有責任審査
→最終段階へ接近

新条件:
✅原始契約の承継
✅旧債務の確認
✅旧権利者の保護
✅過去の契約を含む所有責任

重大な問題:
【承諾しない場合】
【所有者候補資格を失います】

【本日の収支】
141G(変動なし)
銀行預け金250G(変動なし)

※ジョン個人の所持金に変動はありません。

【今回の進展】
✅第零坑道最下層へ到達
✅百年以上前の将来利益参加権の存在が判明
✅六千口の旧採掘権が発行されていた記録を確認
✅最低配当保証の存在が判明
✅原始契約の承認者として「ゼロ」の名前を確認
✅M資金と現在の金策構造が過去にも存在したことが判明
✅原始契約が現在も再認証可能
✅所有者候補に旧契約承継が要求される


ジョンの一言
ジョン
「所有者になるために、昔の借金まで背負うの?」
ゼロ
「……そういう契約になってる」
おっさん
「だから絶対に確認してからだ」
マクダフ
「旦那ぁ、金策って怖いですなぁ」
ジョン
「今さら?」

次回。

「所有者になるか、ならないか」

ジョンが悩んでいる間に。

第零坑道の最深部から。

さらにもう一つの契約書が現れる。

そこに記されていたのは。

「鉱山そのものを担保にした、最後の金策」だった。
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