異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜 作:raixip
鉱山そのものを担保にした、百年以上前の融資契約だった。
ただし担保にされたのは、鉱山そのものを売る権利ではない。
未来に生まれる採掘利益。
それを担保に金を借り。
返せなければ採掘権を細かく分けて譲渡する。
それによって生まれたものが。
現在まで残る旧採掘権証券だった。
つまり。
マーカット鉱山では昔から。
「未来のお金を、今のお金に変える金策」
が繰り返されていた。
そして現在。
未採掘の資源まで含めた将来価値が。
金貨九万枚相当と仮算定される。
その情報は。
瞬く間に市場へ流れた。
まだ採掘していない。
まだ利益も出ていない。
それでも。
「九万枚の価値がある鉱山」
という数字だけが独り歩きする。
さらに。
所有者になった者には。
その将来価値を担保に、新たな融資まで可能。
ジョンの目の前に。
新たな金策への入口が開いた。
でも。
おっさんとゼロは同時に言う。
「絶対に借りるな」
「承諾するか」
目の前に浮かぶ文字。
【旧契約承継】
【承諾しますか?】
僕は。
まだ触れていない。
「ゼロ」
「なんだ」
「この契約を断ったら、本当に所有者候補から外れるの?」
「そうだ」
「じゃあ、受けたら?」
ゼロは少し黙った。
「昔の契約を引き継ぐ」
「八千四百枚の借金も?」
「有効な分だけな」
「六千口の権利も?」
「そうだ」
「最低配当も?」
「契約上はな」
僕は頭を抱えた。
「……重い」
おっさんが苦笑する。
「まあ、所有者ってそういうもんだ」
そのとき。
リゼさんが奥の壁を見た。
「まだ記録があります」
「え?」
彼女が指差す。
原始契約の横。
小さな石板が埋め込まれていた。
そこには。
【担保設定契約】
と書かれている。
「担保?」
僕が近づく。
リゼさんが読む。
「マーカット鉱山、そのものを担保とする」
「鉱山を?」
「はい」
「誰に?」
彼女は下の署名を見る。
「当時の融資元です」
おっさんが唸る。
「つまり、鉱山を担保に金を借りた」
「そういうことですね」
僕は少し考えた。
「でも鉱山が担保なら」
「うん?」
「借りたお金を返せなかったら、鉱山を取られるの?」
「原則としては、そうです」
「じゃあ」
僕は石板を見る。
「この鉱山、昔に一回……売られてるの?」
ゼロが答えた。
「違う」
「え?」
「もっと面倒だ」
ゼロが指を差した。
【担保権設定】
【担保価値:鉱山の将来採掘利益】
「将来利益?」
「鉱山そのものじゃねぇ」
ゼロが言う。
「鉱山から将来生まれる金を担保にした」
おっさんが顔をしかめた。
「また将来かよ」
僕は壁を見る。
将来採掘利益参加権。
将来利益配当。
そして。
将来利益を担保にした借金。
「つまり……」
僕はゆっくり言う。
「まだ採ってない鉱石を、お金に変えてた?」
「正解」
ゼロが笑う。
「それが昔の『最後の金策』だ」
マクダフが目を輝かせる。
「旦那ぁ」
「何?」
「すごいですぜ」
「何が?」
「俺たちと同じです」
「……」
「まだ採掘してないのに、もう金にする」
おっさんが頭を抱えた。
「そこだけ聞くと、ものすごく嫌な歴史だな」
リゼさんが石板を読む。
「ですが」
「まだあるんですか?」
「はい」
【担保追加条項】
【返済不能時】
【鉱山採掘権の一部を債権者へ移転】
僕は驚いた。
「採掘権を渡す?」
「はい」
「どれくらい?」
リゼさんが次の文字を読む。
【返済不能額に応じて、採掘権を分割譲渡する】
「……」
僕は古い採掘権証券を見る。
「これって」
ゼロが頷く。
「そうだ」
「昔の担保が」
「採掘権証券になった」
「じゃあ」
僕は気づく。
「六千口って……」
「担保から切り出された権利の一部だ」
僕は。
完全に理解した。
昔の人たちは。
鉱山を一つ持っていた。
でも。
お金がない。
そこで。
未来の利益を売る。
さらに。
未来の利益を担保にして借金する。
返せない。
だから。
採掘権を細かく分けて渡す。
「……」
僕は黙った。
「お金が増えていないのに」
僕が呟く。
「権利だけ増えてる」
ゼロは答えなかった。
おっさんが代わりに言う。
「そういうことだ」
その瞬間。
箱が光った。
【原始契約・構造分析】
【現在流通する権利商品との類似度】
【非常に高い】
「……」
僕はM資金を思い出した。
小口券。
将来採掘利益。
復興応援券。
利益参加証。
赤字安心券。
旧債務連動券。
そして。
昔の採掘権証券。
全部。
「同じじゃん」
僕が言う。
ゼロが苦笑する。
「だから言っただろ」
「何を?」
「また始めてやがるって」
そのとき。
地面が。
ゴゴゴゴ……。
揺れた。
「うわっ!」
石が落ちる。
リゼさんが帳簿を閉じた。
「地下構造に変化です!」
ゼロが箱を見る。
【担保契約の再認証を検知】
【鉱山価値を再計算】
「何だ?」
おっさんが聞く。
表示が変わっていく。
【現在確認されている資源】
【紫色鉱石】
【未確認金属】
【封印鉱】
【第零坑道】
そして。
最後に。
【推定将来価値】
数字が表示された。
「……」
マクダフが固まる。
「旦那ぁ」
「なに?」
「桁がおかしいです」
「どれくらい?」
「金貨……」
一度。
息を吸う。
「九万枚相当」
「九万!?」
僕は叫んだ。
おっさんがゼロを見る。
「おい」
「俺に聞くな」
「じゃあ何でこんな数字が出る?」
ゼロは表示を睨む。
「封印区域の資源まで価値に入れてやがる」
「つまり」
僕が言う。
「まだ採れないものまで入ってる?」
「そうだ」
僕は思った。
九万枚。
その数字だけが。
勝手に市場へ流れたら。
「……また券が上がる?」
おっさんが顔をしかめる。
「上がるだろうな」
直後。
遠くから声がした。
「速報だ!」
「マーカット鉱山の評価額が更新された!」
「九万枚だ!」
「買え!」
「券を買い占めろ!」
「新M資金を追加発行しろ!」
僕は目を閉じた。
「……まだ何も掘ってないのに」
ゼロがため息をつく。
「それが金策ってやつだ」
そして。
箱に最後の文字が浮かんだ。
【候補者ジョン】
【担保契約承継後】
【鉱山将来価値に基づく新規融資が可能】
僕は。
嫌な予感しかしなかった。
「新規融資……?」
ゼロが笑う。
「やめろ」
おっさんも笑っている。
「絶対に借りるなよ」
マクダフが手を上げた。
「旦那ぁ」
「なに?」
「九万枚を担保にしたら」
「……」
「どれくらい借りられますかね?」
「マクダフ!」
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
141G(銀行預け金:250G(銅貨2枚、半銅貨5枚))
ジョン
「まだ掘ってないのに、価値だけ上がってる……」
おっさん
「だから将来価値って怖いんだよ」
マクダフ
「旦那ぁ、九万枚あれば――」
ゼロ
「黙れ」
【所持アイテム】
・???のスクロール×6
・採掘計画書
・旧マーカット鉱山の古地図
・マーカット鉱山 最終採掘記録
・謎の紫色の鉱石
・謎の金属片(鑑定不能)
・採掘した紫色の鉱石×2
・新しく発見した謎の金属片
・「採掘は順調です。予定通り、地上へ出ます」と書かれた紙
・新M資金・マーカット鉱山復興応援券×1
・第零坑道採掘許可証0007
・第零坑道採掘管理記録
・第零坑道・旧採掘権証券×1
・マーカット鉱山・採掘権原簿(管理箱)
・ガレスのツルハシ(借用中)
・第七坑道作業責任者のツルハシ
・中古の斧(30Gで購入)
・新しい帳簿×5
・余り紙
・ロープ
・水筒
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)
・ケムトレイル群(立場:保護対象、詳細不明)
・キュ太郎
・原簿管理妖精「ゼロ」
【投資・契約】
・中立共栄大金庫投資案件(ポーシャ支店)
元本:金貨10枚
状態:運用中
想定利回り:2倍〜5倍(説明ベース)
詳細:非公開/高リスク
新判明:
・マーカット鉱山は過去に将来採掘利益を担保として融資を受けていた
・返済不能時には採掘権を分割譲渡する条項が存在
・旧採掘権証券の一部は、この担保契約から生まれた可能性が高い
・鉱山の未採掘資源まで含めた将来価値が仮算定される
・暫定将来価値:金貨9万枚相当
【M資金】
・小口M資金券が継続流通
・商人間の決済に使用
・商品購入に使用
・現金交換
・転売
・投資対象化
・信用の証明として流通
・第三者による派生券も発生
・マクダフ発行「赤字安心券」
・「採掘利益参加証」
・「旧債務連動券」
・マーカット鉱山関連券の取引市場
・M資金指数
・旧採掘権証券とM資金が非常に類似した構造を持つことが判明
・鉱山評価額更新により、関連券の価格高騰が予想される
【所有者選定】
第一段階:経済的貢献度
→ジョンがトップ
第二段階:実地運用試験
→ジョン暫定首位
第三段階:所有責任審査
→継続中
新たな責任:
✅旧担保契約の確認
✅担保から生まれた旧採掘権への対応
✅将来価値を利用した新規融資への対応
✅未確定資源を含む価値評価の扱い
【本日の収支】
141G(変動なし)
銀行預け金250G(変動なし)
※ジョン個人の所持金に変動はありません。
【今回の進展】
✅マーカット鉱山そのものを担保にした過去の融資が判明
✅将来採掘利益が担保として利用されていた
✅返済不能時に採掘権を分割譲渡する仕組みが存在
✅旧採掘権証券の発生原因が判明
✅未採掘資源を含む将来価値が金貨9万枚相当と算定される
✅市場がその数字を一斉に受け取り始める
✅所有者候補には新たな融資まで可能になることが判明
ジョンの一言
ジョン
「九万枚って、僕には必要ないよ」
ゼロ
「そう言えるうちは安心だ」
おっさん
「問題は、周りが借りさせようとしてくることだな」
マクダフ
「旦那ぁ、九万枚なら――」
ジョン
「借りないからね!」
次回。
「九万枚を借りませんか?」
銀行。
商人。
貴族。
そしてM資金関係者。
全員がジョンに。
「鉱山を担保にした新規融資」を勧め始める。
そしてマクダフは。
すでに一枚の申込書を手に入れていた――。