異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜 作:raixip
僕が見た光景はひどいものだった。
詰め所にあった僕も座ったことのあるイスや、ヘスサを置いたことのある机が壊れて、詰め所の中は物が散乱している状態だった。
「マクダフ!いったい何をやったんだ……?」
「俺がちょっとサンドイッチ持って来るの遅いからと、これですよ……?」
「えっ、マクダフ、お昼にサンドイッチ持って行かなかったのかい!……どうして?」
マクダフは少しだけ目をそらした。
「昼飯前にここに持ってこようとしたんですけどね……ちょっと困ったことにお腹をすかしている老婆と子どもがいましてね……ついかわいそうでサンドイッチ渡しちまったんで……?」
軽い調子だったが、言い訳というより本音に近かった。
マクダフは優しいところがある。
僕でもお腹をすかせている困った人がいたら渡していたかもしれない。
でも、売り物を勝手に人にタダであげるのは問題だ。
兵士さんにサンドイッチを渡さなければ、僕たちは露天市場で販売することができなくなってしまうため、この兵士さんたちとの約束も守る必要性がある。
兵士との約束は、露店を続けるための条件だ。
「お前が約束を二度も破ったのが悪いんだぞ!もうお前らの露店の販売許可を取り消す!これは決定事項だ!!俺がアナポロス信徒のため、二回も許したがもうダメだ」
兵士の声は怒りだけではなかった。周囲の兵士たちも険しい顔をしている。
「この町の治安は、こういう“約束”で保ってるんだ。好き勝手やられたら困るんだよ」
ただの八つ当たりではなく、秩序の話でもあるらしい。
「ちょ、ちょっと待ってください。
確かにお昼にサンドイッチを持ってくる約束はしたかもしれませんが、僕の奴隷のマクダフは困った人に渡してしまっただけなんです。
すぐに今から作って持ってきますので……販売許可のほうの取り消しは……?」
「ダメだ、ダメだ!いくらサンドイッチを持ってこようが、スープを持ってこようがダメだ!お前の奴隷は俺に暴力を振るったんだぞ。きびしく対処するからな!」
大変なことになってしまった。
初めての奴隷が数日でもう処罰されてしまうことになってしまった。
露天市場でお店を出せないとしたら、料理での金策もできないし、僕の奴隷が問題を起こしたのならそれでまたお金が必要になってくるかもしれない。
露店の問題だけではなく、暴力の問題まで加わっている。
何とかしなくてはならない。
「旦那ぁ……あれは向こうが先にやったんですぜ」
マクダフは不満そうに言ったが、説得力はない。
「そ、そんな……パンポタージュも付けますから」
「ダメだ。お前が責任者の場合、どんな物を持ってきてもダメだ!」
どうやら僕にはどうしようもないらしい。
これで僕の料理金策が終わってしまった。
今手持ちにあるお金は 37,651g、これが全てだ。
ここから増やす当てがない。
これからどんどん僕のお金は減っていくだろう。耐えられそうにない。せっかくこんな大金を手に入れたのに。
「旦那ぁ……こんな奴らから許可もらう必要性はないですぜ。用が済んだら帰りましょうよ」
「お前!これだけのことをしておいてタダで帰られると思ってるのか……お前には暴力をふるった責任をとってもらうぞ」
「まぁまぁ、落ち着いてください、隊長……私たちはもらう側であって、取り上げられる側ではありませんよ。あくまでもご好意ですからね」
奴隷が問題を起こしたら、そのご主人、つまりここでは僕が責任をとらなくてはいけないようだ。
いったいどんな責任をとらされるのだろうか。
冒険者として働けなくなったり、ギルドカードの取り上げられたりするのだろうか。僕はこわかった。
「この大男は奴隷のようだが……冒険少年の君がご主人様かい?これはおどろいた。君に責任を取ってもらうことになるが大丈夫かい……?」
「はい、このマクダフの主人は僕ですが、いったいどんな責任を取らされるのですか……?」
「なに、簡単さ……今回の修繕費用を支払ってもらえばそれでいい。
ただ、隊長がおこっているから、露天市場での販売許可の取り消しをなくすのは難しいよ」
また、お金だ。
お金で解決できることでよかったと言えるのかもしれないが、僕はお金で支払うというのがとてもきらいだ。
僕がお金を持っていると、すぐにだれかが僕からそのお金を取りあげようとしてくる。
僕はお金持ちになれるのだろうか。
未来がとても見えない。
「はい……わかりました。お支払いしますが、どのくらいですか……?」
「そうだね……机と椅子の交換代金だけでいい。──銀貨 20 枚だ。
今回だけは特別に、これだけで何とか隊長にも許してもらえるように、こちらからも計らっておくよ……?」
金を支払ったらさっさと連れていけ!二度と俺に顔を見せるなよ!!
銀貨 20 枚とはずいぶんな値段だ。
あの机と椅子のどこにいったい銀貨 20 枚などという価値があるのか僕はわからなかった。
手元にある銀貨 37 枚ちょっと。
全財産がこれだけの僕からしたら、半分以上取り上げられてしまったことになる。
また何か金策をしなければならない。
でも、料理露店金策は販売許可を取り上げられたため、もう使えない。
銀貨 20 枚を支払って、僕はロープにまかれたマクダフをそのままにしておっさんと一緒に、エリヤが待っている露天市場へ戻ることにした。
今後のことも色々と話さなければならない。
お金のこととかだ。
露天市場ではエリヤが座って待っていた。
ずいぶん時間がかかったため、おこられた。
「おそいですわ!さぁ、ヘスサとパンポタを作ってください!夕方の販売を開始ですわ!」
「ごめんエリヤ……料理露店はもう終わりだよ。販売許可を取り上げられてしまったんだ……」
「そんな!もうマヨネーズ食べられないのですわ!……」
エリヤがとても落ち込んでいた。
無理もない。
僕と同じように、とつぜん仕事を奪われた形になってしまったのだ。
僕たちのいかりの向きはマクダフの野郎に向かっていた。
「おいマクダフ!なぜヘスサ持っていかなかったんだ!お前は何をやってたんだ……もう料理露店開けないぞ」
「ダフさん、お昼ご飯時の少し前に持っていきましたよねヘスサを詰め所に?あのヘスサは、ではいったいどこにいってしまったのですか?」
僕たち二人に言われても、マクダフの野郎は少し困った顔をしながら答えた。
悪びれる様子もなくだ。
マクダフは頭をかきながら、少しだけ言葉を選んだ。
「い、いやこれには訳があるんですぜ……一言では答えられないような訳がね……?」
「ジョン、エリヤ」
おっさんが口を開いた。
「こいつに文句を言ってもしかたがない。露店販売の許可を取り上げられるとはな……今日はもう店じまいだ。じゃあ明日またここに集合だ」
おっさんはそう言ってまたどこかへ行ってしまった。
販売許可を取り消されたのに、露天市場でまた何をするつもりなのだろうか。
むしろ僕たちはまた露天市場へ来てもいいのだろうか。
今日はずいぶんと早い宿屋へ帰ることになった。
スキル上げも途中までしかできていない。
明日からまたこんな状態でスキル上げを続けることはできるのだろうか。
宿に戻ると、僕は何も考えずベッドに倒れ込んだ。
夕食もいらなかった。
目を閉じると、銀貨の減った感触だけが残っていた。
僕の奴隷のマクダフがどこで寝たかは、僕は知らない。
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 14
盾スキル 3
戦闘技術スキル 9
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
17,651g
【所持アイテム】
・蛇肉(大量)
・???のスクロール 6枚
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・木剣2本