異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜   作:raixip

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マーカット鉱山の将来価値。

その仮評価は金貨九万枚。

その数字を見た商人たちは、さっそく融資や投資を持ちかけてきた。

しかし。

九万枚は現金ではない。

未採掘。

未販売。

しかも封印区域の資源まで含んだ、あくまで仮の価値だった。

ジョンは。

「安全確認が終わるまで、封印区域を担保価値に入れない」

と決める。

その判断によって。

所有者選定の評価はさらに上昇。

ところが。

原始契約の表示には、さらに気になる一文が残っていた。

【第零坑道最下層の資源を除く】

つまり。

金貨九万枚という価値でさえ。

マーカット鉱山の「全部」ではない。

まだ評価されていない資源が。

第零坑道の最下層に眠っている。

そして。

その直後。

地下深くから。

今までとは比べものにならない音が響いた。

ドン――。

まるで。

地面そのものが。

何かを知らせているようだった。


第160話 九万枚を借りませんか?

「九万枚を借りませんか?」

 

僕の目の前に。

 

一枚の申込書が差し出された。

 

「……」

 

僕は見た。

 

【マーカット鉱山将来価値担保融資】

 

【融資可能額:最大金貨九万枚】

 

【担保:マーカット鉱山将来採掘利益】

 

【低金利・長期返済】

 

「借りません」

 

僕は即答した。

 

「早っ!」

 

マクダフが叫んだ。

 

「旦那ぁ! まだ条件を読んでませんぜ!」

 

「読んだから借りないんだよ」

 

「でも九万枚ですぜ?」

 

「僕にはそんなに必要ないよ」

 

おっさんが笑った。

 

「正しい」

 

ゼロも頷く。

 

「よし。今回は話が早ぇな」

 

リゼさんだけが。

 

申込書をじっと見ていた。

 

「……妙ですね」

 

「何が?」

 

「これはポーシャ支店が発行した正式な融資申込書ではありません」

 

「え?」

 

僕は紙を見る。

 

確かに。

 

大金庫の印章がない。

 

「じゃあ誰が作ったの?」

 

リゼさんが裏面を見る。

 

「商人組合の一部」

 

「銀行じゃないの?」

 

「はい」

 

ゼロが笑う。

 

「ほらな」

 

「何が?」

 

「価値が出たと思った瞬間、銀行より先に金貸しが現れる」

 

マクダフが申込書を覗き込む。

 

「旦那ぁ」

 

「なに?」

 

「こっちにもあります」

 

「まだあるの?」

 

マクダフが別の紙を取り出した。

 

【特別融資】

 

【必要担保:M資金券】

 

【融資額:額面の八割】

 

「……」

 

「さらに」

 

三枚目。

 

【採掘利益前払い契約】

 

「……」

 

四枚目。

 

【旧採掘権買戻し資金】

 

僕は全部まとめて抱えた。

 

「多すぎるよ!」

 

おっさんが笑う。

 

「九万枚って数字が出た途端、一気に群がってきたな」

 

「まだ九万枚の価値があるだけで、お金があるわけじゃないのに」

 

「そこが問題なんだ」

 

おっさんが答える。

 

「みんな『価値』を『使えるお金』みたいに扱い始めてる」

 

ゼロが箱を叩く。

 

「そもそも九万枚ってのも仮算定だ」

 

「うん」

 

「まだ採掘してねぇ」

 

「うん」

 

「売ってもいねぇ」

 

「うん」

 

「価格も決まってねぇ」

 

「うん」

 

「なのに」

 

ゼロが外を指差した。

 

「もう九万枚あるつもりで商売してやがる」

 

外から声が聞こえた。

 

「M資金担保なら七万枚まで貸せます!」

 

「いや、こちらは八万枚!」

 

「採掘利益参加証をまとめて買います!」

 

「旧採掘権を買い取るぞ!」

 

僕は頭を抱えた。

 

「……僕、何もしてないのに」

 

マクダフが頷く。

 

「それが旦那ぁの才能です」

 

「褒めないで」

 

そのとき。

 

リゼさんが手を上げた。

 

「皆さん」

 

静かな声だった。

 

でも。

 

不思議と。

 

周囲が止まった。

 

「まず確認します」

 

彼女は持っていた帳簿を開く。

 

「九万枚は、融資可能額ではありません」

 

商人たちがざわめく。

 

「え?」

 

「九万枚は、あくまで将来価値の仮評価です」

 

「ですが!」

 

「そして」

 

リゼさんが続ける。

 

「その価値には、封印区域の資源が含まれています」

 

「……」

 

「現在、採掘許可が出ていません」

 

「……」

 

「つまり」

 

帳簿を閉じる。

 

「担保としての換金性が確認されていません」

 

静かになった。

 

僕は少し安心した。

 

「じゃあ、九万枚を借りられるわけじゃないんだ」

 

「はい」

 

リゼさんは頷く。

 

「むしろ現時点では、担保評価そのものが未確定です」

 

ゼロがニヤリと笑う。

 

「ようやくまともな話になったな」

 

ところが。

 

貴族側の責任者が前へ出てきた。

 

「ならば」

 

男は胸を張った。

 

「我々が採掘許可を取ればいい!」

 

「……」

 

「封印区域を開放し!」

 

「待って」

 

僕が止めた。

 

「封印を開けたら危ないんじゃないの?」

 

ゼロの顔が変わった。

 

「その通りだ」

 

貴族が言う。

 

「しかし採掘できなければ、九万枚という価値も――」

 

「価値のために封印を壊すの?」

 

僕は聞いた。

 

男が黙った。

 

ゼロが。

 

少しだけ笑った。

 

「……第三段階」

 

「え?」

 

「また点数が入るぞ」

 

箱に文字が浮かんだ。

 

【所有責任審査】

 

【将来利益と安全性の優先順位】

 

【評価】

 

【資源価値を安全性より優先しない】

 

【+500】

 

「また増えた!」

 

マクダフが叫ぶ。

 

僕は驚いた。

 

「僕、何もしてないよ?」

 

おっさんが笑う。

 

「今の『封印を壊さない』だけで十分なんだろ」

 

その瞬間。

 

リゼさんが一枚の紙を僕に差し出した。

 

「ジョン様」

 

「はい?」

 

「今の発言を正式な意思として記録しても?」

 

「意思?」

 

「はい」

 

僕は紙を見る。

 

【封印区域】

 

【現時点で採掘しない】

 

【安全確認完了まで担保価値に算入しない】

 

「これを書いたらどうなるの?」

 

リゼさんは答える。

 

「少なくとも」

 

一拍。

 

「九万枚という数字を根拠にした無制限の融資には、歯止めがかかります」

 

「じゃあ書く」

 

僕は署名した。

 

ジョン。

 

それだけ。

 

すると。

 

箱が光った。

 

【所有者候補の意思を記録】

 

【資源保全方針を確認】

 

【旧契約・担保条項に新条件を追加】

 

「……追加?」

 

僕は顔を上げる。

 

新しい文字が浮かぶ。

 

【安全未確認資源は担保価値から除外する】

 

ゼロが目を丸くした。

 

「おい」

 

「なに?」

 

「お前、百年前の契約を一個、実質的に修正しやがったぞ」

 

「え?」

 

おっさんが笑う。

 

「所有者になる前から経営者みたいになってるな」

 

マクダフが申込書を破ろうとする。

 

「じゃあ九万枚の融資は……」

 

リゼさんが即答した。

 

「現時点ではできません」

 

「……」

 

「旦那ぁ」

 

「なに?」

 

マクダフが肩を落とした。

 

「九万枚、消えました」

 

「最初から僕のお金じゃないよ」

 

すると。

 

ゼロが突然。

 

箱の奥を見た。

 

「……待て」

 

「どうしたの?」

 

「契約の数字が一つ変だ」

 

「何が?」

 

ゼロが指差す。

 

【担保価値】

 

【九万枚】

 

その下。

 

小さな文字。

 

【ただし――】

 

僕たちは息を止めた。

 

【第零坑道最下層の資源を除く】

 

「……」

 

ゼロが呟く。

 

「じゃあ九万枚って」

 

「何?」

 

「まだ本当の価値を入れてない」

 

僕は。

 

ゆっくり地下を見る。

 

九万枚ですら。

 

全体ではない。

 

つまり。

 

マーカット鉱山には。

 

まだ。

 

もっと大きな金策の種が眠っている。

 

そして。

 

そのことを知った瞬間。

 

坑道の奥から。

 

ドン。

 

今までとは違う。

 

巨大な音が響いた。




【あとがき:現在のステータス】

【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13

■生産系
料理スキル 13

■その他
鑑定スキル 0.3

【所持金】
141G(銀行預け金:250G(銅貨2枚、半銅貨5枚))

ジョン
「九万枚、借りなくてよかった」
おっさん
「まだ借りられる状態じゃなかっただけだけどな」
マクダフ
「旦那ぁ、俺なら借ります」
ゼロ
「お前は黙ってろ」

【所持アイテム】
・???のスクロール×6
・採掘計画書
・旧マーカット鉱山の古地図
・マーカット鉱山 最終採掘記録
・謎の紫色の鉱石
・謎の金属片(鑑定不能)
・採掘した紫色の鉱石×2
・新しく発見した謎の金属片
・「採掘は順調です。予定通り、地上へ出ます」と書かれた紙
・新M資金・マーカット鉱山復興応援券×1
・第零坑道採掘許可証0007
・第零坑道採掘管理記録
・第零坑道・旧採掘権証券×1
・マーカット鉱山・採掘権原簿(管理箱)
・ガレスのツルハシ(借用中)
・第七坑道作業責任者のツルハシ
・中古の斧(30Gで購入)
・新しい帳簿×5
・余り紙
・ロープ
・水筒
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)
・ケムトレイル群(立場:保護対象、詳細不明)
・キュ太郎
・原簿管理妖精「ゼロ」

【投資・契約】
・中立共栄大金庫投資案件(ポーシャ支店)
 元本:金貨10枚
 状態:運用中
 想定利回り:2倍〜5倍(説明ベース)
 詳細:非公開/高リスク

新判明:
・九万枚は融資可能額ではなく、将来価値の仮評価
・封印区域の資源は現時点で担保価値に算入できない
・ジョンが「安全確認まで封印区域を担保価値から除外する」と意思表示
・原始契約に安全性を優先する新条件が追加された

【M資金】
・小口M資金券が継続流通
・商人間の決済に使用
・商品購入に使用
・現金交換
・転売
・投資対象化
・信用の証明として流通
・第三者による派生券も発生
・マクダフ発行「赤字安心券」
・「採掘利益参加証」
・「旧債務連動券」
・マーカット鉱山関連券の取引市場
・M資金指数
・鉱山将来価値の公表により、融資・投資勧誘が急増

【所有者選定】
第一段階:経済的貢献度
→ジョンがトップ

第二段階:実地運用試験
→ジョン暫定首位

第三段階:所有責任審査
→継続中

今回の評価:
✅安全性を将来利益より優先
✅未確認資源を担保価値から除外
✅市場の過熱に対して慎重な判断

追加評価:
【+500】

【本日の収支】
141G(変動なし)銀行預け金250G(変動なし)

※ジョン個人の所持金に変動はありません。

【今回の進展】
✅九万枚を担保とした融資勧誘が殺到
✅九万枚は現金ではなく将来価値の仮評価と判明
✅封印区域の資源は担保評価から除外される
✅ジョンが安全確認を優先する意思を正式に記録
✅原始契約に安全性を優先する新条件が追加
✅所有者選定で+500点
✅九万枚の評価すら「全体の価値ではない」可能性が浮上

ジョンの一言
ジョン
「九万枚でも多いと思ったのに……まだ先があるの?」
ゼロ
「あるみてぇだな」
おっさん
「問題は、それが金になる価値なのかどうかだ」
マクダフ
「旦那ぁ、金になるなら俺は――」
ジョン
「借りないよ!」

次回。
「九万枚のさらに下」
第零坑道最下層の本当の資源。
そこに眠っていたものは。
鉱石でも金属でもない。
そしてゼロは。
その場所だけは絶対に掘るなと、初めて本気で止める。
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