異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜 作:raixip
そこに存在したのは、鉱山そのものではなく。
百年以上分の契約や債務を記録する「原簿中枢」だった。
そして。
金貨九万枚相当という将来価値の正体も判明する。
それは。
未来の利益だけではない。
将来配当。
担保関連請求。
未確定の請求。
そして既存債務。
それらをまとめて算定した参考値だった。
つまり。
「九万枚の価値がある」
という言葉だけでは。
「九万枚儲かる」
とは限らない。
むしろ。
九万枚分の金が。
未来に動く可能性を示しているだけだった。
ところが。
原簿中枢はさらに。
原始契約より前の債務を示し始める。
マーカット鉱山は。
最初から借金を抱えていた可能性がある。
ならば。
一体、誰から。
何のために。
いくら借りたのか。
そして。
なぜゼロは。
その記録だけを見せたがらないのか。
ドン――。
地下から響いた音。
今まで聞いたことのない大きさだった。
坑道の壁が震える。
天井から小石が落ちる。
「……」
僕は固まった。
「ゼロ」
「分かってる」
ゼロは。
珍しく笑っていなかった。
「全員、ここから離れるぞ」
「え?」
「今すぐだ」
おっさんも表情を変える。
「珍しいな」
「何が?」
「ゼロがここまで焦るのは初めてだ」
マクダフが青ざめる。
「旦那ぁ」
「なに?」
「俺、今すぐ地上へ帰りたいです」
「僕も少しそう思う」
リゼさんだけは落ち着いていた。
「ゼロさん」
「なんだ」
「何が起きていますか?」
ゼロは少し迷って。
答えた。
「第零坑道の最下層には、鉱山の資源じゃねぇものがある」
「資源じゃない?」
僕が聞く。
「ああ」
「じゃあ何?」
ゼロは地下を指差した。
「契約だ」
「……」
「もっと正確に言うなら」
ゼロは言葉を選ぶ。
「契約を記録し続けるためのものだ」
おっさんが眉をひそめる。
「紙か?」
「違う」
「石板?」
「違う」
「じゃあ何?」
ゼロは答えなかった。
代わりに。
箱が光る。
【第零坑道最下層】
【原簿中枢】
「原簿……?」
僕は管理箱を見る。
「これと同じようなもの?」
「近い」
ゼロが苦い顔をする。
「だが、こっちの原簿はもっと古い」
さらに。
【契約記録】
【債権記録】
【権利記録】
【担保記録】
【配当記録】
次々と表示される。
「これ」
僕は思わず言った。
「全部、保存されてるの?」
「百年以上分な」
「……」
僕は想像した。
百年分の借金。
百年分の契約。
百年分の権利。
全部。
「それが何なの?」
ゼロは言う。
「それ自体が、鉱山の価値になってる」
「契約が?」
「そうだ」
おっさんが気づく。
「記録そのものが価値を持つってことか」
「正解」
ゼロが頷く。
「誰がいくら持ってるか」
「誰にいくら払うか」
「どの権利が生きているか」
「どの借金が消えているか」
「全部分かるなら」
ゼロは笑った。
「この鉱山の権利関係を、一から全部整理できる」
リゼさんが静かに息を呑む。
「それは……」
「銀行にとっても重要ですね」
「だろ?」
ゼロが笑う。
「だから昔の連中は、ここを絶対に壊さなかった」
僕は気づく。
「じゃあ」
「うん?」
「掘っちゃ駄目なのは、そこに原簿があるから?」
ゼロは首を振る。
「半分正解だ」
「半分?」
「原簿の下に」
一拍。
「さらに別のものがある」
地下。
また。
ドン。
「それが今、動いた」
僕はツルハシを見る。
「掘ったら見える?」
「見える」
ゼロが言う。
「だから掘るな」
「でも」
僕は言った。
「見ないと何なのか分からないよ?」
ゼロが頭を抱えた。
「お前、本当にこういう時だけ前向きだな」
おっさんが笑う。
「ジョンらしい」
リゼさんが原簿を確認する。
「記録上、最下層には何があるのですか?」
ゼロは黙った。
そして。
古い文字を表示した。
【原簿中枢】
【地下保管対象:第一種】
その下。
【将来債務総括記録】
「……」
マクダフが首をかしげた。
「旦那ぁ」
「なに?」
「将来債務って」
「うん」
「まだ発生していない借金ですか?」
ゼロが答える。
「そうだ」
「なんでそんなもん記録してるんです?」
おっさんが嫌な顔をする。
「おそらく」
少し考えてから。
「将来の支払いまで先に約束してたんだろうな」
僕は。
第156話で見た八千四百枚。
そして。
将来利益。
将来配当。
担保。
全部を思い出した。
「じゃあ」
僕が聞く。
「九万枚って」
「うん?」
「鉱山の価値じゃなくて」
「……」
「将来払うお金まで含めて計算してる?」
ゼロが。
ゆっくり振り返った。
「そこに気づいたか」
箱の表示が変わった。
【重要】
【将来価値評価】
【資産】
【将来利益】
【将来債務】
【既存権利】
【未確定請求】
「全部?」
僕が聞く。
「全部だ」
ゼロが答える。
「つまり」
おっさんが苦笑した。
「九万枚ってのは」
一拍。
「鉱山が九万枚儲かるって意味じゃない」
僕は。
数字を見る。
【九万枚相当】
「じゃあ何?」
リゼさんが答えた。
「現時点で確認できる、将来の資産と負債をまとめて評価した参考値です」
僕は目を丸くした。
「……それって」
マクダフが言う。
「儲かるかもしれない金と」
僕が続ける。
「払うかもしれない金を」
おっさんが締める。
「全部まとめた数字ってことだ」
沈黙。
僕は。
やっと分かった。
「じゃあ」
「うん?」
「九万枚」
僕は首を振る。
「全然、お金じゃないじゃん」
ゼロが。
初めて大笑いした。
「やっと分かったか!」
その瞬間。
地下から。
ドン。
今度は一回だけ。
箱に新しい文字が浮かんだ。
【原簿中枢・警告】
【将来債務の再計算を開始】
「え?」
数字が動き始める。
【旧債務】
【8400枚】
次。
【将来配当】
【12000枚相当】
次。
【担保関連請求】
【18000枚相当】
そして。
最後。
【未確認】
【???】
僕は嫌な予感しかしなかった。
ゼロが呟く。
「……まだ計算できてねぇ項目がある」
「何?」
ゼロは。
地下の奥を見る。
「原始契約より前の債務だ」
「え?」
「つまり」
ゼロが真顔になる。
「この鉱山」
少し間を置いて。
「最初から借金で始まってた可能性がある」
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
141G(銀行預け金:250G(銅貨2枚、半銅貨5枚))
ジョン
「九万枚って、儲かる金額じゃなかったんだ……」
おっさん
「最初からそう言ってただろ」
マクダフ
「でも九万って聞いたら、俺も儲かると思いますぜ」
ゼロ
「お前だけじゃねぇ。町中がそう思ってる」
【所持アイテム】
・???のスクロール×6
・採掘計画書
・旧マーカット鉱山の古地図
・マーカット鉱山 最終採掘記録
・謎の紫色の鉱石
・謎の金属片(鑑定不能)
・採掘した紫色の鉱石×2
・新しく発見した謎の金属片
・「採掘は順調です。予定通り、地上へ出ます」と書かれた紙
・新M資金・マーカット鉱山復興応援券×1
・第零坑道採掘許可証0007
・第零坑道採掘管理記録
・第零坑道・旧採掘権証券×1
・マーカット鉱山・採掘権原簿(管理箱)
・ガレスのツルハシ(借用中)
・第七坑道作業責任者のツルハシ
・中古の斧(30Gで購入)
・新しい帳簿×5
・余り紙
・ロープ
・水筒
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)
・ケムトレイル群(立場:保護対象、詳細不明)
・キュ太郎
・原簿管理妖精「ゼロ」
【投資・契約】
・中立共栄大金庫投資案件(ポーシャ支店)
元本:金貨10枚
状態:運用中
想定利回り:2倍〜5倍(説明ベース)
詳細:非公開/高リスク
新判明:
・第零坑道最下層には「原簿中枢」が存在
・百年以上の契約、債務、権利などを管理
・九万枚の将来価値は、資産だけでなく将来債務も含む参考評価
・未確認の将来債務が残っている
・原始契約より前の債務記録が存在する可能性
【M資金】
・小口M資金券が継続流通
・商人間の決済に使用
・商品購入に使用
・現金交換
・転売
・投資対象化
・信用の証明として流通
・第三者による派生券も発生
・マクダフ発行「赤字安心券」
・「採掘利益参加証」
・「旧債務連動券」
・マーカット鉱山関連券の取引市場
・M資金指数
・九万枚相当という将来価値を材料にした融資勧誘が発生
・実際には将来債務も含まれた評価額と判明
【所有者選定】
第一段階:経済的貢献度
→ジョンがトップ
第二段階:実地運用試験
→ジョン暫定首位
第三段階:所有責任審査
→継続中
今回の重要項目:
✅原簿中枢の確認
✅将来債務の把握
✅資産と債務を分けた評価
✅原始契約以前の債務確認
【本日の収支】
141G(変動なし)銀行預け金250G(変動なし)
※ジョン個人の所持金に変動はありません。
【今回の進展】
✅第零坑道最下層の「原簿中枢」が存在すると判明
✅九万枚相当という評価が利益そのものではないと判明
✅将来利益だけでなく将来債務も評価に含まれていた
✅旧債務8400枚に加えて将来配当・担保関連請求が存在
✅未確認の将来債務が残っている
✅原始契約よりさらに古い債務の存在が示唆される
✅所有者選定の責任範囲が、鉱山の過去すべてに広がる
ジョンの一言
ジョン
「つまり……九万枚あると思ったら、九万枚払うかもしれないってこと?」
ゼロ
「それも違う」
おっさん
「そこから先は、ちゃんと帳簿を読もうな」
マクダフ
「旦那ぁ、数字って怖いですなぁ」
ジョン
「本当にそう思う」
次回。
「最初の借金」
マーカット鉱山が始まる前。
まだ鉱山すら存在しなかった時代。
そこで結ばれた最初の契約が。
ついに姿を現す。