異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜 作:raixip
マーカット鉱山の最初の借金。
その始まりは。
まだ鉱山すら存在しなかった頃の調査契約だった。
調査費用は金貨二十枚相当。
しかし現金を払う代わりに。
鉱脈が見つかった場合。
将来の採掘利益三%を永続的に渡す契約が結ばれていた。
さらに。
採掘権の一部を譲渡する返済条件。
採掘しなければ権利維持費。
そして未払い。
そこから。
新しい借金。
新しい権利。
新しい契約。
それらが積み重なった。
マーカット鉱山の巨大な債務は。
最初から巨大だったわけではない。
小さな金策が。
長い年月の中で。
巨大な仕組みに変わっていったのだ。
そして。
原簿中枢に新しい権限が表示された。
【旧契約を整理する権利】
それは。
所有者候補にだけ与えられる権利だった。
ジョンが鉱山の所有者になる意味。
それは。
鉱石を掘ることだけではない。
百年以上積み重なった。
借金と権利と契約を。
整理することだった。
「最初の借金」
その言葉が。
第零坑道の奥に浮かんだ。
僕たちは。
誰も喋らなかった。
やがて。
原簿中枢に新しい文字が現れる。
【最古契約を検索】
【対象:マーカット鉱山】
【創設以前の契約を確認】
「創設以前?」
僕が聞く。
ゼロが頷いた。
「まだ鉱山じゃなかった頃の契約だ」
「その頃から借金があったの?」
「正確には」
ゼロが言葉を選ぶ。
「借金になる前の約束だ」
「約束?」
箱に。
一枚の記録が表示された。
【土地調査・鉱脈探索許可契約】
「土地の調査?」
おっさんが読む。
「これ、鉱山を掘る前の契約じゃないか」
「そうだ」
ゼロが答える。
「昔、この山には鉱脈があるって噂だけがあった」
「まだ何も分かってなかったんだ」
「だから調査する金が必要だった」
僕は頷く。
「それで借りた?」
「違う」
ゼロが指を振る。
「金を借りたんじゃない」
「じゃあ?」
表示が切り替わる。
【調査費用:金貨二十枚】
【支払条件:鉱脈発見時】
僕は首をかしげた。
「後払い?」
「そうだ」
「じゃあ、借金じゃないね」
「当時はな」
ゼロが笑う。
「問題は次だ」
新しい文字。
【鉱脈発見時】
【調査者へ、採掘利益の三%を永続的に支払う】
「三%?」
僕は驚いた。
「ずっと?」
「ずっとだ」
「金貨二十枚を払う代わりに?」
「そういう契約だ」
おっさんが腕を組む。
「なるほどな」
「何が?」
「現金二十枚を払わなくていい代わりに」
おっさんが答える。
「将来の利益を三%渡した」
「……」
僕は少し考える。
「それって」
「うん?」
「後から見ると、かなり高いかも」
「その通りだ」
リゼさんが帳簿を見る。
「しかも、この契約は鉱脈が見つかれば自動的に発効します」
「自動?」
「はい」
「じゃあ」
僕は箱を見る。
【契約状態:発効済】
「もう払ってるの?」
「一度もだ」
ゼロが答えた。
「え?」
「最初の鉱夫たちは、この契約を忘れてた」
「忘れた?」
「記録が土の下に埋もれた」
マクダフが呟く。
「最悪ですなぁ」
「そのまま鉱山が大きくなった」
ゼロが続ける。
「利益も増えた」
「でも三%は?」
「払われなかった」
「……」
おっさんが気づく。
「それが最初の未払いか」
ゼロが頷く。
【未払配当】
【算定不能】
【遅延開始】
僕は数字を見る。
最初は。
三%。
それだけだった。
でも。
何十年。
何百年。
鉱山が動けば。
「……増える」
僕が呟く。
「そうだ」
ゼロが答える。
「利益が増えるほど」
「未払いも増える」
「その通り」
箱が計算を始める。
【原始債権】
【元金:金貨20枚相当】
【利益配分:3%】
【未払い期間:推定118年】
【遅延・再計算中】
マクダフが震えた。
「旦那ぁ」
「なに?」
「二十枚から始まった借金が」
「うん」
「どうなります?」
箱が。
止まった。
【現時点:算定不能】
「……」
「……」
「……」
僕は。
思わず聞いた。
「そんなに?」
ゼロが頭を抱える。
「これが、一番最初だ」
「最初の二十枚が?」
「そうだ」
「じゃあ」
僕は。
今まで見た八千四百枚の記録を思い出す。
「八千四百枚って」
ゼロが頷く。
「もっと後の借金だ」
僕は目を見開いた。
「じゃあ、八千四百枚の前に」
「別の借金があった」
「さらにその前にも?」
ゼロが黙る。
「……ある」
箱に。
次の表示。
【契約群を遡及検索】
【第1契約】
【第2契約】
【第3契約】
【第4契約】
次々と並ぶ。
「どんどん増える……」
リゼさんの顔も険しくなる。
「これは……」
「何?」
「債務が積み重なった理由が分かります」
「どうして?」
「一つの借金を返済するために」
彼女が記録を指す。
「さらに別の契約を結んでいます」
おっさんが苦笑する。
「借金を返すために、別の借金をしたのか」
「はい」
「それを繰り返した」
「そのようです」
僕は。
マクダフを見る。
「……」
「旦那ぁ」
「なに?」
「俺、急に自分のことを恥ずかしく思えてきました」
ゼロが笑う。
「安心しろ」
「何が?」
「お前だけじゃねぇ」
「そういう問題ですか?」
そのとき。
最古契約の下に。
新しい文字が浮かんだ。
【重要】
【第1契約・返済条件】
僕は読む。
【鉱脈発見後、採掘権の一部を譲渡する】
「……」
僕は。
旧採掘権証券を見た。
「もしかして」
ゼロが答える。
「そうだ」
「最初の採掘権って」
「最初の借金を返すために渡した権利だ」
僕は言葉を失った。
つまり。
マーカット鉱山の採掘権は。
最初から。
少しずつ。
切り売りされていた。
そして。
それが百年以上かけて。
今の大量の権利証券になった。
その瞬間。
キュ太郎が。
地下の奥をじっと見る。
「キュ……」
僕も見る。
壁の向こう。
何かが光っている。
ゼロが。
小さく呟いた。
「……まだ一枚」
「何が?」
「最初の契約には」
少し間を置いて。
「もう一つ、条件があった」
箱に。
新しい一文が浮かぶ。
【鉱脈が見つからなかった場合】
【調査費用は不要】
僕は安心した。
「じゃあ、見つからなかったら借金にならなかったんだ」
「そうだ」
ゼロが答える。
そして。
その下。
ゆっくり。
文字が現れる。
【ただし】
【鉱脈が見つかったにもかかわらず】
【採掘を開始しなかった場合】
【別途、権利維持費が発生する】
「……」
おっさんが。
嫌そうな顔をした。
「これか」
「何?」
「契約を維持するための金だ」
ゼロが頷く。
「それが積み上がった」
僕は。
前に聞いた言葉を思い出した。
契約を維持するための金。
設備。
道。
人件費。
借金。
権利。
利益配分。
全部。
最初は。
金貨二十枚だった。
僕は呟いた。
「……小さな金策だったんだ」
ゼロが。
少しだけ笑った。
「そうだ」
「それが」
僕は。
何百年も後まで残った。
「大金策になったんだ」
そのとき。
原簿中枢が赤く光った。
【最古契約の債務計算を開始】
【計算対象:全契約】
【連鎖債務の存在を確認】
そして最後に。
【警告】
【一部契約は、現在の所有者候補にも影響します】
僕は。
思わず後ずさった。
「僕にも?」
ゼロは答えなかった。
ただ。
箱に。
一つの選択肢が浮かんだ。
【旧契約を整理する権利】
【所有者候補に付与】
僕は。
その文字を見つめた。
「……整理?」
ゼロが。
ゆっくり笑う。
「ようやく出てきたな」
「何が?」
「お前が所有者になる意味だ」
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
141G(銀行預け金:250G(銅貨2枚、半銅貨5枚))
ジョン
「最初は金貨二十枚だったの?」
おっさん
「それが何百年も積み重なったんだな」
マクダフ
「旦那ぁ、時間って怖いですなぁ」
ゼロ
「金の利息もな」
【所持アイテム】
・???のスクロール×6
・採掘計画書
・旧マーカット鉱山の古地図
・マーカット鉱山 最終採掘記録
・謎の紫色の鉱石
・謎の金属片(鑑定不能)
・採掘した紫色の鉱石×2
・新しく発見した謎の金属片
・「採掘は順調です。予定通り、地上へ出ます」と書かれた紙
・新M資金・マーカット鉱山復興応援券×1
・第零坑道採掘許可証0007
・第零坑道採掘管理記録
・第零坑道・旧採掘権証券×1
・マーカット鉱山・採掘権原簿(管理箱)
・ガレスのツルハシ(借用中)
・第七坑道作業責任者のツルハシ
・中古の斧(30Gで購入)
・新しい帳簿×5
・余り紙
・ロープ
・水筒
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)
・ケムトレイル群(立場:保護対象、詳細不明)
・キュ太郎
・原簿管理妖精「ゼロ」
【投資・契約】
・中立共栄大金庫投資案件(ポーシャ支店)
元本:金貨10枚
状態:運用中
想定利回り:2倍〜5倍(説明ベース)
詳細:非公開/高リスク
新判明:
・マーカット鉱山最初期の調査契約が存在
・調査費用は金貨20枚相当
・鉱脈発見時、採掘利益3%を永続配分
・返済条件として採掘権の一部譲渡条項あり
・採掘しない場合、権利維持費が発生
・長期間の未払いにより債務が連鎖的に拡大
・所有者候補には旧契約を整理する権利が付与される可能性
【M資金】
・小口M資金券が継続流通
・商人間の決済に使用
・商品購入に使用
・現金交換
・転売
・投資対象化
・信用の証明として流通
・第三者による派生券も発生
・マクダフ発行「赤字安心券」
・「採掘利益参加証」
・「旧債務連動券」
・マーカット鉱山関連券の取引市場
・M資金指数
・過去にも将来利益を使った資金調達が行われていたことが判明
【所有者選定】
第一段階:経済的貢献度
→ジョンがトップ
第二段階:実地運用試験
→ジョン暫定首位
第三段階:所有責任審査
→継続中
新たな責任:
✅過去の契約確認
✅連鎖債務の整理
✅旧権利者への対応
✅将来の権利と債務の整理
【本日の収支】
141G(変動なし)銀行預け金250G(変動なし)
※ジョン個人の所持金に変動はありません。
【今回の進展】
✅マーカット鉱山の最初の契約を発見
✅最初の資金調達は金貨20枚相当だったと判明
✅将来利益3%の永続配分契約が存在
✅採掘権の一部譲渡による返済条件が存在
✅採掘しない場合の権利維持費が債務増加の原因となった
✅複数の借金を重ねて返済する「連鎖債務」が判明
✅現在の旧採掘権証券につながる最初の仕組みが判明
✅所有者候補に「旧契約を整理する権利」が提示される
ジョンの一言
ジョン
「僕が所有者になったら、昔の借金を全部整理できるの?」
ゼロ
「できる可能性はある」
おっさん
「でも、簡単じゃないぞ」
マクダフ
「旦那ぁ、借金整理も金策ですぜ」
ジョン
「だからその言い方やめて」
次回。
「借金を消していい?」
ジョンが考えたのは。
借金を返すことではなく。
「そもそも、この契約はまだ必要なの?」
という。
あまりにも単純な疑問だった。
ところが。
その一言が。
百年以上続いた権利契約を。
ひっくり返すことになる。