異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜   作:raixip

162 / 171

マーカット鉱山の最初の借金。

その始まりは。

まだ鉱山すら存在しなかった頃の調査契約だった。

調査費用は金貨二十枚相当。

しかし現金を払う代わりに。

鉱脈が見つかった場合。

将来の採掘利益三%を永続的に渡す契約が結ばれていた。

さらに。

採掘権の一部を譲渡する返済条件。

採掘しなければ権利維持費。

そして未払い。

そこから。

新しい借金。

新しい権利。

新しい契約。

それらが積み重なった。

マーカット鉱山の巨大な債務は。

最初から巨大だったわけではない。

小さな金策が。

長い年月の中で。

巨大な仕組みに変わっていったのだ。

そして。

原簿中枢に新しい権限が表示された。

【旧契約を整理する権利】

それは。

所有者候補にだけ与えられる権利だった。

ジョンが鉱山の所有者になる意味。

それは。

鉱石を掘ることだけではない。

百年以上積み重なった。

借金と権利と契約を。

整理することだった。


第162話 最初の借金

「最初の借金」

 

その言葉が。

 

第零坑道の奥に浮かんだ。

 

僕たちは。

 

誰も喋らなかった。

 

やがて。

 

原簿中枢に新しい文字が現れる。

 

【最古契約を検索】

 

【対象:マーカット鉱山】

 

【創設以前の契約を確認】

 

「創設以前?」

 

僕が聞く。

 

ゼロが頷いた。

 

「まだ鉱山じゃなかった頃の契約だ」

 

「その頃から借金があったの?」

 

「正確には」

 

ゼロが言葉を選ぶ。

 

「借金になる前の約束だ」

 

「約束?」

 

箱に。

 

一枚の記録が表示された。

 

【土地調査・鉱脈探索許可契約】

 

「土地の調査?」

 

おっさんが読む。

 

「これ、鉱山を掘る前の契約じゃないか」

 

「そうだ」

 

ゼロが答える。

 

「昔、この山には鉱脈があるって噂だけがあった」

 

「まだ何も分かってなかったんだ」

 

「だから調査する金が必要だった」

 

僕は頷く。

 

「それで借りた?」

 

「違う」

 

ゼロが指を振る。

 

「金を借りたんじゃない」

 

「じゃあ?」

 

表示が切り替わる。

 

【調査費用:金貨二十枚】

 

【支払条件:鉱脈発見時】

 

僕は首をかしげた。

 

「後払い?」

 

「そうだ」

 

「じゃあ、借金じゃないね」

 

「当時はな」

 

ゼロが笑う。

 

「問題は次だ」

 

新しい文字。

 

【鉱脈発見時】

 

【調査者へ、採掘利益の三%を永続的に支払う】

 

「三%?」

 

僕は驚いた。

 

「ずっと?」

 

「ずっとだ」

 

「金貨二十枚を払う代わりに?」

 

「そういう契約だ」

 

おっさんが腕を組む。

 

「なるほどな」

 

「何が?」

 

「現金二十枚を払わなくていい代わりに」

 

おっさんが答える。

 

「将来の利益を三%渡した」

 

「……」

 

僕は少し考える。

 

「それって」

 

「うん?」

 

「後から見ると、かなり高いかも」

 

「その通りだ」

 

リゼさんが帳簿を見る。

 

「しかも、この契約は鉱脈が見つかれば自動的に発効します」

 

「自動?」

 

「はい」

 

「じゃあ」

 

僕は箱を見る。

 

【契約状態:発効済】

 

「もう払ってるの?」

 

「一度もだ」

 

ゼロが答えた。

 

「え?」

 

「最初の鉱夫たちは、この契約を忘れてた」

 

「忘れた?」

 

「記録が土の下に埋もれた」

 

マクダフが呟く。

 

「最悪ですなぁ」

 

「そのまま鉱山が大きくなった」

 

ゼロが続ける。

 

「利益も増えた」

 

「でも三%は?」

 

「払われなかった」

 

「……」

 

おっさんが気づく。

 

「それが最初の未払いか」

 

ゼロが頷く。

 

【未払配当】

 

【算定不能】

 

【遅延開始】

 

僕は数字を見る。

 

最初は。

 

三%。

 

それだけだった。

 

でも。

 

何十年。

 

何百年。

 

鉱山が動けば。

 

「……増える」

 

僕が呟く。

 

「そうだ」

 

ゼロが答える。

 

「利益が増えるほど」

 

「未払いも増える」

 

「その通り」

 

箱が計算を始める。

 

【原始債権】

 

【元金:金貨20枚相当】

 

【利益配分:3%】

 

【未払い期間:推定118年】

 

【遅延・再計算中】

 

マクダフが震えた。

 

「旦那ぁ」

 

「なに?」

 

「二十枚から始まった借金が」

 

「うん」

 

「どうなります?」

 

箱が。

 

止まった。

 

【現時点:算定不能】

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

僕は。

 

思わず聞いた。

 

「そんなに?」

 

ゼロが頭を抱える。

 

「これが、一番最初だ」

 

「最初の二十枚が?」

 

「そうだ」

 

「じゃあ」

 

僕は。

 

今まで見た八千四百枚の記録を思い出す。

 

「八千四百枚って」

 

ゼロが頷く。

 

「もっと後の借金だ」

 

僕は目を見開いた。

 

「じゃあ、八千四百枚の前に」

 

「別の借金があった」

 

「さらにその前にも?」

 

ゼロが黙る。

 

「……ある」

 

箱に。

 

次の表示。

 

【契約群を遡及検索】

 

【第1契約】

 

【第2契約】

 

【第3契約】

 

【第4契約】

 

次々と並ぶ。

 

「どんどん増える……」

 

リゼさんの顔も険しくなる。

 

「これは……」

 

「何?」

 

「債務が積み重なった理由が分かります」

 

「どうして?」

 

「一つの借金を返済するために」

 

彼女が記録を指す。

 

「さらに別の契約を結んでいます」

 

おっさんが苦笑する。

 

「借金を返すために、別の借金をしたのか」

 

「はい」

 

「それを繰り返した」

 

「そのようです」

 

僕は。

 

マクダフを見る。

 

「……」

 

「旦那ぁ」

 

「なに?」

 

「俺、急に自分のことを恥ずかしく思えてきました」

 

ゼロが笑う。

 

「安心しろ」

 

「何が?」

 

「お前だけじゃねぇ」

 

「そういう問題ですか?」

 

そのとき。

 

最古契約の下に。

 

新しい文字が浮かんだ。

 

【重要】

 

【第1契約・返済条件】

 

僕は読む。

 

【鉱脈発見後、採掘権の一部を譲渡する】

 

「……」

 

僕は。

 

旧採掘権証券を見た。

 

「もしかして」

 

ゼロが答える。

 

「そうだ」

 

「最初の採掘権って」

 

「最初の借金を返すために渡した権利だ」

 

僕は言葉を失った。

 

つまり。

 

マーカット鉱山の採掘権は。

 

最初から。

 

少しずつ。

 

切り売りされていた。

 

そして。

 

それが百年以上かけて。

 

今の大量の権利証券になった。

 

その瞬間。

 

キュ太郎が。

 

地下の奥をじっと見る。

 

「キュ……」

 

僕も見る。

 

壁の向こう。

 

何かが光っている。

 

ゼロが。

 

小さく呟いた。

 

「……まだ一枚」

 

「何が?」

 

「最初の契約には」

 

少し間を置いて。

 

「もう一つ、条件があった」

 

箱に。

 

新しい一文が浮かぶ。

 

【鉱脈が見つからなかった場合】

 

【調査費用は不要】

 

僕は安心した。

 

「じゃあ、見つからなかったら借金にならなかったんだ」

 

「そうだ」

 

ゼロが答える。

 

そして。

 

その下。

 

ゆっくり。

 

文字が現れる。

 

【ただし】

 

【鉱脈が見つかったにもかかわらず】

 

【採掘を開始しなかった場合】

 

【別途、権利維持費が発生する】

 

「……」

 

おっさんが。

 

嫌そうな顔をした。

 

「これか」

 

「何?」

 

「契約を維持するための金だ」

 

ゼロが頷く。

 

「それが積み上がった」

 

僕は。

 

前に聞いた言葉を思い出した。

 

契約を維持するための金。

 

設備。

 

道。

 

人件費。

 

借金。

 

権利。

 

利益配分。

 

全部。

 

最初は。

 

金貨二十枚だった。

 

僕は呟いた。

 

「……小さな金策だったんだ」

 

ゼロが。

 

少しだけ笑った。

 

「そうだ」

 

「それが」

 

僕は。

 

何百年も後まで残った。

 

「大金策になったんだ」

 

そのとき。

 

原簿中枢が赤く光った。

 

【最古契約の債務計算を開始】

 

【計算対象:全契約】

 

【連鎖債務の存在を確認】

 

そして最後に。

 

【警告】

 

【一部契約は、現在の所有者候補にも影響します】

 

僕は。

 

思わず後ずさった。

 

「僕にも?」

 

ゼロは答えなかった。

 

ただ。

 

箱に。

 

一つの選択肢が浮かんだ。

 

【旧契約を整理する権利】

 

【所有者候補に付与】

 

僕は。

 

その文字を見つめた。

 

「……整理?」

 

ゼロが。

 

ゆっくり笑う。

 

「ようやく出てきたな」

 

「何が?」

 

「お前が所有者になる意味だ」




【あとがき:現在のステータス】

【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13

■生産系
料理スキル 13

■その他
鑑定スキル 0.3

【所持金】
141G(銀行預け金:250G(銅貨2枚、半銅貨5枚))

ジョン
「最初は金貨二十枚だったの?」
おっさん
「それが何百年も積み重なったんだな」
マクダフ
「旦那ぁ、時間って怖いですなぁ」
ゼロ
「金の利息もな」

【所持アイテム】
・???のスクロール×6
・採掘計画書
・旧マーカット鉱山の古地図
・マーカット鉱山 最終採掘記録
・謎の紫色の鉱石
・謎の金属片(鑑定不能)
・採掘した紫色の鉱石×2
・新しく発見した謎の金属片
・「採掘は順調です。予定通り、地上へ出ます」と書かれた紙
・新M資金・マーカット鉱山復興応援券×1
・第零坑道採掘許可証0007
・第零坑道採掘管理記録
・第零坑道・旧採掘権証券×1
・マーカット鉱山・採掘権原簿(管理箱)
・ガレスのツルハシ(借用中)
・第七坑道作業責任者のツルハシ
・中古の斧(30Gで購入)
・新しい帳簿×5
・余り紙
・ロープ
・水筒
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)
・ケムトレイル群(立場:保護対象、詳細不明)
・キュ太郎
・原簿管理妖精「ゼロ」

【投資・契約】
・中立共栄大金庫投資案件(ポーシャ支店)
 元本:金貨10枚
 状態:運用中
 想定利回り:2倍〜5倍(説明ベース)
 詳細:非公開/高リスク

新判明:
・マーカット鉱山最初期の調査契約が存在
・調査費用は金貨20枚相当
・鉱脈発見時、採掘利益3%を永続配分
・返済条件として採掘権の一部譲渡条項あり
・採掘しない場合、権利維持費が発生
・長期間の未払いにより債務が連鎖的に拡大
・所有者候補には旧契約を整理する権利が付与される可能性

【M資金】
・小口M資金券が継続流通
・商人間の決済に使用
・商品購入に使用
・現金交換
・転売
・投資対象化
・信用の証明として流通
・第三者による派生券も発生
・マクダフ発行「赤字安心券」
・「採掘利益参加証」
・「旧債務連動券」
・マーカット鉱山関連券の取引市場
・M資金指数
・過去にも将来利益を使った資金調達が行われていたことが判明

【所有者選定】
第一段階:経済的貢献度
→ジョンがトップ

第二段階:実地運用試験
→ジョン暫定首位

第三段階:所有責任審査
→継続中

新たな責任:
✅過去の契約確認
✅連鎖債務の整理
✅旧権利者への対応
✅将来の権利と債務の整理

【本日の収支】
141G(変動なし)銀行預け金250G(変動なし)

※ジョン個人の所持金に変動はありません。

【今回の進展】
✅マーカット鉱山の最初の契約を発見
✅最初の資金調達は金貨20枚相当だったと判明
✅将来利益3%の永続配分契約が存在
✅採掘権の一部譲渡による返済条件が存在
✅採掘しない場合の権利維持費が債務増加の原因となった
✅複数の借金を重ねて返済する「連鎖債務」が判明
✅現在の旧採掘権証券につながる最初の仕組みが判明
✅所有者候補に「旧契約を整理する権利」が提示される


ジョンの一言
ジョン
「僕が所有者になったら、昔の借金を全部整理できるの?」
ゼロ
「できる可能性はある」
おっさん
「でも、簡単じゃないぞ」
マクダフ
「旦那ぁ、借金整理も金策ですぜ」
ジョン
「だからその言い方やめて」


次回。
「借金を消していい?」
ジョンが考えたのは。
借金を返すことではなく。
「そもそも、この契約はまだ必要なの?」
という。
あまりにも単純な疑問だった。
ところが。
その一言が。
百年以上続いた権利契約を。
ひっくり返すことになる。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。