異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜 作:raixip
所有者選定の最後の質問は。
「この鉱山を、誰のために存在させるのか?」
だった。
セドリック商会は、正当な権利を持つ者を守るため、権利を整理して採掘を制限する方針を示した。
一方、ジョンは。
権利者との約束を守りながら、働く人の給料や設備維持費を確保し、実際の収入に合わせて鉱山を運営する方針を示した。
その結果。
ジョンが第一候補に選ばれた。
ただし、所有権が確定したわけではない。
ジョンは暫定管理者として、旧契約の整理と鉱山の運営を任されることになった。
これでようやく、鉱山を再開するための道が開けた。
しかし。
残っている旧契約は、まだ6,420件。
採掘を始める前に、まずは過去の約束を整理しなければならない。
そして。
その契約の中には、記録に残っているだけでは分からないものもある。
「この鉱山を、誰のために存在させるのか」
ゼロが言った。
所有者選定、最後の質問。
僕の前には、セドリック商会の代表が立っている。
彼は鉱山の権利を集めている。
鉱山を止めることで、権利の価値を守ろうとしている。
一方、僕は。
鉱山を動かしたい。
みんなで働いて、みんなでお金を稼ぎたい。
「先に答えましょう」
セドリックが一歩前へ出た。
「鉱山は、正当な権利を持つ者のために存在すべきです」
彼は古い証券を取り出した。
「過去にお金を出した者がいる。契約を結んだ者がいる。利益を受け取る約束をした者がいる」
「うん」
「それを無視して採掘を始めれば、また同じ問題が起きます」
僕は黙って聞いた。
セドリックの言っていることは、間違っていない。
約束したお金を払わない。
権利を勝手に無効にする。
それでは困る人がいる。
「だから私は、まず権利を整理し、採掘を制限するべきだと考えます」
セドリックは自信たっぷりに言った。
「鉱山を守るためです」
ゼロが僕を見る。
「お前はどうだ?」
僕は少し考えた。
「僕も、約束は守ったほうがいいと思う」
セドリックが頷く。
「ならば、私の考えに賛成ということですね」
「でも」
僕は続けた。
「約束したお金を払うために、働く人がいなくなったらどうするの?」
セドリックの笑顔が止まった。
「……どういう意味ですか?」
「鉱山を動かさなかったら、お金は増えないよね?」
「権利の価値は維持できます」
「でも、働く人のお給料は?」
「……」
「道具が壊れたら?」
「……」
「食べ物を運ぶ人や、道を直す人は?」
セドリックは答えなかった。
僕は鉱山の入口を見た。
そこには、採掘者たちがいる。
彼らは鉱山を動かそうとしている。
でも、権利の話ばかり続いて、まだ本格的な採掘もできていない。
「僕はね」
僕は言った。
「権利を持っている人も、働いている人も、どちらも大事だと思う」
ゼロが黙って聞いている。
「だから、まず誰が何を持っているのか調べる」
「うん」
おっさんが頷いた。
「本当に有効な契約なら、ちゃんと守る」
僕は続けた。
「でも、まだ掘っていない鉱石のお金まで、先に約束するのはやめる」
「……」
「実際に鉱石が売れて、お金が入ってきたら」
僕は指を折った。
「まず働いた人にお給料を払う」
一本目。
「次に、道具や坑道を直すためのお金を残す」
二本目。
「そのあと、契約で決まっている支払いをする」
三本目。
「それでも残ったお金があれば、みんなで相談して使い道を決める」
僕は顔を上げた。
「そういう鉱山にしたい」
静かになった。
マクダフが小声で言った。
「旦那ぁ……」
「なに?」
「珍しく、まともな経営計画ですぜ」
「いつもまともだよ!」
おっさんが笑った。
「いや、今回はかなり分かりやすい」
リゼさんも帳簿に書き込んでいる。
「収入が入る前に、支払いを約束しすぎない。運営費を確保し、契約上の義務を守る。現実的な方針です」
セドリックは腕を組んだ。
「しかし、それでは利益が出るまで時間がかかる」
「うん」
「大きな利益を得る機会を逃すかもしれません」
「そうかもしれない」
僕は頷いた。
「でも、利益が出るか分からないのに、出ることにしてお金を使ったら困るよ」
セドリックは。
何も言わなかった。
そのとき。
原簿中枢が光った。
【所有者選定・最終審査】
【候補者:ジョン】
【運営方針:確認】
文字が次々に浮かぶ。
【既存契約の確認】
【労働者への支払い】
【設備維持費の確保】
【未発生利益の過度な前倒しを禁止】
【安全性の確保】
そして。
最後の一文。
【鉱山の継続運営を優先する】
「……」
箱の中から。
ゼロの声が響いた。
「最終判定を開始する」
僕は息を止めた。
数秒後。
結果が表示された。
【第一候補:ジョン】
【第二候補:セドリック商会】
「やった!」
僕は思わず声を上げた。
マクダフが飛び跳ねる。
「旦那ぁ! 勝ちましたぜ!」
おっさんは笑っていた。
「よくやったな」
でも。
ゼロはまだ真面目な顔をしていた。
「喜ぶのは早ぇぞ」
「え?」
表示が切り替わる。
【選定結果】
【ジョンをマーカット鉱山・暫定管理者に認定】
【所有権の最終確定には、既存権利者および関係者の確認を要する】
「暫定管理者?」
僕は首をかしげた。
「所有者じゃないの?」
ゼロが説明する。
「まずは、お前に鉱山を管理させる」
「うん」
「実際に運営できるか確認する」
「うん」
「そのうえで、まだ有効な権利や契約を整理する」
「じゃあ……」
僕は笑った。
「これから、やっと鉱山を動かせるんだね!」
ゼロは頷いた。
「そういうことだ」
僕はツルハシを握った。
ようやく。
採掘が始まる。
そう思った。
しかし。
原簿中枢に、最後の表示が現れた。
【管理者就任に伴う引き継ぎ事項】
【未確認の旧契約:6,420件】
「……」
僕は数字を見つめた。
「ゼロ」
「なんだ?」
「これ、全部調べるの?」
「そうだ」
「何日くらい?」
ゼロは少し考えた。
「人手によるな」
おっさんが笑う。
「つまり、明日から人手を集めるところからか」
マクダフが帳簿を抱えた。
「旦那ぁ! 人手を集める商売なら任せてくだせぇ!」
「何をする気?」
「紹介料を――」
「取らないでね」
「……はい」
僕は坑道を見た。
所有者になるための最終審査は終わった。
でも。
本当の仕事は、これからだった。
そして僕は、まだ知らなかった。
この鉱山には。
採掘者のほかにも。
ずっと前から、僕を待っていた人たちがいることを。
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
141G(銀行預け金:250G(銅貨2枚、半銅貨5枚))
ジョン
「やっと鉱山を動かせるよ!」
おっさん
「まずは帳簿の整理だな」
マクダフ
「旦那ぁ、採掘より先に事務仕事ですぜ」
ゼロ
「六千件以上あるからな」
ジョン
「……やっぱり先に掘っちゃ駄目?」
ゼロ
「駄目だ!」
【所持アイテム】
・???のスクロール×6
・採掘計画書
・旧マーカット鉱山の古地図
・マーカット鉱山 最終採掘記録
・謎の紫色の鉱石
・謎の金属片(鑑定不能)
・採掘した紫色の鉱石×2
・新しく発見した謎の金属片
・「採掘は順調です。予定通り、地上へ出ます」と書かれた紙
・新M資金・マーカット鉱山復興応援券×1
・第零坑道採掘許可証0007
・第零坑道採掘管理記録
・第零坑道・旧採掘権証券×1
・マーカット鉱山・採掘権原簿(管理箱)
・ガレスのツルハシ(借用中)
・第七坑道作業責任者のツルハシ
・中古の斧(30Gで購入)
・新しい帳簿×5
・余り紙
・ロープ
・水筒
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)
・ケムトレイル群(立場:保護対象、詳細不明)
・キュ太郎
・原簿管理妖精「ゼロ」
【投資・契約】
・中立共栄大金庫投資案件(ポーシャ支店)
元本:金貨10枚
状態:運用中
想定利回り:2倍〜5倍(説明ベース)
詳細:非公開/高リスク
・マーカット鉱山の旧契約:6,421件
・一部契約は終了処理済み
・残りの旧契約は有効性を確認する必要あり
・原始契約、旧債務、旧採掘権証券について調査継続
・所有者選定の最終候補:ジョン、セドリック商会
【M資金】
・小口M資金券が継続流通
・商人間の決済や商品購入に使用
・現金交換、転売、投資対象化
・第三者による派生券も発生
・マクダフ発行「赤字安心券」
・「採掘利益参加証」
・「旧債務連動券」
・マーカット鉱山関連券の取引市場
・M資金指数
・鉱山の暫定管理者決定を受け、関連券の動向に注意が必要
【所有者選定】
第一段階:経済的貢献度
→ジョンがトップ
第二段階:実地運用試験
→ジョンが暫定首位
第三段階:所有責任審査
→最終判定終了
【選定結果】
✅ジョンをマーカット鉱山の暫定管理者に認定
✅セドリック商会は第二候補
✅既存権利者と関係者の確認が必要
✅旧契約6,420件の確認が残っている
【本日の収支】
141G(変動なし)銀行預け金250G(変動なし)
※ジョン個人の所持金に変動はありません。
【今回の進展】
✅所有者選定の最終審査が終了
✅ジョンが暫定管理者に認定される
✅セドリック商会は第二候補となる
✅正当な契約を守りながら、鉱山の継続運営を目指す方針が評価される
✅未発生利益を過度に先取りしない方針を確認
✅所有権の最終確定には、既存権利者などの確認が必要と判明
✅旧契約の確認と整理が新たな課題になる
ジョンの一言
ジョン
「暫定管理者になったからには、みんなで採掘できる鉱山にしたい!」
ゼロ
「まず帳簿だ」
おっさん
「それが終わったら設備点検だな」
マクダフ
「旦那ぁ、俺は商人との交渉を――」
ジョン
「勝手に券を作らないでね」
マクダフ
「……はい」
次回。
「暫定管理者、初仕事!」
ジョンが最初に取りかかるのは、鉱石の採掘ではなく、古い帳簿の整理。
ところが。
最初の帳簿を開いた瞬間。
そこには、現在もマーカット鉱山で働いている人物の名前が記されていた――。