異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜 作:raixip
その中で見つかったのは、金貨三枚の未払賃金。
受取人として記されていたのは、現在も鉱山で働いているガレスさんと同じ名前だった。
調べてみると、ガレスという名前は家系で代々使われている可能性がある。
しかし、問題は金貨三枚だけではなかった。
支払い条件には、
「第零坑道の最終作業完了後」
と記されていたのだ。
この条件が満たされていなければ、未払賃金はまだ整理できない。
そして。
第零坑道の作業そのものも、正式には終わっていない可能性がある。
「それじゃ、最初の仕事を始めよう!」
僕は帳簿を机に置いた。
暫定管理者になった僕の最初の仕事。
それは、鉱石を掘ることではない。
六千件以上も残っている古い契約を整理することだった。
「まずは一冊ずつ確認だね」
「そうだ」
ゼロが頷く。
「契約者、金額、支払い状況、権利の有効性。順番に確認していく」
「分かった!」
「それと、分からねぇことを勝手に決めるなよ」
「分かってるよ」
「本当か?」
「……たぶん」
「不安だな、おい」
おっさんがため息をついた。
マクダフは帳簿の山を見て、すでに逃げ道を探している。
「旦那ぁ」
「なに?」
「この仕事、給料は出ます?」
「管理の仕事なんだから、出るんじゃない?」
「では、俺の給料も――」
「まずは働いてからだな」
おっさんが即答した。
「ぐっ……」
マクダフは黙った。
ゼロが笑う。
「いい判断だ。働く前に給料を約束すると、百年後まで面倒になるからな」
「その言い方、怖いよ!」
僕は一冊目の帳簿を開いた。
表紙には、こう書かれていた。
【マーカット鉱山・旧労務台帳】
中には、鉱夫たちの名前と、支払われた賃金が並んでいる。
金額。
勤務日数。
作業内容。
支払い済みかどうか。
今の冒険者ギルドの記録に似ていた。
「これなら、僕にも分かりそう」
僕は一行ずつ確認した。
最初の数ページには、古い名前が並んでいる。
その多くは、すでに契約終了の記録があった。
ところが。
あるページで、僕の手が止まった。
「……あれ?」
「どうした、ジョン?」
おっさんが覗き込む。
僕は一行を指差した。
【作業責任者:ガレス】
【未払賃金:金貨三枚】
【支払状況:未精算】
【最終確認:継続中】
「ガレスさん?」
僕は驚いた。
橋の近くで会った、あの鉱山管理人。
ツルハシを貸してくれたガレスさんだ。
「同じ名前だな」
おっさんが言う。
「うん。でも、この帳簿って百年以上前のものだよね?」
リゼさんが日付を確認した。
「このページの記録は、約百二十年前のものです」
「百二十年前!?」
マクダフが椅子から飛び上がった。
「旦那ぁ! ガレスの旦那、そんなに長生きなんですかい!?」
「僕に聞かれても分からないよ!」
ゼロが帳簿を取り上げる。
「騒ぐな。名前が同じだからって、同一人物とは限らねぇ」
「じゃあ、別の人?」
「その可能性もある」
ゼロは帳簿を調べた。
「ただし、気になる記録ではあるな」
「何が?」
「未払賃金が残ったまま、支払い状況が継続中になってる」
僕は首を傾げた。
「どうして払ってないの?」
リゼさんが、別のページを開いた。
「この時期、鉱山の資金繰りが悪化しています」
「資金繰り?」
おっさんが簡単に説明してくれた。
「入ってくる金より、出ていく金のほうが多かったってことだ」
「じゃあ、働いた人に払うお金がなくなったの?」
「その可能性はある」
僕は、もう一度帳簿を見た。
【未払賃金:金貨三枚】
たった三枚。
いや。
今の僕にとっては、かなり大きな金額だ。
でも、この鉱山が何十年も放置される原因になった借金と比べれば、小さく見えてしまう。
「……三枚なら、払えばいいんじゃないの?」
ゼロが目を細めた。
「誰に払うんだ?」
「ガレスさんに」
「そのガレスが、百二十年前のガレスと同じとは限らねぇだろ」
「あ……」
「それに、すでに支払われているのに記録だけ残っている可能性もある」
僕は頷いた。
「じゃあ、先に確認だね」
「そういうことだ」
箱に文字が浮かんだ。
【旧労務台帳】
【未払賃金候補:金貨三枚】
【権利者の同一性:未確認】
【支払請求の有効性:未確認】
【調査を推奨】
「これも所有者の仕事なんだね」
「そうだ」
ゼロが答えた。
「働いた人間に本当に賃金が支払われていないなら、無視するわけにはいかねぇ」
僕は帳簿を閉じた。
「じゃあ、ガレスさんに聞きに行こう」
おっさんが頷く。
「それが一番早いな」
マクダフが立ち上がった。
「旦那ぁ! 俺も行きますぜ!」
「帳簿の確認は?」
「……あとでやります」
「駄目だよ。持っていこう」
「ええっ!?」
僕たちは帳簿を持って、鉱山の入口へ向かった。
ガレスさんは、橋の近くで道具を手入れしていた。
「おう。採掘は始まったか?」
「それなんだけど、ガレスさん」
僕は帳簿を見せた。
「この記録、知ってる?」
ガレスさんはページを覗き込んだ。
そして。
顔をしかめた。
「……俺の名前だな」
「やっぱり、ガレスさんなの?」
「名前はな」
ガレスさんは頭を掻いた。
「だが、百二十年前の俺が働いていたわけじゃねぇぞ」
「じゃあ、別の人?」
「たぶんな」
ガレスさんは帳簿をじっくり眺めた。
しばらくして、ある文字を指差した。
【第七坑道・作業責任者】
「おい。この役職、うちの家で昔から使ってる名前だ」
「え?」
「ガレスって名前も、代々つけることがあるんだよ」
僕たちは顔を見合わせた。
「じゃあ、百二十年前の人は……」
「俺の先祖かもしれねぇな」
ガレスさんは、少し考えてから続けた。
「ただ、うちの家にそんな未払い賃金の話は残ってねぇ」
リゼさんが尋ねる。
「当時の賃金を受け取った記録はありませんか?」
「知らねぇな。家の古い書類なら、探せば何かあるかもしれん」
ゼロが腕を組んだ。
「なるほどな。家系の記録と照合すれば、権利者を確認できる可能性がある」
僕は頷いた。
「じゃあ、まずは調べてみよう」
ガレスさんが笑う。
「まさか、鉱山を再開する前に、先祖の給料を調べることになるとはな」
僕も笑った。
「でも、働いた人のお金だからね」
そのとき。
ガレスさんの表情が変わった。
「……待て」
「どうしたの?」
彼は帳簿の、さらに下の行を指差した。
そこには。
小さく、こう記されていた。
【未払賃金の受取人:ガレス家】
【支払条件:第零坑道の最終作業完了後】
「……」
ゼロが固まった。
おっさんが顔を上げる。
「第零坑道の最終作業?」
ガレスさんは首を振った。
「俺はそんな作業、聞いたことがねぇ」
僕は帳簿を見る。
金貨三枚。
未払賃金。
そして。
第零坑道の最終作業。
「これって……」
ゼロが。
いつになく真剣な声で言った。
「ジョン。その記録は、まだ終了処理するな」
「どうして?」
ゼロは答えた。
「この金貨三枚の支払い条件が満たされていないなら――」
一拍。
「第零坑道の仕事は、百二十年前から終わってねぇってことになる」
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
141G(銀行預け金:250G(銅貨2枚、半銅貨5枚))
ジョン
「最初の仕事が、昔の給料調べになったよ」
おっさん
「でも、こういう確認が後で効いてくるんだ」
マクダフ
「旦那ぁ、金貨三枚なら俺が立て替えて――」
ゼロ
「勝手に払うな。誰に払う金か、まだ確定してねぇ」
ガレス
「俺の先祖、いったい何の仕事をしてたんだ……」
【所持アイテム】
・???のスクロール×6
・採掘計画書
・旧マーカット鉱山の古地図
・マーカット鉱山 最終採掘記録
・謎の紫色の鉱石
・謎の金属片(鑑定不能)
・採掘した紫色の鉱石×2
・新しく発見した謎の金属片
・「採掘は順調です。予定通り、地上へ出ます」と書かれた紙
・新M資金・マーカット鉱山復興応援券×1
・第零坑道採掘許可証0007
・第零坑道採掘管理記録
・第零坑道・旧採掘権証券×1
・マーカット鉱山・採掘権原簿(管理箱)
・ガレスのツルハシ(借用中)
・第七坑道作業責任者のツルハシ
・中古の斧(30Gで購入)
・新しい帳簿×5
・余り紙
・ロープ
・水筒
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)
・ケムトレイル群(立場:保護対象、詳細不明)
・キュ太郎
・原簿管理妖精「ゼロ」
・旧労務台帳(確認中)
【投資・契約】
・中立共栄大金庫投資案件(ポーシャ支店)
元本:金貨10枚
状態:運用中
想定利回り:2倍〜5倍(説明ベース)
詳細:非公開/高リスク
・マーカット鉱山の旧契約:6,420件が未確認
・一部契約は終了処理済み
・旧労務台帳に未払賃金の記録を発見
・未払額:金貨三枚
・受取人:ガレス家
・支払条件:第零坑道の最終作業完了後
【M資金】
・小口M資金券が継続流通
・商人間の決済や商品購入に使用
・現金交換、転売、投資対象化
・第三者による派生券も存在
・マクダフ発行「赤字安心券」
・「採掘利益参加証」
・「旧債務連動券」
・マーカット鉱山関連券の取引市場
・M資金指数
・旧契約整理を巡る権利売買が継続
【所有者選定】
第一段階:経済的貢献度
→ジョンがトップ
第二段階:実地運用試験
→ジョンが暫定首位
第三段階:所有責任審査
→最終判定終了
現在の立場:
✅ジョンはマーカット鉱山の暫定管理者
✅旧契約の確認と整理を進行中
✅未払賃金の受取人と支払条件を調査中
【本日の収支】
141G(変動なし)銀行預け金250G(変動なし)
※ジョン個人の所持金に変動はありません。
【今回の進展】
✅暫定管理者として旧労務台帳の確認を開始
✅百二十年前の未払賃金、金貨三枚を発見
✅受取人は「ガレス家」と記録されている
✅支払い条件に「第零坑道の最終作業完了後」と記載
✅現在のガレスさんの家系と関係がある可能性が浮上
✅第零坑道の作業が正式には完了していない可能性が判明
✅ゼロが該当記録の終了処理を止める
ジョンの一言
ジョン
「金貨三枚を払えば、終わる仕事なのかな?」
ゼロ
「そんな単純な話なら、百二十年も残ってねぇよ」
おっさん
「まずは、最終作業が何だったのか調べよう」
マクダフ
「旦那ぁ、金貨三枚から始まった話が、また大きくなりそうですぜ」
ジョン
「僕、普通に採掘したいだけなんだけど……」
次回。
第169話 百二十年前の未完了作業
金貨三枚の未払いを調べるため、ジョンたちは古い作業記録を探すことになる。
ところが。
最終作業の責任者欄には、現在のガレスさんの家系だけでなく、もう一人の名前が記されていた。
その人物の名前は――ゼロだった。