異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜 作:raixip
最終作業の責任者はガレス家。
管理責任者はゼロ。
そして、作業完了の報告が登録されないまま、地下の管理設備は待機を続けていた。
作業を正式に終えるには、ガレス家の正当な承継者とゼロによる確認が必要らしい。
未払賃金の金貨三枚も、その最終作業が終わるまで精算できない。
ところが。
記録の最後に、予想外の名前が現れた。
【最終作業の副責任者:キュ太郎】
いつもジョンの胸ポケットにいる、黒い毛玉。
その正体も、過去も、ジョンには分からない。
しかし、百二十年前の鉱山の記録には、確かにその名前が残っていた。
「ゼロが、最終作業の責任者?」
僕は帳簿を見直した。
【第零坑道・最終作業記録】
【作業責任者:ガレス家】
【管理責任者:ゼロ】
【作業状態:未完了】
【未払賃金:金貨三枚】
「……ゼロ」
「なんだ」
「これ、本当におっさんじゃなくて、ゼロの名前なの?」
「俺はおっさんじゃねぇ!」
ゼロが飛び上がった。
「誰がおっさんだ! 俺は妖精だぞ!」
「でも、百二十年前の記録だよ?」
「だから何だ!」
「長生きなんだね」
「そういう問題じゃねぇ!」
マクダフが帳簿を覗き込む。
「旦那ぁ。百二十年前から働いてるなら、ゼロさんも給料をもらってないんじゃありません?」
ゼロがぴたりと止まった。
「……」
「……」
「……おい」
「はい?」
「その話はするな」
マクダフは、すぐに帳簿を閉じた。
「承知しました!」
「いや、今の反応、絶対に何かあるだろ」
おっさんが突っ込んだ。
ゼロは顔を背けた。
「昔の話だ」
「その昔の話を調べてるんだけど」
僕は帳簿を開き直した。
すると。
リゼさんが、別のページを指差した。
「この先に作業内容が記載されています」
【最終作業・実施項目】
一、地下設備の点検。
二、封印鉱の配置確認。
三、原簿中枢の管理状態確認。
四、作業完了の報告。
「これだけ?」
僕は首を傾げた。
「普通の点検みたいだね」
「項目だけ見ればな」
ゼロは不機嫌そうに答えた。
「問題は、最後の項目だ」
リゼさんが、その下を読む。
【作業完了報告は、管理責任者と作業責任者の双方が確認すること】
【確認後、未払賃金を精算する】
「つまり」
おっさんが整理した。
「ガレス家の人とゼロが、一緒に確認しないと仕事が終わらないんだな」
「そうみたい」
僕はガレスさんの顔を思い浮かべた。
今のガレスさんは、橋の近くで鉱山の様子を見ている。
でも、百二十年前の作業責任者は、その先祖かもしれない。
「ガレスさんの家に、昔の記録が残っているか聞いてみよう」
「そうだな」
おっさんも頷いた。
「ゼロ。最終作業って、実際には何をするんだ?」
ゼロは少し黙った。
そして、ようやく口を開いた。
「第零坑道の最終点検だ」
「それは帳簿に書いてあるよ」
「……」
「ほかには?」
「原簿中枢が正常に動いているか確認する」
「うん」
「封印鉱が決められた場所にあるか確認する」
「うん」
「それから、地下の管理設備を閉じる」
僕は驚いた。
「閉じるって、鉱山を閉鎖するの?」
「違う。管理設備の作業を終えるだけだ」
ゼロが説明した。
「封印を維持する仕組みは動かしたまま、点検作業だけを終了させる」
「なるほど」
僕は少し安心した。
「じゃあ、その確認をすれば終わりなんだね」
「必要な条件が全部そろっていればな」
ゼロは、また顔を背けた。
おっさんが腕を組む。
「ゼロ。何か隠してるだろ」
「隠してねぇ」
「じゃあ、どうして最初に説明しなかった?」
「……説明が面倒だった」
「正直だな!」
マクダフが笑った。
「旦那ぁ。妖精にも面倒な仕事があるんですなぁ」
「笑ってる場合か!」
ゼロがマクダフを睨む。
そのとき。
キュ太郎が、僕の胸ポケットから飛び出した。
「キュ」
キュ太郎は、帳簿の四番目を前足で押した。
【作業完了の報告】
その文字が、淡く光った。
「どうしたの?」
「キュ、キュ」
キュ太郎は、帳簿から壁へ移動する。
そして。
第零坑道の壁に埋め込まれた金属板を、ぽんぽんと叩いた。
カン。
カン。
カン。
地下から、同じ音が返ってきた。
カン。
カン。
カン。
ゼロの表情が変わった。
「……まだ応答するのか」
「何が?」
「管理設備だ」
ゼロは壁に近づいた。
金属板には、小さな文字が浮かび始めている。
【最終作業・報告待ち】
【作業責任者:ガレス家】
【管理責任者:ゼロ】
【双方の確認を待機中】
僕は目を丸くした。
「百二十年間、ずっと待ってたの?」
「……そうらしいな」
ゼロの声が、少しだけ小さくなった。
リゼさんが帳簿を確認する。
「設備は停止していません。完了報告だけが登録されていないようです」
おっさんがゼロを見る。
「つまり、作業ができなかったんじゃなくて、最後の報告をしていなかった?」
「そういうことだ」
「どうして?」
ゼロは黙った。
長い沈黙のあと。
ようやく答えた。
「作業責任者が、地上へ戻らなかったからだ」
僕は息を呑んだ。
「……ガレス家の人が?」
「記録上はな」
「何があったの?」
ゼロは首を横に振った。
「そこから先は、俺も確認できてねぇ」
いつも偉そうなゼロが。
初めて、本当に困っているように見えた。
僕は帳簿を閉じた。
「じゃあ、調べよう」
「ジョン」
おっさんが言う。
「簡単に決めるな。まだ作業内容も全部分かってない」
「うん。だから、まずガレスさんの家の記録を調べる」
僕は頷いた。
「それから、実際に地下の設備を確認する」
ゼロは僕を見つめた。
やがて。
小さく息を吐いた。
「……分かった」
「うん!」
「ただし、勝手に報告を完了させるなよ」
「どうして?」
ゼロは壁の文字を指差した。
【作業責任者の確認:未完了】
その下に、新しい一文が浮かび上がった。
【作業責任者の最終確認は、本人または正当な承継者に限る】
「……」
おっさんが呟いた。
「なるほど。ガレス家の記録が必要なわけだ」
僕は頷いた。
百二十年前の仕事。
未払いの金貨三枚。
そして、今も終わっていない点検作業。
僕たちは、もう一度地上へ戻ることにした。
すると。
ゼロが、僕の背中に声をかけた。
「ジョン」
「なに?」
「もしガレス家が作業責任を引き継げない場合――」
一拍。
「俺たちで、別の方法を探さなきゃならねぇ」
僕は振り返った。
「ゼロは、ずっとこの仕事を終わらせたかったの?」
ゼロは答えなかった。
ただ。
いつもより少しだけ静かな声で言った。
「……百二十年も未完了の仕事を抱えてみろ。誰だって終わらせたくなるだろ」
僕は頷いた。
「じゃあ、終わらせよう」
その瞬間。
壁に、もう一つの文字が浮かんだ。
【作業記録・追記】
【最終作業の副責任者:記録欠落】
そして、その下には。
名前の代わりに。
【キュ太郎】
と表示されていた。
「……え?」
僕は胸ポケットを見た。
キュ太郎は。
何も知らないような顔で。
「キュ」
と鳴いた。
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
141G(銀行預け金:250G(銅貨2枚、半銅貨5枚))
ジョン
「キュ太郎も昔からいたの?」
おっさん
「記録が正しければ、そうなるな」
マクダフ
「旦那ぁ。あの毛玉、いったい何者なんです?」
ゼロ
「俺が聞きてぇよ!」
キュ太郎
「キュ?」
【所持アイテム】
・???のスクロール×6
・採掘計画書
・旧マーカット鉱山の古地図
・マーカット鉱山 最終採掘記録
・謎の紫色の鉱石
・謎の金属片(鑑定不能)
・採掘した紫色の鉱石×2
・新しく発見した謎の金属片
・「採掘は順調です。予定通り、地上へ出ます」と書かれた紙
・新M資金・マーカット鉱山復興応援券×1
・第零坑道採掘許可証0007
・第零坑道採掘管理記録
・第零坑道・旧採掘権証券×1
・マーカット鉱山・採掘権原簿(管理箱)
・ガレスのツルハシ(借用中)
・第七坑道作業責任者のツルハシ
・中古の斧(30Gで購入)
・新しい帳簿×5
・余り紙
・ロープ
・水筒
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)
・ケムトレイル群(立場:保護対象、詳細不明)
・キュ太郎
・原簿管理妖精「ゼロ」
・旧労務台帳(確認中)
・第零坑道・最終作業記録(未完了)
【投資・契約】
・中立共栄大金庫投資案件(ポーシャ支店)
元本:金貨10枚
状態:運用中
想定利回り:2倍〜5倍(説明ベース)
詳細:非公開/高リスク
・マーカット鉱山の旧契約:6,420件が未確認
・一部契約は終了処理済み
・未払賃金:金貨三枚
・受取人:ガレス家
・支払条件:第零坑道の最終作業完了後
・最終作業の確認者:ガレス家の正当な承継者とゼロ
・最終作業の副責任者欄に「キュ太郎」と記載
【M資金】
・小口M資金券が継続流通
・商人間の決済や商品購入に使用
・現金交換、転売、投資対象化
・第三者による派生券も存在
・マクダフ発行「赤字安心券」
・「採掘利益参加証」
・「旧債務連動券」
・マーカット鉱山関連券の取引市場
・M資金指数
・旧契約整理を巡る権利売買が継続
【所有者選定】
第一段階:経済的貢献度
→ジョンがトップ
第二段階:実地運用試験
→ジョンが暫定首位
第三段階:所有責任審査
→最終判定終了
現在の立場:
✅ジョンはマーカット鉱山の暫定管理者
✅旧契約の確認と整理を進行中
✅最終作業の内容と責任者を調査中
✅ガレス家の記録との照合が必要
【本日の収支】
141G(変動なし)
銀行預け金250G(変動なし)
※ジョン個人の所持金に変動はありません。
【今回の進展】
✅百二十年前の最終作業記録を確認
✅管理責任者としてゼロの名前を確認
✅未払賃金の支払い条件が、最終作業の完了と結び付いていることが判明
✅最終作業は、地下設備と封印鉱の確認、完了報告だった
✅報告が登録されず、管理設備は待機状態を続けている
✅作業責任者の正当な承継者が必要と判明
✅副責任者欄にキュ太郎の名前が浮上
ジョンの一言
ジョン
「キュ太郎、昔から鉱山に関係してたの?」
キュ太郎「キュ」
ゼロ「その返事じゃ分かんねぇよ!」
おっさん「そもそも、こいつの正体が分からないからな」
次回。
第170話 キュ太郎、百二十年前の副責任者?
ガレス家に残る古い記録を調べるジョンたち。
そこには、キュ太郎にそっくりな存在が描かれていた。
そして、ガレス家の古い帳簿から見つかったのは――未払い賃金とは別の、もう一つの報酬記録だった。