異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜   作:raixip

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暫定管理者として旧労務台帳を調べたジョンは、百二十年前の未払賃金と最終作業記録を発見した。

最終作業の責任者はガレス家。

管理責任者はゼロ。

そして、作業完了の報告が登録されないまま、地下の管理設備は待機を続けていた。

作業を正式に終えるには、ガレス家の正当な承継者とゼロによる確認が必要らしい。

未払賃金の金貨三枚も、その最終作業が終わるまで精算できない。

ところが。

記録の最後に、予想外の名前が現れた。

【最終作業の副責任者:キュ太郎】

いつもジョンの胸ポケットにいる、黒い毛玉。

その正体も、過去も、ジョンには分からない。

しかし、百二十年前の鉱山の記録には、確かにその名前が残っていた。


第169話 百二十年前の未完了作業

「ゼロが、最終作業の責任者?」

 

僕は帳簿を見直した。

 

【第零坑道・最終作業記録】

 

【作業責任者:ガレス家】

 

【管理責任者:ゼロ】

 

【作業状態:未完了】

 

【未払賃金:金貨三枚】

 

「……ゼロ」

 

「なんだ」

 

「これ、本当におっさんじゃなくて、ゼロの名前なの?」

 

「俺はおっさんじゃねぇ!」

 

ゼロが飛び上がった。

 

「誰がおっさんだ! 俺は妖精だぞ!」

 

「でも、百二十年前の記録だよ?」

 

「だから何だ!」

 

「長生きなんだね」

 

「そういう問題じゃねぇ!」

 

マクダフが帳簿を覗き込む。

 

「旦那ぁ。百二十年前から働いてるなら、ゼロさんも給料をもらってないんじゃありません?」

 

ゼロがぴたりと止まった。

 

「……」

 

「……」

 

「……おい」

 

「はい?」

 

「その話はするな」

 

マクダフは、すぐに帳簿を閉じた。

 

「承知しました!」

 

「いや、今の反応、絶対に何かあるだろ」

 

おっさんが突っ込んだ。

 

ゼロは顔を背けた。

 

「昔の話だ」

 

「その昔の話を調べてるんだけど」

 

僕は帳簿を開き直した。

 

すると。

 

リゼさんが、別のページを指差した。

 

「この先に作業内容が記載されています」

 

【最終作業・実施項目】

 

一、地下設備の点検。

 

二、封印鉱の配置確認。

 

三、原簿中枢の管理状態確認。

 

四、作業完了の報告。

 

「これだけ?」

 

僕は首を傾げた。

 

「普通の点検みたいだね」

 

「項目だけ見ればな」

 

ゼロは不機嫌そうに答えた。

 

「問題は、最後の項目だ」

 

リゼさんが、その下を読む。

 

【作業完了報告は、管理責任者と作業責任者の双方が確認すること】

 

【確認後、未払賃金を精算する】

 

「つまり」

 

おっさんが整理した。

 

「ガレス家の人とゼロが、一緒に確認しないと仕事が終わらないんだな」

 

「そうみたい」

 

僕はガレスさんの顔を思い浮かべた。

 

今のガレスさんは、橋の近くで鉱山の様子を見ている。

 

でも、百二十年前の作業責任者は、その先祖かもしれない。

 

「ガレスさんの家に、昔の記録が残っているか聞いてみよう」

 

「そうだな」

 

おっさんも頷いた。

 

「ゼロ。最終作業って、実際には何をするんだ?」

 

ゼロは少し黙った。

 

そして、ようやく口を開いた。

 

「第零坑道の最終点検だ」

 

「それは帳簿に書いてあるよ」

 

「……」

 

「ほかには?」

 

「原簿中枢が正常に動いているか確認する」

 

「うん」

 

「封印鉱が決められた場所にあるか確認する」

 

「うん」

 

「それから、地下の管理設備を閉じる」

 

僕は驚いた。

 

「閉じるって、鉱山を閉鎖するの?」

 

「違う。管理設備の作業を終えるだけだ」

 

ゼロが説明した。

 

「封印を維持する仕組みは動かしたまま、点検作業だけを終了させる」

 

「なるほど」

 

僕は少し安心した。

 

「じゃあ、その確認をすれば終わりなんだね」

 

「必要な条件が全部そろっていればな」

 

ゼロは、また顔を背けた。

 

おっさんが腕を組む。

 

「ゼロ。何か隠してるだろ」

 

「隠してねぇ」

 

「じゃあ、どうして最初に説明しなかった?」

 

「……説明が面倒だった」

 

「正直だな!」

 

マクダフが笑った。

 

「旦那ぁ。妖精にも面倒な仕事があるんですなぁ」

 

「笑ってる場合か!」

 

ゼロがマクダフを睨む。

 

そのとき。

 

キュ太郎が、僕の胸ポケットから飛び出した。

 

「キュ」

 

キュ太郎は、帳簿の四番目を前足で押した。

 

【作業完了の報告】

 

その文字が、淡く光った。

 

「どうしたの?」

 

「キュ、キュ」

 

キュ太郎は、帳簿から壁へ移動する。

 

そして。

 

第零坑道の壁に埋め込まれた金属板を、ぽんぽんと叩いた。

 

カン。

 

カン。

 

カン。

 

地下から、同じ音が返ってきた。

 

カン。

 

カン。

 

カン。

 

ゼロの表情が変わった。

 

「……まだ応答するのか」

 

「何が?」

 

「管理設備だ」

 

ゼロは壁に近づいた。

 

金属板には、小さな文字が浮かび始めている。

 

【最終作業・報告待ち】

 

【作業責任者:ガレス家】

 

【管理責任者:ゼロ】

 

【双方の確認を待機中】

 

僕は目を丸くした。

 

「百二十年間、ずっと待ってたの?」

 

「……そうらしいな」

 

ゼロの声が、少しだけ小さくなった。

 

リゼさんが帳簿を確認する。

 

「設備は停止していません。完了報告だけが登録されていないようです」

 

おっさんがゼロを見る。

 

「つまり、作業ができなかったんじゃなくて、最後の報告をしていなかった?」

 

「そういうことだ」

 

「どうして?」

 

ゼロは黙った。

 

長い沈黙のあと。

 

ようやく答えた。

 

「作業責任者が、地上へ戻らなかったからだ」

 

僕は息を呑んだ。

 

「……ガレス家の人が?」

 

「記録上はな」

 

「何があったの?」

 

ゼロは首を横に振った。

 

「そこから先は、俺も確認できてねぇ」

 

いつも偉そうなゼロが。

 

初めて、本当に困っているように見えた。

 

僕は帳簿を閉じた。

 

「じゃあ、調べよう」

 

「ジョン」

 

おっさんが言う。

 

「簡単に決めるな。まだ作業内容も全部分かってない」

 

「うん。だから、まずガレスさんの家の記録を調べる」

 

僕は頷いた。

 

「それから、実際に地下の設備を確認する」

 

ゼロは僕を見つめた。

 

やがて。

 

小さく息を吐いた。

 

「……分かった」

 

「うん!」

 

「ただし、勝手に報告を完了させるなよ」

 

「どうして?」

 

ゼロは壁の文字を指差した。

 

【作業責任者の確認:未完了】

 

その下に、新しい一文が浮かび上がった。

 

【作業責任者の最終確認は、本人または正当な承継者に限る】

 

「……」

 

おっさんが呟いた。

 

「なるほど。ガレス家の記録が必要なわけだ」

 

僕は頷いた。

 

百二十年前の仕事。

 

未払いの金貨三枚。

 

そして、今も終わっていない点検作業。

 

僕たちは、もう一度地上へ戻ることにした。

 

すると。

 

ゼロが、僕の背中に声をかけた。

 

「ジョン」

 

「なに?」

 

「もしガレス家が作業責任を引き継げない場合――」

 

一拍。

 

「俺たちで、別の方法を探さなきゃならねぇ」

 

僕は振り返った。

 

「ゼロは、ずっとこの仕事を終わらせたかったの?」

 

ゼロは答えなかった。

 

ただ。

 

いつもより少しだけ静かな声で言った。

 

「……百二十年も未完了の仕事を抱えてみろ。誰だって終わらせたくなるだろ」

 

僕は頷いた。

 

「じゃあ、終わらせよう」

 

その瞬間。

 

壁に、もう一つの文字が浮かんだ。

 

【作業記録・追記】

 

【最終作業の副責任者:記録欠落】

 

そして、その下には。

 

名前の代わりに。

 

【キュ太郎】

 

と表示されていた。

 

「……え?」

 

僕は胸ポケットを見た。

 

キュ太郎は。

 

何も知らないような顔で。

 

「キュ」

 

と鳴いた。




【あとがき:現在のステータス】

【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13

■生産系
料理スキル 13

■その他
鑑定スキル 0.3

【所持金】

141G(銀行預け金:250G(銅貨2枚、半銅貨5枚))

ジョン
「キュ太郎も昔からいたの?」
おっさん
「記録が正しければ、そうなるな」
マクダフ
「旦那ぁ。あの毛玉、いったい何者なんです?」
ゼロ
「俺が聞きてぇよ!」
キュ太郎
「キュ?」

【所持アイテム】
・???のスクロール×6
・採掘計画書
・旧マーカット鉱山の古地図
・マーカット鉱山 最終採掘記録
・謎の紫色の鉱石
・謎の金属片(鑑定不能)
・採掘した紫色の鉱石×2
・新しく発見した謎の金属片
・「採掘は順調です。予定通り、地上へ出ます」と書かれた紙
・新M資金・マーカット鉱山復興応援券×1
・第零坑道採掘許可証0007
・第零坑道採掘管理記録
・第零坑道・旧採掘権証券×1
・マーカット鉱山・採掘権原簿(管理箱)
・ガレスのツルハシ(借用中)
・第七坑道作業責任者のツルハシ
・中古の斧(30Gで購入)
・新しい帳簿×5
・余り紙
・ロープ
・水筒
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)
・ケムトレイル群(立場:保護対象、詳細不明)
・キュ太郎
・原簿管理妖精「ゼロ」
・旧労務台帳(確認中)
・第零坑道・最終作業記録(未完了)

【投資・契約】
・中立共栄大金庫投資案件(ポーシャ支店)
 元本:金貨10枚
 状態:運用中
 想定利回り:2倍〜5倍(説明ベース)
 詳細:非公開/高リスク

・マーカット鉱山の旧契約:6,420件が未確認
・一部契約は終了処理済み
・未払賃金:金貨三枚
・受取人:ガレス家
・支払条件:第零坑道の最終作業完了後
・最終作業の確認者:ガレス家の正当な承継者とゼロ
・最終作業の副責任者欄に「キュ太郎」と記載

【M資金】
・小口M資金券が継続流通
・商人間の決済や商品購入に使用
・現金交換、転売、投資対象化
・第三者による派生券も存在
・マクダフ発行「赤字安心券」
・「採掘利益参加証」
・「旧債務連動券」
・マーカット鉱山関連券の取引市場
・M資金指数
・旧契約整理を巡る権利売買が継続

【所有者選定】
第一段階:経済的貢献度
→ジョンがトップ

第二段階:実地運用試験
→ジョンが暫定首位

第三段階:所有責任審査
→最終判定終了

現在の立場:
✅ジョンはマーカット鉱山の暫定管理者
✅旧契約の確認と整理を進行中
✅最終作業の内容と責任者を調査中
✅ガレス家の記録との照合が必要

【本日の収支】
141G(変動なし)
銀行預け金250G(変動なし)

※ジョン個人の所持金に変動はありません。

【今回の進展】
✅百二十年前の最終作業記録を確認
✅管理責任者としてゼロの名前を確認
✅未払賃金の支払い条件が、最終作業の完了と結び付いていることが判明
✅最終作業は、地下設備と封印鉱の確認、完了報告だった
✅報告が登録されず、管理設備は待機状態を続けている
✅作業責任者の正当な承継者が必要と判明
✅副責任者欄にキュ太郎の名前が浮上


ジョンの一言
ジョン
「キュ太郎、昔から鉱山に関係してたの?」
キュ太郎「キュ」
ゼロ「その返事じゃ分かんねぇよ!」
おっさん「そもそも、こいつの正体が分からないからな」


次回。
第170話 キュ太郎、百二十年前の副責任者?
ガレス家に残る古い記録を調べるジョンたち。
そこには、キュ太郎にそっくりな存在が描かれていた。
そして、ガレス家の古い帳簿から見つかったのは――未払い賃金とは別の、もう一つの報酬記録だった。
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