異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜 作:raixip
「いらっしゃいませー!いらっしゃいませー!」
「おいしい……おいしいサンドパンはいかがですかー?蛇肉ステーキをはさんだやつですよー」
「略して『ヘスパン』ですよ。ヘスパンいかがですかー」
「今なら 1,000g ですよー。おひとついかがですかー」
「ヘスサを一つ……あれ、これは昨日まで売っていたサンドイッチじゃないのか……?」
「違いますわ!これは『ヘスパン』と言って、全くの別ものですわ!ヘスサ売りは別の町へ行ってしまいましたわ!」
エリヤが、いつもと同じように露天市場の隅にある料理露店で客引きをしている。
僕が昨日まで売っていたサンドイッチは、販売許可を取り消されたため、名前だけを変えた「サンドパン」として売られていた。
中身も値段も、ほとんど同じだ。
このサンドパンは、マクダフが料理屋の店主の店を借りて作り、それをおっさんが運び、エリヤが売るという形になっている。
僕が思うに、これは名前がサンドイッチからサンドパンに変わっただけで、中身や値段は一緒だ。
こんなことが許されるのだろうか。
だが、おっさんの説明はこうだった。
販売許可を取り消されたのは、あくまで僕個人。
だから別の人物――おっさんが許可を取り直し、別の商品として売る分には問題ない。
理屈は分かるが、納得はできない。
名前を変えてすべて同じものを売ると、見つかった時に問題になるかもしれないため、今回はパンポタージュは売っていない。
マクダフはそのことが不満のようだったが、しかたがない。
もし兵士さんたちに僕やマクダフが料理露店で一緒にいるところをまた見つかって、「これは名前を変えて売ってるだけで一緒じゃないか」と言われたら、僕にはそれを乗り切るための言い訳がその場でできるかどうかわからない。
僕は今日もいつもと同じように、スキル上げのために河畔に来た。
朝食と昼食用にヘスパンを持ってきている。
名前は違うが、味は同じだ。
今日の目標、スキル上げは、刀剣スキルを 17、戦闘技術スキルは 12 あたりまで上げたいと思っている。
本当なら昨日までに刀剣 15、戦闘技術 10 まで上げられているはずだったが、マクダフのせいでこのざまだ。
河畔でのスキル上げを行うにあたって、僕は周りを確認してからスキル上げを行うことにしている。
もうあんな事になりたくないからだ。
このスキル上げのやり方が間違っているとかどうとかじゃなくて、ほかの人に見られると頭のおかしい人だと思われるからだ。今日は誰もいないようだった。
僕がスキル上げに利用していた木剣は、すでに一本目が「武器破損常態」になりかかっている。木剣であっても、このスキル上げに利用すれば武器の消耗がとてもはげしい。
まだこの木剣でも刀剣スキルを上げることが可能なため、僕はこれを使い続けている。
この調子でいけば、二本目の木剣が武器破損常態になる前に、目標だった刀剣スキル 20 までは上げることができそうだ。
いくら刀剣スキルを 20 まで上げられたとしても、こんなやり方でスキル上げをした僕は本当に強くなっているのだろうか。
強くなっていると言う実感がわかないため、時々不安になってくる。
おっさんの言うことは正しいのかもしれないが、僕はステータス上でのスキルを上げたいわけではない。
実際に強くなりたいのだ。
上級冒険者や物語に出てくる剣聖のように強くなりたいのだ。
今日もモクモクとスキル上げを行っていく。
やっていることはかんたんなのだが、とてもこのやり方はあきてくるのだ。
始めは、どんどん大岩を剣で叩いているだけで刀剣スキルが上がっていくのが面白くて、ずっと朝から晩までやり続けることができたが、今は初めてこのやり方でのスキル上げをやっている時と比べて、刀剣スキルの上がりが遅くなってきている。
蛇肉ステーキを作って料理スキルを上げている時と同じようにサボろうかと思った。僕にも気分転換はとても必要なのだ。
お昼ご飯も持ってきているため、それを食べてからもう少しだけ大岩叩きをおこなって、どこまで僕は強くなったのか知りたかったため、そこら辺の魔物を狩ってみようと思った。
この河畔の近くにいる魔物は、スライムや水トカゲ、泥ゴーレムあたりだろう。
スライムなら、刀剣スキル 3~、水トカゲ 8~、泥ゴーレム 10~くらいが狩るのに必要なスキル値だったと思う。
僕の今の刀剣スキル 15 くらいで狩れる魔物としては、水トカゲあたりだろうか。
スライムは僕には弱すぎると思うし、泥ゴーレムあたりは近接武器で狩りづらいと思う。
だって泥だからね。
大岩や水面を剣を振って叩いている僕には、泥を叩くのも朝飯前だが、こんな同じことをずっと狩りでもやっていたら、本当に頭がおかしくなりそうだから、それもあってやめた……。
少し歩いたところで、単体でいる水トカゲを見つけた。
大きさはドブネズミよりも大きく、だいたい中型くらいの魔物だろうか。
小さいのから大きいやつまで個体差のある魔物であるが、この水トカゲは小さいくらいだろうか。
これなら僕でも狩れると思った。
スキル上げ用の木剣から、愛用の剣に持ち変える。
僕は久しぶりに自分のいつも使っていた愛用の剣を握った気がした。
少し変な感覚があったが、使っていたらまた感覚は元に戻るだろうと思う。
気配を殺し、背後に回る。
そして――振る。
僕がいつもやっている魔物狩りとは少し違った。
剣を振る速さや威力が上がっているような気がした。
少し変な気がしたが、これが強くなっているってことなのか。
僕はうれしかった。
水トカゲが小さくて弱かったのかもしれないが、そんなことはないと思いたい。
ドロップはなかったが、それでも構わない。
水トカゲを狩ったことがなかったため、どんな物をドロップするのかも僕はしらない。
初めて、自分が強くなったと実感できた。
大岩や水面へ剣を振って叩いただけだったが、こんな僕でも刀剣スキルが上がれば強くなることができたのだ。
僕はうれしかった。
強くなることに対してうれしくない冒険者はいないだろう。
今日はこのまま水トカゲ狩りをやることにした。
大岩や水面を剣で叩くのはやめだ。僕には息抜きもとても必要なのだ。
水トカゲを狩っていて気づいたのだが、小さいのも中くらいのものなら僕でも狩れるが、大きいサイズの水トカゲは僕にはまだ少しむずかしかった。
余裕だと思ったが、痛い目にあってしまった。
二匹くらいなら何とか魔物を相手にして狩ることが、三匹や大きな水トカゲとなると話は別だ。
僕は自分が強くなったと思ったが、まだまだ弱かった。これからも修行を続けていく必要性がある。
剣の道に終わりはないのだ。
このまま 40 数匹くらい水トカゲを狩ったところでのドロップ品一覧だ。
・水トカゲの皮:31
・ 水トカゲの肉:14
・ 水トカゲの水袋:3
・水トカゲの手袋:1
初めてみるアイテムばかりだ。
夕方まで狩ってこれだけだから、水トカゲの皮と肉は普通ドロップアイテムで、水袋と手袋がもしかするとレアドロップアイテムなのかもしれない。
この「水トカゲの手袋」なんて、絶対にレアドロップ品だろう。
なんせ装備アイテムだからね。
ドロップしたばかりの水トカゲの手袋を手にはめてみることにした。
初めての装備品ドロップアイテムだ。
僕はうれしくてしかたなかった。
手に装備してみたらとてもカッコ良く見えた。
装備したら少し大きめだったが、だんだんと手に馴染んできた。
水トカゲの手袋と言うだけあって、水耐性があるように思える。
手袋ごしに愛用の剣を握ってみたら、持ちやすさは少しこちらのほうが上のように思えた。
手から剣がすべり落ちたりしないため、良い装備品がドロップしたと思った。
これは売らずにずっと装備していくつもりだ。
僕が上級冒険者になっても、ずっとこの初めてドロップした装備品はつけておこうと決めた。
一通りながめてから、僕は水トカゲの手袋を外そうとした。
――外れない。
少し力を入れて引っ張ってみる。
だが、指先がぴったりと吸いついたように離れなかった。
「……ん?」
もう一度、今度は手首のあたりをつまんで引く。
革の感触はあるのに、まるで皮膚の一部になったみたいに動かない。
装備って、こんなものだっただろうか。
一瞬だけ、嫌な感じがした。
だが、痛みはない。
締め付けられている感じもない。
むしろ、さっきより手に馴染んでいる気さえする。
……まぁいいか。
どうせ外すつもりはない。
それに、この手袋は当たりだ。
剣も握りやすいし、動きの邪魔にもならない。
少しだけ気にはなったが、僕はそれ以上考えるのをやめた。
この水トカゲの手袋を、僕は一生外すつもりはないのだからね。
このまま僕は町に戻ることにした。町の戻るまでに、ステータス画面でスキル値を確認してみることにした。
■武器系
刀剣スキル 16
盾スキル 3
戦闘技術スキル 10
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
刀剣スキルは目標を超えていた。
戦闘技術も上がっている。
スキルも上がり、装備も手に入れた。
――確実に、強くなっている。
そう思えた。
今日はとても良い日だ。
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 16(前回 14→ 今回は 2 上昇)
盾スキル 3
戦闘技術スキル 10(前回 9 → 今回は 1 上昇)
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
17,651g
【所持アイテム】
・蛇肉(大量)
・???のスクロール 6枚
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・木剣2本