異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜 作:raixip
原簿中枢を調べた結果、封印は何かを保護する目的で設けられた可能性が判明する。
さらに、百二十年前の記録から、契約を自動的に更新・執行する仕組みが見つかった。
この機構は、未処理の契約を検知すると、条件に応じて権利や債務を自動的に更新するらしい。
そして今回。
暫定管理者となったジョンの鉱山再開計画を検知し、新たな将来利益参加契約を生成しようとした。
キュ太郎の緊急保全管理権によって処理は一時停止できたが、次の所有者確認時には再開する可能性がある。
鉱山を本格的に動かす前に、この機構の仕組みを理解しなければならない。
「封印は何を守っている?」
僕は、原簿中枢に表示された文字を見つめた。
第七坑道。
第零坑道へ続く連絡通路。
そして、最下層。
三か所で、同じような異常反応が起きている。
「ゼロ。封印の中には何があるの?」
「分からねぇ」
「……え?」
思わず聞き返した。
「ゼロは、ずっとこの鉱山を管理してたんじゃないの?」
「俺が管理していたのは、原簿中枢と契約の記録だ。封印の中身まで自由に確認できたわけじゃねぇ」
ゼロは腕を組んだ。
「俺の仕事は、決められた管理設備を維持することだった。封印のすべてを知っていたわけじゃねぇんだよ」
おっさんが頷く。
「管理することと、秘密を全部知っていることは別だからな」
「なるほど」
僕は少し納得した。
でも。
分からないものを、そのままにしておいていいのだろうか。
「まず、何が起きているのか調べよう」
僕が言うと、ゼロは原簿中枢に手をかざした。
【封印状態・確認】
【第一地点:第七坑道】
【第二地点:連絡通路】
【第三地点:最下層】
【異常反応:三地点で検出】
「三つとも、同じ原因なの?」
僕が聞く。
「反応の種類は似ている。だが、原因が同じかどうかは、まだ分からねぇ」
リゼさんが古い記録と照合する。
「過去の記録では、この三地点が同時に反応した事例は見つかりません」
「百二十年前にも?」
「少なくとも、残っている記録にはありません」
僕は壁を見た。
薄い銀色の光が、細い線になって広がっている。
まるで、鉱山の中を何かがつないでいるようだった。
そのとき。
キュ太郎が僕の肩から飛び降りた。
「キュ!」
小さな体で、壁の銀色の線を指す。
そして。
ぽん。
壁を叩いた。
すると、線の一部が光った。
【封印管理記録】
【対象名称:記録対象外】
「記録対象外?」
僕は首を傾げた。
「名前が分からないんじゃなくて、記録しないってこと?」
ゼロが険しい顔になる。
「……その可能性がある」
「どうして?」
「名前を記録しない理由があるなら、単なる記入漏れとは限らねぇ」
リゼさんが表示を確認する。
「対象の名前だけでなく、分類も空欄です」
おっさんが眉をひそめた。
「意図的に情報を隠しているのか?」
「まだ断定はできねぇ」
ゼロは別の記録を呼び出した。
【封印の目的:管理対象の保護】
【封印の解除条件:記録なし】
【管理対象の移動:禁止】
「保護?」
僕は驚いた。
「何かを閉じ込めているんじゃないの?」
ゼロが答える。
「閉じ込めることと、保護することは、必ずしも矛盾しねぇ」
「どういう意味?」
「外へ出せば危険なものもある。外から触らせないために封じている場合もある」
「じゃあ、中にあるものが悪いものとは限らないんだね」
「そうだ」
僕は少し安心した。
ただし。
何が入っているのか分からない以上、安全とも言えない。
「じゃあ、封印を開けるのは駄目だね」
「当たり前だ」
ゼロが即答した。
マクダフが手を上げる。
「旦那ぁ。中身がすごいお宝だったら?」
「開けないよ」
「すごい鉱石だったら?」
「開けない」
「金貨がぎっしり詰まっていたら?」
「……」
僕は少し考えた。
「それでも、まず安全を確認するよ」
「くそっ、隙がねぇ!」
「何の隙だよ!」
おっさんが笑った。
そのとき。
キュ太郎が、もう一度壁を叩いた。
今度は。
ぽん。
ぽん。
ぽん。
三回。
原簿中枢に新しい文字が浮かんだ。
【緊急保全管理権・反応】
【封印維持機構:補修動作を検出】
【複数地点の反応:連動の可能性】
「補修?」
僕が聞く。
ゼロが表示を確認した。
「封印が壊れかけているから、仕組みが自分で直そうとしているのかもしれねぇ」
「じゃあ、銀色の線は?」
「補修に使われている何かかもしれない。だが、正体はまだ分からん」
リゼさんが帳簿に記録する。
「現時点では、採掘を再開する根拠はありませんね」
「うん。止めたままにしよう」
僕は頷いた。
鉱石を掘りたい。
鉱山を動かしたい。
でも、危険の原因が分からないまま掘るわけにはいかない。
そのとき。
原簿中枢が、突然大きく光った。
【旧管理記録・追加項目】
【封印維持に関する指示】
ゼロが息を呑む。
表示されたのは、百二十年前の文章だった。
【採掘量を増加させないこと】
【契約の自動執行を再開させないこと】
「……契約の自動執行?」
おっさんが読み上げた。
ゼロの表情が変わった。
「まずいな」
「何が?」
「これだ。俺たちが確認すべきなのは、封印の中身だけじゃねぇ」
ゼロは、表示を指差した。
「封印の下にある仕組みが、何をするためのものなのかだ」
リゼさんが古い記録を探す。
「別の文書が残っています」
彼女が読み上げた。
【契約の自動執行機構】
【登録された契約を検知】
【条件成立時、自動的に権利と債務を更新】
僕は首を傾げた。
「自動的に?」
「そうだ」
ゼロが説明する。
「普通なら、契約の期限が来たら人が確認する。支払いが終わったか、権利が残っているかを調べる」
「うん」
「だが、この仕組みは条件に反応して、自動で記録を更新するらしい」
おっさんが顔をしかめる。
「まさか、百年以上前の権利がいつまでも残っている原因に関係しているのか?」
「可能性はある」
ゼロは慎重に答えた。
「ただし、今あるすべての旧契約が、この機構のせいで残っているとは限らねぇ」
僕は、六千件以上の古い契約を思い出した。
未払賃金。
採掘権。
利益配分。
担保。
終わったはずなのに、終了理由が分からない契約。
もし。
契約を確認する仕組みそのものが、間違った更新を続けていたら?
「……それを止めれば、古い契約も整理しやすくなる?」
ゼロは僕を見る。
「正しく調べられればな」
「じゃあ、直したほうがいいんじゃない?」
「簡単に言うな!」
ゼロが叫んだ。
「その機構が安全なのか、今も動いているのか、何を更新しているのか、何一つ確かめられてねぇんだぞ!」
「……そうだね」
僕は素直に頷いた。
まず調査。
それから判断。
それが今の仕事だ。
ところが。
原簿中枢に、また新しい文字が浮かび上がった。
【契約の自動執行機構】
【待機状態から復帰】
【未処理契約を検出】
【新規対象:マーカット鉱山・暫定管理者】
「……え?」
僕は自分を指差した。
「新規対象って、僕?」
ゼロが叫ぶ。
「触るな! 何も承認するな!」
表示が続いた。
【暫定管理者ジョン】
【鉱山再開計画を検知】
【運営契約の自動生成を開始】
僕は息を呑んだ。
「僕、契約なんて作ってないよ!」
「計画を検知したって書いてあるだろ!」
ゼロが原簿中枢に手をかざす。
しかし、文字は止まらない。
【採掘再開に必要な資金】
【労働者への報酬】
【設備維持費】
【将来利益の分配】
項目が次々に並ぶ。
そして最後に。
【将来利益参加契約】
【発行準備:開始】
おっさんが叫んだ。
「おい、まさか!」
ゼロの顔が青ざめる。
「こいつ、俺たちの許可なしに、また将来利益を売ろうとしてやがる!」
マクダフが目を輝かせた。
「旦那ぁ! 機械が勝手に金策を――」
「喜ぶな!」
僕は原簿中枢を見た。
まだ何も売っていない。
まだ誰にも約束していない。
でも、契約だけが自動で作られようとしている。
百二十年前と同じことが。
また始まるのかもしれない。
「止められないの?」
僕が聞く。
ゼロは首を振った。
「通常の管理権限じゃ止められねぇ!」
そのとき。
キュ太郎が、原簿中枢へ飛び乗った。
「キュッ!」
銀色の光が、一瞬だけ強くなる。
【緊急保全管理権・介入】
【自動執行処理:一時停止】
文字が止まった。
僕たちは息をついた。
しかし。
最後に、たった一行だけ残っていた。
【処理再開予定:次回の所有者確認時】
ゼロが唸る。
「……止めたのは一時的だ」
「じゃあ、どうすればいいの?」
ゼロは、ゆっくりと最下層の奥を見た。
「封印の仕組みと、自動執行機構。その両方を調べる」
そして。
僕を見た。
「ジョン。お前が鉱山を本格的に動かす前に、こいつを解決しなきゃならねぇ」
僕は頷いた。
採掘を始めるためには。
まず、勝手に契約を作る仕組みを止めなければならない。
そして、そのためには。
百二十年前に未完了となった最終作業を終わらせる必要があるのかもしれない。
「よし」
僕はツルハシを握った。
「今度は、掘る前に調べよう」
ゼロがため息をついた。
「……最初からそうしてくれ」
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
141G(銀行預け金:250G(銅貨2枚、半銅貨5枚))
ジョン
「契約を勝手に作る仕組みがあるなんて、知らなかったよ」
おっさん
「だから、仕組みを理解する前に動かすなってことだな」
マクダフ
「旦那ぁ、俺の代わりに金策をしてくれるなら便利ですぜ」
ゼロ
「お前の金策まで自動で始められたら、鉱山が破産するわ!」
キュ太郎
「キュ!」
【所持アイテム】
・???のスクロール×6
・採掘計画書
・旧マーカット鉱山の古地図
・マーカット鉱山 最終採掘記録
・謎の紫色の鉱石
・謎の金属片(鑑定不能)
・採掘した紫色の鉱石×2
・新しく発見した謎の金属片
・「採掘は順調です。予定通り、地上へ出ます」と書かれた紙
・新M資金・マーカット鉱山復興応援券×1
・第零坑道採掘許可証0007
・第零坑道採掘管理記録
・第零坑道・旧採掘権証券×1
・マーカット鉱山・採掘権原簿(管理箱)
・ガレスのツルハシ(借用中)
・第七坑道作業責任者のツルハシ
・中古の斧(30Gで購入)
・新しい帳簿×5
・余り紙
・ロープ
・水筒
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)
・ケムトレイル群(立場:保護対象、詳細不明)
・キュ太郎(緊急保全管理権を取得)
・原簿管理妖精「ゼロ」
・旧労務台帳(確認中)
・第零坑道・最終作業記録(未完了)
・ガレス家の古い帳簿(調査中)
・副責任者の特別報酬記録
【投資・契約】
・中立共栄大金庫投資案件(ポーシャ支店)
元本:金貨10枚
状態:運用中
想定利回り:2倍〜5倍(説明ベース)
詳細:非公開/高リスク
・旧契約6,420件が未確認
・未払賃金:金貨三枚
・受取人:ガレス家
・支払条件:第零坑道の最終作業完了後
・第七坑道など複数地点で封印鉱の異常反応を検出
・契約の自動執行機構を確認
・機構が未処理契約を検出し、自動で新規契約を生成しようとした
・キュ太郎の緊急保全管理権により、一時停止
【M資金】
・小口M資金券が継続流通
・商人間の決済や商品購入に使用
・現金交換、転売、投資対象化
・第三者による派生券も存在
・マクダフ発行「赤字安心券」
・「採掘利益参加証」
・「旧債務連動券」
・マーカット鉱山関連券の取引市場
・M資金指数
・契約の自動執行機構が再び将来利益参加契約を作ろうとしたため、関連する仕組みの調査が必要
【所有者選定】
第一段階:経済的貢献度
→ジョンがトップ
第二段階:実地運用試験
→ジョンが暫定首位
第三段階:所有責任審査
→最終判定終了
現在の立場:
✅ジョンはマーカット鉱山の暫定管理者
✅キュ太郎が緊急保全管理権を保有
✅異常区域の採掘停止を継続
✅契約の自動執行機構を発見
✅自動契約生成を一時停止
✅原因と安全性の調査が必要
【本日の収支】
141G(変動なし)銀行預け金250G(変動なし)
※ジョン個人の所持金に変動はありません。
【今回の進展】
✅封印対象の名前が記録されていない理由は未解明と判明
✅封印は管理対象を保護する目的で設けられた可能性が浮上
✅複数地点の異常は、封印維持機構の補修動作と関係する可能性
✅百二十年前の記録から、契約の自動執行機構の存在が判明
✅機構が未処理契約を検知し、将来利益参加契約を自動生成しようとした
✅キュ太郎の緊急保全管理権で処理を一時停止
✅次回の所有者確認時に、自動執行処理が再開する可能性が判明
ジョンの一言
ジョン
「勝手に契約を作られる前に、仕組みを止めないとね」
ゼロ
「そうだ。今度こそ、昔と同じ失敗を繰り返させねぇ」
おっさん
「まずは、百二十年前の最終作業記録を調べ直そう」
マクダフ
「旦那ぁ、機械に金策を任せる時代が来たら、俺の仕事がなくなりますなぁ」
ジョン
「その心配はしなくていいよ」
次回。
第174話 百二十年前の最後の指示
契約の自動執行機構を止める方法を探すジョンたち。
古い最終作業記録を調べ直すと、最後のページに、これまで表示されなかった指示が見つかる。
そこには、ゼロの筆跡で、こう書かれていた。
「最後の契約だけは、絶対に実行させるな」