異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜   作:raixip

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百二十年前に残された最後の指示。

「最後の契約だけは、絶対に実行させるな」

その意味が、少しずつ分かってきた。

マーカット鉱山には、維持費が足りなくなると将来利益を売り、その支払いが足りなくなると、さらに新しい権利を発行する仕組みが残っていた。

この仕組みが、過去の債務を膨らませた原因の一つだった可能性がある。

ジョンたちは、既存の契約を消さずに、新しい契約の自動生成だけを止める方法を見つけた。

しかし。

最後の契約だけは、通常の停止処理では止められない。

しかも、その契約の確認者に指定されているのはゼロだった。

百二十年前、ゼロは何を知り、何を止めようとしたのか。

そして、最後の契約を実行すると、何が起きるのか。



第174話 百二十年前の最後の指示

【最後の契約だけは、絶対に実行させるな】

 

古い作業記録の最後に。

 

ゼロの筆跡で、そう書かれていた。

 

「ゼロ。これ、どういう意味?」

 

僕が尋ねると、ゼロは黙って紙を見つめた。

 

いつものように怒鳴ることもない。

 

マクダフを馬鹿にすることもない。

 

ただ、じっと文字を見ていた。

 

「……俺の字だ」

 

「やっぱり?」

 

「間違いねぇ」

 

「じゃあ、百二十年前に書いたの?」

 

「そうらしいな」

 

ゼロは眉間を押さえた。

 

「だが、何を止めようとしていたのか、全部は思い出せねぇ」

 

「忘れちゃったの?」

 

「最後に残った魔力で、箱の中から外へ出るための文字を表示していたんだぞ。百二十年分の記憶を全部確認できるほど、余裕があると思うか?」

 

「ごめん」

 

「謝るな。お前は悪くねぇ」

 

少しだけ、ゼロが優しかった。

 

そのせいで、逆に不安になった。

 

おっさんが古い記録を机に広げる。

 

「まずは、最後の契約が何なのか調べよう。名前が分かれば、内容も探せるかもしれない」

 

リゼさんも頷いた。

 

「原簿中枢に、記録を検索させましょう」

 

僕たちは第零坑道の管理箱を起動した。

 

【検索対象】

 

【最終作業記録】

 

【警告文:最後の契約を実行させるな】

 

しばらく文字が点滅したあと。

 

新しい表示が現れた。

 

【該当契約を検出】

 

【契約名:鉱山永続維持契約】

 

「永続維持?」

 

僕は首を傾げた。

 

「鉱山をずっと維持する契約ってこと?」

 

「名前だけならな」

 

ゼロが不機嫌そうに言った。

 

「問題は、その方法だ」

 

原簿中枢に、契約の仕組みが表示された。

 

【第一条】

 

【鉱山の維持費が不足した場合、将来利益を販売して資金を調達する】

 

【第二条】

 

【販売した権利に対する支払いを、将来の採掘利益から行う】

 

【第三条】

 

【採掘利益が不足した場合、新たな権利を発行して不足分を補う】

 

僕は順番に読んだ。

 

「維持費が足りなくなったら、将来のお金を売るんだね」

 

「そうだ」

 

「そのお金で維持費を払う」

 

「そうだ」

 

「でも、将来払うお金が増えて、足りなくなったら……」

 

「また権利を売る」

 

ゼロが答えた。

 

僕は画面を見つめた。

 

「……ずっと続いちゃうの?」

 

「そうだ」

 

おっさんがため息をついた。

 

「最初は鉱山を維持するための仕組みだったんだろうな」

 

「うん」

 

「だが、続けるほど将来の支払いが増える。支払いが増えるほど、さらに資金を集めなきゃならなくなる」

 

僕は、これまで見てきた古い契約を思い出した。

 

採掘利益参加権。

 

最低配当保証。

 

将来利益を担保にした融資。

 

そして、未払いになった賃金。

 

「それで、借金が増え続けたんだ」

 

「可能性は高い」

 

リゼさんが帳簿を確認した。

 

「ただし、現在残っているすべての債務が、この契約によって発生したとは限りません。個別の確認は必要です」

 

「そうだな」

 

おっさんが頷く。

 

「でも、この仕組みが残っていたら、また同じ問題が起きる」

 

僕は驚いた。

 

「じゃあ、今のM資金も?」

 

ゼロが腕を組んだ。

 

「M資金そのものが悪いわけじゃねぇ。必要な資金を集めて、実際に採掘して、利益が出たら約束どおりに払う。それなら仕組みとして成り立つ」

 

「うん」

 

「だが、採掘も利益もないのに、新しい権利を売って古い約束を払い続けるなら……」

 

ゼロは画面を指差した。

 

「百二十年前と同じことになる」

 

マクダフが小さく手を上げた。

 

「つまり、今の俺が作ってる赤字安心券も……」

 

「お前の券には、そもそも正式な保証契約がねぇだろ!」

 

「そこは別問題ですかい!」

 

「別問題だから、余計に始末が悪いんだよ!」

 

おっさんが吹き出した。

 

僕も、少し笑ってしまった。

 

でも。

 

笑っている場合ではなかった。

 

原簿中枢に、新しい文字が現れたからだ。

 

【鉱山永続維持契約】

 

【待機中の処理を検出】

 

【次回の所有者確認時に自動執行】

 

「……次回?」

 

僕が聞いた。

 

ゼロの顔が険しくなる。

 

「今の所有者確認のことだ」

 

「でも、僕はもう暫定管理者になったよ?」

 

「だからだ。管理者として次の確認を行えば、契約が自動的に動き出す可能性がある」

 

「じゃあ、何もしなければいいんじゃない?」

 

「それだけじゃ駄目だ」

 

ゼロが首を振った。

 

「鉱山を管理する以上、点検も、記録の確認も、必要になる。ずっと何もしないわけにはいかねぇ」

 

なるほど。

 

何もしなければ鉱山を管理できない。

 

でも、普通に管理しようとすると、古い契約が勝手に動き出す。

 

まるで、鍵のかかった部屋に入るたびに、床が抜けるようなものだ。

 

「……困ったね」

 

「まったくだ」

 

ゼロが珍しく素直に答えた。

 

そのとき。

 

キュ太郎が管理箱の上に飛び乗った。

 

「キュ!」

 

小さな前足で、表示の端を叩く。

 

ぽん。

 

すると。

 

今まで見えていなかった項目が浮かんだ。

 

【緊急保全管理権】

 

【手動停止機能:利用可能】

 

「手動停止?」

 

僕が聞くと、ゼロが目を見開いた。

 

「そうか……!」

 

「何か分かったの?」

 

「契約の自動執行そのものを、手動で止められる可能性がある」

 

「じゃあ、すぐ止めよう!」

 

「待て」

 

ゼロが僕を制した。

 

「止める前に、条件を確認しろ」

 

表示を開く。

 

【自動執行機構・手動停止条件】

 

・現在処理中の契約を確認すること

・有効な既存契約を記録すること

・未処理の支払いを一覧化すること

・管理責任者と緊急保全管理者が停止を承認すること

 

僕は一つずつ読んだ。

 

「つまり、今ある契約を全部消すんじゃなくて……」

 

「動いている仕組みを止めるんだ」

 

おっさんが答えた。

 

「有効な契約は残して、勝手に新しい契約を作る処理だけを止める。そうすれば、今ある約束を確認しながら整理できる」

 

「それなら、いいね!」

 

リゼさんも頷いた。

 

「既存の権利を勝手に消さずに済みます。確認できた契約は守り、問題のある契約は個別に調べられます」

 

ゼロは管理箱に手をかざした。

 

【管理責任者:ゼロ】

 

【承認可能】

 

キュ太郎が前足を上げる。

 

【緊急保全管理者:キュ太郎】

 

【承認可能】

 

そして。

 

僕の名前が表示された。

 

【暫定管理者:ジョン】

 

【現行契約一覧の確認が必要】

 

「……僕も必要なの?」

 

「お前が管理者だからな」

 

ゼロが答えた。

 

「まず、今どんな契約が動いているのか確認する。これを怠ると、止めたあとで支払いが必要な契約まで見落とすことになる」

 

僕は頷いた。

 

「分かった。順番に確認しよう」

 

リゼさんが一覧を呼び出した。

 

古い契約。

 

未払いの賃金。

 

採掘権証券。

 

利益配分契約。

 

担保契約。

 

その数は多かった。

 

でも、ひとつずつなら調べられる。

 

「よし。まずは記録を残そう」

 

僕が言うと、原簿中枢が反応した。

 

【既存契約の一覧化を開始】

 

【有効性:確認中】

 

【停止予定:新規契約の自動生成】

 

しばらくして。

 

最後の表示が現れた。

 

【停止準備:完了】

 

僕たちは顔を見合わせた。

 

もう少しで、百二十年前から続いていた仕組みを止められる。

 

その瞬間。

 

ゼロが、古い作業記録を見直した。

 

そして。

 

顔色を変えた。

 

「……違う」

 

「何が?」

 

僕が聞く。

 

ゼロは、警告文の下にある小さな文字を指差した。

 

【鉱山永続維持契約】

 

【停止可能】

 

【ただし、最終契約を除く】

 

「……え?」

 

おっさんが身を乗り出す。

 

「最終契約だけは止められないのか?」

 

ゼロは、ゆっくり頷いた。

 

「そういう仕組みらしい」

 

「その最終契約って、何なの?」

 

ゼロは答えなかった。

 

代わりに、原簿中枢が新しい文字を表示した。

 

【最終契約】

 

【契約内容:非公開】

 

【実行条件:最終作業完了】

 

【確認者:ゼロ】

 

僕は。

 

ゼロを見た。

 

「……ゼロが確認しないと、動かないんだね?」

 

「ああ」

 

ゼロの声が低くなる。

 

「だから、百二十年前の俺は、最後の作業を終わらせなかったのかもしれねぇ」

 

「どうして?」

 

ゼロは古い記録を握りしめた。

 

「……その契約を実行すれば、今まで止めてきたものが、全部動き出す可能性がある」

 

僕は、画面を見た。

 

自動執行機構を止めても。

 

最後の契約だけは残る。

 

そして。

 

その契約を実行する鍵を持っているのは。

 

ゼロ自身だった。

 

次の瞬間。

 

原簿中枢に、短い文字が浮かんだ。

 

【最終作業の完了確認を要求します】

 

ゼロは。

 

画面を睨んだまま、動かなかった。




【あとがき:現在のステータス】

【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13

■生産系
料理スキル 13

■その他
鑑定スキル 0.3

【所持金】
141G(銀行預け金:250G(銅貨2枚、半銅貨5枚))

ジョン
「勝手に契約を作る仕組みは、止められそうだね」
おっさん
「既存の契約を確認してからな。消していいものと、守るべきものを分ける必要がある」
マクダフ
「旦那ぁ、俺の赤字安心券も一覧に入ります?」
ゼロ
「お前の券は別途調査だ!」
マクダフ
「やっぱり!」
キュ太郎
「キュ!」

【所持アイテム】
・???のスクロール×6
・採掘計画書
・旧マーカット鉱山の古地図
・マーカット鉱山 最終採掘記録
・謎の紫色の鉱石
・謎の金属片(鑑定不能)
・採掘した紫色の鉱石×2
・新しく発見した謎の金属片
・「採掘は順調です。予定通り、地上へ出ます」と書かれた紙
・新M資金・マーカット鉱山復興応援券×1
・第零坑道採掘許可証0007
・第零坑道採掘管理記録
・第零坑道・旧採掘権証券×1
・マーカット鉱山・採掘権原簿(管理箱)
・ガレスのツルハシ(借用中)
・第七坑道作業責任者のツルハシ
・中古の斧(30Gで購入)
・新しい帳簿×5
・余り紙
・ロープ
・水筒
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)
・ケムトレイル群(立場:保護対象、詳細不明)
・キュ太郎(緊急保全管理権を取得)
・原簿管理妖精「ゼロ」
・旧労務台帳(確認中)
・第零坑道・最終作業記録(未完了)
・ガレス家の古い帳簿(調査中)
・副責任者の特別報酬記録
・鉱山永続維持契約の記録

【投資・契約】
・中立共栄大金庫投資案件(ポーシャ支店)
 元本:金貨10枚
 状態:運用中
 想定利回り:2倍〜5倍(説明ベース)
 詳細:非公開/高リスク

・旧契約6,420件が未確認
・未払賃金:金貨三枚
・受取人:ガレス家
・支払条件:第零坑道の最終作業完了後
・契約の自動執行機構を確認
・新規契約の自動生成を停止する準備が進行中
・最終契約だけは通常の停止処理の対象外
・最終作業の確認者としてゼロが指定されている

【M資金】
・小口M資金券が継続流通
・商人間の決済や商品購入に使用
・現金交換、転売、投資対象化
・第三者による派生券も存在
・マクダフ発行「赤字安心券」
・「採掘利益参加証」
・「旧債務連動券」
・マーカット鉱山関連券の取引市場
・M資金指数
・新規契約の自動生成が再開すれば、将来利益参加契約が発行される可能性

【所有者選定】
第一段階:経済的貢献度
→ジョンがトップ

第二段階:実地運用試験
→ジョンが暫定首位

第三段階:所有責任審査
→最終判定終了

現在の立場:

✅ジョンはマーカット鉱山の暫定管理者
✅キュ太郎が緊急保全管理権を保有
✅既存契約を一覧化して確認中
✅新規契約の自動生成を停止する準備が完了
✅最終契約だけは別途対応が必要

【本日の収支】
141G(変動なし)銀行預け金250G(変動なし)

※ジョン個人の所持金に変動はありません。

【今回の進展】
✅鉱山永続維持契約の仕組みが判明
✅将来利益の販売で維持費を払い、その支払いのために新たな権利を発行する仕組みを確認
✅過去の債務が連鎖的に膨らんだ原因の一つと判明
✅既存契約を残したまま、新規契約の自動生成を停止する方法が見つかる
✅キュ太郎の緊急保全管理権が停止準備に利用できると判明
✅最終契約だけは通常の停止処理で止められない
✅最終作業の確認者としてゼロが指定されている

ジョン
「勝手に契約を作る仕組みは止めたい。でも、必要な約束まで消しちゃ駄目なんだね」
ゼロ
「そうだ。今ある契約を調べて、正しく整理する。それが先だ」
おっさん
「そして最後の契約は、ゼロが何を知っているかにかかっている」
マクダフ
「旦那ぁ……この鉱山、まだ終わらないんですかい?」
ジョン
「うん。まずは最終契約を調べよう」



次回。
第175話 ゼロが止めた最後の契約
最終作業の完了確認を求められたゼロ。
彼は、ついに百二十年前の出来事を語り始める。
その契約は、鉱山を維持するためのものではなかった。
――鉱山に関わるすべての権利と債務を、一つにまとめる契約だった。
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