異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜   作:raixip

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キュ太郎の同意によって、鉱山の権利と債務を統合する手続きが大きく前進。

しかし、契約書の裏側から発見されたのは、百二十年前のガレス家による保証署名だった。

鉱山の権利問題を解決するはずが、今度は百二十年前の保証人まで探すことに。

ジョンにとっては、またしても理解の追いつかない話が増えてしまった。


第177話 最後の同意者

「統合契約を実行しますか?」

 

箱の中から、小さな声が聞こえた。

 

いや。

 

箱の中ではない。

 

あの口の悪い小妖精だった。

 

「おい、ガキ。聞いてんのか?」

 

「ガキって僕のこと?」

 

「他に誰がいるんだよ。毛玉に聞いてんのか?」

 

「キュ?」

 

キュ太郎が首を傾げた。

 

僕は机の上に広げられた契約書を見た。

 

統合契約。

 

旧権利者。

 

未確認債務。

 

全権利者の同意。

 

難しい言葉ばかりだ。

 

「おっさん。これって、結局どうなるんですか?」

 

「簡単に言えば、この鉱山に関係する権利や借金を一度まとめるってことだろ」

 

「借金もですか?」

 

「そうだ。儲かる権利だけまとめて、借金は知らんぷりってわけにはいかないらしい」

 

僕は契約書を見直した。

 

儲かる話なら大歓迎だ。

 

だが、借金まで付いてくるとなると話は違う。

 

「それで、最後の同意者がキュ太郎ってこと?」

 

「そういう判定になってるな」

 

妖精が鼻で笑った。

 

「正確には、こいつが持ってる権利が何なのか、まだ全部判明してねえんだよ。だから最後の確認対象になってる」

 

「キュ太郎って鉱山の持ち主なの?」

 

「キュ!」

 

元気よく鳴いた。

 

返事になっていない。

 

「まあ、いいや。キュ太郎が同意するなら、これで終わりなんだよね?」

 

「終わるとは言ってねえ」

 

妖精が即答した。

 

「統合後に初めて分かる負債もある。古い契約の保証人が生きてるかどうかも怪しい。そもそも百年以上前の契約が残ってる時点で、まともな状態じゃねえ」

 

「百年!?」

 

思わず声が出た。

 

そんな昔の借金まで残っているのか。

 

銀行の手数料もひどいと思ったが、こっちもなかなかだ。

 

「じゃあ、やめた方がいいんじゃないですか?」

 

「それを決めるのは所有権を持つ連中だ。お前が勝手に決める話じゃねえ」

 

おっさんの言う通りだった。

 

僕はキュ太郎を見た。

 

「キュ太郎。どうする?」

 

「キュ」

 

キュ太郎は僕の肩から机へ移動した。

 

そして。

 

契約書の上を歩き始めた。

 

ペタ。

 

ペタ。

 

ペタ。

 

途中で止まる。

 

一度、僕を見る。

 

それから。

 

前足で契約書を押した。

 

ペタン。

 

箱が光った。

 

「おっ!」

 

妖精が目を見開く。

 

「おいおい……こいつ、同意しやがったぞ」

 

周囲がざわついた。

 

貴族たちも、鉱山関係者も、全員が契約書を覗き込む。

 

これで決まりなのだろうか。

 

ところが。

 

箱の光が消えない。

 

むしろ、どんどん強くなっていく。

 

「……おい」

 

妖精の声が低くなった。

 

「何かおかしいぞ」

 

「え?」

 

契約書の文字が変化していた。

 

今まで見えなかった文章が、裏側から浮かび上がってくる。

 

一行。

 

また一行。

 

そして最後に。

 

見慣れない署名が現れた。

 

【旧契約保証人】

 

【ガレス家】

 

【署名年月:百二十年前】

 

「ガレス家……?」

 

誰かが呟いた。

 

その瞬間。

 

貴族の一人が立ち上がった。

 

「馬鹿な……!」

 

顔色が変わっている。

 

「その名前は、現在のガレス家とは関係がないはずだ!」

 

別の貴族が慌てて書類を取り出す。

 

「待て。百二十年前の当主は……」

 

「黙れ!」

 

急に怒鳴り声が飛んだ。

 

会場が静まり返る。

 

僕には何が起きているのか、さっぱり分からない。

 

百二十年前の人が契約した。

 

それだけの話ではないのだろうか。

 

「おっさん」

 

「なんだ」

 

「これって、僕たちの鉱山の話ですよね?」

 

「ああ」

 

「なんで貴族の人たちが喧嘩してるんですか?」

 

「俺にも分からん」

 

おっさんは契約書から目を離さなかった。

 

妖精が小さく舌打ちする。

 

「……やっぱり残ってやがったか」

 

「何が?」

 

「百二十年前の保証契約だよ。こいつが有効なら、今の権利者だけで勝手に処理できねえ」

 

「つまり?」

 

「面倒が増えた」

 

知っていた。

 

この鉱山は、何かを解決するたびに面倒が増える。

 

僕は少しだけため息をついた。

 

せっかく鉱山を立て直せると思ったのに。

 

すると。

 

キュ太郎が契約書の上で再び鳴いた。

 

「キュ!」

 

箱が反応する。

 

今度は、別の文字が浮かび上がった。

 

【旧保証人の所在確認を開始します】

 

「……は?」

 

妖精が固まった。

 

貴族たちも固まった。

 

そして。

 

僕だけが首を傾げていた。

 

「おっさん」

 

「なんだ」

 

「百二十年前の人って、まだ生きてるんですか?」

 

おっさんはしばらく黙っていた。

 

そして一言。

 

「生きてたら、そいつに借金を払わせるつもりなのか?」

 

僕は考えた。

 

百二十年前の借金。

 

今の価値でいくらになるのだろう。

 

利息も付いているのだろうか。

 

中立共栄大金庫なら、きっとすごい額になっている。

 

「……やっぱり、銀行より怖いですね」

 

おっさんは笑わなかった。

 

妖精だけが、ぼそりと呟いた。

 

「いや。たぶん銀行より面倒だぞ、ここは」

 

どうやら。

 

鉱山の金策は、まだまだ終わりそうになかった。




【あとがき:現在のステータス】
【今回のステータス変化】

今回はスキル・所持金・所持アイテムに確定した変化はありません。

【投資・契約】

・鉱山権利・債務統合契約の原本を確認中
・全権利者の同意が必要
・最後の同意者としてキュ太郎が同意
・統合契約は未実行
・原本の裏側からガレス家の古い保証署名が発見される
・百二十年前の保証契約が現在も有効である可能性が浮上

【所有者選定】

現在の立場:

✅ジョンはマーカット鉱山の暫定管理者
✅旧権利者への説明と契約確認を継続中
✅キュ太郎が最後の同意者として同意
✅統合契約の実行前に新たな保証問題が発覚

【今回の進展】

✅キュ太郎が統合契約に同意
✅契約書の裏側から百二十年前の保証署名を発見
✅保証人としてガレス家の名前が浮上
✅古い保証契約が現在も有効である可能性が判明
✅原簿管理妖精ゼロが保証人の所在確認を開始

【ジョンたちの反省会?】
ジョン「おっさん、百二十年前の保証って、まだ有効なの?」
おっさん「契約次第だな」
マクダフ「旦那ぁ、百二十年分の利息が付いていたら大儲け……いや、大損ですぜ!」
ジョン「誰が払うの?」
マクダフ「そりゃあ、保証人でしょう」
おっさん「その保証人が見つからないから問題なんだろ」
ゼロ「お前ら! まだ契約の確認中だ! 勝手に借金を計算するな!」
ジョン「じゃあ、見つかるまで待てばいいんだね」
おっさん「簡単に言うな。百二十年前の人間だぞ」
マクダフ「旦那ぁ……まさか、墓地まで捜索するんですかい?」
ゼロ「黙れ!」

【次回予告】
第178話 百二十年前の保証人
ガレス家の古い保証契約。
百二十年も前の約束に、今さら責任を取る必要があるのか?
貴族たちは古い記録を探し始め、ゼロは保証人の所在確認を進める。
一方、ジョンが気にしているのは別のことだった。
「百二十年分の利息って、いったいいくらになるんだろう?」
どうやら、心配するところが少し違うようだ。

※今回から何もステータスに変化がない場合は省略することにしました。
読みやすくするために。
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