異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜 作:raixip
「おかえりなさいませ…今日は何の素材をお持ち込みですか?」
「水トカゲの皮と肉になります。買い取りをお願いします。」
「はい、水トカゲの素材ですね……おや、水袋もありますね……すべて買い取りですね。ありがとうございます。」
やはり水袋は少し価値のあるドロップらしい。
あれだけ狩って三つしか出なかったのだから、そう考えるのが自然だ。
僕は手袋を除いたすべての素材を売却した。
これを売るなんてとんでもない。
・ 水トカゲの皮:31 枚 × 10g
・水トカゲの肉:14 個 × 15g
・水トカゲの水袋:3 個 × 500g
すべての素材を売った買い取り金額は、2,020g だった。
思わず息をのむ。
一人で稼いだ金額としては、これまでで一番だ。
ただの銀貨二枚じゃない。
それに――僕には、あの手袋がある。
今日はいい日だった。
ちゃんと戦って、ちゃんと稼いだ。
夕方ごろに、僕が街に戻ってギルドによってから、露天市場での僕の料理露店ではなく、おっさんの料理露店へ向かうと、人だかりができていた。
「おい、このサンドパンとはなんだ……サンドイッチじゃないのか?昨日お前たちの露店販売の許可証は取り上げたはずだぞ」
「ちがいますわ!これはヘスサではなく『サンドパン』ですわ!兵士さんたちにはこれがサンドイッチに見えるのですか!まったくの別物ですわ!」
「ふざけるな!見た目も味もほぼ一緒じゃないか。名前を変えれば販売再開できるなどおかしいとは思わないのか!」
やっぱりこうなってしまった。
見た目も味も同じなんだ。
なぜなら同じ食材を使っているからだ。
客引きと声かけをやっている女の子も同じ。
違うのは、サンドイッチからサンドパンになったことと、料理露店の店主が僕からおっさんに変わったことだけだ。
なんだったら、このサンドパンを裏でこっそり料理して作っているのは、昨日までサンドイッチを露天市場のこの場所で料理して作っていた僕の奴隷のマクダフだ。
子どもの僕でもこんなのが通用しないと思っていたけど、やっぱり兵士さんたちに見つかってしまった。
むしろ、夕方時まで見つからずに普通に料理露店を開いて販売できていたことのほうがおどろきかもしれない。
「お客さん、困りますよー……言いがかりをつけられてはね。客商売の邪魔ですよ、これで今日のところは勘弁してください……?」
「見た目も味も一緒だが、許可証もちゃんとあるし名前も違うとなると、こちらもこれ以上の追求は…まぁ、今日のところは……」
おっさんが兵士さんに何かを渡していた。キャンディーとか渡したのだろうか。
僕は甘いお菓子が大好きだ。
あの口の中にいれたら甘い味が広がるところが好きだ。
なかなか甘いお菓子は食べられない。僕が食べた回数も、一回か、二回ほどだ。
兵士さんたちがいなくなってから、僕はおっさんたちのところへ向かった。
今日はどのくらい売れたのだろうか。
もう僕は販売許可証を持っておらず、この料理露店の店主ではないため、僕は売り上げのお金はもらえないかもしれない。
僕の奴隷のマクダフが裏でこっそり作ったサンドパンだが、表で売ってたのはエリヤであり、ここはおっさんの料理露店だ。
「やぁ、ジョン……今日もスキル上げやってきたか……?まったく、ここの兵士たちときたら節操がない。」
「ジョン、おかえり!このお店の店主も売り物の名前も違うのに、ひどい言いがかりですわ!」
「ただいま!おっさん、それとエリヤ。今日もスキル上げがんばったよ。これ、いいでしょ!」
僕は二人の前に手を差し出した。
手には水トカゲの手袋が装備してある。
初めて魔物から出たレアドロップアイテムの装備品だ。
おっさんやエリヤにすごいとほめてもらえて、マクダフなんかにとられるのではないかと思ったが、自慢せずにはいられなかった。
まぁ、ずっと手に手袋を付けているわけだから、嫌でも目に入るだろうしね。
「……なんだその手袋は」
おっさんが顔をしかめる。
「ジョン、お前水トカゲを狩ってたのか!フハハハハハ……近くから少し生臭いにおいがしてると思ったらお前か、ジョン……お前、それ呪われてるぞ」
「触ってみると少しヒンヤリしていますわ!でも、あまり見た目から言って良い物とは思えませんわ!」
さんざんな言われようだった。評価は最悪だった。
どうやら僕は臭うらしい。
河畔近くにいる水トカゲの魔物を狩っていたからだろうか、臭いには気付かなかった。
僕の鼻がおかしくなってしまったようだ。
なんだかそんなことを二人から言われていると、この僕は一生装備していようと思った水トカゲの手袋だが、僕はあまり良いものではないのではないかと思い始めていた。
装備した状態の手触りは悪くはない。
ヒンヤリとして気持ちがよく、ずっと触っていたいくらいだ。
僕が好きな感触だ。
でもよく見ると、どこかがおかしいのかもしれない。
この青黒い鱗のような模様とかカッコイイはずだったのに。
今ではこの青黒いところが問題なのではないかとも思えてくる。
料理露店の近くで生臭いにおいをさせていてはダメなので、僕はしかたなく水トカゲの手袋を外すことにした。しょうがない。
指先を引く。
動かない。
手首をつかんで引っ張る。
それでも、びくともしない。
まるで――
皮膚に張りついているみたいに。
「あ、あれ……抜けない。装備が外せないよ、おっさん!」
「フハハハハハ、ジョン、お前その装備を付ける前にちゃんと鑑定したか……?解呪スキルかスクロール類のアイテムがないと、ずっとその手袋装備したまま一生を過ごすことになるぞ」
ドロップ品の装備アイテムにも鑑定が必要だとは僕は思わなかった。
いや、少し考えれば思いついたり分かったことなのかもしれないが、僕は初めてドロップしたアイテムの装備品に目がくらんでいたのだ。
何を考えずにカッコイイと思って、水トカゲの手袋を装備してしまった。
解呪スキルや呪いを解くアイテムなど、僕は持ってもいないため、僕はこのままこの触ったらヒンヤリとして少しヌメヌメしている気がしてきた手袋を装備したまま、冒険者をやり続けなければならない。
これは困ってしまった。
とても困る。
僕の奴隷のマクダフが顔や体に傷がある大男だとすると、僕は手に呪いの傷がある冒険者になってしまった。
ちょっとカッコイイとも思ったが、冷静になっていくうちに、この水トカゲの手袋が放つ生臭さが鼻につくようになってきた。
「お、おっさん!解呪できないの?」
「残念だが、俺は解呪はできないな。解呪スクロールもアイテム類も、今のところ持っていない。ここはアナポロス教団がいる教会へ行くしかないな……こんな町の冒険者じゃ、高レベルの解呪スキル持ちもいないだろうしな」
「は、早く行こうよ!アナポロス教団の人が、僕のこの呪いの装備の解呪をしたがっているはずだよ、おっさん!」
「行こうって言われてもな……金が要るぞ。お布施だ。お前はアナポロス教団の関係者でも教徒でもないから、なさぞかし高い金額吹っかけられるだろうな……フハハハハハ」
またお金が必要になった。
この世の中、なんでもお金、お金、お金だ。
アナポロス教団の人も、困っている人がいたら無償で助けたりするのが当たり前のことじゃないのか。
助けてくれたら、僕はアナポロス教団に入信してもいいと思っている。
話せばわかる人たちだろう、教団の人って会ったことはないけど、偉い人も多いが優しい人も多いはずだ。
僕が走ってこの町にも確かにあったと思う教会へ行こうとしたときにおっさんに肩をつかまれた。
「それとな、ジョン、言いにくいのだが……この町にある教会も一応アナポロス教団の教会だが、高位の宗教人じゃないから、もう少しその呪いと付き合う必要性がある。まぁ、あと数日……いや、一週間くらいだ。気にするな、フハハハハハ」
「じゃあ、僕は最低でも一週間くらいはこのままってこと……?」
僕は手袋を見つめた。
さっきまで誇らしかった装備が、今はただの呪いにしか見えない。
生臭さも、急に強く感じる。
今日はとても良い一日だと思っていたが、どうやら最悪の一日になってしまった。
どうして僕がこう、自分一人で狩りをして冒険者としてようやくお金を稼げたと思ったら、これだ。
──この世界はまちがっている。
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 16
盾スキル 3
戦闘技術スキル 10
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
17,651g
【所持アイテム】
・蛇肉(大量)
・???のスクロール 6枚
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・木剣2本
【装備品】
・水トカゲの手袋(呪)