異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜 作:raixip
作業責任者への特別報酬として、鉱山の成果配分権が用意されており、ジョンがその継承候補として照合された。
ただし、利益を受け取るには未完了作業の責任も引き継がなければならない。
最終作業の内容は、最深部に眠る「未回収の鉱山中枢資産」の回収だった。
入場にはガレス家現当主、ジョン、キュ太郎の三者承認が必要だと判明した。
「鉱山の所有権を主張しないこと?」
僕は管理箱に表示された文章を読み直した。
『第零坑道・最深部への入場条件』
『入場者は、鉱山の所有権を主張しないこと』
『違反した場合、入場資格を失います』
「ゼロ。これってどういう意味?」
「そのままだ。入場者は鉱山の所有権を主張してはいけない」
「でも、僕は暫定管理者だよ?」
「管理と所有は別だ」
おっさんが説明した。
「管理者だからといって、鉱山のすべてを自分のものにできるわけじゃない」
「じゃあ、最深部にあるものは誰のものなの?」
「それを調べるために入るんだろ」
マクダフが横から口を挟んだ。
「旦那ぁ。所有権を主張できないなら、最深部で見つけたお宝も持ち帰れないんですかい?」
「まだお宝と決まったわけじゃない」
「鉱山中枢資産ですぜ。名前からして高そうじゃありませんか」
「名前で値段を決めるな」
僕は管理箱を見た。
「じゃあ、入場券を発行してもらえばいいんだね?」
ゼロがため息をついた。
「そう簡単にはいかない。三者の承認が必要だ」
「ガレス家と僕とキュ太郎?」
「そうだ」
そのとき、坑道の入口から騒がしい声が聞こえた。
「どけ! 道を空けろ!」
数人の護衛を連れた立派な服装の男が現れた。
胸にはガレス家の紋章。
「私がガレス家現当主、アルベルト・ガレスだ」
貴族たちが一斉に頭を下げた。
僕は小声でおっさんに尋ねた。
「この人が百二十年前の契約を知らなかった人?」
「ああ。本人が来たようだな」
アルベルトは管理箱を見るなり、顔をしかめた。
「これが問題の原簿か。百二十年前の契約など、我が家の記録には残っていない」
ゼロがすぐに反応する。
「記録がないからといって、契約が存在しないことにはならない」
「分かっている。だから確認に来たのだ」
アルベルトは古い保証契約を受け取った。
そして、署名を見た瞬間、表情が変わった。
「これは……間違いない。ガレス家の古い印だ」
「ご存じなんですか?」
僕が尋ねると、アルベルトは頷いた。
「家に伝わる古い紋章と一致している。ただし、この署名をした人物については知らない」
「じゃあ、契約は本物なの?」
「まだ断定できない。だが、調べる価値はある」
おっさんが一歩前に出た。
「最深部への入場承認についても確認してもらいたい」
「最深部?」
アルベルトは管理箱の表示を見た。
『ガレス家現当主による承認が必要です』
「なるほど。ここまで私を呼びつけた理由はこれか」
ゼロが頷く。
「そうだ。承認するかどうかは、あなたが決めろ」
アルベルトはしばらく黙っていた。
そして、僕を見た。
「君が現在の作業責任者候補なのか?」
「まだよく分からないけど、そうみたい」
「君は、この鉱山をどうするつもりだ?」
「みんなが働けるようにして、鉱山を再開したい」
「利益は?」
「儲かったら嬉しいよ」
アルベルトは少しだけ笑った。
「正直な答えだな」
マクダフがすかさず割り込む。
「当主様! 利益のことなら、あっしが専門家ですぜ!」
「君は?」
「ジョンの旦那の優秀な補佐役です!」
「優秀?」
おっさんが小さく呟いた。
「自分で言うな」
アルベルトは気にせず、管理箱に手をかざした。
「ガレス家現当主として、最深部への入場を承認する」
箱が光った。
『第一承認:完了』
「おお!」
僕は声を上げた。
残るは僕とキュ太郎だ。
「ジョン。お前も承認するか?」
おっさんが確認する。
僕は少し考えた。
最深部には何があるのだろう。
鉱石なのか、金属なのか、それとももっとすごいお宝なのか。
でも、そこには百二十年前から終わっていない仕事がある。
「うん。僕も確認したい」
僕が管理箱に手を触れる。
『第二承認:完了』
残るはキュ太郎。
ところが、キュ太郎は僕の肩で丸くなったまま動かない。
「キュ太郎、お願い」
「キュ……」
小さな毛玉が顔を上げた。
そして、管理箱に向かって軽く跳ねた。
ポン。
『第三承認:完了』
全員が息を呑んだ。
続いて、箱に新しい表示が出る。
『最深部への入場資格:取得』
『入場可能人数:三名』
「三名?」
僕は周囲を見回した。
僕、おっさん、マクダフ、ゼロ、アルベルト。
五人いる。
「誰が入れるの?」
ゼロが表示を確認した。
「承認者三名だ。つまり、ジョン、ガレス家現当主、キュ太郎だな」
「ええっ!?」
僕はおっさんを見た。
「おっさんは?」
「入れないらしいな」
「マクダフは?」
「当然、入れませんぜ!」
マクダフが胸を張った。
「なぜお前が誇らしげなんだ」
アルベルトが管理箱に尋ねた。
「護衛は同行できないのか?」
『入場資格のない者は立入禁止』
『例外なし』
その表示を見て、マクダフが急に真顔になった。
「旦那ぁ……これは困りましたな」
「何がだ?」
「お宝があった場合、ジョンの旦那と当主様だけで運び出すことになりますぜ」
おっさんが呆れた顔をした。
「まだお宝があるとも限らないだろ」
そのとき、管理箱の奥から低い音が響いた。
ゴゴゴゴ……。
壁の一部がゆっくりと動き始める。
その先には、下へ続く長い階段が現れた。
そして、入口の上に文字が浮かび上がる。
『第零坑道・最深部』
『最終作業開始まで残り一工程』
僕は階段を見つめた。
百二十年前から続いている仕事。
その最後の一工程が、いよいよ始まろうとしていた。
ところが、階段の先から聞こえてきたのは――。
「……まだ、誰かいるのか?」
人の声だった。
【あとがき:現在のステータス】
【投資・契約】
・鉱山権利・債務統合契約の原本を確認中
・キュ太郎が最後の同意者として同意
・統合契約は未実行
・ガレス家の百二十年前の保証契約が発見される
・ガレス家現当主アルベルト・ガレスが鉱山に到着
・ガレス家現当主が最深部への入場を承認
・ジョンが最深部への入場を承認
・キュ太郎が最深部への入場を承認
・三者の承認により最深部への入場資格を取得
・入場可能人数は三名
・入場資格のない者は同行不可
・第零坑道の最終作業開始まで残り一工程
【所有者選定】
現在の立場:
✅ジョンはマーカット鉱山の暫定管理者
✅キュ太郎が統合契約の最後の同意者として同意
✅ガレス家現当主アルベルト・ガレスが登場
✅最深部への入場に必要な三者承認が完了
✅ジョン、アルベルト、キュ太郎の入場資格を取得
【今回の進展】
✅ガレス家現当主が百二十年前の保証契約を確認
✅ガレス家の古い印が本物と一致
✅ガレス家現当主が最深部への入場を承認
✅ジョンとキュ太郎も承認
✅第零坑道の最深部への扉が開く
✅最深部から謎の人物の声が聞こえる
【ジョンたちの反省会?】
ジョン「おっさん、三人しか入れないんだって」
おっさん「そうらしいな」
マクダフ「旦那ぁ! あっしが入れないのは納得できませんぜ!」
ゼロ「承認者以外は入れない。規則だ」
マクダフ「では、あっしも承認者にしてください!」
ゼロ「お前にその資格はない」
マクダフ「なぜです! あっしはジョンの旦那の補佐役ですぜ!」
おっさん「補佐役なら、ここで荷物番でもしてろ」
マクダフ「荷物番ですか……報酬は?」
ジョン「おっさん、マクダフにもお給料をあげたほうがいいのかな?」
おっさん「いや、あいつは給料を払うと仕事をしなくなる」
マクダフ「旦那ぁ! それは偏見ですぜ!」
ゼロ「お前ら、最深部から声が聞こえたことを忘れてないか?」
ジョン「あっ、そうだった!」
マクダフ「……旦那ぁ。もし中に幽霊がいたら、あっしは外で待っていてもいいですかね?」
おっさん「最初から外にいるだろ」
【次回予告】
第182話 百二十年ぶりのお客さん
第零坑道の最深部へ続く階段。
その奥から聞こえてきたのは、確かに人間の声だった。
百二十年前の最終作業から、誰も立ち入っていないはずの場所。
そこにいるのは一体誰なのか。
ジョンたちは慎重に階段を下りていく。
そして、最深部で待っていた人物は、予想外の第一声を放つ。
「遅い! 何年待たせるつもりだ!」
百二十年前から待っていたのか。
それとも、もっと別の事情があるのか。
マーカット鉱山の秘密が、ついに姿を現し始める。