異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜   作:raixip

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第23話 亜人との出会いと、金貨一枚の価値

この社会の仕組みはどこかおかしい。

子どもの僕がそう思ってるんだから、きっとおかしいに決まっている。

 

僕は何も考えずに宿屋の周りを走りながら、ずっと頭の中では今日の出来事について考えていた。

 

町は夜で、普段はあまり人がいないが、お祭りが近いため多くの大人の人たちがその準備を進めていた。

こんな時間帯なのに、たくさんの大人たちがいるのだ。

だから、いつもの町の夜よりも、この時期の夜は僕は怖くはない。

 

「おーい、こっちだ。こっち!ここにあるので全部だ。全部祭りで使う道具だからな、慎重に扱ってくれよ……」

 

「はいはい。分かってますよ。あれ、この小さい箱もですかい……?ずいぶんと箱が傷だらけですが、俺じゃないですよ、これやったの……」

 

「はい、一回でいい!分かってる、分かってる。その傷だらけの箱も運んでくれ。くれぐれも落としたりするなよ……」

 

こんな時間帯なのに、露天市場のほうでは朝のお店が開いている時と同じくらい人がいる。

走ってくると言って何も考えずに宿屋を飛び出したはいいが、結局僕はこの露天市場のほうへ来てしまった。

町の外に出るのは怖いし、町中だからといって夜中にあまり知らない場所まで走っていくのは、僕は怖いのだ。

 

特にやることもないため、お祭りの準備をしている大人の人たちを少し遠くのほうから、ジャマにならないように離れたところで見ていた。

僕が見たところ、今年は去年のお祭りのときよりも出店が多いようだ。

僕はうれしかった。

 

――今年は、ちゃんと楽しめる。

 

お金のことを考えると、どうしても今日の銀行での出来事を思い出してしまう。

 

今日は、目標だったスキルまで上げることができた。

僕自身も強くなって、ギルドカードだって進化した。

 

――それなのに。

 

あの銀行で、僕の大事なお金が減っていた。

預けただけなのに、勝手に取られていたのだ。

あんな場所が、この町の中心にあるなんて思いもしなかった。

 

銀行は安全な場所だと思っていた。

でも実際は、何も知らない人間からお金を取る、まるで悪魔みたいな場所だった。

 

それに――

 

どうしておっさんは、あのとき何も教えてくれなかったんだろう。

銀行に行こうと言ったのは、おっさんなのに。

 

たしか、銀行の人の名前はルキウスとか言っていたはずだ。

僕にあの技書を売ったおっちゃんと同じく、あの人も「相手にするべき人物リスト」に入れておくことにした。

 

今の僕は、まだ初心者冒険者だ。

だけど――

 

上級冒険者になれたら、あの人にも対抗できるだろうか。

いや、そこまでいかなくても、中級冒険者になれば勝てるかもしれない。

 

そう考えると、少しだけ気が楽になった。

 

おっさんは、いつこの町を出るつもりなんだろう。

できれば僕は、祭りを楽しんでから次の町へ行きたいと思っている。

それに、もう少しここで金策もしておきたい。

 

……けれど、お金のことを考えると、どうしても銀行のことを思い出してしまう。

 

このままじゃダメだ。

頭を切り替えないと、何をしていても引きずってしまう。

 

魔物を倒していいドロップが出ても、

喜ぶ前に「いくらで売れるか」を考えてしまう。

そのたびに、ルキウスの顔が頭に浮かぶ。

 

――あの銀行。

 

マクダフが言っていた通り、あそこは僕がどうにかしないといけないのかもしれない。

 

でも、今の僕にはやり方なんて分からない。

子どもの僕に、あんな場所をどうこうできるはずもない。

 

それでも――

 

スキル上げだって、最初は分からないことだらけだった。

気づけば、やり方が分かるようになっていた。

 

だったら、これも同じなのかもしれない。

いつか、その方法が分かる日が来るのかもしれない。

 

「おや、こんな時間に散歩かい、少年……?」

 

突然、声をかけられた。

振り向くと、暗がりの中に小さな露店があった。

 

何を売っているのか、よく見えない。

こんな時間に露店なんか開いて、売れるものなのだろうか。

 

「うわっ……おどろいた。こんな場所で何を売ってるの……?」

 

「ここはね、少年……いいものを売ってるんだよ……いいものをね。限られた人しか買えない品物ばかりだよ。おっちゃんには、この時間帯じゃないとこんな場所では大っぴらに活動できないからね。どうだい?君にはこれなんかおすすめだよ……」

 

おっちゃんが僕に見せてくれたのは、僕は見たこともないモノだった。首から下げるようなデザインで、これがどんな効果があるのかなど、僕にはわからなかった。装備品だとすると、何かすごい効果があるのかもしれない。

 

「それって、装備品か何かなの……? 初めて見るものだけど、どんな効果があるの……?」

 

「これはね、『骨護札』と言ってお守りみたいなものだよ。俺にはもう役に立たないモノだが、そうだな、金貨 1 枚でどうだ……」

 

金貨一枚――

 

「コツゴサツ……って言うんですね。カッコよさそうだけど、金貨 1 枚なんて今の僕にはとても……なんで僕なんかの子どもに?子どもの僕はその限られた人じゃないと思うんだけど……」

 

「……懐かしい匂いがしたからな」

 

あー、またこの生臭いにおいがしていたのだった。

もう僕の周りの人は慣れてしまっていたため、みんなが慣れているものだと思っていたが、初めて会う人にはあまりよいにおいではないようで、少し目立つようだ。

 

「この手に装備している『水トカゲ』の手袋のせいかもしれません……? おっちゃんってもしかして……」

 

「ああ、そうだよ。亜人だよ……驚いたかい?」

 

僕は初めて亜人にあった。

暗闇の中で見えた顔は、トカゲのようだった。

 

僕は思わず一歩引いた。

 

物語で出てくる亜人に僕は普通に会話をしてしまっているのだ。

亜人とされる種族は、ヒューマンとは相いれない存在であり、敵対していると物語で聞いたことがあったからだ。

 

亜人とは、人型の異種族で、様々な種族をひとくくりにして僕たちが読んでいるものだ。前にあったドワーフのブルロックさんも、ヒューマンからしたら亜人種とされている。

亜人種の中でもかなりの格差があり、同じヒューマンの人種として扱われる人もいれば、魔物側となんら変わりのない人種として扱われる人たちもいる。

亜人がこっちのほうが多いとされる。

 

「お、おっちゃん……ぼ、僕を食べるの……? おいしくないよ」

 

「食べない、食べない……亜人に会ったのは初めてかい……ここではあまり『かげない』においが君からしてつい、話しかけてしまった。仲間が化けているのかと思ったが、違ったか……」

 

「ぼ、僕はただのヒューマンだよ。亜人ってヒューマンになったりできるの……?」

 

「ああ、一部の亜人はね……みんなが化けられたらいいんだけどね。森の長耳なんかも、ヒューマンに化けてる奴もいるぞ。」

 

亜人がヒューマンになれるなんて知らなかった。

もしかしたらおっさんやマクダフ、エリヤなんかも、亜人な可能性が出てきてしまった。

僕の近くにはひょっとしたら亜人の人がたくさんいたりするのかもしれない。

僕が知らないだけで、毎日亜人と接している可能性もある。

 

森の人ってだれのことだろうか。

亜人ではない違う種族の人も、ヒューマンになって生活をしているとは僕はおどろいた。

なんでわざわざヒューマンになっているのだろうか、亜人のままではだめなのだろうか。

 

「金貨 1 枚は半分は冗談さ……君にこの骨護札をあげよう。きっと君の役に立つだろうからな。これはずっと首にかけておけ。だが、装備していることを見せてはだめだ。」

 

「えっ、おっちゃんこんなカッコイイ装備くれるの……? うん。わかったよ。金貨 1 枚もする装備見せてたら、盗られるかもしれないからね、マクダフなんかに」

 

「ああ、見つかればこの骨護札は取り上げられる可能性が高いからな。十分に気をつけろよ。もう夜も遅い……危ないヒューマンが来る前に、子どもは家に帰るんだな。」

 

僕は金貨 1 枚もする装備品をタダでもらってしまった。

銀行で銀貨 10 枚を盗られたとか、ささいな事でしかないのだ。

いつまでもそんなことを言っていてもしょうがない。

僕も大人にならなければならない時なのだ。

こんな時間帯だが、宿屋から外に飛び出してとてもよかった。

もし宿から出ずにずっとイスに座って怒っていたら、こんないい思いはできなかっただろう。

僕は運がとても良いのだ。

初めての金貨 1 枚もする装備品だ。

この装備品を手に入れられたのも、この『水トカゲ』の手袋のおかげだといえる。

やはりこの『水トカゲ』の手袋は、一生外さなくても別にいいのかもしれないと僕は思った。

生臭いにおいについては、なんとかして水気を常に維持していれば問題ないのだ。

この呪われた装備を解呪するのだってお金がかかるのだ。

もし装備を外さなければ、ずっと呪われたままだけどお金はかからないのだ。

今の僕には、お金についてはずっと死活問題でもあるのだ。

 

あたりはすごく暗くなっていた。

もう宿屋に帰って眠らないと、明日の朝にひびいてしまう。

明日は何をやるのだろうか、僕はまだ知らない。

スキル上げは昨日ようやく終わったのだから、今日くらいはゆっくりしてもいいのではないかと思うが、おっさんに聞いてみよう。

 

僕はスキップしながら宿屋へ帰った。

首には、さっき手に入れたカッコいい骨護札を下げている。

 

部屋に戻ると、マクダフはすでにベッドでぐっすり眠っていた。

 

……つまり今日も、僕の寝る場所はない。

 

イスに座ったまま眠るか、

それとも床に寝転がるか――どちらかだ。

 

この問題について僕は解決しなくてはならない。

ご主人様である僕が床で、奴隷のマクダフがベッドで眠っているのだ。

しかもこの宿屋のお金は、僕は支払っている。




【あとがき:現在のステータス】

【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13

■生産系
料理スキル 13

■その他
鑑定スキル 0.3

【所持金】
671g(銀行預け金:銀貨9枚)

【所持アイテム】
・蛇肉(大量)
・???のスクロール 6枚
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・木剣2本

【装備品】
・骨護札の首かざり
・水トカゲの手袋(呪)
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