異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜 作:raixip
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
乾いた声が、やけに広く感じる銀行の中に響いた。
「これを預ける」
低くぶっきらぼうな声。カウンターの上に、無造作に置かれたのは――重そうな革袋と、鈍く光る装備品。剣が二振りに、指輪がひとつ。革袋の口は緩く縛られているだけで、中身が硬貨だと一目で分かる。
「こんな町じゃ金にならねぇ。祭りだってのに、金持ってるやつがいない。……それに、ここなんか生臭くないか?」
男が鼻を鳴らす。
(……来た)
僕はカウンターの下で、息を潜めている。
逆さまポーション。
透明状態。
ここから動くわけにはいかない。
――動いたら終わり。
「装備品2点、消耗品3点。お預かりいたします」
受付嬢は淡々と告げる。その手つきは滑らかで、迷いがない。まるでこの場のすべてを把握しているかのように。
(すごい……)
本当にやるんだ。
目の前で。
これが――
“バンステドロップ金策”。
最初に聞いたときは、何を言っているのか分からなかった。ただの冗談か、あるいは初心者をからかうための作り話だと思っていた。
だって、やってることは――
(どう見ても、泥棒だろ……)
しかし、おっさんは笑って言った。
「捕まらねぇよ」
その時の顔を思い出す。確信に満ちていて、何度も成功してきた人間の目だった。
理由は単純だった。
――銀行のルール。
ここは普通の施設じゃない。ギルドでもなければ、兵士の管轄でもない。完全に独立したシステムで動いている。
そして――
「カウンターに置かれた物が“落ちた瞬間”、ルート権が消える」
つまり。
床に触れた時点で、それは誰の物でもなくなる。
拾ったやつの物になる。
(おかしいだろ……)
何度考えても納得はできない。でも、納得する必要はない。
それがルールなら、それに従うだけだ。
そして今――
その“瞬間”を狙っている。
祭り最終日。
町はまだざわついているが、商人たちは帰り支度を始めている。
売り切れなかった商品、得た利益、換金したアイテム――それらを安全に保管するために、銀行へと運び込む。
つまり。
高価な物が、一斉に動く日。
(でかいのが来る……)
喉が渇く。唾を飲み込む音さえ大きく感じる。
だが、動けない。
ただ、待つ。
――20分。
練習してきた通りに。
呼吸を抑え、気配を消し、ただ機会を待つ。その間、頭の中では何度もシミュレーションを繰り返す。
(なんでわざわざ見せるんだ……?)
答えは、ここに来てようやく腑に落ちた。
――見せたいからだ。
金。
装備。
レアアイテム。
「俺はこれだけ持っている」
そう誇示したい。優越感に浸りたい。誰かに見せびらかしたい。
銀行のカウンターは、そのための舞台だ。
(……隙だらけだ)
だが、この金策は一度きり。
同じ銀行では、二度と使えない。警戒されるか、仕組みが修正されるか――いずれにせよ、次はない。
だからこそ。
失敗は許されない。
足の感覚はほとんどない。しびれが膝から太ももに広がっている。それでも構わない。
(いける……)
視線は一点に固定されている。
カウンターの端。
ほんの少しでもバランスを崩せば、そこから滑り落ちる位置。
革袋の口が、わずかに緩んでいるのが見える。
受付嬢が手を伸ばす。
男が腕を組む。
ほんの一瞬。
ほんのわずかなズレ。
それだけでいい。
――落ちろ。
胸の奥が、じわりと熱くなる。
怖い。
見つかったら終わりだ。信用も、拠点も、すべて失うかもしれない。
でも、それ以上に。
心臓が高鳴る。
(やってやる)
その瞬間を、待ちながら。
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
671g(銀行預け金:11,250g(銀貨11枚、銅貨2枚、半銅貨5枚))
【所持アイテム】
・蛇肉(大量)
・???のスクロール 6枚
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・木剣2本
【装備品】
・骨護札の首かざり
・水トカゲの手袋(呪)