異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜   作:raixip

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第34話 ドーピングされたゴブリンで無双するはずが――八百長コロシアム開幕

モンスターコロシアムへ向かうものだと思っていた僕に、おっさんはまったく別のことを言い出した。

 

「その前に“仕込み”だ。勝つためのな」

 

「仕込み……?」

 

 意味が分からず首をかしげる僕をよそに、おっさんはすでにテイム済みのゴブリンの前に立っていた。

 

「こいつにドーピングをする」

 

「ドーピング……?」

 

 聞き慣れない言葉に戸惑う僕を置いて、おっさんはアイテムボックスからいくつかの道具を取り出す。

ガラス瓶に入った透明な液体、金属製の小さな錠剤、そして奇妙な形状の針。

 

「簡単に言えば強化だ。ただし普通の強化じゃない。“従わせる”ための強化だ」

 

 そう言って、おっさんはゴブリンの口元に液体を注ぎ込んだ。

 

 ゴブリンの目が一瞬、鋭く光る。

 ゴブリンは嫌がりながらも飲み込む。

 

「……ギィ」

 

 さっきまでの個体とは明らかに違う空気をまとい始めていた。

 

「これで人の言葉をある程度理解する。あとは――」

 

 おっさんが次に取り出したのは、見たことのない武器だった。

 

 細長く、金属製で、どこか異質な形状をしている。

 銃身は短く、トリガーも特殊だ。

 

「これは銃っていう武器だ。ドワーフに作らせた特注品だ」

 

「じゅう……?」

 

 剣でも槍でもない武器に、思わず目を奪われる。

 

 それを、おっさんはためらいなくゴブリンに渡した。

 

「え、ちょっと待って。それ僕のゴブリンだよね!?」

 

「そうだな。だから強くしてる」

 

 そういう問題ではない気がした。

 

 明らかに自分より良い装備を持つゴブリン。

 

 正直、複雑な気持ちになる。

 

 というか――

 

 どう見ても、僕より強そうだ。

 

「いいか。こう構えて――引く」

 

 おっさんはゴブリンに銃の扱いを教え始めた。

 

 ぎこちない動きながらも、ゴブリンはそれを真似る。

 

 引き金を引く、照準を合わせる。

 

 理解している。

 

 本当に、理解しているのだ。

 

「すごい……」

 

「知能が上がれば命令は通る。問題ねぇ」

 

 問題しかない気もするが、ゴブリンは素直に従っていた。

 

 むしろ、異様なほど従順だ。

 

 マクダフより扱いやすいのではないかと思うほどに。

 

 野生の本能と、人間のような理性が混ざり合い、完璧な「兵器」として生まれ変わ

 っている。

 

(この銃で、マクダフを一度撃たせて威力を確かめたい……)

 

 そんな考えが一瞬よぎったが、口には出さなかった。

 

 その後、僕たちは村の近くでゴブリン討伐を行った。

 

「よし、やれ」

 

「ギィッ!」

 

 戦っているのは僕ではない。

 

 僕のゴブリンが、別のゴブリンを狩っている。

 

 ゴブリンがゴブリンを狩る光景。

 

 言葉にしづらい違和感が残る。

 

 しかし、その効率は圧倒的だった。

 

「これでいい。効率が段違いだろ?」

 

「……うん」

 

 確かに強い。

 

 銃を持つゴブリンは、近接武器しか持たない個体に対して圧倒的だった。

 

 遠距離攻撃を一方的に叩き込める以上、接近戦に持ち込まれる前に決着がつく。

 

 討伐はあっという間に終わった。

 

 その後、ギルドでクエストを報告し、報酬を受け取る。

 

 複数のゴブリンを狩って今回の報酬は3,000gだった。

 

 もちろん、おっさんと報酬は半分こだ。

 

 薬草採取よりは稼げるが、ゴブリン討伐自体は単価が低い。

 

 だが数をこなせば安定した収入になる。

 

 定期的な周回依頼としては悪くない。

 

「よし、準備は整ったな」

 

 おっさんがニヤリと笑う。

 

「いよいよ本番だ。モンスターコロシアムだ」

 

 その日の午後。

 

 僕たちはコロシアムへ向かった。

 

 登録したばかりだというのに、すぐ試合に出場することになっていた。

 

「そんなにすぐ出られるの?」

 

「新人枠は余りやすい。ちょうどいい」

 

 会場は想像以上に広い。

 

 歓声、怒号、笑い声が混ざり合い、空気は熱気に満ちていた。

 

 檻の中では魔物同士が戦っている。

 

 血の匂いが漂う。

 

 ここは見世物であると同時に、紛れもない戦場だった。

 

「これが……モンスターコロシアム……」

 

「怯えるな。俺たちは“勝つ側”だ」

 

 おっさんは楽しげに言う。

 

 そして、低く続けた。

 

「いいかジョン。ここにはな、“結果が決まっている試合”がある」

 

「え……?」

 

「八百長だ」

 

 やはり、そういう仕組みなのか。

 

「だが、それを逆手に取る」

 

「どうやって……?」

 

「決まっている“はず”の結果を崩す。新人が勝てば、オッズは跳ね上がる」

 

 その意味は、まだ完全には理解できなかった。

 

 しかし一つだけは分かる。

 

 これは純粋な戦いではない。

 

 ――金を動かすための場だ。

 

「第一試合、準備しろ」

 

 係員に呼ばれる。

 

 対戦相手は、同じ新人だが勝率の高い個体らしい。

 

 心臓が強く鼓動する。

 

 檻の向こう側には、別のゴブリンがいた。

 

 棍棒を振り回し、暴れるように待機している。

 

 だが――

 

 どこか僕のゴブリンと比べると弱々しい。

 

「……あれ?」

 

「気づいたか?」

 

 おっさんが小さく笑う。

 

「相手は“勝ち役”だ」

 

「じゃあ……」

 

「本来は、あっちが勝つ試合だ」

 

 背筋に冷たいものが走る。

 

 だが――

 

 僕のゴブリンは違う。

 

 銃を持ち、言葉を理解する存在。

 

 通常の枠には収まらない。

 

「行け、パック!」

 

 檻が開く。

 

 僕のゴブリンが一歩踏み出す。

 

 そして――

 

 試合が始まった。

 




【あとがき:現在のステータス】

【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13

■生産系
料理スキル 13

■その他
鑑定スキル 0.3

【所持金】
2,171g(銀行預け金:11,250g(銀貨11枚、銅貨2枚、半銅貨5枚))

【所持アイテム】
・蛇肉(大量)
・???のスクロール 6枚
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・木剣2本
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)

【装備品】
・骨護札の首かざり
・水トカゲの手袋(呪)
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