異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜 作:raixip
第一試合が始まった。
リングの中央には、棍棒を持ったゴブリンが立っていた。
対するこちらもゴブリン――だが、決定的に違う点がある。
僕のゴブリン、パックは、ドワーフ製の特注銃を構えていた。
遠距離対近接。
通常であれば、それだけで勝敗は決まる。
――だが、この試合は“そういうものではない”。
僕たちは負けることになっていた。
「こっちは捨て試合だな」
「オッズ見ろよ、偏りすぎだろ」
観客の声が耳に入る。
負ける側は、最初から決まっている。
それが、このコロシアムの“仕組み”だった。
「来るぞ」
マクダフが低く呟く。
相手のゴブリンが駆け出した。
だが、その動きはどこか不自然に鈍い。
勝敗が戦う前に決まっているのだから相手のゴブリンは余裕ぶっている。
――わざとらしい。
(やっぱり……)
そう思った瞬間だった。
――パンッ。
乾いた銃声が響く。
パックが発砲した。
僕は命じていない。
それでも弾は正確に、相手の額を撃ち抜いていた。
「……は?」
誰かが間の抜けた声を漏らす。
一拍遅れて、ゴブリンが崩れ落ちた。
それで終わりだった。
あまりにも、あっけない。
会場が静まり返る。
そして次の瞬間――爆発するようなざわめきが広がった。
「おい今のなんだ!?」
「聞いてねぇぞこんなの!」
「仕込みだろ!? やり直せ!」
違う。
仕込みが崩れたのだ。
本来、この試合は“負ける側”が決まっていた。
しかし僕たち”負ける側”は――”勝ってしまった”。
「くくっ……」
マクダフが笑う。
「旦那ぁ……これは完全に台本崩壊ですぜ」
「予定が狂った時が一番荒れる。オッズは五倍だ」
おっさんも、どこか楽しげだった。
貴賓席の一角。
一人の男が椅子を蹴り飛ばして立ち上がる。
――王国竜騎士団、副隊長。
どうやら相当な額を賭けていたらしい。
彼の視線は、パックから離れず、激しい怒りを宿していた。
「ふざけるな……!」
怒声が会場に響く。
「……あーあ」
マクダフが肩をすくめる。
「でかいとこ敵に回しましたぜ」
「問題ない」
おっさんは軽く言う。
「向こうも“やってる側”だ。表沙汰にはできん」
その時だった。
懐の指輪が、わずかに熱を帯びた。
(……今のは?)
一瞬の違和感。
だが確認しても、すぐに元に戻る。
しかし――
「……おい、あのガキ」
観客席の後方。
フードを被った男がこちらを見ていた。
「なんでそれを持ってる……?」
小さな声だったが、確かに聞こえた。
「ジョン、行くぞ」
おっさんの声で意識が引き戻される。
試合は終わった。
だが、余波はこれからだ。
控室へ向かう途中、呼び止められた。
「いや〜、見事だったよ。とんだ番狂わせだ」
「おやおや~、始まる前に”君たち”は聞いてなかったのかな……?」
振り返ると、派手な服の男が立っていた。
この施設――バッサーニオのオーナーだ。
「丁度良い……君たち、“参加”しないか?」
その言葉に、おっさんは即答した。
「断る」
一瞬で空気が凍る。
「……本気で言っているのか?」
低い声が圧を帯びる。
「この誘いの意味、分かっているはずだ!」
「分かってるさ」
おっさんは笑った。
「だから断ってる」
オーナーは僕たちの姿をじっと見つめる。
「次戦は、誰だ?」
「まだ決まってねぇ」
「……ふん」
オーナーは深く息を吸い込み、再び笑う。
「じゃあ、楽しみにしてる」
その言葉は、脅しでも誘いでもなく、単なる”期待”だった。
あるいは、”罠”かもしれない。
そのまま背を向けて歩き出す。
僕とマクダフも後に続いた。
背中に突き刺さる視線を感じながら、私たちはコロシアムの奥へと歩を進めた。
そして翌日。
太陽が高く昇り、コロシアムは再び賑わいを帯びていた。
しかし、僕たちの前にあるのは、昨日とは全く異なる状況だった。
第二回戦。
アナウンスが場内に響く。
「対戦カード変更――」
ざわめきが広がる。
「露骨だな……」
マクダフが呟いた。
続いて告げられる名前。
「前回大会、準優勝者――」
観客がどよめく。
「潰しにきたか」
おっさんが、面白そうに笑った。
試合は、さらに面倒な局面へと進んでいく。
リングの中央に現れたのは、巨大な”ゴーレム”だった。
石と鉄で固められた、高さ 3 メートルを超える巨体。
その重厚な装甲は、単なるモンスターではない。
”圧倒的な力と防御力”。
「……これは、本物の戦いだ。やらせではない。」
僕はパックを見つめる。
昨日は「遠距離対近接」で簡単に勝てたが、今回はどうなる?
パックの銃は、この巨体を貫通できるか?
あるいは、この巨体がパックを押しつぶす前に、どうやって攻撃を仕掛けるのか?
「ゴブリンは“弱い”からだ」
昨日おっさんが言った言葉が、今、頭をよぎる。
なぜ「弱い」ことが重要なのか。
なぜ、この巨体と戦う必要があるのか。
「ジョン。さぁ二回戦の始まりだ。」
マクダフが僕に声をかける。
「次こそは、本当に本番ですぜ」
僕は深く息を吸い込み、パックの肩を叩いた。
「行くぞ、パック」
パックは、銃を構える。
その瞳には、昨日と同じ冷静さ、そして何かが宿っていた。
”「決まってる」勝敗を、どうやって壊すか”。
”その答えは、今、このリングの中央で始まる”。
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
2,171g(銀行預け金:11,250g(銀貨11枚、銅貨2枚、半銅貨5枚))
【所持アイテム】
・蛇肉(大量)
・???のスクロール 6枚
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・木剣2本
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)
【装備品】
・骨護札の首かざり
・水トカゲの手袋(呪)