異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜   作:raixip

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第38話 ケムトレイルの名を持つ群れ

この森は、長いあいだ荒らされ続けていた。

 

冒険者たちによって。

 

草は踏み荒らされ、木は折られ、

薬草は根こそぎ採り尽くされている。

 

残ったのは、価値のないものだけだった。

 

壊れかけの武器。

欠けた防具。

売れ残った道具。

腐った食料。

 

――捨てられたものばかり。

 

最初は、ごく一部の冒険者だけだった。

 

人目を避け、こっそりと森の奥へ捨てる。

 

処分には金がかかる。

だが、ここならタダだ。

 

それが広まるのに、時間はかからなかった。

 

やがて、それは“当たり前”になる。

 

誰も咎めない。

誰も気にしない。

 

暗黙の了解。

 

――ここは、捨て場だ。

 

森は広い。

 

どれだけ捨てても、すぐには埋まらない。

 

だから、捨て続ける。

 

考えることもなく。

 

積み重なっていく。

 

壊れたもの。

腐ったもの。

価値のないもの。

 

そして――

 

そこに、いた。

 

ゴブリン。

 

この森で生きてきた存在。

 

奪われ、踏み荒らされ、追い立てられながらも、

ただ耐え続けてきた。

 

だが。

 

その手には、今、武器がある。

 

捨てられたもの。

だが、使えるもの。

 

拾い、握り、振る。

 

学び、真似し、群れになる。

 

与えられたのではない。

奪ったのでもない。

 

――残されたものを使っただけだ。

 

そして今。

 

それは、力になっている。

 

森の奥で、動きが変わる。

 

個ではない。

 

群れが、動く。

 

静かに。

確実に。

 

長く虐げられてきた存在たちが――

 

ついに、立ち上がる。

 

 

 

森の奥。

 

腐肉に群がる魔物の中に、異質な一体がいた。

 

ゴブリン。

 

両手に、木剣を持っている。

 

一本ではない。

 

――二本。

 

かつて捨てられたものだ。

 

拾い、握り、振る。

 

最初はぎこちない。

 

だが、動きはすぐに変わり始めた。

 

斬る。

払う。

避ける。

 

――学んでいる。

 

周囲のゴブリンたちが、それを見ていた。

 

ただ見ているだけではない。

 

真似る。

 

近くに転がる武器を拾い、同じように振る。

 

捨てられていた剣。折れた槍。使い古された棍棒。

 

それらを手に取り、動きをなぞる。

 

個ではなく、群れとして。

 

中心にいるのは――二刀のゴブリン。

 

やがて、その個体が先頭に立つようになる。

 

誰が決めたわけでもない。

 

だが、従っている。

 

自然に。

 

夜。

 

森に近い村が襲われた。

 

音もなく始まり、瞬く間に崩れる。

 

柵は越えられ、扉は破られ、灯りは消えた。

 

悲鳴が上がる。

 

「逃げろ!」

「魔物だ!」

 

村人たちは散り散りに逃げる。

 

だが、遅い。

 

動きが違う。

 

連携している。

 

――囲まれている。

 

「これはケムトレイルが原因だ!」

「ケムトレイルのせいで魔物がおかしくなったんだ!!」

 

混乱の中、誰かが叫ぶ。

 

意味はない。

 

ただの責任転嫁。

 

だが――

 

その言葉を、聞いた者たちがいた。

 

森の中のゴブリンたちだ。

 

二刀の個体が、動きを止める。

 

「……ケム……トレイル……」

 

音をなぞる。

 

意味は分からない。

 

だが、“呼ばれた”ことは理解した。

 

自分たちを指している。

 

そう認識する。

 

周囲の個体も、それを繰り返す。

 

「ケムトレイル」

 

「ケムトレイル」

 

やがて、音は一つにまとまっていく。

 

一体ではない。

 

一匹でもない。

 

――群れそのもの。

 

「……ケムトレイル」

 

二刀のゴブリンが、静かにうなずいた。

 

それが名だと。

 

自分たちは、それだと。

 

個ではない。

 

全員で一つ。

 

欠けることなく、一つ。

 

私たちは――ケムトレイル。

 

夜が明ける頃。

 

村は、ほぼ壊滅していた。

 

生き残りは、わずか。

 

その目は焦点を失っている。

 

翌日、昼。

 

ポーシャの町。

 

竜騎士団に報せが入る。

 

「近隣の村が襲撃を受けた。壊滅状態だ」

 

すぐに数名が派遣された。

 

現場に到着した彼らが見たのは――

 

崩れた家屋。

倒れた柵。

焼けた痕。

 

そして、沈黙。

 

「……ひどいな」

 

一人が呟く。

 

「生存者は?」

 

「数名だけだ」

 

保護された村人は震えていた。

 

話しかける。

 

だが――

 

「……ケムトレイルが……」

 

それしか言わない。

 

「ケムトレイルの……せい……」

 

何を聞いても同じだった。

 

「……錯乱しているのか?」

 

「それとも、何かの名前か……」

 

竜騎士たちは顔を見合わせる。

 

だが、答えは出ない。

 

その頃。

 

森の奥。

 

ケムトレイルは、動いていた。

 

二刀のゴブリンが、立ち止まる。

 

何かを探している。

 

匂い。

記憶。

感覚。

 

――与えられたもの。

 

壊れかけの木剣と、真新しい木剣。

 

破壊と再生。

 

その両方を手にした存在。

 

それを与えた者。

 

自分を変えた者。

 

「……」

 

ゆっくりと顔を上げる。

 

方向が定まる。

 

探すべき対象が、決まった。

 

ケムトレイル達は進む。

 

一つの意思として。

 

――ジョンを。




【あとがき:現在のステータス】

【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13

■生産系
料理スキル 13

■その他
鑑定スキル 0.3

【所持金】
2,171g(銀行預け金:11,250g(銀貨11枚、銅貨2枚、半銅貨5枚))

【所持アイテム】
・???のスクロール 6枚
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)

【装備品】
・骨護札の首かざり
・水トカゲの手袋(呪)
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