異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜 作:raixip
「勝負は一瞬だったな。ちょっと目を離したら終わってたぜ」
「クソが!!こんなの八百長だ!!俺は全財産賭けてもいい!!」
「竜がゴブリンに負けるかよ……でも、見たんだ。確かに」
試合後――
会場は、荒れていた。
罵声。
怒号。
飛び交う賭け札。
椅子が飛び、酒が飛び、
投げられるものはすべて投げられる。
あまりに頭に血が上り、
隣にいた自分の子供をコロシアム内に投げた馬鹿親までいた。
貴賓席からも誰かがブチギレた様子がうかがえた。
地獄だ。
だが――貴賓席の一部の人はとても喜んでいるようにも見えた。
知ったことか。
「……まったく」
俺は舌打ちする。
あのガキ。
余計なことをしやがって。
爪は危ないと言っただろうが。
なのに、あのゴブリン。
銃で、的確に爪を狙ってきやがる。
違う。
そこじゃない。
羽だ。
羽を撃て。
何度、叫びそうになったことか。
危うくバレるところだった。
……どいつもこいつも、使えん。
竜騎士団の訓練の方が、まだマシだ。
だが。
――終わった。
この試合は、終わった。
俺は負けた。
だが――
勝った。
いや。
生き残った。
それでいい。
すべては、ここからだ。
ガキが勝った。
オッズは――102倍。
笑いが止まらない。
全財産を賭けた。
すべてが返ってくる。
いや、それ以上だ。
竜騎士団の資金も。
俺の問題も。
すべて解決する。
プライド?
そんなものは、地面に捨ててきた。
だが。
副団長としての立場は守られる。
金があれば、どうとでもなる。
……そうだ。
もう、戦う必要はない。
今度は手堅くいく。
商売だ。
俺の竜を使えばいい。
荷運び。
空輸だ。
馬車より速い。
危険も少ない。
儲かるに決まっている。
心を入れ替える。
真っ当に生きる。
……たぶんな。
102倍。
モンスターコロシアムでも、そう何度も出ない数字だ。
笑いが止まらない。
さぁ。
金を回収しよう。
選手は賭けられない。
だから、団員に任せた。
信頼できる奴だ。
……まぁ、金貨一枚くらいはやってもいい。
気前よくな。
もうここに用はない。
敗者は去る。
それがルールだ。
ここにいても、いいことは一つもない。
――そのはずだった。
なんということだろう。
負けるしかないと思っていた。
八百長ではないのに、負けなければならない試合。
それなのに――
勝ってしまった。
僕の銃ゴブリンのパックが。
竜騎士団の竜に。
ありえない。
そんなこと、聞いたことも見たこともない。
でも、目の前で起きた。
僕のゴブリンは、竜に勝った。
――事実だ。
会場の空気は最悪だった。
歓声はない。
あるのは、怒りと疑い。
許せない。
そんな顔をした人間の方が多い。
「ジョン」
おっさんが低く言う。
「試合は終わりだ。戻るぞ。ここにいたら、何をされるか分からん」
言われて初めて気づく。
視線。
刺さる。
僕に向けられている。
マクダフは固まっていた。
目と口を大きく開けたまま、動かない。
「僕に賭けてたら大金だったのにね。マクダフ。残念だったね」
つい、口が出た。
こんな機会、めったにない。
「そ、そんな……ゴブリンが竜に……」
聞いていない。
完全に抜けている。
おっさんと二人で、引きずるようにして控え室へ戻った。
扉を閉めた瞬間。
空気が変わる。
外の音が、遠くなる。
だが――
すぐにドアが開いた。
オーナーだ。
「おいおいおい……」
顔色が悪い。
「やってくれたな……とんでもないことを……」
おっさんが肩をすくめる。
「だから言ったろ。恥をかきたくないなら、協力してやるって」
まるで、仕組んでいたかのような口ぶり。
「聞いてない……そんな話……」
オーナーは首を振る。
目が泳いでいる。
焦点が合っていない。
「俺はもう知らんぞ……どうなっても……」
――おかしい。
ただの試合じゃない。
ゴブリンが竜に勝った。
それだけじゃない。
それ以上の何かが、ある。
オーナーより上。
もっと上の誰か。
そこに、触れてしまった。
そんな感じがした。
結果として。
僕たちは、準決勝進出。
第四回戦。
試合は二日後。
本来なら、明日。
だが――
「この結果の処理」に一日使うらしい。
処理。
何をするのかは分からない。
大人には分かるのかもしれない。
僕には、分からない。
宿に戻ろうとしたが、止められた。
準決勝進出者には、専用の宿泊施設が用意されるらしい。
コロシアム内。
外には――
人がいる。
目が血走った、大人たち。
何人も。
待っている。
僕を。
……戻らなくて正解だった。
案内された部屋に入る。
広い。
広すぎる。
床も、壁も、全部きれいだ。
見たことがない。
こんな部屋。
こんな場所。
僕は、ただ立ち尽くす。
だが――
「おおおおお!!」
マクダフが叫ぶ。
さっきまでの顔はどこにもない。
ベッドに飛び込み、跳ねる。
笑っている。
「すげぇ!!すげぇぞ!!」
……切り替えが早い。
僕を無視して、はしゃぎ続ける。
おっさんは、何も言わない。
ただ、部屋の中を見回している。
確認するように。
出口。
窓。
配置。
――逃げ道。
その目だった。
外は、まだ騒がしい。
中は、静かだ。
その静けさが――
少し、怖かった。
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
2,002,171g(銀行預け金:11,250g(銀貨11枚、銅貨2枚、半銅貨5枚))
【所持アイテム】
・???のスクロール 6枚
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)
【装備品】
・骨護札の首かざり
・水トカゲの手袋(呪)