異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜   作:raixip

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第53話 選ばれた客

どの町にも、銀行は一つはある。

 

僕たちが銀行と呼んでいるもの。

――中立共栄大金庫。

 

この町、ポーシャにも当然あった。

 

しかも、デカい。

 

ギャンブルの町だからだろう。

前にいたアーデンの支店より、明らかに規模が違う。

 

口座さえあれば、どこでも預けられる。

引き出せる。

 

便利だ。

 

――その分、容赦なく削られる。

 

手数料。名目。よく分からない理由。

気づけば、金は減っている。

 

それでも使うしかない。

 

子供の僕が、この金を持ち歩く方が危険だからだ。

 

───

 

「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか」

 

声は柔らかい。

 

だが、目は笑っていない。

 

「預け入れを」

 

ギルドカードを差し出す。

 

「お預かりいたします。少々お待ちください」

 

カードは箱に入れられた。

金属製の、小さな装置。

 

中で、淡く光る。

 

――初めて見る。

 

「確認が取れました。ジョン様。本日はいくらお預けになりますか」

 

僕は金貨を出した。

 

10枚。

 

カウンターに置く。

 

その瞬間。

 

空気が、変わった。

 

「……失礼いたします」

 

職員の手が早い。

 

金貨をかき集め、僕の手に押し戻した。

 

「こちらへ」

 

短い一言。

 

拒否は、できなかった。

 

通されたのは、別室だった。

 

静かだ。

 

柔らかすぎる椅子。

無駄に大きい机。

 

壁の装飾も、いちいち高そうだ。

 

――表とは、別の場所。

 

そういうことだ。

 

「改めまして。本日はご利用ありがとうございます」

 

さっきと同じ男。

 

だが、口調が少し違う。

 

「こちらの金貨十枚。お預けでお間違いありませんね?」

 

同じ確認。

 

二度目。

 

「……はい」

 

何かを見られている。

 

そんな感覚が消えない。

 

「失礼ですが」

 

間があった。

 

「そのご年齢で、この額は大変に珍しい」

 

やっぱり、そこか。

 

「コロシアムで」

 

短く答える。

 

「賞金です。持ち歩くのが怖くて」

 

嘘ではない。

 

全部ではないが。

 

「なるほど」

 

男はうなずいた。

 

だが、納得はしていない顔だ。

 

「今回の試合は、話題になっておりますので」

 

知っている。

 

――あれは、“試合”じゃない。

 

「……確認が必要になります」

 

来た。

 

「確認?」

 

「資金の出所。及び、安全性の確認です」

 

言い方は丁寧だ。

 

だが、中身は違う。

 

「安全性……?」

 

「はい」

 

少し、間。

 

「――誰の金か、という点も含めて」

 

空気が、冷えた。

 

逃げ道はない。

 

「……僕のです」

 

声が少しだけ小さくなる。

 

男は目を細めた。

 

それから、笑う。

 

「安心いたしました」

 

嘘だ。

 

安心していない顔だった。

 

「ただし」

 

来る。

 

「このまま通常の預け入れを行いますと――」

 

紙が一枚、机に滑ってきた。

 

数字が並ぶ。

 

細かい文字。

 

読めない。

 

「手数料が発生いたします」

 

「……どれくらいですか?」

 

「条件によりますが」

 

間。

 

「三割から五割ほど」

 

高い。

 

いや――

 

おかしい。

 

「ですが」

 

男の声が変わる。

 

柔らかくなる。

 

「ジョン様にとって、より有利なお話もございます」

 

きた。

 

「投資案件、です」

 

聞いたことがない言葉だった。

 

「と、うし……?」

 

「簡単に申し上げますと」

 

紙がもう一枚。

 

今度は図。

 

矢印。円。

 

よく分からない。

 

「資産を“運用”することで、増やす仕組みです」

 

増やす。

 

その言葉だけが、残る。

 

「現在、まだ一般には出回っていない案件でして」

 

声が低くなる。

 

「一部のお客様にのみ、ご案内しております」

 

特別。

 

そういう響き。

 

「この案件は――」

 

早口になる。

 

「流動性」「配当率」「元本保証に近い設計」「リスクヘッジ」「複利運用」

 

ほとんど分からない。

 

でも。

 

「最低でも2倍」

 

それだけは、はっきり聞こえた。

 

「状況次第では」

 

男が少し身を乗り出す。

 

「5倍、あるいはそれ以上も」

 

5倍。

 

10枚が、50枚。

 

もっとかもしれない。

 

「もちろん、リスクが全くないわけではありません」

 

付け足すように言う。

 

「ですが、通常の預け入れで手数料を取られるよりは――」

 

にっこりと笑った。

 

「はるかに有益かと」

 

頭が、熱い。

 

さっきまでの不安が、薄れていく。

 

「……やります」

 

気づけば、そう言っていた。

 

「ありがとうございます」

 

早い。

 

紙が増える。

 

契約書。

 

たぶん。

 

「こちらにご署名を」

 

ペンを渡される。

 

読めない。

 

難しい言葉ばかりだ。

 

でも。

 

2倍。

 

5倍。

 

それ以上。

 

名前を書く。

 

ジョン。

 

それだけ。

 

「では、お預かりいたします」

 

金貨が消えた。

 

一枚も、残らない。

 

───

 

「運用開始は本日より」

 

男は丁寧に頭を下げる。

 

「結果をお楽しみに」

 

気づけば、外にいた。

 

銀行の外。

 

───

 

預けてはいない。

 

でも。

 

問題ない。

 

金貨10枚が。

 

20枚に。

 

50枚に。

 

もしかしたら。

 

100以上に。

 

胸が熱い。

 

息が荒くなる。

 

「すごい……」

 

世界が、少し変わって見えた。




【あとがき:現在のステータス】

【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13

■生産系
料理スキル 13

■その他
鑑定スキル 0.3

【所持金】
2,171g(銀行預け金:11,250g(銀貨11枚、銅貨2枚、半銅貨5枚))

【所持アイテム】
・???のスクロール 6枚
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)

【投資・契約】
・中立共栄大金庫投資案件(ポーシャ支店)
 元本:金貨10枚
 状態:運用中
 想定利回り:2倍〜5倍(説明ベース)
 詳細:非公開/高リスク

【装備品】
・骨護札の首かざり
・水トカゲの手袋(呪)
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