異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜   作:raixip

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第55話 浮かれる少年と黒い煙

「……ノルマ?」

 

奥の席にいた別の男が笑った。

 

「ガキ一人で達成とはな」

 

「今回は運が良かっただけです」

 

ジョンを担当した職員は頭を下げる。

 

だが、口元は緩んでいた。

 

「コロシアム帰りでした。興奮していたのでしょう」

 

「なるほど」

 

書類がめくられる。

 

「未成年。知識不足。高額資金保有。成功体験あり」

 

ぺらり。

 

「理想的な客だ」

 

部屋の空気は静かだった。

 

だが。

 

話している内容だけが、妙に冷たい。

 

「で、商品は?」

 

「第四種高配当共同運用型ファンドです」

 

「まだ残ってたのか、あれ」

 

「ええ。中身を理解できる客がいませんので」

 

笑いが起きる。

 

「実際、増えるんですか?」

 

若い行員が聞いた。

 

その瞬間。

 

部屋の空気が変わった。

 

「お前」

 

年配の男が、ゆっくり顔を向ける。

 

「客に説明した内容を、理解している必要はない」

 

「……失礼しました」

 

「重要なのは」

 

書類を指で叩く。

 

「契約した、という事実だ」

 

全員がうなずいた。

 

誰も疑問を持たない。

 

それが普通だった。

 

一方。

 

銀行を出たジョンは、まだ夢を見ていた。

 

「50枚……」

 

すごい。

 

もし100枚になったら。

 

何が買えるんだろう。

 

家。

 

武器。

 

いや。

 

もっとすごい何か。

 

「浮かれすぎだ」

 

おっさんが言う。

 

「でも!」

 

「声がデカい」

 

はっとして口を押さえる。

 

周囲を見る。

 

通行人。

 

冒険者。

 

酔っぱらい。

 

誰も気にしていない。

 

……ように見える。

 

「金の話を外でするな」

 

おっさんは低い声で言った。

 

「聞いてる奴は、ちゃんといる」

 

その時だった。

 

路地の奥。

 

誰かが、動いた気がした。

 

ジョンが視線を向ける。

 

だが。

 

もう誰もいない。

 

「……?」

 

「行くぞ」

 

おっさんは気づいていた。

 

だが、立ち止まらない。

 

「この町は、金の匂いに敏感な奴が多い」

 

歩く速度が少し速くなる。

 

「ところで」

 

おっさんが前を向いたまま言った。

 

「契約書、持ってるか?」

 

ジョンは固まった。

 

「……え?」

 

「契約書だ」

 

嫌な汗が出る。

 

「も、もらってないです」

 

沈黙。

 

おっさんが、ゆっくり空を見上げた。

 

「終わってんな……」

 

「え?」

 

「普通は控えを渡す」

 

心臓が、嫌な音を立てる。

 

「まぁいい」

 

おっさんは歩き出した。

 

「まだ金が消えたと決まったわけじゃねぇ」

 

「じゃ、じゃあ大丈夫ですよね!?」

 

「たぶんな」

 

「たぶん?」

 

「銀行が潰れなきゃな」

 

「え」

 

その瞬間。

 

遠くで鐘が鳴った。

 

重い音。

 

町全体に響く。

 

おっさんが足を止める。

 

「……なんだ?」

 

周囲もざわつき始めていた。

 

通行人たちが空を見る。

 

兵士が走る。

 

ギャンブル施設の客まで外に出てくる。

 

そして。

 

空の向こう。

 

黒い煙のようなものが、ゆっくりと伸びていた。

 

「……ケムトレイル」

 

おっさんの顔から、笑いが消えた。




【あとがき:現在のステータス】

【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13

■生産系
料理スキル 13

■その他
鑑定スキル 0.3

【所持金】
2,171g(銀行預け金:11,250g(銀貨11枚、銅貨2枚、半銅貨5枚))

【所持アイテム】
・???のスクロール 6枚
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)

【投資・契約】
・中立共栄大金庫投資案件(ポーシャ支店)
 元本:金貨10枚
 状態:運用中
 想定利回り:2倍〜5倍(説明ベース)
 詳細:非公開/高リスク

【装備品】
・骨護札の首かざり
・水トカゲの手袋(呪)
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