異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜   作:raixip

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第7話 暴走するサンドイッチ

僕は朝、少し早めに起きた。起きたというより、眠れなかったと言うべきかもしれない。

 

なにせ昨日、僕は16,950gも稼いだからだ。これまでの全財産215gを足して、僕の懐には17,165gある。

 

17,165gあれば何でも買える気がする。今日の帰りにでもまた露店巡りをしよう。それと、僕が冒険者になった時から世話になっているこの町で一店しかない武器屋にも行って、あのデザインが気に入っている大剣や、防具屋にも寄って新作の赤いコートのような防具も見に行こうか――そんなことをベッドの上で考えていた。

 

そうしているうちに、宿屋を出るのがいつもより遅くなってしまった。

 

宿屋を出る際、先週から溜まっている宿代を支払うよう求められた。一日食事なしで500g。この宿屋はギルドと提携しているため、冒険者なら安く泊まれる。僕のような初心者にはありがたい場所だ。

 

本来なら、翌朝に店主へ支払うのが決まりだが、僕は毎日早朝に出ていたため顔を合わせることがなかった。決して払いたくなかったわけではない。

 

「支払いが遅くなってごめんなさい。あと一週間分も先に払います……はい、6,500gです」

 

申し訳なさもあって、来週分までまとめて支払った。こんな大金を一度に払ったのは初めてだ。お金があるというのは、こういうことか。

 

それでもまだ懐には10,165g残っている。今の僕は、初心者の中ではかなりお金を持っている方だろう。

 

少し遅れたため、走って露店市場へ向かった。

 

おっさんはまだ来ていなかったが、昨日から雇われている女の子――エリヤはすでに来ていた。昨日よりもきれいな服を着ている。

 

その姿を見て、僕は気付いた。自分はずっと同じ服だということに。おっさんも同じだ。

 

武器や防具より先に、服を買うべきかもしれない。

 

「遅かったね。さぁ、ヘスサを作ってちょうだい。まずは朝食分よ」

 

すでに準備は整っていた。あとは僕が作るだけだ。

 

パンを出し、蛇肉を焼く。だがマヨネーズがない。

 

「おっさんがまだ来てないから、マヨネーズがないけどいい?」

 

「だめ。マヨネーズがないならただのパンよ」

 

正論だった。

 

待っている間、エリヤと話した。

 

彼女はスラム街出身で、五人兄弟の三番目。昨日持ち帰ったヘスサとマヨネーズは家族で食べたらしい。

 

――つまり、マヨネーズが減っていた原因はエリヤだった。

 

やがておっさんが来た。

 

材料を受け取り、すぐに作る。もう慣れていた。

 

僕1個、おっさん1個、エリヤ3個。

 

……三日連続ヘスサ。正直、少し飽きてきた。

 

 今日もヘスサを売る前に、自分のスキルをステータス画面で確認してみた。すると、料理スキルが1上がっていた。

 

このヘスサ作りで、どこまで料理スキルを上げることができるのか、僕は知りたくなった。

今では、ステータスの中で一番高いのが生産スキルの料理になっている。

 

 僕はもう、一人前の料理人だと言えるのだろうか。

だが、どのくらいのスキルがあれば「料理人」と呼ばれるのか、僕には分からない。

 

それでも――

 

 僕が作ったヘスサは、昨日よりも少しだけ美味しくなっている気がした。それだけは確かだった。

 

「朝は30個だ。値段は1k」

 

そう言い残し、おっさんは去った。

 

30個。1個1k。

 

感覚が狂ってきている。

 

ステータスを確認。

 

料理スキル13。

 

確実に上がっている。

 

僕はもう、戦うより料理を作る側の人間になっているのかもしれない。

 

30個作り始めた頃には、すでに客が並んでいた。

 

エリヤが叫ぶ。

 

いらっしゃいませええええええええええええー!

マヨネーズサンドイッチいかがですかー!すでに並んでますううう!

略して“ヘスサ”!白いマヨネーズが決め手!一度食べたら病みつき!

マヨネーズ最高おおおおおおおおおおおお!!

今なら1,000g!数量限定ですうううう!!

 

一気に人が増えた。

 

空気が変わる。

 

熱気が渦巻く。

 

「俺にも買わせろ!」

「一人何個だ!」

「マヨネーズを早く売れ!!」

 

エリヤが上手にお客さんの相手をしていた。エリヤは右手にヘスサを持っていた。4個目だ。

 

少し荒れた。

 

エリヤが即座に制御する。

 

「お一人様二個までです!落ち着いて!」

 

助かった。

 

開始一時間で完売。

 

30個で2,900g。

 

その後すぐ、おっさんが来る。

 

「昼は20個。5kだ」

 

――5,000g。

 

世界が一段、歪んだ気がした。

 

サンドイッチが1個5,000gだ。

5,000gあれば宿代として払えば10日。

食事なら少し良いものであれば5回は食べられるはずだ。

僕の欲しかった武器や防具を買うには足りないけど大金だ。とんでもない話だ。

1個5,000g払ってでも食べたい食べ物なのだろうか僕の作るヘスサは。

しかも20個だ。もし全部売れたら100k… つまり100,000gだ。

 

少し昼時の販売を始めるまで時間があるため僕は近くの露店をエリヤと一緒に見て回ることにした。

様々な露店が並んでおり初めて見る売り物や食べ物など僕は見ることができた。

エリヤは何度か露店で食材を買ったりしたことがあったようでおいしい食べ物や食材を売っている露店など教えてもらった。

食べ物に関してエリヤは僕よりくわしいと思えた。

 

昼、売れ始める。

 

1個5,000g。

 

それでも売れる。

 

人が迷い、悩み、震えながら金を出す。

 

その様子を見て、僕は怖くなった。

 

そして――

 

昼時にヘスサが3個売れたところで町の出入り口の警護してくれている門番の兵士仲間の人だと思う人たちが来た。

 

「この露店か…… サンドイッチを法外な値段で売っていると言うのは。 ちょっと詰所まで来てくれ。この露店の店主と話がしたい。」

 

「詰所まで来い」

 

終わった、と思った。

 

この三日間で値段がおかしいくらい吊り上がってしまっているサンドイッチを売っていることが問題になったようだった。

僕もこの値段はおかしいと思っていたし僕の考えは間違ってもいないことがわかって僕はほっとした。

この露店の店主と言われてもおっさんはいなかったため僕が詰所まで兵士さんについて行くことにした。

 

僕が作って僕が売っていたサンドイッチだ。

僕が詰所に連れていかれている間は露天販売ができないとのことだ。

許可を取り消されてしまった。

エリヤは少ししんぱいそうだったが露店にいてもらうことにした。

僕たちふたりがいなくなったところにおっさんが戻ってきたら驚くだろう。

二人の兵士さんの後ろについて詰所に連れていかれるときエリヤがサンドイッチを5個ほど持たせてくれた。

僕に持っていけと言っているようだ。

 

「お前があの露店の店主か……一体何を考えているんだ! たかがサンドイッチ一個が……5kだと! ふざけた値段で売るな! 5kもあればな、料理屋で酒を飲んで飯を食ってもまだおつりがくるぞ! お前のような露店屋がいるから、他の真っ当な商売をしている連中が困るんだ! 反省しているのかっ!」

 

「まぁ隊長、落ち着いてください……確かにサンドイッチ一個5kはおかしな値段ですが、いくらで売ってはいけないという決まりがあるわけでもないでしょう……」

 

 いつも会話をする、東門で町の出入り口を警護している門番の兵士さんが、隊長さんをなだめてくれた。

 

 僕は、このまま捕まってしまうのではないかと怖くなった。

 お金を稼ぐというのは、こんなにも怖いことなのかと思った。

 おっさんは、サンドイッチを一個5,000gで売ったら詰所に連れていかれる、なんてことは教えてくれなかったからだ。

 

「ふざけた野郎だ……おい、それはあれか……一個5kのサンドイッチか……。よし、俺が食べて、その価値があるか確かめてやる!」

 

 そう言うと隊長さんは、エリヤから渡された僕の蛇肉ステーキのサンドイッチを取り上げ、そのまま食べてしまった。

 

「……うむ。これは……これが一個5kの味、ということか……。もう一つよこせ! 一個じゃ分からん!」

 

 そう言って、もう一つも取って食べてしまった。

 僕はどうなってしまうのだろうか。怖かった。

 

「それで隊長、どうです……? この冒険少年の作ったサンドイッチは。二個食べたので10k分ですが、価値はありますかね? 私たちの一日分の給料以上の料理を食べたわけですが……」

 

 兵士さんがそう言うと、隊長は少し考え込んだ。

 だが、手に持っていた二個目のサンドイッチは、すでに口の中だった。

 

「そ……そうだな。まぁ、物好きもいるだろう……。私に持ってくるなら、まぁ……食べてやらないこともない味だな……」

 

 ――いけるかもしれない。

 

 僕は気づいた。

 残りのサンドイッチを全部渡せば、この場を切り抜けられるかもしれない。

 

 五個で25,000g。大金だ。

 それでも、ここから出られるなら――安いのかもしれない。

 

「あの……よかったら、残りのサンドイッチもどうぞ。みんな美味しいって食べてくれてます。確かに値段は高いかもしれませんが、特別な材料も使ってますので……その……よかったら皆さんでどうぞ。足りなければ、まだ持ってきます!」

 

 そう言って、僕はテーブルの上に残りのサンドイッチをすべて並べた。

 

 隊長さんも兵士さんも、僕ではなく、テーブルの上のサンドイッチを見ていた。

 

「……まぁ今回はだな、厳重注意ということにしておいてやろう。まったくおかしな話だ……サンドイッチに5kだぞ、5k!」

 

 そう言いながら隊長は、さらに一つ手に取り、そのまま食べた。

 

 兵士さんも「一つもらっていいかい」と僕に確認してから手に取り、食べた。

 

「どうぞ、どうぞ……」

 

 僕がそう言うと、「ありがとう」と言って食べ始めた。

 

「これは確かにうまいな……。昼飯時や警護中に、こういうのを持ってきてくれたら食べやすくて助かる料理だ」

 

 そう言ってくれた。

 

 タダで取られてしまったけれど、僕の作ったヘスサを「うまい」と言ってもらえたことが、少しだけ嬉しかった。

 

「もういいぞ……今日は帰れ。露店に戻っていい。忘れるなよ……明日から昼飯時になら、どうしてもと言うなら食べてやらんこともない……」

 

隊長さんはそう言って、僕を詰所から追い出した。

 

露店での販売許可も出してくれた。

 

 これで僕は、堂々と一個5,000gのサンドイッチを売ることができるようになったのだ。

 

時間が過ぎ、もう夕方になっていた。

販売許可はもらったものの、昼飯時はそのままヘスサを売るのをやめた。

 

 結局、昼は二十個作り、そのうち十個を詰所に持っていき、三個が売れ、残りはなくなった。

手元に残ったのは15k――つまり15,000gだ。

これでも僕にとっては十分すぎる大金だった。

 

 夕方の販売をどうするかエリヤと話していると、おっさんが戻ってきた。

 

「どうだ、調子は……すべて売れたら休んでいいぞ……どうした?」

 

僕は、さっきの出来事をおっさんに伝えた。

 

 おっさんは「ずいぶん早い登場だな」と笑っていた。

どうやら、もう少し値段を吊り上げている段階で邪魔が入ると思っていたらしく、今回の件は想定より早かっただけで、大きな問題にはならないと考えていたようだ。

 

さらに、詰所での僕の対応とエリヤの機転を褒めてくれた。

 

僕は正直に、怖かったことを伝えた。

 

「……じゃあ、今日の夕方のヘスサ販売は中止だな。もう少し稼ぎたかったが、ここで切り上げて次に行くか……」

 

そう言われ、僕は今日の売り上げを計算した。

 

朝は三十個作って2,900g。

昼は三個売れて15,000g。

合計で17,900g。

 

――今日の稼ぎは17,900gだ。

 

食料品ドロップスクロールは残り5枚。

蛇肉はまだ十分にある。

調味料のマヨネーズも、少しだけ残っている。

 

エリヤには給料として3,000g、さらに出来高分として1,000gを支払った。

残っていたマヨネーズも、エリヤが持って帰った。

 

残りの13,900gをおっさんと折半し、僕の取り分は6,950gになった。

 

 今日は思ったほど稼げなかったが、それでも以前の僕の狩りの稼ぎと比べれば、十分すぎる金額だ。

――感覚がおかしくなってきている。

 

しっかりしなくてはならない。

お金を稼ぐというのは、やはり大変なことだ。

 

「じゃあ行くか、ジョン……料理金策パートツーだ!」

 

そう言って、おっさんは僕をどこかへ連れて行った。

 

いつもと違う流れに、僕は少し驚いた。

どこへ行くのか予想してみたが、まったく分からない。

 

そして連れて来られたのは――露店市場から離れた場所にある、奴隷商館だった。




【あとがき:現在のステータス】

【スキル】
■武器系
刀剣スキル 4
盾スキル 3
戦闘技術スキル 2

■生産系
料理スキル 13(前回 12 → 今回は 1 上昇)

■その他
鑑定スキル 0.3

【所持金】
17,115g

【所持アイテム】
・蛇肉(大量)
・???のスクロール 6枚
・食料品ドロップスクロール 5枚
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