異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜 作:raixip
「王」
巨大ゴブリンはそう言った。
ジョンは言葉を失う。
いや。
違う。
言いたいことが多すぎて何も出てこなかった。
「違う」
ようやく出た言葉がそれだった。
「違うから」
巨大ゴブリンは黙っている。
「僕じゃない」
胸元を見る。
黒い毛玉は気持ち良さそうに寝ている。
小さく丸くなって。
時々。
「キュ……」
寝言まで言っている。
どう見ても王ではない。
少なくともジョンにはそう見えた。
巨大ゴブリンは再び頭を下げた。
「王」
「だから違うって!」
思わず叫ぶ。
周囲の赤黒いゴブリンたちも一斉に頷いた。
「違う違う違う!」
全然話が通じない。
ジョンは頭を抱えた。
おっさんはその様子を見ながら深いため息を吐く。
「ジョン」
「なんですか」
「諦めろ」
「嫌ですよ」
「俺も嫌だ」
おっさんも頭を抱えた。
嫌なことだけは一致していた。
その時だった。
ぐぅぅぅぅぅ。
間抜けな音が響く。
沈黙。
巨大ゴブリンも。
赤黒いゴブリンも。
全員の視線が集まる。
ジョンのお腹だった。
「……」
「……」
「……」
朝から何も食べていなかった。
色々ありすぎた。
それどころではなかった。
「腹減ったな」
おっさんが言う。
「減りました」
正直限界だった。
すると。
巨大ゴブリンが立ち上がる。
ズシン。
地面が揺れる。
ジョンが身構える。
だが戦う気配はない。
巨大ゴブリンは後ろを振り返った。
そして。
ゴブリンたちに何か指示を出す。
短い声。
ジョンには意味が分からない。
しかし。
赤黒いゴブリンたちはすぐ動いた。
群れが散る。
路地の奥へ。
屋根の上へ。
廃墟の中へ。
数分後。
戻ってきた。
色々持って。
「……え?」
ジョンが固まる。
果物。
肉。
パン。
干し肉。
野菜。
そして。
なぜか酒樽。
「誰のだそれ」
おっさんが呟く。
どう見ても拾った物ではない。
どこかから持ってきた物だった。
「おい」
おっさんが頭を押さえる。
「これ絶対盗品だぞ」
ジョンもそう思った。
赤黒いゴブリンたちは誇らしげだった。
完全に褒められると思っている顔だった。
「返してこい!」
ジョンが叫ぶ。
ゴブリンたちが固まる。
理解できない顔だった。
「返してこい!」
もう一度言う。
すると。
しょんぼりした様子で去っていく。
「なんで落ち込むんだよ……」
ジョンは疲れた。
本当に疲れた。
だが。
全員が帰ったわけではなかった。
一体だけ残っている。
巨大ゴブリンだ。
「お前も帰れ」
ジョンが言う。
巨大ゴブリンは首を横に振る。
「帰れ」
首を横に振る。
「帰れって」
首を横に振る。
「帰れよ!」
首を横に振る。
全然帰らない。
おっさんが額を押さえた。
「駄目だな」
「駄目ですね」
「完全に護衛する気だ」
ジョンの嫌な予感が当たる。
巨大ゴブリンは少し離れた位置へ移動した。
10メートルほど。
絶妙な距離だった。
近すぎず。
遠すぎず。
だが。
確実についてくる距離。
「……」
ジョンが歩く。
巨大ゴブリンも歩く。
止まる。
巨大ゴブリンも止まる。
曲がる。
巨大ゴブリンも曲がる。
「やめろ」
止まらない。
完全についてきている。
しかも。
遠くの建物の上には赤黒いゴブリンたちまで見える。
一匹。
二匹。
三匹。
いや。
もっといる。
監視している。
守っているつもりなのだろう。
ジョンは空を見上げた。
嫌な予感しかしない。
騎士団は王都へ向かった。
そして。
巨大ゴブリンが護衛になった。
どう考えても。
平穏な生活から遠ざかっている。
そんな中。
胸元の毛玉が目を開けた。
「キュ」
一声だけ鳴く。
そして。
ジョンの服の中から顔を出し。
遠くの巨大ゴブリンへ向かって。
偉そうに前足を振った。
巨大ゴブリンは即座に跪いた。
「……」
ジョンは何も言わなかった。
言いたくなかった。
認めたくなかっただけだ。
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
2,171g(銀行預け金:11,250g(銀貨11枚、銅貨2枚、半銅貨5枚))
【所持アイテム】
・???のスクロール 6枚
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)
【投資・契約】
・中立共栄大金庫投資案件(ポーシャ支店)
元本:金貨10枚
状態:運用中
想定利回り:2倍〜5倍(説明ベース)
詳細:非公開/高リスク
【装備品】
・骨護札の首かざり
・水トカゲの手袋(呪)