異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜   作:raixip

79 / 81
第79話 特別室の客

特別室は広かった。

 

無駄に。

 

本当に無駄に広かった。

 

ふかふかのベッド。

 

高そうな机。

 

柔らかい絨毯。

 

意味もなく置かれた花。

 

ジョンは部屋に入った瞬間に思った。

 

「落ち着かない……」

 

子供用の安宿暮らしが長い。

 

こういう部屋は逆に困る。

 

「俺も落ち着かねぇ」

 

おっさんも同意した。

 

二人で顔を見合わせる。

 

その時だった。

 

ドゴォン。

 

窓が揺れた。

 

ジョンがびくっとする。

 

「またか……」

 

窓の外を見る。

 

巨大ゴブリンだった。

 

宿の前に座っている。

 

完全に見張りである。

 

しかも。

 

宿の利用客が遠回りを始めていた。

 

当然だった。

 

入口の前に巨大ゴブリンがいる宿など入りたくない。

 

「宿屋のおっちゃん泣くぞ」

 

「もう泣いてました」

 

それもそうだった。

 

コンコン。

 

扉が叩かれる。

 

食事が来たらしい。

 

ジョンが扉を開ける。

 

若い給仕の女の子だった。

 

料理を持っている。

 

だが。

 

手が震えていた。

 

明らかに。

 

震えていた。

 

「ど、どうぞ……」

 

「ありがとうございます」

 

「ひっ」

 

なぜか悲鳴を上げられた。

 

ジョンは傷ついた。

 

何もしていない。

 

本当に何もしていない。

 

すると。

 

女の子の視線が下へ向く。

 

ジョンの胸元。

 

黒い毛玉。

 

「ひぃっ!」

 

さらに大きな悲鳴だった。

 

料理を置く。

 

逃げる。

 

去る。

 

扉が閉まる。

 

一瞬だった。

 

「僕なんかしました?」

 

「してないな」

 

「ですよね?」

 

「してない」

 

おっさんも頷く。

 

二人とも納得がいかなかった。

 

その時。

 

毛玉が起きた。

 

「キュ?」

 

鼻をひくひくさせる。

 

そして。

 

料理を見る。

 

肉を見る。

 

パンを見る。

 

スープを見る。

 

目が輝いた。

 

「キュッ!」

 

次の瞬間。

 

飛んだ。

 

テーブルへ。

 

「おい!」

 

ジョンが慌てる。

 

遅かった。

 

毛玉は肉へ突撃した。

 

ガブッ。

 

「キュ!」

 

満足そうだった。

 

だが。

 

次の瞬間。

 

異変が起きた。

 

食べた肉が光った。

 

「え?」

 

ジョンが固まる。

 

肉が光る。

 

そして。

 

消えた。

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

ジョンとおっさんが固まる。

 

毛玉はもう一口食べる。

 

ガブッ。

 

光る。

 

消える。

 

「おっさん」

 

「なんだ」

 

「今見ました?」

 

「見た」

 

見間違いではない。

 

肉が消えている。

 

食べられているのではない。

 

消滅している。

 

すると。

 

毛玉のお腹が少し膨らんだ。

 

「キュ」

 

満足そうである。

 

ジョンは嫌な予感がした。

 

ものすごく。

 

嫌な予感だった。

 

テーブルの上にはまだ大量の料理がある。

 

毛玉が見る。

 

料理を見る。

 

嬉しそうに。

 

そして。

 

全部食べた。

 

数分後。

 

料理は全滅した。

 

パンも。

 

肉も。

 

スープも。

 

野菜も。

 

全部。

 

毛玉の腹の中だった。

 

「ありえねぇ……」

 

おっさんが呟く。

 

ジョンも同じ気持ちだった。

 

体の大きさが違いすぎる。

 

どう考えても入る量ではない。

 

すると。

 

毛玉が満足そうに転がった。

 

コロン。

 

そして。

 

ゲップした。

 

「キュプ」

 

次の瞬間。

 

テーブルの上に。

 

金貨が落ちた。

 

チャリン。

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

部屋が静まり返る。

 

ジョンが金貨を見る。

 

おっさんも見る。

 

毛玉も見る。

 

「キュ?」

 

本人も不思議そうだった。

 

ジョンがゆっくり金貨を拾う。

 

本物だった。

 

間違いなく。

 

本物の金貨。

 

「おっさん」

 

「なんだ」

 

「今、肉食いましたよね」

 

「食ったな」

 

「金貨出ましたよね」

 

「出たな」

 

「……」

 

「……」

 

二人は同時に思った。

 

もしかして。

 

とんでもないのを拾ったのではないかと。




【あとがき:現在のステータス】

【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13

■生産系
料理スキル 13

■その他
鑑定スキル 0.3

【所持金】
2,171g(銀行預け金:11,250g(銀貨11枚、銅貨2枚、半銅貨5枚))

【所持アイテム】
・???のスクロール 6枚
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)
・ケムトレイル群
 立場:保護対象
 詳細:不明

【投資・契約】
・中立共栄大金庫投資案件(ポーシャ支店)
 元本:金貨10枚
 状態:運用中
 想定利回り:2倍〜5倍(説明ベース)
 詳細:非公開/高リスク

【装備品】
・骨護札の首かざり
・水トカゲの手袋(呪)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。