異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜 作:raixip
宿屋の主人は固まっていた。
窓の外。
巨大ゴブリン。
その手には高級果物。
どう考えてもおかしい。
だが。
現実だった。
「……俺に?」
主人が自分を指差す。
巨大ゴブリンが頷く。
ズシン。
頷いただけで地面が揺れた。
「なんで?」
巨大ゴブリンは答えない。
ジョンも知らない。
おっさんも知らない。
毛玉だけが満足そうだった。
「キュ」
主人は恐る恐る果物を受け取る。
受け取らなかったらどうなるか分からない。
受け取ってもどうなるか分からない。
どちらにしても怖かった。
すると。
巨大ゴブリンは満足そうに頷いた。
そして。
元の位置へ戻っていった。
ズシン。
ズシン。
ズシン。
主人はしばらく動かなかった。
手の中の果物を見る。
ジョンを見る。
毛玉を見る。
また果物を見る。
「坊主」
「はい」
「正直に答えろ」
嫌な予感がした。
「なんでしょう」
「お前、本当は何者だ」
ジョンは即答した。
「初心者冒険者です」
主人は黙った。
おっさんも黙った。
毛玉も黙った。
誰も信じていなかった。
ジョンだけだった。
自分が普通の冒険者だと思っているのは。
しばらくして。
主人は部屋を出ていった。
ふらふらしながら。
人生について考えるような顔で。
扉が閉まる。
沈黙。
ジョンはため息を吐いた。
「なんか疲れました」
「まだ始まったばかりだぞ」
おっさんが言った。
嫌なことを。
その頃。
宿屋の一階。
主人はカウンターに座っていた。
果物を眺めながら。
「おやじ」
常連客が声を掛ける。
「なんだその果物」
主人は少し考えた。
説明が難しい。
本当に難しい。
だが。
人間というのは。
理解できないものを見ると。
勝手に補完する生き物だった。
「……献上品だ」
常連客が固まる。
「誰への?」
主人は二階を見る。
ジョンの部屋だ。
「特別室のお客様だ」
常連客も二階を見る。
沈黙。
数秒後。
「マジか」
その一言で終わった。
そして。
噂は広がった。
ものすごい速度で。
「聞いたか?」
「聞いた」
「巨大ゴブリンが献上品を持ってきたらしい」
「誰に?」
「宿の特別室の客だ」
「王族か?」
「もっと上らしい」
どんどんおかしくなる。
一時間後。
「巨大ゴブリンの王が来ている」
二時間後。
「魔王が来ている」
三時間後。
「世界を支配する大魔王がポーシャに来た」
もう原型がなかった。
その頃。
ジョンはベッドで転がっていた。
全く知らずに。
「おっさん」
「なんだ」
「投資のことなんですけど」
「忘れろ」
即答だった。
ジョンは悲しかった。
金貨十枚である。
大金だ。
忘れられるわけがない。
「二倍になるかもしれないんですよ」
「ならねぇと思うぞ」
「五倍かもしれません」
「ならねぇと思うぞ」
「百倍」
「ならねぇ」
おっさんは全く信じていなかった。
すると。
胸元の毛玉が顔を出す。
「キュ」
ジョンを見る。
それから。
テーブルの上にあったパンを食べる。
パクッ。
数秒後。
チャリン。
銅貨が落ちる。
ジョンとおっさんが同時に毛玉を見る。
毛玉はもう寝ていた。
「……」
「……」
ジョンが口を開く。
「おっさん」
「なんだ」
「こっちの方が投資案件として優秀じゃないですか?」
おっさんは否定できなかった。
その頃。
ポーシャ支店の中立共栄大金庫では。
支店長が報告書を読んでいた。
そこにはこう書かれていた。
【投資案件契約者】
ジョン
【契約金額】
金貨十枚
【評価】
非常に扱いやすい顧客
支店長は満足そうに頷く。
まだ知らない。
その顧客が。
今まさに。
パンから銅貨を生み出す毛玉を手に入れていることを。
そして。
その投資案件より。
遥かに胡散臭い存在と一緒にいることも。
知らなかった。
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
2,171g(銀行預け金:11,250g(銀貨11枚、銅貨2枚、半銅貨5枚))
【所持アイテム】
・???のスクロール 6枚
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)
・ケムトレイル群
立場:保護対象
詳細:不明
【投資・契約】
・中立共栄大金庫投資案件(ポーシャ支店)
元本:金貨10枚
状態:運用中
想定利回り:2倍〜5倍(説明ベース)
詳細:非公開/高リスク
【装備品】
・骨護札の首かざり
・水トカゲの手袋(呪)