異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜   作:raixip

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第83話 名前

翌朝。

 

ジョンは目を覚ました。

 

見慣れない天井だった。

 

特別室である。

 

無駄に高級。

 

無駄に広い。

 

そして。

 

無駄に落ち着かない。

 

「……」

 

ジョンは寝返りを打つ。

 

何か柔らかい。

 

胸元を見る。

 

黒い毛玉だった。

 

気持ち良さそうに寝ている。

 

「キュ……」

 

寝息まで立てている。

 

昨夜。

 

パンを食べて銅貨を出した。

 

肉を食べて金貨を出した。

 

どう考えても普通ではない。

 

だが。

 

普通じゃないものに慣れ始めている自分もいた。

 

「慣れって怖いな」

 

「本当にな」

 

向かいでは、おっさんが椅子に座っていた。

 

朝から難しい顔をしている。

 

机の上には紙。

 

そして銅貨。

 

金貨。

 

昨夜の実験結果だった。

 

「どうでした?」

 

ジョンが聞く。

 

おっさんはため息を吐いた。

 

「分からん」

 

「分からないんですか」

 

「分からん」

 

即答だった。

 

「何を食わせたら何が出るのか法則がない」

 

ジョンも頷く。

 

昨夜の検証結果。

 

パン。

 

 

銅貨。

 

肉。

 

 

金貨。

 

だが。

 

同じ肉を食わせても何も出なかった。

 

かと思えば。

 

干し肉を食べたら銀貨が出た。

 

意味不明である。

 

「金策になりませんかね」

 

「その考え方をやめろ」

 

おっさんが即答した。

 

すると。

 

胸元の毛玉が目を覚ます。

 

「キュ」

 

大きな欠伸。

 

それから。

 

ジョンの顔を見る。

 

「キュ!」

 

なぜか嬉しそうだった。

 

「おはよう」

 

ジョンが声を掛ける。

 

「キュ!」

 

返事をした。

 

おっさんが眉をひそめる。

 

「そういや」

 

「なんです?」

 

「そいつ名前ないな」

 

ジョンは固まった。

 

確かに。

 

ない。

 

ずっと毛玉だった。

 

黒い毛玉。

 

毛玉。

 

毛玉王。

 

いや最後のは違う。

 

「名前かぁ」

 

ジョンは考える。

 

難しい。

 

冒険者らしい名前。

 

強そうな名前。

 

格好いい名前。

 

色々考える。

 

だが。

 

毛玉を見る。

 

丸い。

 

黒い。

 

モフモフ。

 

「キュ」

 

全然強そうじゃない。

 

「キュ太郎でいいか」

 

おっさんが吹き出した。

 

「フハハハ、ジョンお前適当だろ」

 

「覚えやすいです」

 

「それだけか」

 

「それだけです」

 

すると。

 

毛玉が。

 

いや。

 

キュ太郎が。

 

嬉しそうに跳ねた。

 

「キュ!」

 

気に入ったらしい。

 

「決まりだな」

 

「決まりですね」

 

その瞬間だった。

 

ドゴォォォン!!

 

宿が揺れた。

 

「うわっ!?」

 

ジョンが飛び上がる。

 

おっさんも立ち上がる。

 

何事だ。

 

窓を見る。

 

外だった。

 

巨大ゴブリンである。

 

またお前か。

 

ジョンは頭を抱えた。

 

巨大ゴブリンが跪いている。

 

宿の前で。

 

朝っぱらから。

 

しかも。

 

周囲には住民。

 

冒険者。

 

商人。

 

野次馬。

 

ものすごい人数だった。

 

全員が見ている。

 

巨大ゴブリンを。

 

そして。

 

ジョンの部屋を。

 

「嫌な予感がします」

 

「俺もだ」

 

おっさんも即答した。

 

すると。

 

宿屋の主人が転がるように部屋へ飛び込んできた。

 

ノックもなかった。

 

「坊主!…… いや大魔王様!」

 

「はい!」

 

「大変だ!」

 

「知ってます!」

 

外を指差す。

 

主人が首を振る。

 

「違う!」

 

違うのか。

 

もっと悪い話だった。

 

「ポーシャの領主様が来る!」

 

沈黙。

 

ジョンが固まる。

 

おっさんも固まる。

 

キュ太郎だけが元気だった。

 

「キュ!」

 

全然分かっていない。

 

主人は青い顔で続ける。

 

「しかも」

 

嫌な予感しかしない。

 

「王都から来た使者までいる!」

 

ジョンの頭が痛くなった。

 

絶対。

 

巨大ゴブリンのせいだった。

 

だが。

 

本人。

 

いや本毛玉は。

 

ジョンの肩の上で丸くなり始めていた。

 

「キュ〜」

 

寝るな。

 

今は寝るな。




【あとがき:現在のステータス】

【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13

■生産系
料理スキル 13

■その他
鑑定スキル 0.3

【所持金】
2,171g(銀行預け金:11,250g(銀貨11枚、銅貨2枚、半銅貨5枚))

【所持アイテム】
・???のスクロール 6枚
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)
・ケムトレイル群
 立場:保護対象
 詳細:不明

【投資・契約】
・中立共栄大金庫投資案件(ポーシャ支店)
 元本:金貨10枚
 状態:運用中
 想定利回り:2倍〜5倍(説明ベース)
 詳細:非公開/高リスク

【装備品】
・骨護札の首かざり
・水トカゲの手袋(呪)
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