異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜 作:raixip
宿屋の主人は青い顔をしていた。
ジョンも青い顔だった。
だが。
理由は少し違う。
主人は町の存亡を心配している。
ジョンは宿代を心配していた。
「おっさん」
「なんだ」
「特別室って追加料金取られませんよね?」
「今そこか?」
「大事ですよ」
実際大事だった。
お金は大事だ。
おっさんは頭を抱えた。
「たぶん… 無料だ」
「よかった」
ジョンは安心した。
宿屋の主人は全然安心していなかった。
「そんなことより来るんだよ!」
主人が叫ぶ。
「領主様が!」
「はい」
「王都の使者も!」
「はい」
「なんでそんな落ち着いてるんだ!」
ジョンは考える。
理由は簡単だった。
もう慣れた。
コロシアム。
騎士団。
巨大ゴブリン。
毛玉。
投資案件。
最近は変なことしか起きていない。
今さら領主くらいで驚いていられなかった。
その時。
コンコン。
扉が叩かれる。
全員が固まる。
早い。
あまりにも早い。
「失礼します」
上品な声だった。
宿屋の主人の顔色がさらに悪くなる。
「来たぁ……」
震えている。
扉が開いた。
入ってきたのは。
老人だった。
派手な服。
豪華な杖。
無駄に偉そう。
そして。
太っていた。
いかにも金持ちだった。
「おお!」
老人が両手を広げる。
「君がジョン君か!」
思ったより元気だった。
「は、はい」
「実に若い!」
老人は感動していた。
何に感動しているのか分からない。
「ワシはポーシャ領主のバーネットだ!」
ジョンは頭を下げる。
よく分からないが偉い人らしい。
すると。
領主はキュ太郎を見た。
固まった。
「……」
キュ太郎も見た。
「キュ」
領主の額から汗が流れる。
どうやら何か感じているらしい。
だが。
ジョンにはただの毛玉だった。
「ふむ」
領主が咳払いをする。
「実はな」
嫌な予感がした。
「ぜひポーシャへ滞在してほしい」
「え?」
予想外だった。
「もっと言えば移住してほしい」
「え?」
さらに予想外だった。
「税金も優遇しよう」
「え?」
「宿代も補助しよう」
「え?」
ジョンの頭が混乱する。
今。
優遇と言ったか?
税金?
補助?
この世界で?
搾取じゃなくて?
ジョンはおっさんを見る。
おっさんも困惑していた。
珍しい。
「どういうことでしょう?」
ジョンが聞く。
領主は満面の笑みを浮かべた。
「簡単だ」
嫌な予感しかしない。
「巨大ゴブリンが住み着けば観光資源になる」
部屋が静まり返った。
「……」
「……」
「……」
主人まで固まった。
領主だけが真剣だった。
「巨大ゴブリン見学料」
指を一本立てる。
「記念品販売」
二本目。
「観光宿泊客」
三本目。
「経済効果は莫大だ!」
興奮していた。
目が輝いている。
ジョンは理解した。
この人。
商人だった。
領主の皮を被った商人だった。
「それにだ」
領主が身を乗り出す。
「巨大ゴブリンは王都でも滅多に見られん」
確かに。
「つまり独占だ。フヒャヒャヒャヒャ」
言った。
本音を言った。
その瞬間だった。
また扉が開く。
今度はノックもない。
部屋の空気が変わる。
入ってきたのは。
黒い制服の男だった。
細身。
無表情。
年齢不詳。
そして。
異様な雰囲気。
領主の笑顔が消える。
宿屋の主人が青くなる。
おっさんの目が細くなる。
ジョンだけが分からない。
男は一枚の書類を取り出した。
そして。
ジョンを見る。
正確には。
キュ太郎を見る。
「王都特別調査局です」
嫌な名前だった。
「ジョン殿」
男が言う。
「少々お話を伺いたい」
キュ太郎が欠伸をした。
「キュ〜」
全く緊張感がなかった。
だが。
ジョンは気づいていない。
領主が欲しいのは。
巨大ゴブリン。
王都が欲しいのは。
キュ太郎。
そして。
そのどちらも。
今。
ジョンの懐にいることを。
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
2,171g(銀行預け金:11,250g(銀貨11枚、銅貨2枚、半銅貨5枚))
【所持アイテム】
・???のスクロール 6枚
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)
・ケムトレイル群
立場:保護対象
詳細:不明
【投資・契約】
・中立共栄大金庫投資案件(ポーシャ支店)
元本:金貨10枚
状態:運用中
想定利回り:2倍〜5倍(説明ベース)
詳細:非公開/高リスク
【装備品】
・骨護札の首かざり
・水トカゲの手袋(呪)