特にカラオケ、百点は無理ですって…ランダムもきつい。
入場特典ポストカードはもうさすがに諦めました。ただ悔しいので自分で作ります。
親に何言われるか分かったもんじゃないですけど、実家に戻ったら部屋を超かぐや姫で埋めるんだ!大真面目にここまで脳を焼かれたのは初めてなんだからなぁ!
というわけで小話に付き合っていただきありがとう御座います!それでは第11話、お楽しみください!
時間は夕暮。しかし辺りは暗雲で既に暗くなっており、薄黒い雲から降り始めた雨が、彼の身体を冷やしていく。薄着のまま飛び出した芦花を心配しながら、肺が破裂するのではないかと思うほど息を切らし、足がちぎれるのではないかと思うほど愚直に、何度も転びながらひたすら前に進む。
CON×5【成功】
追跡【失敗】
「いない……!」
CON×5【成功】
追跡【失敗】
「どこだ……芦花……!この雨では風邪を……いや、それよりも今はただ……!」
心から謝罪をしたい。その思いだけで彼は慣れない足を必死に動かす。
アイデア【成功】
DEX×5【成功】
「まさか……!!」
彼女の笑顔が脳に張り付いて離れない。
このまま見つからなかったら?繊細な彼女の、人生で二度目の失意。ただ自分を愚かだと叱責しながら、最悪なケースを想定して冷や汗が溢れ動悸で目眩がする。
瞬間、それを上書くようによぎった夕暮れの光景。
アスファルトと小石で足裏を傷つけながら、心当たりのある場所まで全力で走る。
途中、酸欠による目眩で電柱に頭をぶつけたり、転んで服越しに身体に擦り傷を作ったりして血を流しながら、彼女と初めて出会った公園へ辿り着く。
雨に打たれながら、ベンチに座って自分の目をひたすらこする芦花を見つけたナイア。直後、喉が壊れるのも気にしてられない彼はガラガラの声で雨の騒音をかき消す声で叫ぶ。
「ろ"かぁ"!!!!!!」
「……ナイア……?」
「はぁ"ッ"…!」
普段完璧を体現したような彼が、ボロボロの身体で、誰の目にも見てわかるほどにみすぼらしい姿で、必死に先程逃げてしまった自分の為に来てくれたのだと芦花は理解する。
「血?怪我してるの?速く手当てしないとっ…!」
バサァッ
走り寄る彼に芦花も駆け寄るが、額の血を拭うより速くにナイアは自分の上着を芦花に着せて雨を少しでも遮ろうとし、体温を移すように抱き締める。
「芦花!!すまなかった!!」
「な……なんで、謝るの……ナイアが謝る必要なんて……」
「あるんだ、私は誤解していた!いや、何を言っても言い訳にしかならないんだが……!とにかく、事情は二人から聞いた」
「!!」
「まて、その……二人を責めないでくれ。君を思ってのことだったんだ」
「……じゃあ……何しに来たの……罪悪感で助けに来たんなら……私は……」
「違う!私は……そう、私は嬉しかったんだ……!」
「…………?」
「ずっと……君が酒寄さんのことを好きだと思ってて……情けないことだが、彼女に嫉妬していたんだ……」
「嫉……妬……?ナイアが……?」
ナイアが告白する言葉に、腕のなかの芦花は自分の胸に手を当てて疑問符を浮かべ続ける。
そしてだんだんと、お互いが大きな誤解をしていることに気づいていく。
「でも、ただの友人だって……」
「……君の幸せが、私の幸せだ。どれだけ苦しくても、嫉妬の感情にこの身を焼かれても……愛しい君だけは幸せになってほしかった。君が私を神と呼ぶたび……人ではない自分には不相応の感情だと、押し殺し続けていた。だから……嘘をついていた」
不安と焦燥が入り混じる芦花の瞳から目を逸らさず、冷え切ってしまった身体に少しでも熱をと優しく、けれど力強く抱きしめる。
伝わる体温に、体格差ゆえに彼の胸に耳が当たり、聴こえてくる速くなり続ける心拍が刻む音が、その言葉を真実だと語る。
芦花とて、この言葉が嘘じゃないことは分かっている。
ただそれでも、今の彼女にはまだ足りない。
「そんな、そんな簡単に信じられないよ……だって私がどんな……どんな気持ちで……」
我ながら面倒くさい、最悪な女の台詞だと、失望されてもおかしくないと。そう考えてまた溢れ出す涙を、手袋を外した擦り傷だらけの手が拭う。
「…………言葉じゃ伝わらないし、伝えるべき場面があること……君が、君と過ごした今までの日々が教えてくれた。だから……嫌なら、後で殴っても、噛み切ってもいい。ただ今だけは、受け入れてくれ」
芦花の髪を撫でて顔がよく見えるように耳にかける。晴れ始めた雲の隙間から覗く黄昏を映す瞳を、不安を隠す表情を、愛おしい彼女を、紅い瞳で見つめる。
「ナイア……」
瞑った瞼。まだ少し遠くで激しく音を立てている雨の中、世界で二人きりになったような静けさが二人を包む。重なった確かな想いが、二人の心を確かに繋げた。
「……ナイアは……私でいいの……?ただ、偶然……貴方の前にいただけの……私で……」
「例え出会いは偶然でも、君と過ごした日々や重ねた思い出の中のこの感情は、嘘でも勘違いでもない。もう誤魔化すことも逃げることもしないと、君に誓う」
いつも真っ直ぐな彼の、さらに真っ直ぐな言葉。詩的な言い回しも遠回しな表現も使わない、ただ芦花が一番欲しい言葉を、ただひたすら感情に任せて贈る。
「私は……この世界で一番、芦花が好きだ」
「〜〜ッッ!!」
「君で良いなんて君自身が言うな……!芦花が良いんだ!私には芦花しかいない!!」
ナイアは一層強く抱きしめ、強くなっていく雨音をかき消すほどの力強く再び愛を告白する。芦花もナイアの胸に顔を埋め、嗚咽混じりに呟くように言葉にする。
「君が宇宙一好きだ、芦花!!!」
「……私も……ナイアが好き……一番好き……!」
「……情けなくて、気づけなくて……本当にすまなかった。もう迷わない。もっと、もっと沢山、君にこの想いをこれからは伝え続ける。どうかこれから先も、ずっと私の隣にいてほしい」
そう言って、汚れるのも構わずに膝をついて取り出した一つの箱。
開いて取り出したエメラルドのクローバーが誂えられた指輪を、驚きながらも静かに差し出した芦花の右手の薬指にナイアが嵌める。
「……綺麗」
「本当は、一緒に出かけたあの日に渡すつもりだったんだ……渡せてよかった」
「……うん。大事にする……ごめん……私も、ナイアのこと、人じゃないなんて言葉で傷つけてて……っくしょんっ……!」
「ふふ……帰ろうか。2人が心配してる。それにそのことなら、私はもう気にしてないよ」
「うん……って、そうだよ、ナイアの怪我!」
「後で治すよ、それより今は君だ」
はめた右手の薬指を愛おしそうに見つめる芦花だったが、我に返りナイアの血をハンカチで拭う。しかし、ずぶ濡れの様子に、これ以上は冷えるからとナイアは上着を着せたまま彼女を抱きかかえて小走りで家へとむかう。魔術を一切使用せずに彼女を連れ帰ること。それを達成する為に、痛みや疲労を隠すために笑いかけるが、顔を真っ赤にして手で顔を覆ってそれどころではない芦花だった。
──
「……どう思う?」
「上手くいってるかなぁ……またなんか盛大に誤解してないかなぁ……」
彩葉の淹れたカフェオレを飲みながら、二人は足をばたつかせてソワソワとしながら帰りを待っていた。だんだんと晴れていく窓の外を見ながら不安を口にしていると、彩葉のスマホが鳴り、画面にヤチヨが現れて話に参加する。
『なかなか壮大な修羅場だったねぇ、彩葉♪』
「えっ、ヤチヨ!?」
「あっしまった……どこから見てた?」
『あれれ~おかしいぞ~……の辺りからかなぁ?』
「「…………」」
『やっちょ自身がそういうのに近い存在だから、彼のこと、そこまで受け入れられてないわけじゃないんだよ?ただ……永〜く生きてるけど流石に驚いちゃってさ。出るタイミングがわからなくなっちゃったのです〜』
大きな袖を振りながら涙を流すエモートでいつものように明るく振る舞うヤチヨ、二人は少し真面目な問いかけをする。
「……ヤチヨは、どう思う?あの二人」
『ヤチヨはね……二人は大丈夫だと思う。ナイア君の思いって、多分ヤチヨと似てるんだぁ。凄く複雑で、でも一貫して好きな人の為に、自分を犠牲にしてでも即決で行動できる……芦花ちゃん、凄く良い人に恵まれたと思うなぁ』
「そっか……私も頑張るよ、ヤチヨ」
『でもそれはそれとして、彩葉と真実ちゃんを危ない目に合わせたので、今度たっぷりお説教とお話なのです』
二人の問いに薄く笑ったヤチヨだったが、直後に目のハイライトを消して微かに怒っていると伝えるジェスチャーで笑う。そんな会話をしていると、玄関のチャイムが鳴る。オートロックのマンションなため、着の身着のまま飛び出したナイアが帰ってきたのだろうと察する二人が出迎えに行く。しかし、扉を開けた先で待っていたのは、当然濡れ鼠の二人。芦花は腕のなかで静かに寝息を立て、ナイアの額には出血の痕と切り傷が残っていた。
「「この1時間でなにがあった!?」」
「しーっ……静かに。芦花が起きてしまう。彼女を任せていいかい?私は風呂場へ行くよ。話はそれからする」
「わ、分かった」
芦花を受け止めた彩葉と真実は彼女の部屋に連れて行く。きちんと整理された部屋の、彼女のシングルベッドにナイアの魔術の影響か、少しも濡れて居ないためそのまま寝かせる。
チャリンッ
「あ、これ。ナイア君のやつだ。拾ってそのままにしてた」
「あぁ~……いつもつけてるやつ。いいよ、机の引き出しに入れちゃえ。無くして少しくらい慌てればいいんだ」
──
応急手当【成功】
回復値【2】
汚れを落としたナイアを、包帯やガーゼで応急的な手当てをする真実と、温かいココアを作って卓に出す彩葉は、向かいに座って質問し始める。
「これで全部かな、オッケ〜……で、なんでこんなことになってるの?」
「ありがとう、諫山さん。この身体ではまだ全力で運動したことがなくてね、色々ドジを踏んだんだ……芦花は?」
「部屋で寝てる。疲労……かな。色々あったし。てか服乾いてたけど、あれやったのナイア君?」
「あぁ、風邪をひくといけないからね」
「自分は?怪我だらけだし、ずぶ濡れだったけど。なんか服は直ってるのかは置いといて」
「ここで魔術を使えば、また直せるものと思ってしまうだろう。この傷や痛みは、せめてもの私への罰と贖罪のつもりなんだ。無意味かもしれないがね」
頭のガーゼや、転んで手袋や服の中で傷だらけになった手を擦りながらナイアは答える。魔術でなんでも解決できてしまう彼がその判断をしたことに、二人は口を出す気になれなかった。
「……まぁ、良いんじゃない?」
「で、誤解はちゃんと解けたの?」
「解けたよ。プレゼントも渡せたし、気持ちはきっと通じ合った。改めて……本当にありがとう。このお礼はきっといつかする」
「じゃあ芦花をちゃんと幸せにして。それだけでいい」
「同じく〜」
文字通りにほぼなんでも実現できる
「……もちろん。良い友達に恵まれているね、芦花は」
「ナイア君って友達いるの?」
「う~ん……君達やバイト先の方達を除けば、そう親しい人はいないね。何度か殺し合った人間や協力した神格ならいるけれど」
「殺……なにしたの」
「私は色々な平行世界や宇宙に存在する。全く性格の違う私だっているよ。化身だって純度100%私と同じなわけじゃないしそれなりの数がいて、ほぼ毎日数千年分の記憶が流れてきて自我に干渉される」
「アレを毎日……?どんな記憶容量してんの……しんどすぎ……」
「驚いたな……経験済みか。普通、数千年分の記憶を受け止めるように人の身体は出来ていないんだけどね……」
「っていうか、平行世界があるってことはさ──」
彩葉はかぐやの件で理系へと進路を直前に転向した才女。
ナイアの膨大な知識に無限の好奇心と、実用化の範疇にあたる質問を繰り返す。
「素晴らしいな、酒寄さんの理解力と的を得る質問の数々。いつだったか化身として不完全に顕現した時……そうだ、アルビーだ。懐かしいね」
「アルビーって……!まさかアルベルトアインシュタイン!?」
「そうだよ。彼の言葉は限りなく神の視点に近かった。今世ではのんびりしているのかな、彼の話を聞かないが」
「転生してるってこと?」
「魂は流転するからね。そうだな……魂を白いシャツと考えてほしい。人生で汚れれば、あの世で洗濯に時間がかかる。清廉潔白なままあの世にいければその分洗濯の時間も減るんだ」
「なるほど……ってことはかぐやみたいな……」
「ストップ。とても楽しいが、眠り姫が隣で項垂れているよ」
「あ、ごめん、真実」
「むにゃあ……」
「芦花の部屋に運ぼうか。酒寄さん、諫山さんを頼めるかい?」
「うん、大丈夫」
退屈な話に眠ってしまった真実。時刻は8時程。恐らくは芦花と真実はあと1時間ほどで起きるだろうと彩葉が言い、ナイアは台所に立ち始める。
「夜ご飯?」
「あぁ、でもあまりカロリーの高いものは嫌だろうし……考えるのが面倒だな、色々作るか」
「手伝おっか?」
「おや、助かるよ」
そう言いながら、さも当然のように魔術を使って数人分と同じ働きをするナイア。面食らいながらも二人で料理を仕上げていく。
「ところで、ヤチヨは私に何もないのかい?」
『あれあれ、気付いちゃってた?』
「まぁ、君が反応しないわけないしね。月の民なのだろう?それも、時間旅行を経験している」
「そこまで分かるの!?」
「当初は、君の中身が他の惑星の羽虫や偉大な知能を有する種族が、何か特殊な方法で現代に来ているのかと思ってたが、酒寄さんの歌を聞いて納得した」
「それ、もし勘違いしたままならどうするつもりだったの」
「正体を突き止めた後に消していたと思う。危険因子にしなかならない」
睨みつける彩葉の視線を平然と受け流しながら、今は考えていないということをアピールする。その折にヤチヨが口を開く。
『魔術で……この因果を壊すことは出来たりするの……?』
「ヤチヨ……」
「……科学が安全性を重視した技術とするなら、魔術は確実性を重視した技術だ。リスク、コスト、リターン。全ての天秤が釣り合うわけではない。ただ一つ……私という例外を除いて」
出来るということを示すように、ナイアは影に隠れた無貌を表す。少し意地の悪い質問と理解しながら、彼は答えを期待する。一度答えた彩葉も揺れしまうが、それでも、期待通りに彼女達は答えた。
「……やっぱり良いよ、大丈夫」
『そうだね。ヤチヨと彩葉は……自分達でハッピーエンドにするって決めたもんね、チートは良くない良くない!』
画面越しに見つめ合う二人は、それでも理外の力を断った。この姿こそ、これでこそ。その答えを笑顔で受け止めた。
「……ククッ……ハハハッ!……良いね、素敵だ」
『あ、ていうかツクヨミに勝手に侵入してたのってもしかしてナイア君!?』
「ん、すまない。何度か魔術で侵入した。完璧に痕跡は消したと思ったんだが……やはり専門外だとアラは出るものだね」
「なんだ……全然軍事とか危機とかじゃなかった……」
『ヤッチョ達すっごい心配したんだよ〜!?』
「すまなかった。私なりの善意だったんだ。ついでに、芦花に掛けられた保護も破壊してしまった。すまない」
『……あれ、一応月の世界の超システムなんだけどな〜』
コトコトと煮込まれたスープが吹いた湯気が笑ったナイアの顔に重なる。紅い視線と、見えない表情が彼の不定形さを物語る。その姿に一抹の不安感を覚えていると、部屋からは芦花が目を擦りながら現れる。
「ナイア……」
「おはよう、芦花。短い時間だが少しは眠れたかい?何処か痛いところなどはないか?」
「…………」
「「?」」
寝起きでぼーっとしている彼女は、二人が並んだ台所を眺めて指輪をさすり、へにゃりとした笑顔で笑うと、洗面台へと促されて素直に向かっていく。
「……んふふ……夢じゃない……」
「……顔を洗っておいで、夜ご飯ができるよ」
「後で真実も起こしてくる〜……」
バタンッ……
「…………」
「ナイア君、今すっっごいニヤけてるけど」
「仕方ないだろう……可愛かったし……」
「それには激しく同意」
二人は顔を見合わせ、意見が合致したことで親近感を覚える。真実を起こして食事をしながら先刻の事を根掘り葉掘り聞かれた二人は、照れくさそうに笑う。
「さて……ここからは
二人の前だから自重したのか、ナイアは芦花の頭を軽く撫でて部屋へと戻っていく。
芦花も部屋で寝ようと提案するが、二人は納得せず、話をしようと腕をつかむ。
「いやいや……寝ようよ、ね……?」
「何をおっしゃいますか。ここにいる三人、形は違えど大事な人がそれぞれいるのですよ?」
「夜なべで語り合うのが礼儀ってもんですよ!」
「ご……後生ですから〜!」
まだまだ、彼女達の夜は更けていく。
ついにここまで来た!!
まだまだ終わりませんよ!目指すのは徹頭徹尾の超ハッピーエンドですし、なによりクトゥルフ要素がまだ芽吹いてねぇ!
というわけで、まだまだこの物語は続きます!
何卒、応援のほどよろしくお願いします!