神に恋した芦の花   作:レガシィ

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ここまで長かったような短かったような…。
読者の皆様が思い描いたような最後ではないかもしれませんし、それを超えたハッピーエンドかもしれません。
断言はできませんが、2人なりの一番幸せなEndだと思っています。
本編最終話、宣言通りの超ハッピーエンド!
見届けてください、それではお楽しみを!!


最終話 徹頭徹尾の超ハッピーエンド!

 ──5年後──

 

 最も好きな季節の、最も好きな時間が彼女の瞳を焦がす。

 

 買いすぎたと、両の手に余る重さを自分で嘲笑う。 

 

 ピロンッ

 

 スマホに表示されたポップアップに、薄く笑って返事をしてベンチで黄昏に身を任せる。

 

「あ、あの〜、よければ持ちましょうか?」

 

 目星【成功】

 

「結構だよ、私が持つから」

 

「あ、ナイア。おかえり〜」

 

 180を優に超える長身、落ちかけた太陽が作り出す彼の影に覆われた1人の親切な男性は、すぐに後ずさって立ち去る。

 

 それを一瞥し、芦花の持つ荷物を左手で二つとも軽々と持ち上げ、右手を差し出して彼女はその手を取る。

 

 軽く力をかけて立ち上がる芦花にいつもの笑顔を向けるが、彼女はそれより先に反応して抱きしめる。

 

「久し振り〜…会いたかった!」

 

「私もだ。1週間も海外出張だなんて、それこそツクヨミでいいだろうに…」

 

「よく我慢したね〜偉い偉い、花丸あげる。我慢できなくて2日も縮めてきたのは面白いけど」

 

 屈んだナイアの額に人差し指でくるくると丸を描く。

 

 現在、ナイアは世界で活躍する脚本家兼、カフェとモデルのバイトを続けつつ、裏では彩葉の金銭面からの研究の援助と研究面からの知恵を貸している。今回は海外映画の脚本依頼による会食があるため海外に出張していた。

 

 愛情深い芦花が何故空港に迎えに行かず、家から近い公園にいるのか。答えはシンプルに彼が急に仕事を終わらせて帰ってきたから予定が間に合わなかったというもの。

 

「随分と買い込んだね?」

 

「あはは、明日は大事な日だからさ。張り切って作ろうと思ったんだけど買いすぎちゃった」

 

「ふふ、それは楽しみだ。さ、帰ろうか」

 

 手を繋いで5年前から変わらない二人の家へと帰る。

 

 明日はつい先日彼女の研究が実った結果の報告会、そのための下準備。

 

「場所は酒寄さんのマンションだったね」 

 

「うん。うちで下準備して、向こうに持ってくの。ナイアの魔術ならちょちょいでしょ?私まだポーチくらいの容量しかないし」

 

「すっかり馴染んだねぇ。最初の頃は使わないいらないだったのに」

 

「だって便利なんだもん。彩葉にも今教えてるよ」

 

「良いんだよ。正しい技術なら積極的に使うべきだから」

 

 ドアを開けて中へ入り、二人は声を揃えて笑う。

 

「「ただいま、おかえり」」

 

 二人は荷物を片付ける。芦花はカーテンを開け、まだ残る黄昏の余韻に浸る。

 

 その姿に見惚れたナイアは、いつもの黒い手袋を外して神妙な面持ちで会話を切り出す。

 

「…芦花、夕食を食べたら大事な話があるんだ」 

 

「うん、また脚本の相談?」

 

「いや、そうじゃないんだ。もっと大事な…あぁいや、駄目だな、私の悪い癖だ、我慢ができない」

 

 ナイアは自分を嘲り、胸ポケットから一つの箱を取り出す。

 

「知り合いの弁護士と相談して戸籍も得たし、感情も五感も確かなものにして、人間に成れた。そして、充分すぎるほど君と幸せになれた。でも…それ以上を望んでしまうのが私なんだ」

 

 察した芦花は涙を溜めながら、彼の言葉の続きを待つ。

 

 芦花の前で膝を着き、彼は小さな箱を開ける。

 

 現れたのは、ダイヤモンドが誂えられたプロポーズリング。

 

「芦花の瞳に惚れた。芦花と笑ったあの日々が好きだ。芦花と過ごした、これから過ごす時間が大切だ。私は…綾紬芦花が、心の底から好きだ」

 

 静かに流れる涙。最後に紬がれる言葉。

 

「愛しています。私と、結婚してください」

 

「………………はい」

 

 左手の薬指に指輪を嵌める。大事に左手をさすり、両手を握る。

 

 そして立ち上がった彼は淡い、深い口づけをする。

 

「どうしよ…こんなに幸せでいいのかな」

 

「良いんだ。そして、まだまだ君を幸せにする。君を幸せにする権利を私にくれ」

 

「うん…うんっ…幸せになる…約束…!!」

 

「あぁ、約束だ」

 

 小指を重ね、辿々しく歌って溢れる嬉し涙。二人はこの大切な時間を噛みしめた。

 

 ──ー

 

 翌日のパーティ。

 

 彩葉の研究成果、かぐやの義体のお披露目。

 

 兼、ナイアの脚本が映画になって全米公開が決定したことのお祝いだった。

 

「「「「おめでと~!」」」」

 

 タワマンの一室で鳴り響くクラッカーの音。

 

 幸福に満たされる部屋の中でささやかに行われる祝賀会。招かれた二人の親友と出資者である兄、朝日。

 

「この料理美味しぃ〜!!」

 

「はは、お褒めにあずかり光栄だ」

 

 そして、かぐやの天真爛漫な声。

 

 ナイア以外の全員が知っている姿。改めて義体に精神移植をするというSFじみた科学を完成させた、日本の功労者を称賛する。

 

「ナイア君、改めてありがとう。貴方の協力無しじゃ、こんな早期に実現は出来なかったよ」

 

「協力はしたが、私はあくまでも五感の再現と金銭面だ。むしろ、魔術を使ってズルをした私と違い、ほぼ独力でここまで形にできた自分を誇るべきだ」

 

「難しい話は無し!彩葉は天才!これでおっけ〜!!」

 

 かぐやはパンケーキの一切れを彩葉の口に押し込み、立体VRのヤチヨもパンケーキを頬張る。

 

「めちゃ美味い…けど、普通デザートじゃないのこれ」

 

「ナイアもおめでとさん。昨日帰って来たんだろ?」

 

「まぁね、そうでなくとも門を使ってここに来るつもりではあったけれど、色々巻きで終わらせた」

 

「相変わらず魔術満載ですなぁ〜。遠慮しなくなったね」

 

「当然。芦花の為なのだから」

 

 目星【成功】

 

「…あれ、ナイア君手袋つけてないんだね。ってか、左手のそれもしかして…!」

 

 不意に彩葉が気づいた彼の左手。同時に一同が芦花の左手にも注目する。

 

 二人は左手の甲を向け、照れながら報告する。

 

「昨日、プロポーズしたんだ」

 

「それを受けました。まだ婚姻届は出してないけど…結婚します、私達」

 

「「「「「!!」」」」」

 

「おぉマジか、男見せたなナイア!」

 

「おめでどぉ"ぉ"ぉっ!」

 

「おめでとう…芦花…!」

 

「マジ!?芦花〜!おめでとぉぉ!!あ、ナイアも」

 

「おめでとう、二人とも…!」

 

「ありがとう…皆のおかげだよ」

 

「5年前ね…ねぇ、あの日から泣かせてないよね」

 

 睨みをきかせる彩葉の視線を受け流すように、ナイアはそれに答える。

 

 男仲間の朝日がグラスを差し出して乾杯し、4人は芦花を祝福する。

 

 幸せ溢れる報告に思い出話に花を咲かせる。

 

「式はいつ?」

 

「いつにしようか…やっぱり来年の6月とかかなぁ」

 

「なんて言ったんだ?てか突然だな?」

 

「本当は色々計画していたんだけど、海外に出張している時に…会いたくて仕方なくなってしまって、昨日家に帰った時にそれが溢れてしまってね」

 

「甘っ!あんまっ!ハッピーエンドじゃん!」  

 

「芦花…子供が出来たら先輩として頼ってね、二児の母だよ私は」

 

「私も経験あるよ、2日だけ」

 

「二人とも幸せそうでヤチヨはすっごく嬉しいのです〜!」

 

「子供…出来るのかな?」

 

 質問攻めに合う二人。

 

 それを受け取り、また希望の明日を繋ぐ。

 

 いつか、芽吹くだろう命。育てたい命。

 

 だが、それよりもまずは目の前の幸せを噛みしめるだろう。

 

 すれ違いも壁も、二人で乗り越えて笑う。

 

 これが二人の望んだ超ハッピーエンド!

 

 この物語に題名をつけるとするのなら。

 

 神に恋した芦の花。

 

 〜HappyEnd〜

 

 ──

 

 もう少しだけ。

 

 おまけ1

 

 2人が生放送で結婚報告する話。

 

 カメラの前に並んだ二人は、生放送で結婚を報告する。

 

 二人の熱愛ぶりは放送事故や切り抜きで既に露呈しており、厄介なファン等はナイアが徹底的に排他し、NGを出しているため平和な動画が多い。

 

 マルチに活躍するナイアの動画は好奇心が向いたものが多く、黒鬼や彩葉達との繋がりから歌やライブ的な活動も多様に行い、外国向けにも動画を撮っているため5年前より遥かにファンが増えている。

 

 芦花は化粧品のレビューをしながら、モデルやアドバイザー、広告塔として花開きつつ、ナイアとの関係性も明言しており、二人の恋路を応援するファンも多い。

 

 ナイア ファン登録者122万人

 

 ROKA ファン登録者147万人

 

「というわけで、先日籍を入れたんだ。あ、先に言っておくけど──」

 

 〈10,000〉

 

 〈10,000〉

 

 〈10,000〉

 

 〈15,000〉

 

 〈30,000〉

 

 〈50,000〉

 

「……スパチャは、今日は禁止にしようと…してたんだけどな」

 

「動画の概要に書いておくべきだったね…」

 

 〈式はいつですか!?〉

 

 〈ツクヨミでやるんですか!?〉

 

 〈おめでどぉぉぉ!!!〉

 

 〈50,000、頼む、ツクヨミで結婚式してくれ、祝わせてくれ〉

 

 〈30,000、Happy Wedding!!〉

 

 〈20,000、Congratulations!〉

 

 〈50,000、You are the treasures of the world!〉

 

「落ち着いてくれ、皆。祝福してくれるのはとても嬉しいんだが、特段変わることはないよ」

 

「結婚式に関しては…どうしよ、ツクヨミで出来るのかな」

 

 〈ヤチヨがお手伝いしてあげるよ〜!星がよく見える会場なんていかがかな?〉

 

 〈ヤチヨ降臨草〉

 

 〈なにやってんねん管理者ァ!〉

 

 〈ROKA泣かせたらマジビンタだかんね〉 

 

 〈約束忘れないでよね!!〉

 

 〈頑張れよ〉

 

 知っているメンツが続々とコメントし、ある意味阿鼻叫喚になるコメント欄。スパチャとコメントが現れ消えてを繰り返す中、ナイアは冷静に決断を下す。

 

「……分かった。今日のスパチャは全額ツクヨミで挙げる結婚式に当てようか」

 

「え、本当にするの!?」

 

「ここまでお膳立てされたらやるしかないだろう。それに、私自身も喜ばしいし」

 

 〈お?まさか…〉

 

「"私の"芦花に、ちょっかいを出す輩も減るだろうからね。いい牽制になる」

 

 〈出た〜!独占欲丸出しの重油男発言!〉

 

 〈これこれ!〉

 

 〈30,000、ご馳走様です!〉

 

 視聴者の要望で二人は雑談と結婚式の計画相談をしながら4時間程の配信を行い、その結果。

 

 最終同接数 189万6580人

 

 スパチャ総額 2億5320万

 

「「………」」

 

「ギネス記録みたいな数字なんだけど!?」

 

「お色直し100回くらい出来そうだね」

 

「嫌だよそんな忙しい結婚式!」

 

「う~ん、まぁヤチヨに投げよう。協力してくれるって言っていたし、これくらい些事だろう」

 

「単純に100万人位の結婚式かぁ…笑うしかないね」

 

「嬉しいことだ。まさしく世界が祝福してくれている。幸せが両手から溢れてやまないね……芦花、私の隣にいてくれてありがとう、愛してるよ」

 

「私も愛してる、ナイア」

 

 おまけ2

 

 ナイアが戸籍を得る話

 

 後の事を考え、ナイアの戸籍を得るために二人は弁護士に相談していた。

 

 過去、ナイアが地球に来てすぐの頃、ふらふらと観光していた時に神話的事象に遭遇し、手助けをした京都の弁護士。

 

 数奇な縁だが、お礼という話で相談をしていた。

 

 法律【成功】

 

「戸籍を得るには養子縁組を結ぶのが近道…か」

 

「それが一番早いわ。誰かおらへんの?身近にアンタを祝福してくれる人。自立してはるし、形だけでもええよって人」

 

「う~ん…店長…は、大して縁深くない。帝君は…普通に二人とも気まずい」

 

「…あっ、鎌田さんは?」

 

「流石に縁組まではしてくれないんじゃないかな…ダメ元でしてみようか」 

 

 ──ー

 

「いらっしゃい!!入って入って!!」

 

 事務所に直接二人で伺い、手土産を手渡す。

 

「実は、折行ってご相談がありまして」

 

「アラアラ、二人ともかしこまってどうしちゃったのかしら。次の撮影はまだ決まってないわよ?」

 

「あぁいえ、そうではなくて。鎌田さん自身に」

 

「?」

 

「その…私、実は日本での国籍がないという話は前にしたと思うんです」

 

「えぇ、孤児だったかしら。名前以外は無いのよね?」

 

「はい。それで、芦花と二人で日本で暮らすのに、戸籍が無いのは不便で知り合いの弁護士に相談したんです。それで…養子になるのが早いとのことで」

 

「……つまり?」

 

「鎌田さん…私の義父になっていただけませんか?」

 

「………」

 

 沈黙。口を開けて鎌田は唖然する。並んだ二人は気まずくなり、どうやってこの場を収めようか目で会話する。

 

 しかし、口をひらこうとした芦花の言葉を遮り、鎌田が声をあげる。

 

「あ、あのっ、すいません、やっぱり──」

 

「もっっちろん!!!!」

 

 事務所に響くような通る声。ガラス張りの相談室から漏れる肯定の言葉に社員達が一斉に振り向く。

 

「「…え」」

 

「んもぅっ!ナイアちゃんが私の息子になるなんて大歓迎よ!!あ、てことは芦花ちゃんは私の義理の娘になるのかしら!一緒に働けるなんて超楽しみよ!」

 

「あ、ありがとうございます。結婚はまだ少し先の予定ですが…」

 

「アラそうなの。でも2人ならきっと大丈夫よ!はぁぁ、待ち遠しいわ!ねぇ養子縁組ってすぐできるの?」

 

「いえ、少し手間ですが裁判があったりします。費用はこちらで持ちますし、信用できる弁護士の力添えもありますから、お時間だけいただけたら…」

 

「今から親子の練習!はい、その敬語禁止!」

 

「え、いや一応貴方は私と芦花の上司で…」

 

「お父様って呼ばなきゃこの話は無しよ!」

 

 強引に進める鎌田に負け、ナイアは少し前のように話す。

 

「………わかり…分かっ…たよ、お父様」

 

「ぎこちないわねぇ。今度ご飯にいきましょ!親子の睦を深めるのよ〜!!」

 

 ──

 

 おまけ3

 

 2人が互いの傷を見る話

 

 仕事帰りの芦花は家にいる気配はあるものの、出迎えのないナイアの姿を探す。

 

「ただいま〜…あれ、ナイア〜?…お風呂?」

 

 洗面所の扉が開き、珍しく着崩した上裸のナイアが現れる。

 

「ッ、芦花!?お、おかえり。すまないね、すぐに着替えるから…」

 

 鍛えられた雄々しく、シャワー上がりに火照った身体。夜以外にみることのない珍しい光景に、頬を染めつつも、芦花は少し表情を曇らせる。

 

 左胸付近にある、痛々しい刺し傷の跡が嫌でも目にはいるから。

 

「……」

 

「あ、あぁ、ごめんよ。いたずらに見せるつもりは…」

 

「うぅん、大丈夫。治さないでって言ったのは私だから」

 

「…君の傷も……見せてくれ」

 

 互いに何度も重ねて見た身体。ナイアは左胸に、芦花は脇腹に、痛々しい傷が残っている。消すのは簡単だが、それを許さなかったのは芦花。

 

 たくし上げた服から覗く傷を、ナイアは優しく撫で、芦花も同じように左胸の傷をさする。

 

「まだ痛むかい…?」

 

「雨の日はちょっと。ナイアは?」

 

「同じだ。少し痒くなる」

 

「……私はともかく、君はモデルだし、肌を出す服が着られない…やっぱり…」

 

「うぅん、これでいいの。ナイアと私を繋ぐ大事な傷だから」

 

 互いに、その傷への罪悪感はある。それ故、離さないし、離れるつもりもない。

 

 互いの傷を見せることは、夜を始める為の一種の合図。

 

 幸せで、不幸を塗り潰す。絵の具を溶かして互いの色に染めるのが、2人の過去の乗り越え方だった。

 




本編これにて完結!!!
約1ヶ月間の集中投稿ですが、ご愛読ありがとうごさいます!!!
一応、まだ少し続きますので是非!
小ネタ集の次は描写外の出来事や、シナリオに巻き込まれた他ライバーの話。2人の視点の細々とした話などを不定期ながら投稿する予定です。
蛇足ぅ〜!ってやつかもですが、まぁ好きな人だけ暖かい目で読んでやってください。
今回の件で人外×人間で、そんなに長くないストーリーが非常に自分好みなことを発見したので、他作品そっちのけでまた新しいシリーズ書くかもしれません。次はオリジナルかも?
もし縁があれば、その時にお会いしましょう!
改めて、神に恋した芦の花。
ご愛読ありがとうございました!!!

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