十話いかないくらいで終わると思います。
多分芦花編もこんな感じになります。
クラファンショップ再開!我慢出来ずにアクスタを買いました!もう駄目です!
サイン会は予定が重なって行けません…。
っと、話がそれましたが、この辺はのんびり更新していきます。
多少本編で言ってることとズレがあるかと思いますが、流し見してください!
それではお楽しみくださ〜い!
第一話 ナイアーラトテップ
地球に降り立つ前の邪神の日常、その断片だ。
宇宙の中心、今日か明日か過去か、とにかく私は退屈していた。数多の下僕と、思考や意志のない"無名の霧"と"闇"と共に。
お父様の目覚めを邪魔し、永久的に眠らせる。
それが私の役割。続ける理由は無い。こんな退屈、いつ滅んでしまっても構わなかった。いつパタリと幕が閉じられても納得できる。私はお父様の意思でありメッセンジャー、この宇宙の実質的な操作権を持つ存在だと理解もしている。いわゆる、
だというのに、この時、最近になって"欲"がでてしまったんだ。
いつものように
完璧な星を見つけてしまった。時間があり、生命に溢れ、死に塗れ、混濁した感情が行き交う星。
名を、地球と言うらしい。
演奏を終え、下僕に後処理を任せ、空いた時間で虚空を繋げて観察する。たった人一人、百年程度の一生から目が離せない。
約110億年程度で滅ぶ星で、何度もこの宇宙で再生している。
しぶとい星で、美しい。
■■■年後。
見ているだけで満足だった。
星の巡りが20回を超えた頃。試しに、ある程度の魔術や知識を植え付けた化身を産み出して地球に住まわせてみた。
姿は適当だが、人が好きな動物、猫を模しておけばいいだろうとね。
与えた命令は一つ。人間を尊べ。
だというのに何ということだろう、化身達が私の思考の外側に出た。
人間の命を、願いを、望みを、叶え捻じ曲げ弄び始めた。
一言で言うなら、"予想外"。
だが、なんだ、高揚というのか身体がゾクゾクした。
もっと見たい、そうだ、もっと人間に近しい化身を作ろう。それも一柱だけじゃなくて沢山。私ならそれが出来る。楽しみだ。
■■■年後
数多の化身、軽く百体程が地球にてそれぞれ過ごしている。彼らはいわゆる"ゲーム"をしている感覚なのだろう。
シナリオ(脚本)を作り、そこに相応しい人間…探索者を喚び、物語を描かせている。
私の化身には誰一人殺すなと明確な命令があるが、数多いる別の"私"はまた別の意思。そこに関与できる隙間はない。
考えたなと素直に感心してしまうよ、ここまで来ると。
ここ数千万年は私が何もしなくてもお父様の眠りは安定している。下僕だけで十分に対応できて、おかげで私は観察に集中できた。
■■年後
何と、まさしく予想外。
化身の一体が殺された。それも人間にだ。
元来地球にない魔術という存在が、何度も繰り返した再生の末にあの世界に定着した。
私にさえ予想できなかった。否、可能性は視えていた。だが、まさか化身の一体が殺されるとは。
「■■■■!!(面白い)」
思わず笑みと嗤いが溢れたよ。魔術とは私の喉元にさえ手が届く代物だったのだと改めて実感したものだ。
■■■年後
思えば、私のこの身体は宇宙で過ごすのに楽だから取っている姿だ。元の姿など思い出せもしないが、人間の真似をして姿を作ってみようと思い立った。
そうだ、人一人の肉体を解剖して…いや、勿体ないな。もしかしたら抱腹絶倒の物語を描いてくれるかもしれない人間を一人たりとて減らしたくない。仕方ない、ガワだけ寄せるか。
魔術【無貌】
顔は万人好みに、身長はこの程度で良いだろう。
スーツという服が特に動きやすくてよさげだ。髪の毛は触手に見られると困る、短くしよう。肌はアジア圏に近くしようと考えたよ、日本語が特に気に入ったんだ。
「あ、あ~…よし、これでいいだろう。我ながら良い出来だ。動きやすいなこの姿、よく馴染む」
■■■年後
それから人の姿を取ってまた観察を続けた。
この時は人間の真似事をするのにハマっていたね。
化身に持ってこさせた地球の料理を、毎日口に運んでいる。試しに自分で作ってみたりもして下僕に食べさせてみたりもした。大抵、?マークをつけて完食し仕事に戻るがまぁそんなものだろう。
「…確か、美食家がいたな」
パチンッ!
普段使いしている移動の魔術で、試しに彼を喚んで食べさせてみる。姿はヒキガエルとでも言うのかな、そこまで醜悪ではないし、むしろ愛らしささえある。
「んぁ?誰…?」
「や、久し振り。寝起きで悪いんだけど、これ食べてみて」
「ん〜…あぁ、"君"か。食べるの?いいよ〜」
彼のサイズに合わせて卓上に並べる。目の前の料理達を貪るが、概ね好評。
この時、褒められるのは悪くないと知ったよ。
「本体?珍しいね〜」
「最近、人間にハマっているんだ。あ、人間っていうのはね!とっても面白くて…!」
「知ってるよ〜。僕にも信者達がいるし、たまにご飯をくれたり喚ばれたりするよ。他の皆も似たようなことしてるんじゃないかな」
「…待て、君以外にも?」
「うん。別に仲良くはないけど、たまに会うよ」
「……地球に住んでいるのか?」
「そういうのもいるんじゃない?」
「………なるほど…!!それは考えたことがなかった!!感謝するよ!!」
「?どういたしまして〜それじゃ、寝るから帰して」
「あぁ、また機会があれば会おう」
彼を送り、この高揚した気持ちを表すように私は演奏した。うっかり興奮してお父様を目覚めさせかけたが、頑張って何とかした。
そんなことよりも人間に"本体"が関わるというのが世界の理として認められる等と考えたことがなかった。
考えついても多大なリスクがある。お父様を放置する、宇宙の構造を少し変える、人間に近づくことで地球にさらなる変化が起こる可能性。
…観察するだけで充分じゃないか?
もう少し、待ってみよう。
■■年後
ふざけるな。
化身の一体が殺された。それも数多の人間を巻き添えにだ。彼らには彼等の人生があった。カルトじゃない、ただの人間だ。美味しいものを食べ、喜怒哀楽を歌い、人並みのコミュニティを作って生涯を彩り、私を楽しませるはずだった。その人間を数百人も殺した。
「ハッハハ!…そこは私の庭だぞ…!!」
宇宙に漂う生ける太陽、■■■■■■。
魔術【 】
即座に探知し、奴を地球に影響のない場所へ飛ばした。
「思い知れ。たかだか小火(ぼや)の分際で、渾沌の怒りを買ったんだ」
「無貌の影の分際で、我と戦うか」
魔術【太陽】
「滅べ」
巨大な炎の塊を私に向けて撃ち込んできたんだ。愚かとしか言いようがなかった。幾億年無為に過ごしたアイツと"学ぶ"私とでは大きな違いがあることを教えてやったとも。
魔術【進撃】
魔術【無貌】
魔術【冷獄】
魔術【鏡合わせ】×100000000
「馬鹿が」
魔術【 】
莫大な質量の凍てつく槍で瞬間的に奴の肉体を消滅させてやる。間髪入れずに封印の呪文で次元の檻へと魂を閉じ込める。向こう数百年は出てこれないから安心だとも。
「…はぁ、疲れた」
ボソリと呟き、苛立ちを吐露する。少し前の私にはあり得なかった。いや、こんな事が無かっただけで、この思い自体はあったのかもしれないね。
■年後
今だ。今しかない。
ただ、何となく今しかない。そう思ったんだ。
私の悪い癖だ、我慢できなくなった。
一番安定している世界だ。多国家はお互いを牽制しあい落ち着き、食文化も発展している。人間達は娯楽を産み出して日々を笑顔で生きていて、素敵だった。
何度目の地球かはもはや数えていないが、この世界の人間は大人しい。魔術も使わないし戦争も2.3度しか大きなものはしていない。
理由はいくらでもつけられるが、とにかく行こうと思ったんだ。
「場所は日本にしよう。小さいが四季が美しいし言葉も豊かだ。人間の体なら大して不便もない」
下僕達にお父様の世話を丸投げする。無論、世界が消えるのは私としても避けたいから何年かに一度管理に来るが。
「あぁ、楽しみだ!!」
まずは何をしようか。そうだ、甘味を食べるのがいいな、この舌で味わったことのないものも多くあるのかもしれない。見たことのない景色があるのかもしれない。
わざわざ数百年近くも観測を我慢した甲斐があるというものだ。心臓が脈打つのが止まらない。
「向こうに行った時に目をつけられるかもだが…まぁ、何もしなければいいだろう」
魔術【 】
扉を作り、何年かで作った通り道を渡る。
初めて生身で一歩、地球に降り立つ。
宇宙にはない、化身を通してだけ知っていた人や排気ガスの匂い。舌を刺激する空気の味。大地を踏みしめる感触に重力、耳を刺激する静寂にはほど遠い煩いくらいの音。
視界に飛び込む、黄昏。
「素晴らしい……!!!ハハハハッ…!!」
思わず笑みを零してしまった。
まずは現在地、適当に飛んでしまったからここが何処か全く分からない。確かこういう時はスマホを使うはず。
「…当たり前だが無いな。ん?もしや私はホームレスか?そうなるな…金は持っておくか」
魔術【 】
取り敢えず宝石をいくつか産み出し、"質屋"へと持っていく。換金所にいけば間違いないだろう。
「いらっしゃいませ、お客…様」
「どうかしたのかい?」
笑顔から一転して顔が引きつる店員。どうしたのだろう。よく観察してみても、頬を赤らめるだけで反応しない。仕方ない、別の店員にしよう。
「あぁ、君。そう、そこの。彼女が動かなくなってしまった」
「申し訳ありません。私が承りましょう。何か御用でしょうか」
「ここは宝石を売っているんだろう?これを売りたいんだが」
ポケットから出すフリをしてコロコロと宝石を眼鏡をかけた店員の掌に転がした瞬間、青ざめた表情で彼も固まる。宝石におかしい所はないはずだけどと、私も固まってしまった。
「なんだ、どうしたんだい?」
「お、奥の席へ!!」
「?」
そこからは面倒だった。やれ戸籍だの証明書だの。
そんなものなくても物があるのだからいいだろうに。
記憶を少し弄って宝石を金に換えたが、まぁ彼等の人生に問題はないだろう。
「ふむ、さて…次は寝床…は、いいか」
全てが目新しい。
まずは知識をつけなければいけない。それも早急にだ。
どうも人間の"普通"のイメージとズレている。
「ククッ…私にかかれば知識などいくらでもつけられる。こういう時は本屋だ」
目星【成功】
近場の本屋。小さいが紙媒体の物が並んでいる。ここなら丁度いい。
「いらっしゃーい」
「あぁ、店主君。探している本があってね」
「はいはい、なんでしょう」
「この土地の地図と、一般常識について説明されている本はあるかい?」
「地図はありますが、常識…ってなると、あぁ、お客さん外人さんか」
「外人…あぁ、そうなるね」
地球の外、宇宙から来たのだから嘘ではない。
「ってなると、子供向けのマナー本かなぁ。あそこの棚にあるやつと、地図はこれでいいかな」
「全て買わせて貰うよ」
「気前いいね〜、毎度!」
「このくらいで足りるかい?」
金の価値はさっきの店で理解した。石があの値段なのだから、知識が得られる本はこのくらいだろう。
「ちょちょちょっ!」
「ん、足りなかったかな?」
「逆逆!多すぎますって!」
「そんなことはないと思うが…」
「いやいや、あー、これもつけますよ!」
お金の価値。そう書かれた本も載せられる。
「どんな坊ちゃんですか。そこに読書スペースあるんで、取り敢えず読んでみてください」
「おぉ、助かるよ」
5分。数百年でここまで人類は厚みのある歴史を紡げるのか。積み上げた本が自分の知らない知識だったと思うと感慨深い。
「ククッ…楽しいな…」
「お客さん、流し読みしちゃ意味ないですよ」
「問題ない、全て覚えている。時間を無駄にしたくないからね」
「いや、覚えたって…子供の童話でももうちょいかかりますよ…」
「それより、もっと人の感情に起因した本に触れたくなった。オススメを教えてくれ」
「は、はぁ…」
1時間。興味のある本を片っ端から買って読んだ。
どれもこれも素晴らしい。人間の想像力とはここまで広いものなのか。私には決して出来ないことだ。やはり人間は
「面白い…!」
「ファンタジー小説が好きなんですね。お客さん」
「あぁ、私にはとても思いつかないよ。さて、そろそろお暇しよう。閉店時間だろう?」
「えぇ。お買い上げの本は全部で…」
「八万六千二百円。税もいれた、あっているかな?」
「本当に覚えたんですか…」
「覚えるのは得意なんだ」
1日目は知識の吸収だけで終わってしまった。
だが、これほどまでに長く感じた1日はその時まで初めてだった。
──ー
そこからさらに1日経った。
蓄えた知識で違和感のない言動は身につけた。
金もある。スマホもズルをしたが手に入れた。
となると次は。
「協力者だな。人間を知るには人間に近づくのが一番だ。一人くらい私の正体を知っても問題ないだろう…っと、"この時間"か」
橙色が街を覆っていく。太陽に重ねると人の顔に影がかかり、誰か分からなくなることから、誰そ彼とも呼ぶ時間らしい。だが、そんな知識を抜きにしても、私はこの時間が一番好きだった。なんせ宇宙には白か黒しかないからね、あとは言葉にできない色。
そんな思いを胸にしながら、私は一番夕焼けが綺麗な公園へ足を運んだんだ。
幸運【決定的成功/クリティカル】
「──!!」
「──…」
不愉快だ、私の安寧を邪魔するな。腹が立つ。
「全く…何故世界の美しさに目を向けないのかね。何をそんなに焦っているんだか」
だから、この時はただ邪魔だったしなんの気もなかったんだ。
でも、黄昏が映った彼女の瞳に一瞬で目を奪われた。怯えて震えていた手に、恐怖で歪んだ表情に、私は胸の高鳴りと同時に不快感を覚えた。
関わる気など無かったのに、理由を後付けにして私は彼女を助けた。
「あぁ、すまないね。ただ、彼女の迷惑になっているんじゃないかと思ったんだ。不同意は犯罪なんだろう?」
近付いてさらによく見えた彼女の瞳と、懇願に似た表情、この女性しかいない。最初は協力者のつもりだったのかもしれないが、この時私の脳裏をよぎったのは、美しいという、一言だった。
助けてと掠れて怯えた声で、彼女は私に願った。
お安い御用だと。一切の対価無しに、この時初めて人を害したよ。彼女を護るために。
笑えるくらい警戒されていたのをよく覚えている。
何とか信用してもらいたくて、無理矢理な手段を取ったのも覚えている。思い出したように甘味に目を奪われたフリをしたりもした。
「私は誰でもあって誰でもない。どこにでもいて、どこにもいない。千の顔を持つ無貌の生物だ」
その後にカフェでそうやって正体を明かした。
思えば彼女は最初から驚くほど冷静だった。受け止めきれていないだけかもしれないが、そこは些事だ。
彼女の誕生日に、巡り会えたその日にその時の君には悪いが、私は心の底から感謝した。
「きっと私達は仲良くなれるとも」
とね。
それで、次はー…
バチィンッ!
リモコンのボタンを激しく押して映像が停止する。
「いや、思ったより最初からちゃんと感情あったんじゃん!」
「つかこんなん脅しと変わらんやろ!」
「くぉらナイア!ストーカーと大して変わんねぇぞ!!」
「ナイア君も苦労したんだねぇ」
「だから最初に言ったじゃないか。内情を語るとそんなにロマンチックじゃないよって」
かぐや、彩葉、真実、ヤチヨはツクヨミ内で映された映像と要所で付け加えられたナイアの副音声ににツッコミを入れる。
「運命までは操作していないし、勘弁してくれないか?」
「私は別に気にしなーい」
「というか、ヤチヨも大概だろう。酒寄さんのログイン履歴とか全部追ってるんだから」
「えっ、なにそれ!?」
「…なんのことでしょう〜」
そっぽを向いて誤魔化すヤチヨとシンプルな疑問から彩葉は問いを返す。
「ってか、何、宇宙の中心ってあんな感じなの?」
「まぁ大体は。他の神格連中は滅多に近寄らないけどね。変に刺激したくないし」
「変に刺激して途中滅びかけてなかった?」
「ハッハハ。何とかなったし良いじゃないか」
「絶対良くないよ?」
「こんな色ボケ邪神に宇宙の命運賭けてるってマジかよ〜!?」
「このかぐや姫、大分口が悪いな?」
ジタバタと暴れるように跳ねるかぐやが吐く荒い言葉に遠い目をするナイア。その後、映像をまた再生する。
「まだ出会いまでしか見せていないよ。3ヶ月を観たいって言ったのは君達だからね。せっかく記憶を抽出して編集したんだから」
内心楽しみなのを隠せないまま、一同は再生された映像をまた観始めた。
こんな感じの形で、次からは4人のツッコミアリで進むギャグパートのつもりです。息抜きがてらなのでのほほんと読んでいただけたのなら何よりです。