神に恋した芦の花   作:レガシィ

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クラファン5000%突破…wおめでとう!
Blu-rayおめでとう!!
おまけがそれぞれ違うって聞いて三枚ほど購入しましたw
特装版と、通常版2つ!AnimateのLEDパネルが欲しくて…。
ご安心を、ちゃんと2枚は知人への布教に使うので無駄にはしません!(聞かれてない)



第二話 ツクヨミ

 芦花と出会い、日常というものを体験し始めた。

 

 半ば……というか、完全に転がり込む形で彼女には当初迷惑をかけている自覚は流石に私にもあった。

 

 その代わりと言ってはなんだったが、可能な限りの彼女の力になれるように努力した。

 

 この時は正直な話をしてしまうと、芦花の事を人間から見た犬猫と似たような視点で接していたのは事実だ。

 

 とても繊細で、か弱くて、(邪神)が関わったのだから、百年という短い時間を可能な限り彩ってあげようと。

 

 そう思っていた。

 

「すまない……私のせいで……」

 

 なのに、早速躓いた。

 

 私のミスだ。彼女の腕に忌々しい跡を残してしまった。

 

 消すのは容易いし、脳を少し弄ればさっきの記憶も消せる。だが、それは彼女を冒涜する行為に他ならない。

 

 最高策は思いつくが、最善策ではない。

 

 信用もされていない男の近くにいるのは苦しいだろう。

 

 離れようとしたが、意外にも彼女は私に離れるなと言ってきた。

 

「……お安い御用だ」

 

 少し考えた後、彼女の頼みだと納得した。可能な限り叶えるが……いいのだろうか。

 

 震える身体と、泣いているのだろうか?滲んだ声で懇願する彼女に、人肌の温もりを分けることしか出来ない。

 

 初めて無力さを痛感した。だというのに不思議と抱きしめる彼女の心拍は落ち着いていった。

 

 もう大丈夫。そう言って静かに離れた彼女の右腕に残る跡を消す。

 

 二、三つの言葉を交わしたあと、料理が苦手だという彼女の為に腕を振るった。三大欲求に入るほどだ。そうだ、嫌な記憶も上書いてしまえばいい。費用の制限はつけられたが、何事も最初は大事だ。少しばかり奮発した。

 

 驚きと幸福の連続で、彼女が落ち込む暇など無くしてしまおう。

 

 そうやって魔術と料理を振る舞い、彼女は楽しげに笑った。

 

 つられて私も笑みがこぼれた。

 

「Virtualreality、仮想空間ってやつ。これ。"スマコン"っていうんだけど、これでログインするの。ツクヨミはその空間の名前。その辺の情報は疎いんだね」

 

 先ほどの会話に出てきた"ツクヨミ"。最初は魔術の素養も高い彼女が信仰者なのかとも疑ったが、名前を借りているだけらしい空間。

 

 スマコンとやらで行けるらしいが、それは高額で1台しかないらしい。仕方ないと諦めようとしたが、パソコンで調べることは許可された。

 

 部屋に行く彼女を見届け、先日手に入れたワインを嗜みながら私はパソコンを開いた。

 

 コンピューター【決定的成功/クリティカル】

 

 アイデア【決定的成功/クリティカル】

 

 知識【決定的成功/クリティカル】

 

「ふむ、なるほど……理解した。ふふ……」

 

 魔術[ ]

 

 来るなとは言われていない。生身で私は侵入する。

 

 私に警告を加える赤いウィンドウを力任せに握りつぶして偽物を作り、貼り付ける。

 

 隠蔽が完了したところで、私はツクヨミ内を散策した。

 

 魔術には程遠いものの、地球の技術と科学は素晴らしい。これを作った人間に今度お礼しに行こう。

 

 そう思いながら足を進めていると、ゲームセンターとやらに辿り着いた。しかし、"ふじゅー"という仮想通貨が無ければ暇を潰せない。

 

 作ってしまおうか……。そう迷っているうちに、私に話しかけてきた男がいた。

 

 周囲の反応を見るに、帝アキラという彼は相当の有名人らしく、さらに器も広いときた。施しを受けるつもりはないが、いい暇つぶしになるだろう。

 

 ダーツでの勝負。魔術やズルなどしなくとも、狙ったところに当てるのは容易。しかし、最短のコールドゲームは面白くない。

 

 タンタンタンッ……!

 

「……俺の負けだな」

 

 点数計算とオーディエンスの反応から、最も静かな勝利を選択したが、欠伸を噛み殺すほど退屈だった。

 

 何故だろう、待ちに待った人間との邂逅だというのに。

 

 きっと、ゲームが簡単すぎたんだろう。

 

 彼女の気配が動いた、用事が済んだのだろう。

 

 手短に挨拶を済ませ、私はツクヨミの地から離れた。

 

「寝てなかったの?てか暗っ」

 

 私の視界に問題はないが、暗闇に一人パソコンの前に座す私が気になったのか、彼女が話しかけてきた。

 

 続いて魔術を使って洗脳していないかと聞かれたが、答えもちろんNO。

 

 そんなことをして私にメリットが無い。

 

 彼女との間が空いた会話。さっきのゲームより遥かに心地が良い。

 

 ふと、理解した。この娘は不安や虚を抱えているのだろうと。表情や間の置き方、何故私に対してここまで逆に冷静でいられるのか。半ば自暴自棄のようなものなのだろうか。

 

 何故だろうか、放っておけなくなった。

 

 でも大丈夫。邪神といえど、無貌の生物といえど、彼女から見た理外の力を使えるのは事実だ。

 

 彼女の為なら、例え虹でさえ掴む力を振るってあげよう。そう決めた。

 

「HappyBirthday、My Dear」

 

 彼女の誕生日。その最後のプレゼントは私の言葉だ。

 

 譲ってくれた部屋に私は一人立った。

 

「……誰にも譲らない」

 

 ──

 

 朝。結局眠るという習慣が無い私は立ったまま時間が過ぎるのを待ち、時間が来た時に彼女の為に朝食を作る。

 

 見たところ、特別不健康ではなさそうだが、抱きしめた時の感覚が軽すぎる。あのままでは風が吹いたら飛ばされてしまう。かといって、女性に体重のことを言うのは論外だ。それくらい知っている。だから、自分から食べたいというように思わせよう。私のささやかな趣味が功を奏した。

 

 寝起きで少々間の抜けた返事。お洒落が趣味の芦花にとって、メイクは大切なもののはず。少々悔しいが、目は背けておく。

 

「朝ごはんは食べた方が健康にいいらしい」

 

 小さめに切った焼きたてのトーストと、明朝に産地から直接仕入れて作った甘さ控えめの果物ジャム。

 

「……美味しい……」

 

 気に入ってくれてたようだ。やはり下僕に食べさせるよりも数段楽しい。いずれ店を構えるのも悪くないかもしれない。

 

 残念なことに、彼女は今日は動画の撮影で私に構うつもりはないらしい。

 

 興味を持ってもらおうと宝石を作ってみたりもしたが、反応はいまいちだった。

 

 物欲が無いのだろうか、不思議な娘だ。私はもしかしたらそこが気に入っているのかもしれないが。

 

 しかもルールも決められてしまった。

 

 渋々ながら了承したが、まぁ抜け道はいくらでもある。

 

 バレなければいいだろう。

 

 几帳面な彼女らしく、しっかりと私にお礼を言ったうえで食器を片付けている。

 

 やはり何処か自棄なのか?

 

「……」

 

 ログインは2度目のツクヨミ。

 

 今回はスマコンを使った正規の方法。アバターは自作のものを外部から接続した。

 

 チュートリアルのヤチヨ。こちらから何を言ってもおそらくプリセットされた応答しかしないのだろう。

 

 ハッキングについて問われることも無いということは、私の証拠隠滅は完璧に機能しているということだ。

 

「さて……初ログのふじゅーももらったことだし、約一億人の"普通"を観察させてもらおうじゃないか」

 

 ファストトラベルを使わずに移動すればツクヨミの舞台を周るには、ざっと丸2日は掛かるだろう。

 

 KASSEN、虚像の飲食店、課金スキン、ふじゅー、ライバー。初日とは違う、噴水と大きなウィンドウのある広場で、不便さがある電子体と実体のプログラミングを完成させた。そのおかげで私だけは五感を実装できた。

 

「ふむ……粗もあるが、発想そのものはやはり素晴らしい」

 

 一通り見て回って情報を整理していた時、私のふじゅーの残高が増えた。

 

 ピコンッ

 

 確かふじゅーは心が動かされる事がキーとなっているはず。

 

 私を見ていた誰か。厄介そうならどうしてくれようか。そう思って探そうと立ち上がろうとして顔を上げるが、気づくと私は数人に囲まれていた。

 

「……どちら様かな?」

 

「あ、いや。マジック、上手だなと」

 

「この程度のことが……?」

 

 情報を整理しながら私が手慰みにしていたトランプマジック。どうやらそれをみていた数人の心が揺れたらしい。何も考えずに行ったそれらで数十円といえど金を貰う。なんとも、私の矜持が傷つく話だ。ある意味の侮辱だぞそれは。

 

「おぉ!すっごい!さながら魔術師ですね!」

 

「……君、こっちへ」

 

「へ、私!?」

 

「そう。君、名前は?」

 

「ち、忠犬オタ公……」

 

「ふむ、オタ公君。これを」

 

 声を出していた一人、灰色の犬耳の女性。名をオタ公と言うらしい。なかなか奇抜な名前だが、どうやら彼女はそれなりに名の知られた人間らしい。少なくない広場の人間達が注目している。

 

「あの程度を私の実力と捉えられては矜持に障る」

 

「へ、いやそんなつもりは無いですが!?」

 

「両手を出して」

 

「は、はい……」

 

 差し出された両手に赤と黄色と青の布をかけてオーディエンス達に向き直らせる。

 

「いいかい。魔術とは、こうやるんだ」

 

 バサァッ!

 

 直後にわざと音を立てて布を広げる。同時に歓声が上がった。別に魔術は使っていないが、人間には不可能な芸当を見せてあげたに過ぎない。

 

「ば、薔薇……!?どうやって!?」

 

 オタ公君とやらに彩りを上げたにすぎない。両手を3枚の布で縛り、花束の形に仕上げた。

 

「タネも仕掛けもないとも。ただの手慰みだ。魔術師ならば、この程度のこと目をつむってでもできる」

 

 腰を折って小さなショーを終える。

 

 同時に、途端に増えたふじゅー。数千円程度だが、充分。このくらいやって初めて心を動かすということだろう。

 

「よし、満足した。それではまた機会があれば」

 

 シュルルッ

 

「へ?おわっ……と!?」

 

 トラベル機能でその場を後にした。

 

 そんなこんなの後は芦花と昼食を取る。

 

「そろそろ芦花の作ったものが食べてみたいものだけどね」

 

 また美味しいと褒めてくれたのが嬉しくて、つい意地悪を言ってしまったが、そんな機会は無いだろう。

 

 その後もリビングで彼女と暇をつぶした。

 

 やはりツクヨミよりも実際に誰かといる方が私の性にはあっているようだ。高揚しているのを実感した。

 

 学校とやらに行くために予習している姿、ライバーの提案、やはり協力者がいるといないとでは人間を知る為のアイデアの刺激が違う。それに、一緒にいて非常に心地がいい。

 

 ピロシロンッ

 

「ツクヨミで気になるイベントがあるんだ、これから少し行ってくるよ」

 

 ツクヨミの創設者がミニライブをするらしく、一度姿を観てみたいと私は足を運んだ。

 

 そこで見たのは、得体の知れない電子生命体。

 

 羽虫か犬か、その他の痴れ者か。一億人の地球人にここまで正体を悟られずに根付いたんだ、相当のやり手に違いない。現に今ライブしている彼女も同位体の分身。

 

 本体はあの天守閣にいる。私もよく使う化身と似たようなものだろう。

 

「まぁいずれにせよ、安心するといい人間達……護ってあげよう」

 

 聞き耳(五感の判定)【成功】

 

 ライブも終わり現実へ戻った私を真っ先に刺激したのは嗅覚。焦げ臭く、炎が燻る忌々しい匂い。私の大好きな者を、焼いた、炎の匂い。

 

 何故?まさか奴が?封印が甘かった?いや、そもそも。

 

 怒りよりも先に心配が勝り、咄嗟に彼女を呼んだ。

 

「芦花!!!」

 

 だが、その心配は杞憂に終わった。

 

 何をしているんだこの娘は?フライパンを焦がすことに何の意味が?台所で何を?

 

「ご…ごめん、失敗しちゃった」

 

 アイデア【成功】

 

 まさか、私に食事を?あの意地悪を真に受けて?

 

 こんな得体の知れない化け物に食事を振る舞おうと?

 

 もしそうなら、いやそうなのだろうが、胸の中に熱さを覚えた。嬉しい。一言で言えばそうなのだろう。

 

 落ち込む彼女を抱き寄せ、使い魔達に片付けさせる。

 

 驚かれたが、彼女の作ったご飯をテーブルに用意して食べる。正直な話、改善点は優に10個以上思いつくし、まともな味覚ならば一言で不味い。だが、初めてだった。ここまで心が揺れた食事というのは。甘味も、高級なフレンチとやらよりも、自分で作ったものよりも、ずっとずっとおいしかった。

 

 最初で最後の食事だと、いい思い出が出来たと笑っていたら、どうやら彼女はまた私にご飯を作ってくれるらしい。照れ隠しなのだろう、私はまた意地悪な言葉を彼女に伝えしまった。

 

 ──ー

 

 カチンッ

 

 リモコンのボタンが再び押されて映像が停止する。

 

「またかい?」

 

「待って、お兄ちゃんとこんな早くから面識あったの?」

 

「あったよ?そもそも、生放送も推薦はオタ公さんからだが、それより先に帝君からのコンタクトがあったからだし」

 

「芦花ってこんな不器用だっけ?」

 

「違うの〜!あの時は偶然失敗しちゃったの!」 

 

「私が教えた何回かも焦げてたけどね」

 

「言わないでってば!」

 

「よよよ〜、ヤチヨのことそんな風に思ってたなんて悲しいのです〜」

 

「おぉ、かわいそうなヤチヨ〜」

 

「それ二人はどんな感情で慰めてんのよ」

 

「てか、オムライスの時そんな焦ってたんだね」

 

「流石に焦ったよ。数百年前のアイツが腹いせに私の周りを焼いたんじゃないかとね」

 

「その太陽は何してるの?」

 

「……何してるんだろうね?放置してたから分からないなぁ。まぁ、近いうちに再封印しに行こうかな。さ、続きだ。まだ1時間も経っていないし」

 

「濃くない?」

 

「んー、もう少し削ろうか。芦花のもあるし」

 

 ボタンを押し、再び映像が再生された。




大体2〜3話をきゅっとまとめてますが、流石にテンポ感悪いし似たような話なのと、私自身一人称視点が少し苦手というのもあり、大幅カットするか迷っております。
どうしたものでしょうか…。書きたいことは沢山あるんですがね。
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