神に恋した芦の花   作:レガシィ

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書きたいシーンが多すぎてまずい(汗)
結構のんびり目に展開してはいますが、毎日投稿なのでご容赦くださいませ。
速く公式ガイドブックが欲しいよ…もっと詳細知りたいよ…
(届くの2週間後)



第三話 未知への邂逅

 芦花がログインして十数分ほど。

 

 ナイアはツクヨミの構造を全て把握、自分の体を電子状に再構築してツクヨミへ不正に侵入した。スマコンを介さずに別次元としてVirtual世界に入ったことで、あらゆる警告を促すはずのウィンドウを改変し、一切の痕跡無く通り抜ける。降り立った初期位置から、薄く水が張った幻想的な空間を革靴で歩き始める。

 

 ほぼ全てのライバーは自らを動物や架空の生物等に模して投影している。その中で、シンプルなスーツと現実のままの顔のため、少々目立ってしまっている。

 

「ふむ……私の姿は変えるべきだなこれは。あまり目立ってバレると芦花に怒られてしまう」

 

 ナイアは物陰に入って自らの化身を模した姿を重ねる。

 

 元々はめていた黒手袋、黒と芦の花を刺繍した和服スーツに、コート風のマントと黒と赤紐のブーツ。黒い触手を硬質化して腰の左右から下に向けて伸ばし、袖の内側を宇宙につなげる。紅い瞳はそのままに、腰まで伸ばした襟足で隠れているが、後ろ首にもう一つ口を作り出し、胸元に銀の鍵のネックレスをしまう。

 

「よし、これでいいだろう。我ながらいい出来だ」

 

 ぱしゃりぱしゃりと水音を立て、語る相手が普段いない故の癖で、独り言を呟きながら観光気分でツクヨミを練り歩く。そこかしこを漂う当たり判定のないはずの生物を、外側の力で撫でながら素直に感心する。

 

「ふむふむ、なるほどなるほど。これは確かに良いな!Virtual故の現実にはあり得ないものを実現させている。皆ここに入り浸っていたのか」

 

 そうやって歩いているうちに、中央に噴水のある広場へと辿り着く。路上ライブをしている新人ライバー、友達同士で出店で買ったグッズや食べ物を楽しむ男女のPL達。その様子を見たナイアは声をかける。

 

「もし、少しいいかな、君達」

 

「え、うぉっ。すげぇアバターっすね」

 

「わ!すっごいイケメン!」

 

「珍しい服〜、自作?」

 

「はは、ありがとう。服以外は弄っていないけどね」

 

 自信にあふれた言葉でも、嫌味らしい言葉でもない淡々とした事実を告げ、ナイアは話を続ける。

 

「それで、そのパフェはどこで食べられるのかな。私も食べてみたいんだ。甘い物には目が無くてね」

 

「「「……」」」

 

「えっと、初心者さん?」

 

「あぁ、そうだね。ここに来たのはつい先程だ」

 

 キラキラと目を輝かせながらその質問をしたナイアの姿に、三人は申し訳ないといった様子でこの空間には味覚、嗅覚、触覚が無いということを教え、露骨にがっくりと肩を落とす。

 

「なんだと……食べ歩きでもしながら芦花を待とうと思っていたのに……」

 

「あー……雰囲気を楽しむものですし。なんかすいません」

 

「いや、無知な私が悪いんだ。すまなかったね、時間を取らせて」

 

「いえいえ。あ、そうだ、誰かをお待ちするんだったらこことか良いですよ」

 

 手をかざして映されたウィンドウ、覗き込んだその場所は遊技場。ビリヤードやボーリング、カラオケやコインゲームといったものまで揃っている。

 

「初ログインならふじゅーのボーナスがあるはずですし、時間潰しには充分だと思いますよ」

 

「へぇ、そんなものまで。良くできている」

 

 素直に感心の言葉を呟いた後、感謝を述べてナイアは覚えたその場所へ歩いていく。ファストトラベル機能を使えばと三人は思ったが、初ログインだからこの世界を見てみたいのだろうと納得して見送った。

 

 ゲームセンター、和風の神秘的な空間から一転、ふらふらと迷いながら辿り着いたその場所は近代的で、多数のゲームが揃っていた。

 

「しまった。ふじゅーとやらが無ければ時間も潰せない。また適当に話しかけるか、いっそ作ってしまおうか……」

 

 電子体として不正に侵入した彼には、全ての機能が適応されない。ファストトラベルもマップ機能も使えず、ふじゅーの支給もされない。

 

 目星【成功】

 

「おいおい、どうしたんだ?そんな所に突っ立ってちゃあ、時間が勿体ないぜ」 

 

「?」

 

 声をかけられて振り向く。燃えるような赤い髪に金色の瞳、鬼の角に特徴的な露出の多い着崩したケープの男、彼はこの空間で一人呆けていたナイアに声をかけた。

 

 同時に、彼の登場で会場がライブのような歓声に包まれる。

 

「おぉ……凄い人気だ。どちら様かな?」

 

「うぇぇ!?マジか、俺もまだまだだな。なら自己紹介だ。ブラックオニキスのリーダー、お前らの帝様だぜ!!」

 

 ウィンドウに自らの名前を大きく飾った名刺を表示し、黄色い歓声をあげる他のPL達に向けてファンサービスを行う。

 

「ご丁寧に、感謝するよ。私はナイア。つい先程この世界に来たばかりでね、右も左も分からない初心者だ。親切な人間(ひと)達にここを教えて貰ったんだが、ふじゅーとやらも無くてね、途方に暮れていた」

 

 流麗な仕草で彼は腰を折って挨拶をする。彼の顔も絶世と呼ぶに値する美男子、帝に集まったPL達も思わず彼の顔に魅入ってしまい感嘆の声を漏らす。

 

「ふじゅーがない?初ログボーナスあるだろ、使っちまったのか?」

 

 言いくるめ【成功】

 

「いや、少々特殊な事情でね、私にその手のものは無いんだ」

 

「……まぁいいか。じゃあ、俺と勝負してくれよ。雷と乃依が来るまで暇なんだ」

 

「いやしかし私はふじゅーを……」

 

「そんなもん俺が出してやるよ。そうだ、折角なら賭けようぜ。お前が勝ったらふじゅーをいくらかやるよ」

 

「……負けたら?」

 

「んー、ま、そんときはそんときに考えようぜ」

 

 心理学【成功】

 

「ふ……ククッ、良いね、"ゲーム"は好きだ」

 

「よし、決まりだ。タイマンだしな、ダーツでいいか?」

 

「構わないよ」

 

 トップライバー、帝アキラと初心者の一対一。

 

 観客を盛り上げることに全力を注ぐカリスマの彼は一挙手一投足を派手に着飾り、この勝負さえもライブのように騒ぎ立てる。

 

 彼が恐らく初心者に対して紳士に接するPLだと察する。ふじゅーを貰えるというこの上ないチャンスであり、ゲームをしている間に自分のシステムをこの世界に合うように作り変えてしまおうという打算も含め、彼はこの勝負を受けた。

 

「ルールは3回戦の501の01だ。先行はやるよ」

 

「ふむ、では」

 

 なるべく公平なゲームを選択したアキラ。この手のゲームに関して、トリックスターとさえ称されるナイアにはまるで話にならない。しかし、エンタメ基質も持ち合わせる彼はこの時間を盛り上げる為にバレないように手を抜き、演じる。

 

 投擲【成功】【成功】【失敗】

 

 タンッタンッカンッ

 

「お手本みてぇなフォームだな」

 

「ルールは知っているけど、対戦は久し振りでね。お手柔らかに頼むよ」

 

 静かに、しかし熱く二人は接戦を繰り広げる。

 

 いつの間にか騒がしかった数人の観客も気付けばどちらが勝つのかという戦いを、息を呑んで観戦していた。

 

「たまにはこういうのも悪くないな」

 

「良いね。ラストゲーム。悪いけど勝たせてもらうよ」

 

「自信家だな、俺も負けてられない」

 

 三本放ち、交代して三本。元々持つ得点を0にするというシンプルなルールながらも、かなり高度な技術と頭脳を使う接戦が繰り広げられ、今最後の一射が放たれた。

 

 投擲【成功】

 

 タンッ!

 

「……俺の負けだな。ぴったり0。俺は1余りのバースト。お見事」

 

「いいゲームだったよ、楽しかった」

 

 静かに上がる歓声と拍手。互いをリスペクトする握手とハイタッチで幕は閉じる。敗北したにも関わらず、帝を称える声は止まず、無名のナイアも良い戦いだったと他のPL達は称賛を送る。

 

「さ、約束のふじゅーだ。いくらほしい?」

 

「いらないよ。お互いただの暇つぶしだ。私が負けても何もする気が無かったろうに。そんな相手から取っても面白くない」

 

「バレてたか。でも貰えるもんは貰っとくべきだと思うけどな」

 

「またの機会にね。それでは、私はこれで」

 

 静かにナイアはその場から退出する。普通ならポリゴンとなって消えるはずだが、彼の消え方はその場から跡形も残さない瞬間移動によるもの。大多数はそれを気に留めないが、その消え方に帝だけは疑問を持った。

 

 そこにブラックオニキスのメンバーの二人が合流する。

 

 アイデア【失敗】

 

「……いや、まさかな」

 

「帝ざっこー。負けてるじゃん」

 

「白熱していたな」

 

 豹の尻尾を揺らめかせ、ファンに手を振りながら乃依は帝を煽り、物静かな雷は腕を組んだまま先ほどの勝負を称える。

 

「よぉ、雷、乃依。久し振りにボロ負けだ」

 

「「?」」

 

「接戦だったろう」

 

「いや、上手いこと手抜いてたよアイツ。一度もバーストしてないし、そもそも投げ方も適当っぽいしな。点数計算だけしっかりしてるから、上手いこと接戦ぽく映っただけだ。エンタメ精神が豊富で参ったわ」

 

「へー。ってか打ち合わせの時間じゃん、行こ」

 

 帝は頭をポリポリとかきながら呆れたように笑う。

 

 遅れて合流した、煽り口調で男性アバターに和メイド風の服の乃依(のい)、紫紺を中心とした装束風のアバターの寡黙な男、(らい)

 

 ブラックオニキスと名乗るトップライバーの三人は、ツクヨミの夜に消えていった。

 

 ──

 

 ほぼ同時刻、ヤチヨに招かれた彩葉は天守閣を模した城の部屋で向かい合い、深刻な面持ちで話を聞く。

 

 彩葉とヤチヨは一言では足り尽くすことのできない複雑な関係だが、互いに多方面で大切な人物。

 

「それ本当……?」

 

「うん。まだ致命的な欠損やハッキングは無いけど、プロテクトを全てすり抜けた何者かが、ツクヨミに何度か侵入してるみたいなんだよね」

 

「それ……軍事的な話?ヤチヨは大丈夫なんだよね……?」 

 

 不安気に質問する彩葉を、安心させるために抱きしめて撫でながらヤチヨは飾らない笑顔で伝える。

 

「大丈夫。ヤッチョの本体は月の技術の集合体だよ?地球の技術では物理的にもサイバー的にも、誰にも触れられないよ。彩葉以外にはね♪」

 

「……良かった……」

 

「とにかく、明日は緊急メンテナンスで私は離れられないから、彩葉は現実に集中してね。不安にさせちゃったかもだけど、ヤチヨなら大丈夫だから!」

 

「……うん」

 

「ネムッテ、ネムッテ!」

 

「あ、時間だ。じゃあまたね、彩葉。さらばーい!」

 

 頬を撫でて抱きしめた後に、ヤチヨはふわりと浮いてスリープモードに入る為に寝所へ移動し、それを見送った彩葉も不安を胸にしたままま現実へと戻っていった。

 

 ──ー

 

 芦花の部屋。

 

 雑誌やメイク用品の特集、小説や教材などが丁寧に棚に並べられた繊細な彼女らしい部屋。

 

 装着していたスマコンを外し、一息をつく。

 

 現実に戻ってきたことで思考の整理が始まり、色々あったなと、今日の1日を振り返る。

 

 ストーカーに暴行されかけ、神に等しい生物に助けられ、さらに同居することになった。

 

「……いや、いくらなんでも色々ありすぎでしょ……。考えるのやめた。メイク落として寝よ」

 

 芦花は辟易とした様子で呟き、洗面台へと向かう。ふと、道中通るリビングにて、暗闇の中でナイアが空にしたであろうグラスを再び謎の飲み物で満たす姿を目撃し、思わず声をかける。

 

「寝てなかったの?てか暗っ」

 

「あぁ、芦花。もう寝るよ。君は?」

 

「私もメイク落として寝る所……ねぇ、一応確認なんだけど、私に魔術とか使ってないよね?」

 

「んぇ?」

 

 あまりにもナイアのいる光景が自然で受け入れてしまう自分に、もしや魔術(理外の力)を使われているのではと彼に問いかける。しかし、素っ頓狂な声をあげて疑問符を浮かべた後、その心理を説明しだす。

 

「……あぁ、そういうことか。何とも言えないが、人は流れに身を任せると楽になるものさ。もしくは……君は常日頃、その日常を退屈と思っていて、何処か(うろ)を抱えていたんじゃないかな」

 

「……虚……?」

 

「稀にいるんだ。私にはまだ解せないものだが……感情を発露させる人間が。例えば、遥かな空を飛びたいと憤った者、深い海にどこまでも潜りたいと願った者、踏みしめた大地の怒りを一身に受けたいと嗤った者もいた。そして、いずれも私との邂逅を自ら望み、拒まず、私はそれを叶えた」

 

「…………その人達は、どうなったの」

 

「……死んだよ。過ぎた力は身を滅ぼすものさ。だから」

 

 ピシッ……ヴァンッ

 

 芦花の問いにナイアは即答する。

 

 直後、空間が割れる音が響く。瞬き一つの間にグラスを片し終え、芦花の隣に彼は立っていた。もう何度めかの魔術に驚いて後ずさるが、ナイアは優しく手を取って笑いながら言葉を続ける。

 

「君は狂ってはいけないよ。大丈夫、今日からこの這い寄る混沌は、世界で君だけの神様なのだから。願った通りに、望んだ通りに、虹を掴める力を君の為に振るってあげよう。HappyBirthday、My Dear(誕生日おめでとう、私の特別)

 

 カチンッ……

 

 12時を二つの指針が指す直前にそう言葉を紡ぎ、暗闇と、神格故の圧とは真逆に手の甲に小鳥のような触れるだけのキスをして文字通りに姿を消した。

 

「……」

 

 まるで世界で一人だけになってしまったかのような静寂。変わってしまった日常を、彼女は受け止めることしか出来なかった。




ブラックオニキス。鬼いちゃんいいですよね。
妹の為に割と自分のライバー人生賭けてくれるの惚れ惚れします。
ていうか1680のボイスドラマヤバくないですか!?なんつーサービスしてくれたんですか運営様!!2000%とかいく勢いですよこのままだと!
兎にも角にも、取り敢えずは色が付くのが目標です。
出来れば20でしたっけ、バーが埋まるの。どっちでもいいですが目に見えると嬉しいものですからそこを目指します。
感想もどんなくだらない質問や気になる点でも絶対返信しますしいただけると励みになりますので是非応援の程よろしくお願いします!
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