神に恋した芦の花   作:レガシィ

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色々あって(ほぼ)7連勤明けのボロボロメンタルです。
もう寝ます。
コラボカフェ楽しそう。
なんて、私怨たっぷりの前置きですいません!
お楽しみください!


第三話 私は私?

 最近になってファン登録者が随分増えた。

 

 コメントも捌き切れる数ではなくなってしまったから、その日毎にテーマを設けたり、人数を決めたりした。

 

 私のチャンネルは主に雑談と相談コーナー、そして、料理コーナー。

 

『というわけで、今日はリクエストに応えようと思うよ。5月を先どった野菜の料理…だね。皆、中々雑にリクエストをしてくるようになったね』

 

 〈それでもなんとかするからスゲェよ〉

 

 〈ナイア様のアバターのエプロン姿可愛いから好き〉

 

 〈アバターの見た目超凝ってる割に適当で草〉

 

『新玉ねぎやアスパラ、新キャベツ…どれも甘みが強くなったり辛みが和らいだりする野菜だね。お酒のおつまみなら酒蒸しやサラダがいいけど、今日はかき揚げにしようか』

 

 〈冷蔵庫開けて確認…またその場で決めてるよこの人〉

 

 芦花の注意をちゃんと聞いて二人分のコップ等は片付けておいた。

 

 ARモードと撮影を両立し、雑談しながら進めていく。

 

『天粉はしっかり冷やすとサクサクに揚がるよ…っと、油が跳ねるといけないね、少しスマホを離すよ』

 

 ポコンッ

 

 〈〈〈!!?〉〉〉

 

 本当に油断していた。手袋もしているし油の音もあってすぐに気づけなったんだ。インカメになって私の素顔が晒されてしまった。

 

 〈顔マジで変わんねぇのかよ!?〉

 

 〈本当に目赤いんだ!?てか脚長ぇ!背ぇ高ぇ!冷蔵庫と同じじゃん!〉

 

 〈イケメンイケメンイケメン!!!〉

 

 〈世界に本当にこんな人いるのかよ…〉

 

 〈50000〉

 

 〈10000〉

 

『?……あっ、しまった。あれ、どうするんだこれ』

 

 〈画面戻って左にスワイプすると直るよ〉

 

 〈言うんじゃねぇ!〉

 

 〈ご尊顔を拝めなくなるだろうが!〉

 

『…まぁいいか。今日は実写配信ってことにしよう。それで次はね』

 

 〈開き直っただと…?〉

 

 〈5000。ありがとうございます、助かります〉

 

 この配信でファン登録者が2倍くらいになったんだ。ネットニュースにもなっていた。意外と芦花からは何もいわれ無かったのは助かったが、普通に肝が冷えた。なんせ魔術でどうにかするには規模が大きかったからね。

 

 そんな感じでファン登録者は増えた。

 

「ぅぐぐっ…」

 

「…可愛い顔をしてどうしたのかな?」

 

 リビングで眉を寄せ、爪に何かを塗りながら唸る彼女。愛らしい仕草でいくらでも見ていられるが、困っているようならと声をかけた。

 

「…マニキュア塗ってるの。この新しいブラシ使いにくくてさ」

 

「難しいなら私が塗ろうか?」

 

 なんて、冗談交じりに笑いかけてみる。

 

 美容に気を使う上、繊細な彼女にとって私が触れるのは良しとしないはず。大方、"変な呪文とか模様書かれそうだから辞めとく〜"といって断られるだろう。

 

「え、ほんと?お願い」

 

 まただ。いや、良いんだが…警戒心は無いのか?目の前にいるのは邪神である以前に居候をけしかけた不審者だぞ?…いや、もう何も言うまいか。

 

 〈ちょいちょい自覚あるのなんなの?〉

 

 〈事実だからね〉

 

「…お安い御用だ」

 

 テーブルに広げられた色とりどり、それぞれ用途の違う液や瓶を芦花に聞きながら、取り敢えず続きを爪に沿って塗る。

 

 DEX×5【自動成功】

 

「…細いし、小さいな。簡単に折れてしまいそうだ…」

 

「怖いこと言わないでよ。てか塗るの上手っ、本当に何でもできるね」

 

 白くきめ細やかな彼女の指。日々、ケアを怠らない努力の賜物なのだろう。顔だけでなく細部まで美しい。

 

 そんな彼女を飾れると思うと、何だか楽しい。

 

「塗るだけじゃ、もったいないな」

 

「え?」

 

「よければケアも全てやろう。もう少しだけ手を借りるよ」

 

 肌を傷つけないように爪ヤスリで形を整え、トップコートで艶を出して、おまじないがわりに軽く魔術で保護する。

 

 そうやって塗り終わった時、突然不思議な提案をされた。

 

「よし、これで良いだろう」

 

「すご、めっちゃキラキラしてる…ね、ナイアもしてみない?」

 

「私かい?いつも手袋をしてるし、もったいないんじゃないか?」

 

「良いの良いの。ほら、この新色合うんじゃない?塗ってあげるからさ」

 

 なんというか、この数週間で彼女は私に心を許しすぎな気がする。甘やかしたり支えたり尽くしたりした自覚は充分すぎるほどあるが、ナンパの時といい警戒心が足りなさすぎではないだろうか。

 

「じゃあ、よろしくお願いするよ」 

 

「体格からして当たり前だけど、手大っきいね」

 

 出した手に、彼女が自分の手を重ねて来た。3回りほど大きな私の手に合わせられた小さな手。不意なイタズラごころで握ってみた。

 

「そういう君の手は小さいね。まるごと私の手に収まってしまった。このまま、潰してしまいそうだ」

 

 少しは恐怖を思い出してくれるだろうか。わざと牙を剥き出しにして言葉を濁らせてみる。

 

「しないでしょ、ナイアは」

 

 無駄だった。少しぐらい驚いたり怯えたりしてもいいと思うんだが。何人か"シナリオ"の生還を手伝ったが、いずれも私を化け物だのと呼んでは震えていたというのに。

 

「…しないよ、勿論」

 

 大人しく手を置いて指先を預け他ない。

 

「爪か…足にもマニキュアをするのかい?」

 

「私はしないけど、する人も多いかな。あと、足はマニキュアじゃなくてペディキュアって言うんだよ」

 

「流石は専門学生、知識も豊富だ」

 

「はいはい、ありがと…ナイアって爪も大きいから塗りやすいね。はい、終わったよ〜、どう?」

 

「おぉ。自分を飾るのは別に趣味でもないが、君が塗ってくれたものだと思うと愛おしい。ハハハッ…!」

 

「ナイアってよくわかんないところで笑うよね」

 

「いや、この手をみる度、君のことを思い出してしまうと思ってね」

 

「…あっそ」

 

 〈え、これ計算じゃないの?〉

 

 〈残念ながら。酷いよね〜、私ばっかり悶々して〉

 

 〈この後私がその立場になるから許してくれ〉

 

 夕食を共にし、いつも通りに彼女は料理に満足している。私は正直、食事など取ろうが取るまいが変わらないが、この顔を見れるだけでも作る価値がある。

 

「それで、どうなの?」

 

「…どうとは?」

 

「いや、そこそこ経ったんだから、人間を知るっていうのは順調なのかなって」

 

 そういえばそんなことを彼女に言った。というか、それが目的ではあるんだが、正直もうどうでもよくなってきている。

 

 今現在に私はとても満足している。そうだ、彼女と過ごすこの時間を永遠にしてしまいたいとさえ…

 

「っと、よくないな。それは」

 

「?」

 

「あぁ、すまない。気にしないでくれ。あぁ、順調だとも。事実、段々と人間らしくなっているだろう?」

 

「いや、正直そこまで変わっていないというか…」

 

 そんなはずはない。ご飯は毎日3食食べているし、趣味や仕事にも精を出しているし、何より私は楽しんでいる。

 

 いや、そもそも別に私は人間になりたいわけではない。

 

 肉体の老化で長くても百年程度で死ぬうえ、面倒なコミュニティや厄介事を生み出し続ける生物になる気はない。箱庭の外から眺めているくらいが…いやだとしたら、何故私は地球に来た?

 

「ハッハハ。無貌だというのに、やっぱり君達(人間)は面白いなぁ。学ぶことが多くて飽きないね」

 

「まぁ、別に気にしなくていい気もするけど。ナイアはナイアだし」

 

「…私は私?」

 

 適当に名乗った名前。呼んでほしいなどとは言ったが、それは一旦の信頼を得るための言葉遊びだ。別に覚えられるつもりは無かったし、自分という存在にもさして興味は無かった。

 

「どうしたの?」

 

「いや、分からないが…何故か胸が熱い」

 

「え、胸焼け?胃薬飲む?」

 

 効かないことを知っていながらもらった薬を飲む。

 

 本当に何度目か分からない。

 

 何故この娘は私を恐れない?対等に話せとも言ったし、名前を呼べとも言ったが、いずれもただの意地悪のつもりだし、恐れや正気の削れる様を楽しもうとしただけだったのに。何故私はこんなに揺さぶられている?

 

 そんな思いが募っていたある日。彼女の帰りが遅く、並べた夕食を前に呆けていた。

 

「…遅いな。連絡…は、しないか。しかし…う~ん」

 

 迷った末、一つの言い訳を用意した。"外"で魔術を使うな。つまり、家の中でかつ誰かの目に留まらなければ使っていいわけだ。

 

「もしかして羽目を外しているだけかもしれないしね。少し様子を見るだけだ」

 

 魔術【不可視の使い魔の使役】

 

 魔術【探知】

 

 芦花の魔力は記憶している。しかも日本の東京などというごく狭い範囲から探し出すのは非常に容易で1秒もかからない。

 

 そうこうしているうちに、発見する。

 

「…彼女、未成年じゃなかったか?」

 

 赤い顔で数人と一緒にお店の机に突っ伏している彼女の姿を使い魔を通して発見する。スマホで念のため検索してみても、19歳が飲酒可能等という記事は無かった。

 

「全く。誰にでも会わせるのは美徳ではないというのに…」

 

 しかしどうするか。魔術で記憶を弄るのは容易だが、それをするのは芦花に許可されていない。

 

 別に破ってもいいが、後悔は後を引くものだ。それに、この間とは違う、少し雰囲気の柔らかい友人達がいる。放っても帰ってくるかもしれない。

 

「…?」

 

 なんてことを思っているうちに、私はいつの間にか店の入り口にいた。

 

 自分でもかなり無意識に近いうちに魔術で移動したらしい。誰にも見られていないのは特に浴びていない注目から解した。

 

「……」

 

 もやもやする。また胸が謎に熱くなってきた。やはり薬など当てにならん。面倒だ。どうにでもなるだろう。

 

 肩を貸され、赤い顔をした芦花がふらふらと店から数人と共に出てきた。

 

「ちょっと、綾紬さんまだ未成年でしょ」

 

「ごめんごめん、ちょっとだけって思ったんだけど、弱かったんだね」

 

「大丈夫?歩ける?タクシー拾う?」

 

「うぅん…あるけまひゅ…」

 

 うん、この間の連中とは違う純粋な善意だ。

 

 それを使い魔の目を通そうが自分の目で見ようが、私の残念な悪癖が顔を出してしまった。

 

「や、芦花」

 

「えっ、誰…!?」

 

「えっと、綾紬さんの親戚とか?」

 

 信用【成功】

 

「少々、説明するのは難しいが彼女の友人だよ。迎えに来たんだ」

 

「えっと、綾紬さん。あの人知ってる?」

 

「へぇ?あ、ないあ〜、なんでいるの?」

 

「全く。飲み過ぎ…以前に、君未成年だろう。気をつけろといったのに。ほら、こっちに」

 

 ウロウロとした目と迷った手を引いて私の腕に寄るように誘導する。すると、芦花の友人の中に私を知る人間がいた。

 

「まって…ナイア?ナイア様?マジ!?待って待って私ファンです!あのあのっ、この間のバイト先の人間関係についての質問で…!」

 

「あぁ、YUYUさんか。私の回答は役にたったかな?」

 

「な、名前まで…!?」

 

「そういえば初配信の時からいたね。いつも応援ありがとう」

 

「え、すご。全部覚えてるんすか?」

 

「記憶力には自信があってね」

 

 喜ぶYUYUさんと握手をしながら彼等の疑問に答える。

 

 悪い人ではない、悪い人達ではないが、やはり何か気に入らないものがある。

 

「あの、綾紬さんとはどういう…?」

 

「言った通りに友人さ。気にしなくていい。あぁ、それと君、これはお会計とちょっとした迷惑料だ」

 

 適当に札束を渡し、禍根は残さないようにする。

 

「は、多っ!?」

 

「芦花、歩けるかい?」

 

「…むり〜」

 

「やれやれ、仕方ない」

 

 STR×5【自動成功】

 

 まだ夜は冷える季節だし、お洒落の為に薄着をする彼女の身体に触らないように二回りほど大きな上着を着せて横抱きにした。

 

「それじゃあ、私達はこれで。あぁそれと、私達のことは芦花含め、他言無用で頼むよ。余計な波風が立つと私が怒られてしまう」

 

「あ、えと…はい」 

 

「お、応援してます!配信頑張ってください!」

 

「あー…はい、その、お気をつけて…」

 

 タクシーを拾わず、芦花を抱きかかえたまま彼らの視線から外れる。少し存在感を薄くする魔術だ。

 

 やがて誰からの視線も無くなった頃、家へと瞬間的に移動する。

 

「さて、眠り姫。機嫌はいかがかな?」

 

「うぅん…んん…」

 

「全く。ほら、起きてくれ…って、おいおい脱ぐな脱ぐな!」

 

「…あついぃ…」

 

「冷やしてあげるから脱ぐんじゃない…ってこらこら寝るんじゃない。せめて化粧を落として着替えて…!」

 

「…ナイアがやって」

 

「は?」

 

「ん、やり方わかるでしょ、ん」

 

 無防備に顔を差し出してきた挙句、私がわざわざ見ないようにと気遣ってきたのを無下にしてきた。酒とはここまで人を狂わせるのか。

 

「…今日だけだ。君はもう二度と私の前以外で酒を飲むな。もしくは信頼できる人の前でだけ飲むんだ、いいね」

 

「んふふ…はーい」

 

 〈ねぇなにこれ!?私こんな事してたの!?〉

 

 〈芦花、お酒弱いもんね。ここまでなるのは珍しいけど〉

 

 〈ナイア君の言葉荒いのも珍しいね〉

 

 慎重に化粧を落とし、着替えは流石に私がさせるわけにはいかないから魔術で換装させる。

 

 一息をついたところで、椅子から立ち上がった彼女がふらつくのを咄嗟に支えた。

 

 仕方ない、このまま彼女の寝室まで運ぼう。

 

「待てよ、許可されていない。なら、私の部屋…も、駄目だ。どうすればいいんだ…?」

 

 抱きかかえて数分停止する。

 

 魔術で新しく部屋を構築する。芦花の酔を無理矢理冷ます、魔術で部屋へ直接テレポートさせる。

 

 解決手段はいくらでも思いつくが、どれも微妙なリスクが伴う。

 

 なんで私がこんなに気を使う必要がある?

 

「いや、使うだろう。まぁいい、いずれ起きるだろう」

 

 パチンッ

 

 魔術で彼女の身体に負担をかけないようにクッションを床に置いて横にする。何かあった時の為に隣で座って時間を潰す。普段なら配信の時間だが、今日は無理だ。彼女より優先するものではない。

 

「全く…こちらの気も知らず」

 

 …待て、こちらの気?どんな気持ちだそれは。

 

 嫌われるのは確かに避けたいが、なんの感情だこれは。

 

 ポスッ…

 

「?」

 

 肩に重さを感じ、見ると彼女が何故か私に寄りかかっている。

 

 何故、わざわざ起きて私に身体を預ける?

 

「芦花、起きたのなら部屋に…」

 

「いやで〜す…今ナイアは私の枕〜…」

 

「…はぁ、考えるのも面倒だ。ほら、肩では寝にくいだろう、膝においで」

 

 文字通り、思考を放棄した。全部酔っ払いのたわ言だ。

 

 私の膝に乗ったかどうかの僅かな重みを感じながら、私も眠りについた。

 

 〈ちなみに、この後芦花は記憶が無い上に二日酔いでね。私が一日看病してたよ〉

 

 〈…いやこれ、途中から酔い冷めてたよね?〉

 

 〈!?〉

 

 〈うん。完全にじゃないけど、多分部屋戻れるくらいは。てか途中からの記憶はあるよね、この話確か泊まった時に聞いたし〉

 

 〈ちょっ、なんっ、バラさないで!?〉

 

 〈え…この時から…?〉

 

 〈いやこの時はまだ2人が心にいたけどナイアがちょっと強くて無条件に甘えられるしこの前助けてくれた時とかカッコイイなって思ってたりして〉

 

 〈すっげー早口〜〉

 

 〈…芦花、君くらいのものだよ。私を弄べるのは〉

 

 〈ごめんて…こんなに動揺してると思ってなかったんだもん〉

 

 〈お〜い、再生するぞ〜、次はナイアの生放送からか?〉

 

 FUSHIがヤチヨの肩から降り、動画の再生を開始した。




このお話は裏側の側面が強いので、本編読了後をお勧めします(超絶今更)
飽きてるわけじゃ全くないんですけど、似たような話なので正直代わり映えしないんですよね。
補填に近いというか。どちらかといえば読者の皆様が飽きてないかの不安が大きいです(汗)
毎度こんなこと言っていますが、まぁ趣味だしいっか…的なね。
なんて、疲れてるんでしょう、愚痴ばかりです。
すいません。次回も是非お楽しみに!
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