ナイア視点も伸びそうです。また詐欺になる!
まぁ…いいか…。
東京ドームコラボカフェは無理だ…12時ぴったり予約しようとしたのに、たった2分過ぎただけで前売り券が売り切れたよ!!
ヤケクソで仕上げたので変な時間です。お楽しみください!
全く、だから言ったんだ。部屋で寝ろと、酒など飲むなと、急に立ち上がるなと。
起き抜けに洗面所に駆け込んだかと思えば飛び出して、そのまま倒れた時は形だけの心臓が口から出そうになった。
「芦花、私が怒っている理由が分かるね」
「…うん…」
「弱っている君に説教はしないよ。私は居候だし、そもそも人じゃないから偉そうには言えないしね」
「はい…」
リビングの床に座った私の膝でぐったりする彼女の柔らかな頬を、可能な限り優しくつねりながら遠くを見つめる瞳を覗く。私の瞳は魔術でも変えられない、何も映さないだろう深淵の紅い瞳。
いつもの意地悪と同じような言葉だが、怒りを少し含むんだ自覚はある。いつものように流したり、私に予想外を見せられる体調でもないのだろう。生返事しかしてくれない。
「はぁ…終わり終わり。芦花、食欲は?」
「…無い」
「まぁ、そうだろうね。部屋に戻るか、このまま私の膝で寝るか、好きな方を選ぶといい。幸い、今日私に予定は無いからね」
実はそんなことはないが、先に連絡は入れておいたからカフェのバイトは休めた。まぁ、一日くらい平気だろう。
「…学校は…」
「止めておけ。途中で私が迎えに行くのがオチだ。連絡はアプリだろう?私がしておく」
「…ごめん頭痛い…なんとかできたりする…?」
「いくら芦花の頼みでもお断りだ。今日一日は自然治癒に身を任せたまえ」
「酔いを覚ましてくれるだけでいいから…」
「治したら無理に学校行くだろう、君。そんな小細工が私に通用するものか」
〈…これ、彩葉も似たようなことしてた!!〉
〈あぁ…風邪引いた時ね。こんな理論武装じゃなくて事後だったけど〉
少し、強く言い過ぎただろうか。いや、しかし今回は彼女のこれからを考えるとこのくらい言わないと。
いやだが、そもそも私(人外)の言葉が彼女に影響を与えられるのだろうか。
「ナイア…」
「…すまない、芦花。言い過ぎたね。ただ、君のことが…」
「うん、分かってる…今日は大人しくしてる。正直立つのも辛いし」
「…待て、芦花のことが…なんなんだ?」
「え、何その自問。心配してくれてるんじゃないの?」
「心配?君を…?」
「違うの!?…って、痛ぁ…」
心配、そうか。心配なのか、私はこの娘が。
周りに流されやすくて、周りに合わせることが当然と思っていて、何故か無理をしたがって、その容姿に集う悪意に鈍感で、とても幸運で不運で繊細な彼女が、心配で仕方ないんだ。
「そうか…そうだ、心配だ。とても、とても心配で仕方ないんだ、君のことが」
〈これ、"心配"の所って、もしかして〜…〉
〈"好き"だよね、どう考えても〉
〈そうか、この時からかぁ…〉
〈いや、ぶっちゃけナイア君は一目惚れでしょ。好きを知らなかったってだけで〉
〈……君等、容赦ないね。一応実質的なこの宇宙の最強なんだけどな、私〉
何だかスッキリした。全て彼女が心配だからという理由ならば納得がいく。そうか、こういう感情なんだな。
「…はぁ、考えるのが面倒になってきたな」
「ナイアってさ、頭良いのに結構適当だよね」
「主に君のことでこの頭を悩ませているよ」
「そんなに…してるね、うん、ごめん」
「謝らなくていいよ。君にかけられる迷惑なら神冥利に尽きる。二日酔いに効くものでも作ろう」
その場から動かずに魔術で台所を操作して2人分のフルーツジュースを作る。普段なら紅茶とコーヒーだが、たまに嗜好を凝らすのも悪くないだろう。
「魔術、楽そうで良いなぁ」
「約束通り、普段は使っていないよ。ほら、起き上がれるかい?」
よろよろと起き上がる芦花。少し顔も青いし、酔が冷めきっていないのだろう。
「あ…さっぱりしてて美味しい」
「それは良かった。果物の甘さは二日酔いの身体に良いらしいからね。取り敢えず、それを飲んだらベッドで横になったほうがいい。クッションと私の膝では流石に疲れは取れないだろう」
「結構…悪くなかったけど」
「そう言ってもらえるのは光栄だが、やはり身体に良くはない。何かあったら呼んでくれ、意思を持って呟くだけでいい」
「うん、ごめん」
あいも変わらず、何故こうも後ろ向きなのだろうか。
頼られるのが好きだといったばかりだというのに。
謝罪など胸が締まるような心地よくないものより、私を満たしてくれる言葉を君には紬いでほしいというのに。
「…芦花、私は謝罪よりも感謝の方が好きだ。ごめんよりも、ありがとうを口癖にしてくれた方が私は嬉しいよ」
「…ありがとう」
「どういたしまして。それではよい夢を、My Dear」
立ち上がる彼女に肩を貸し、部屋の前まで誘導して頭を撫でる。初めて会った日と同じように額に近づけようとした唇が、何故か遠く感じてしまった。
「…ナイア?」
「っ、あぁ、すまないね、おやすみ」
パタンッ…
改めて実感した。壊れてしまいそうなほど軽く、柔い。
内面さえも今にも硝子のように割れてしまいそうだ。
彼女のことを考えるほど、心配が胸を支配する。
どうすれば、私のこの虚を取り除ける?この胸の熱さは冷める?
「…考えても分からん。まだ人を知りきれていないな」
ピコンッ
不意に届いたメール。相手はツクヨミの運営者、ヤチヨ。
『ヤオヨロ〜!ツクヨミは楽しんでいただけて毎日楽しくって笑顔になってくれてたらヤッチョは嬉しいな!そして、ファン登録者数30万人突破おめでとう!そんな君に、コラボのお誘いが来ているんだ!帝君主催の公式コラボ生放送!一緒にツクヨミを盛り上げて、めでたししちゃお〜!』
月見ヤチヨ。現状、この地球で私が唯一"知らない"存在。
知るのは簡単だ、魔道具にそういうのもある。
だが…アレに頼るのは癪だし、自分の目で見て決めたほうが納得がいくというもの。
罠か誘いか、純粋な好奇か。
乗ってやるとしよう。
URLから、私を推したというオタ公さんへ連絡する。
確か彼女はシナリオの生還者だ。この地球では二人目だが、私の正体に感づいていてもおかしくない。
それが理由か?
連絡から一分足らず。オタ公さんからの返信がスマホのウィンドウに表れる。
ゲストは私の他に二人。テレリリ・ティートテートと、阿久魔ヨウガという男。私で最後らしい。
そこから数度の会話の応酬の後、明日の夜、挨拶を兼ねてツクヨミで集まることになったが…芦花は大丈夫だろうか。まだ二十分程度しか経っていないというのに。
「……久し振りにツクヨミに潜るか。意識を分けていれば気付けるし問題もない」
思えば配信はしていてもツクヨミには潜っていない。
高額なスマコンも埃を被っていてはもったいない。
トンッ…
毎度のことながら、水の中に落ちるような演出には驚かされる。前回は…そうだ、芦花といた広場が最後だったな。いつも夜のこの場所は嫌いではないが、やはり私としてはあの燃えるような夕焼けが好きだ。
そんなことを思いながら、物見にぶらついてみる。
途中、いくつか目を引いたものがあっても感情は揺れない。
やはり、暇だ。
この感覚は…久しく忘れていた、あの場所と似ている。
「…駄目だ、強欲は良くない。観察するだけでも充分楽しんでいたはずだろう」
ドンッ
「?」
触覚のない世界でも、座標が被ればウィンドウで知らせられる。要するに、誰かが私にぶつかったと言うことらしい。フードに鬼の耳、陰陽師風の装束。彼には見覚えがある。
「すまない、少し呆けていた。怪我…は、ないかこの空間だと。確か君は雷君、だったね」
「こちらもすまない。お前は…ナイアだったか。先日のダーツ勝負、リーダーが完敗したと言っていたぞ」
「やはりバレていたのか。まぁ、君達以外は欺けたのだから良しとしよう」
「「……」」
帝君の動画を少し見たことがあるが、彼は物静かで自身家といったような性格だったはず。積極的に関わるものでもない、早々に…。
「…昨日、配信を休んでいたな」
「!意外だ、見てくれているのかい?」
「あぁ、非公開だが登録もしている」
「ますます意外だ。非公開なのは、君なりの気遣いととっても?」
「構わない。少し、話さないか。近くに個室型の茶屋がある」
「私は構わないが…」
ちょっと、正直地球に来てから会った人間の中でも不思議な部類の人間だ。
突然の誘いだがこれも縁だし、何より暇だから付き合おう。
飲み物と食べ物の偽物を互いにほおばりながら、彼の真意を探るとしよう。
「やはり、ツクヨミだと味気ないね」
「…あぁ。味覚の実装が待ち遠しく思うな」
「悩み…と、言う程ではなさそうだ。大方、トークスキルをもう少し伸ばしたいとかその辺かな」
「凄いな、一目でそこまで分かるのか」
「君、セリフが大体いつも似たようなのだからね。大方誰かが考えたセリフ集的なのがあるんじゃないか?」
「当たりだ。俺の弟が考えたものを引用している。リーダーもそれを了承しているし不満も特に無い。だが…ナイアの動画は、いつも誰かと会話しているのが、楽しそうに見えたんだ」
結構喋るな。会話そっちのけで思った感想だが、元来別に人と話すのが嫌いというわけではなさそうだ。
言葉を選ぶのに時間がかかるとかそういうのだろうか。
「アドバイスと言うほどではないけれど、一つだけコツはあるよ」
「ほう、教えてくれ」
「聴くことだ。耳が2つあるのは、話すことの倍、人の話を聞くためだという言葉もある。他にも、目線、言葉の抑揚、接続詞。見ることも含めれば更に倍、その人のことを知ることができる」
「…流石だ、リーダーの言うとおりだったな」
「おや、試されていたのかな?」
腕を組んだ雷君が帝君の話を切り出した。出逢ったのは偶然だろうが、話をしてみたいというのは彼の入れ知恵だろう。
「大したことじゃない…っと、来たか」
「?」
突然、眼の前が暗くなった。誰かが目を覆ったらしい。
ツクヨミでは五感がない分、私の感覚や魔術も妨害される。別に現実に影響はないから特別措置をする気もないが、こういう事に関しては無力だ。
だが、雷君と関わりがあり、こういう悪戯をする人間といえば。
「…乃依さんか」
「えぇ〜、分かっちゃうんだ」
「乃依、リーダーも」
「おぉ、マジでいるじゃん」
「ダーツ以来だね、帝君」
「お前全然ツクヨミで活動しないからさ、見かけたら連絡してって言っておいたんだわ」
ダーツの時に興味を引いてしまったらしい。多忙のはずなのに、よくやるものだ。向かい側に座った彼が話す内容はタイムリーなものだった。
「まずはコラボ、ありがとうな」
「こちらこそ、誘ってもらえて光栄だ。お手柔らかに頼むよ」
「詳しい話はまた明日だけど、お前に聞きたいことがあってさ…お前、ハッカーだったりする?」
心理学【成功】
対抗心理学【成功】
なるほど、彼だけはあの日の違和感に気づいていたらしい。となると、ヤチヨの差し金か。トップライバーで顔も広く、そっち方面の力もある。人を見る目も確かだし、適任だろう。
「…まさか。何故そう思ったか、理由を聞いても?」
「ヤチヨが言ってたんだ、ツクヨミに不正な侵入を繰り返す奴がいるらしくて、そいつを見つける為の協力に声をかけられた」
「ふむ、その発言からするとおかしな点がある。私はあの時が初ログイン、繰り返すほどツクヨミには来ていなかった」
「俺はお前の初ログ前に繰り返されたなんて言ってないぜ」
おぉ、見事だ。わざと落とした言葉のミスも見逃さなかった。ツクヨミに長くいるその経歴は伊達ではないらしい。
「ククッ…あぁ、すまない。少し楽しくてね。続けよう。さて、何か証拠が?ただ、私の言葉の綾かもしれないよ?」
「…ヤチヨに頼んでログイン履歴を見せてもらえば一発だ。不正なログインも全て映像で記録されている」
「それすら消せるとしたら?」
「無駄だ、ヤチヨちゃんの力は…」
「あぁ。彼女、AIじゃないもんねぇ。大方ウイルスの類は効かないんだろうし、人間の知らない技術も持ってそうだ」
「「!?」」
カマをかけたが、正解のようだ。まぁ、元から分かっていたことだが、魔力が関与していない所を見るに、洗脳や魔術じゃなくて被害の一致の関係というところか。
「おっと、口が滑った。ネタバレが過ぎたな。それで、君達の中の私がツクヨミに牙を剥く動機、手段、正体。まだどれも解明できていないが、どこから切り崩す?どこから私(深淵)を覗く?私は君の考察が聞きたい」
「ヤチヨによれば、俺以外の協力者にかけた強力なプロテクトが壊れたらしい」
「ほう、管理者様のプロテクトを破壊するなんて、その人物は凄いねぇ」
「…バグやウィルスじゃなくて、"人物"か」
芦花にかけられたアレのことだろう。再び出したヒントの言葉にも、彼は反応してくれた。
とても地頭(int)が高いんだろう、こういう会話は楽しくなる。
「…その人物はROKA。インフルエンサーだ。お前が彼女と一緒にログインした履歴もあるし、ツクヨミ内の映像もヤチヨが全て確認した」
「おぉ、お見事。さて、ヒントの時間だ。一つだけ、なんでも答えよう。そこにウソも偽りも介入しないことを約束しよう」
現実の彼らの場所も把握した。心拍数が上がっているのも確認できていて、冷や汗もかいている。
真実に迫る人間の選択を、聞かせてもらおう。
「お前は…人間なのか?」
その質問をするか。やはりヤチヨは人外、神格に近い何かで確定だ。そして目的も、恐らくツクヨミを護る以外にはない。私が欲しい情報は全て手に入れた。
彼等は"無害"。念のためヤチヨからも情報は得るが、放置で構わないな。あとはこの問答を適当に終わらせればいい。
「おい、お前は一体なんなんだ」
「ふむ…私自身、自分のことなんて…どうでも…」
"ナイアはナイアだし"
私は無貌の生物。私は何にでもなれるし、何処にでもいる。私に中身も外見もない。だから、この答えは半分があっている。そのはずだ。
「私は…ナイアだ」
「は…なんだその答え」
「あぁいや、すまない。私は…いやしかし…」
何故言い切れない?何故、ただ一言無貌の生物だと明かすだけなのに、ここまで躊躇っている。芦花の言葉が反芻する。私に中身があるなどと。私は私だと?
「……」
「リーダー。俺の勝手な意見だが、ナイアは別にツクヨミに危害を加えるつもりはないと思う」
「雷?」
「その気ならとっくにやっているし、投稿している動画でも、ナイアは毎日楽しそうにしている。それに…ナイアは、ROKAが好きなんだろう」
「…ん?」
待て、どうしてそうなった?君そんな男だったか?
「ROKAと面識もあるようだし、ストーカー等には当たらないと思う」
「ツクヨミへの攻撃的なハッキングは?」
「違うと思う、ナイアにメリットが無い。プロテクトも破壊されただけで、それ以上はなかった」
「…確かにな」
待て、勝手に解決し始めたぞ。雷君、私はいつの間に君からそんなに信用を得た?その"解っている"という目をやめろ。何故か腹が立つ。
「あーっと、つまり雷が言いたいのは。ナイアはROKAが好きで、ハッキングとかに強いから、未知の技術から護ろうとしてた的な?」
「あぁ。ヤチヨには報告しなくていいだろう。他人の恋幕に口を出すのは野暮だ」
「…だ、そうだけど、マジ?」
私の魔術は芦花を護ることに集約している。故に、確かに言ってることは殆ど当たってはいるんだが、なんだか凄く納得がいかない。
「いや…まぁ…芦花を護ろうとしているのはその通りだが、心配なだけだ。君の思うような感情ではないと思うが…」
「ROKAの為ならなんでもできるとは思っていないのか?」
「当たり前だろう。私にできることならなんでもするが…それが何か?」
「…アホくさ。俺帰るね」
何だ、何故だ?心配ならなんでもするだろう。大抵の人間はそのはずだろう。何故乃依さんは帰った?
「君達…何だその目は」
「惚れた女の為か…そりゃ、俺達の出る幕じゃねぇな」
「安心しろ、ヤチヨには適当に報告しておく。頑張れ」
「待て…なんか、何だか凄く盛大な勘違いをしている気がするぞ。それにまだ私に対して解っていないことがあるはずだ」
「…まぁ、月人がいるくらいだし、似たようなもんだろ」
「ちがっ…いや、違うくないが、もっと詰めて来るべきだろう」
「いや、ツクヨミに害ないなら良いわ。頑張れ」
「俺はお前が何者だろうと応援する」
頭が痛くなってきたぞ。何でそんな目をしてくるんだ。
「私…君達に何か信用を得られることをしたか?」
「…男の友情ってやつ?」
「……分からん…納得が…ッ」
"ナイア"
なんともおかしなタイミングで呼ばれた。
「すまない。呼ばれた、行ってくる。はぁ…話は終わりならそれでいい。…これだけ言っておく、私は
もう考えるのを疲れた。数千億年分の記憶を脳に詰めるよりもとても。だがそうも言ってられない、芦花が呼んでいるのだから行かなければ。
〈みか…みかど様…〉
〈意外とちゃんと動いてたんだ、流石だなぁ〉
〈てか雷さんってこんな人だったんだ〉
〈ちなみに彼、私のファンクラブの一桁だよ。面白いよね〉
〈ヨヨヨ…ヤッチョの頑張りと不安が男の友情で無駄になっていたなんて〜!〉
帝はナイア君に対してグーとパーです。(ナイアくんは基本全属性勝ちますが)
帝は基本的にナイアに勝てません。今回のお話では、帝が負けるシーンを書きたかっただけです。
あと雷ファンの皆さんすいません。私の中では彼はおもしれー男認定しているので多分キャラ崩壊です。