神に恋した芦の花   作:レガシィ

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自分で書いてて時系列がこんがらがってきました。
まぁ、その辺はちょっと都合がいいように解釈していただければと思います。
なるべく前書きを書いているんですが、雑談ばかりですね(笑)
では、第七話、お楽しみください!



第七話 何故、信用できる

 オタ公さんとしばしの会話を続けるうち、コラボメンバーと、今回私が参加を決断した要員。

 

「皆、やおよろ〜!」

 

 月見ヤチヨの"本体"。正確には、このツクヨミの空間内における。という意味だが。

 

 ここにいる皆、私の先輩にあたるわけだが。

 

「こんばんわぁ〜。私、テレリリ・ティートテートですぅ。ナイア君の配信、いつも視聴してますよぉ」

 

「確か一度だけコメントしてくれたね。12回目だったかな」

 

「噂通りの記憶力だな〜。あ、俺は阿久魔ヨウガ。バンドとKASSENの配信してます。ヨロシク」

 

「阿久魔君の演奏は一度だけ聴かせてもらったよ。初めて触れる音楽で実に興味深かった」

 

「初めて?ロックなんて今どき珍しくもないだろうに」

 

「訂正するよ、知識としては知っている。出生が特殊でね。閉鎖的な育ちだから、目に映る全てが新鮮なんだ」

 

「へぇ、どうりで」

 

 帝君は私の正体に少しだけ触れている。

 

 だが、馬鹿な誤解で勝手に解決してくれたおかげで、それをヤチヨに伝える気もなければ、これ以上踏み込むつもりもないはず。

 

「初めまして。自分、乙事照琴です。いやぁ~、いつか一緒に配信したいって思ってたんで光栄ですよ!」

 

「こちらこそ。トップライバーである君達と同じ時間を共にできること、非常に光栄だ」

 

「んじゃ、ナイアさん以外は面識あるんで自己紹介はこれくらいに。打ち合わせ始めますか〜」

 

 配信予告は既に終わっており、ゲストは直前に公開される仕組みらしい。

 

 一人一つ、メインの企画を持ち寄って約6時間の長丁場放送。

 

「運営側からは一人一答の質問コーナーですね」

 

「黒鬼も最後の告知に時間をもらう予定だ。だから、三人は得意な企画を頼む」

 

「なら俺は音楽系だ。即興の歌枠にでもするかな」

 

「私は資格系のクイズコーナーでしょうか〜」

 

「私は…料理か雑談しかしたことないな」

 

「おや、ナイアさんはゲームじゃないんですか?」

 

 確かに得意だ。だが、私と人間の知能では正直話というか、遊びにもならない。

 

 帝君の時のように手加減すればいいか、流石に数万人も視聴していれば気付く人間もいるかもしれないが。

 

「あぁ、そうだね。最新の流行には疎いが、アナログなゲームなら腕に覚えがあるよ」

 

「んじゃ決まりだな。ナイアはこういうの初めてだろ?俺らである程度台本は用意しとくから、当日は好きにしていいぞ」

 

「それはヤチヨの提案かい?」

 

「お、よくわかりましたね〜」

 

 随分、私に都合の良い話だ。

 

 …考えてみれば、私を除いたこのメンバーはここ、ツクヨミのトップ層。

 

 帝君の誤解はつい昨日、オタ公さんもどうやら私を疑うほどには至っていなかった。

 

 ということはつまり

 

 "月見ヤチヨは私を疑っている"

 

 大したものだ。一ヶ月に満たない活動で私を警戒するに到れるとは。ならば、私もその疑問に敬意を示そう。

 

 私が隠しきれるか、君の逆鱗に私が触れるか。

 

 互いの目的を暴き合う"ゲーム"の時間だ。

 

 やはり、私はこうでなくては。

 

 〈おお〜、傍からみるとこの時超すれ違ってんね〉

 

 〈でも、当たってるのが流石邪神といった所ですね〜〉

 

 〈あ、やっぱりそうなんだ。てか阿久魔君、芦花狂いのやばい人だと思ってたけど、意外と普通なんだね〉

 

 〈芦花狂いなのはこっちも一緒でしょ〉

 

 〈これ勝ったのどっち?〉

 

 〈ヤチヨだろう。彼女の純粋にツクヨミを護りたいという気持ちは、芦花へ想いを伝えて初めて解したからね〉

 

 滞りなくその後も顔合わせは続いた。何回かゲームのテストプレイやヤチヨへの探りも入れたがなかなか用心深い。八千年というのも嘘ではないのかも知れない。

 

「それじゃあ、これで解散ってことで。次は来週っすね〜」

 

 終始、スムーズに事を運んでいた彼が今日の顔合わせを締め、それぞれが現実へと戻った。

 

「さて…朝食は何にしようか」

 

 何事も表裏だ。現実と仮想を混ぜるのはナンセンス。

 

 現実は現実で、楽しまねば。

 

 そうやって時間が経つのを待ち、朝食を作る。今まで意図的に見ないようにしていた起き抜けの芦花の表情はいつもと違う。なんとも無警戒で、こう、ポヤポヤとしている。

 

 可愛いな

 

「んぐっ!?」

 

「?、どうかしたのかい?」

 

「どうって…今…」

 

「?」 

 

 〈は、これ無意識?〉

 

 〈えぇ…心の声が漏れることって本当にあるんだ〉

 

 喉に詰まらせたのだろうか、突然低い声で芦花が唸った。かと思えば、顔を俯けて私から目を逸らしてしまう。何故だろう、もっと見ていたいのだが。

 

「ど、どうかしたのかい…?」

 

「…なんでもないっ。ご馳走様!」

 

「えぇ…」

 

 かきこむようにして朝食を終えた彼女は早業でメイクと学校へ行く準備を整える。

 

「行ってきます!」

 

「あ、あぁ、行ってらっしゃい」

 

 律儀で丁寧なことだ。怒っているだろうに、ちゃんと挨拶をして学校へ向かうとは。

 

 ここから駅まで芦花の足でも走れば僅か数分だ。

 

 つまり、私が2人分の食器を片付け、目の前にある彼女が提出する予定の課題を見つけるまでには、既に電車に乗っているわけだ。

 

「ふーっ…」

 

 魔術【分身作創】

 

「全く、ズルをするつもりはなかったのに。仕事に行ってくれ」

 

「分かっているよ」

 

 〈なにそれずるっ!何回私も分身できたらって思ったことか…!〉

 

 〈これは教えられないなぁ。魂を分割する術だから人間には危険だよ〉

 

 化身を作る要領で私の思考と魔力の半分を持ったコピーを作り、仕事に行かせる。

 

 魔術【無貌】

 

「いや、いつも通りの方が、でも…あぁ…」

 

 魔術【無貌】

 

 やっぱり、こっちでいい。マスクと眼鏡で誤魔化せるだろう。

 

 扉を開けた瞬間、何故か芦花が胸に飛び込んできた。

 

「「へ?」」

 

「えっと、一応聞くが、何故?」

 

「……課題忘れた、あと今日課外授業だったの忘れてた…」

 

「…ククッ…ハハハハ!!全く…君は何処まで…!」

 

 遂に堪えきれず笑ってしまった。不運というか私のせいだなこれは。分かりやすく顔を赤くして自分の失態に落ち込む彼女。こういう時にこそ私の出番だろう。

 

「ふっ、くく…すまないね。芦花、場所は?」

 

「…え…」

 

「安心して、魔術は使わない。ちょっとだけ、法に触れるだけさ」

 

 ヘルメットを作り出して芦花に被せる。

 

 それを察したんだろう、彼女は静かに私の後ろに着いてきた。

 

 2人乗りなど初めてだが、別に難しいことじゃない。

 

「芦花、しっかり、出来る限り強く捕まってて」

 

「い、痛くない?」

 

「君の力で傷がつくほどやわじゃないさ。飛ばすよ」

 

「…うんっ!」

 

 風を切る心地よさ、かき鳴らされるエンジン音、彼女の弱く強い腕の力。私が走ればこの程度の速さは優に超えられるが、バイクにしかない気持ちよさもある。

 

「すっご…気持ちいい〜」

 

 やはり大した距離ではない。今日の彼女の学び舎まで容易に辿り着いてしまった。

 

「ありがとう、すっごく助かった」

 

「君の力になれたなら本望。頑張っておいで」

 

 ヘルメットを預かり、小走りで向かう彼女を見届けた。

 

 朝から忙しい娘だ。なんだか疲れてしまった。

 

「…作り方を間違ったかな」

 

 彼女を乗せている時からだ。

 

 心臓が跳ねるように、妙に脈動する。彼女の看病をしていた時も額への口づけも出来なかったし、彼女の顔を真っ直ぐ見るのも構えなくてはいけない。私は彼女が心配で、協力してくれる人間だから愛でていたはずだ。その為の愛情表現もしていたし、今でもそれは変わらない。

 

 なのに、彼女に今までのように近づくことが何故かできない。

 

「バグか。人間の身体とは不便なものだな。一度分解して作り直すか」

 

 〈恋心をバグとか言うんじゃねぇ〉

 

 〈君、さっきから酔ってるのか?〉

 

 分身にあらかた任せて今日は肉体の改善に注力しよう。

 

 誰かを作ったり生み出すのは簡単だが、自分をとなると大分話が変わってくる。なにせ0から作るわけだから、サンプルも何もない。

 

 数時間かけて作り直した身体。改めて重力が重く感じるし、肉体の適合までに時間もかかる。

 

「…寝るか」

 

 疲労感に身を任せ、椅子に座ったまま眠る。

 

 本来、人外の姿であれば夢の中だろうと動けるし思考はできる。やはり、魔術を使う以上は人間の脳では限界があるし、完全に人の身体には出来ない。が、可能な限り人に近づけた身体は自由の利かないものばかり。

 

 疲労だけが溜まる難儀な身体だ。

 

「…芦花?」

 

 目を覚ました頃、何故か私の左肩に芦花がいた。椅子を用意して、わざわざ寝にくい姿勢でいることから意図的なのだろうが。

 

 あまりに無防備だ。人外ということを抜きにしても、生物学的に私は男。生活を共にして信頼を得たにしても、この緩さは何なんだ、誰にでもこうなのか?

 

「…いや、違うだろうな」

 

 むしろ彼女は誰かを心配することのほうが多い立場だろう。誰からも頼られる立場の彼女が、弱みを見せれる相手が私なんだろう。これだけ異質な存在にそれを向けるのは少しどうかとも思うが、彼女の拠り所になれているのなら、それは私が望んだことだ。 

 

 〈やるね〜。三年かけても彩葉が分かってなかった芦花の性格に気づけてんじゃん〉

 

 〈ちょっ、ごめんって…〉

 

 私が人間であれば、彼女にここまで近づけなかっただろうか。同時に、もし人間なら、これ以上を望めるのだろうか。

 

 私は無貌の生物で、彼女は人間で、そこの境界ははっきりしている…はずなんだ。

 

 思考より先に、彼女の身体が心配で、先に言葉が出た。

 

「芦花、起きて。身体を痛めてしまうよ」

 

「あ…お、おはよう…」

 

「ふふ、私の肩をよほど気に入ってくれたようで何より。早かったね」

 

「もう6時だよ?」

 

「えっ、あれ、もうそんな時間か」

 

 しまったな、まともに意識を手放したのなんて数千年振りなせいで、すっかり時間の感覚が狂ってしまっていた。

 

「芦花は部屋に戻るかい?行かないなら紅茶でも…っと」

 

「ナイア!?」

 

 ガクンッ

 

 立ち上がろうとした時、膝から崩れ落ちた。さっき肉体を弄った影響だろう、何処かの関節部分の構造を間違えたらしい。

 

「えっえっ、どっどうすればいい!?救急車!?」

 

「あぁいや、大丈夫だから。誰かを呼ぶのは君の方が困るだろう」

 

「ナイアの方が大事!!」

 

「…………」

 

「ねぇ、どこか痛い?身体動く?何かできることある?えと…魔力?とか」

 

 自分の生より、私を優先した?私が大事だと言ったのか?この無貌を、宇宙の混沌そのものである私を?

 

「ナイア…?」

 

「…芦花。なら、一つだけいいかい?」

 

「うん、何すればいい?」

 

「魔力が少し足りないんだ、私の膝に乗ってくれるかな」

 

「えっそっ、そんなスマホの充電みたいなシステムなの?」

 

 〈そんなわけあるか〉

 

 〈やっぱり!絶対おかしいと思ったもん!そもそも魔力切れなんて起こらないでしょ!?〉

 

 〈まぁ、100%じゃないけど起こらないね〉

 

 床で胡座をかいた私の膝に彼女は大人しく収まった。

 

 風邪を引いた時にも思ったことだが、やはり彼女は軽く、小さく、柔すぎる。

 

「これ、めっちゃ恥ずいんだけど…」

 

「すまないね、もう少し我慢してくれ」

 

 後ろを振り向かないよう、彼女を包んで固定する。

 

 擦る手や頬、仄かに香る彼女の香水、少しずつ激しくなっていく互いの心拍音。

 

 全てが私の胸の何かを、どうしようもなく刺激する。

 

 ガリッ

 

「痛ぁ!え、なになに、魔力って食べるものなの!?」

 

「え…」

 

 〈噛んだの!?なんで!?〉

 

 〈たまに彩葉やるじゃん〉

 

 〈やっちょとかぐやにするよね〜〉

 

 〈えっマジで…ごめん無意識だった〉

 

 〈〈良いよ〜〉〉

 

 〈キュートアグレッションってやつだね。夫もたまにウチの子の手甘噛みしたりするよ〉

 

 芦花の肩に残った噛み跡が、私が噛んだことを視覚的に知らせた。

 

 自分でも信じられない。完全に無意識だった、誤魔化す言葉も思いつかない。

 

「ナ、ナイア?え、なんで泣いてるの…?」

 

「すまない。私にも分からないんだ…肩、痛いだろう。本当にすまない…無意識だったんだ」

 

「えと、まぁ、良いよ。びっくりしたけど、別に悪意があったわけじゃないだろうし」

 

 分からない、解らない、判らない。

 

 全てだ。何故だ。

 

「…何故…そこまで私を信用できるんだ…?」

 

 ついに聞いてしまった。

 

 怯えていた、どんな解答で私を惑わせるのか、どんな声で私の胸を貫くだろう。

 

 怖い、恐くて仕方ない。彼女が私をどう思っているのか、言葉にされたら私はまともでいられるのか。

 

 狂気の表れと謳われた私が、まともなどと甚だおかしな話ではあるが。

 

「私は無貌の生物、外も内も無い怪物だ。君の生活に躙り寄った混沌だ。この世界どころか宇宙さえ私の掌、君達人間の理解の及ばない化け物なんだ。なのに、何故君は…」

 

「……変なこと聞くなぁ」

 

 肩に乗せた私の頭を、芦花は器用に手を伸ばして振り向くことなく撫でてきた。

 

「ナイアは、私だけの神様なんじゃなかったっけ?」

 

 〈うおっ、マジか。色気えぐっ〉

 

 〈顔見えないの芸術点高い〉

 

 〈これで落ちてくれないのがナイアの良いところ〉

 

 〈それ褒めてるのかい…?〉

 

 〈皮肉のつもりで〜す〉

 

 薄く微笑みが漏れたような声ではっきりと言い放った。

 

 初めて会った時に、確かに最初に言った。

 

 だが、そんな理由で信用するに至るのはいささか軽薄が過ぎる。

 

「でもね…神様ってさ、見守る事しかしないんだって」

 

「へぇ…?」

 

「人間の自由意志に任せるとか、自分で未来を切り拓くから成長できるとか…酷いよね。それってさ、どれだけ信じても信仰しても縋っても、誰のことも少しも助けないってことなんだよ」

 

「そうも取れるが、何故今その話を…」

 

「でも、ナイアは違う。私を助けてくれる。いつでも来てくれるし、私の知らない所で護ってくれてたりもする。だから…」

 

 そう言って彼女は、緩んだ私の拘束を払って向き直って頬を撫でてききた。瞬間、一際私の心臓が跳ねた。

 

 あぁ…彼女の瞳に、私がいる。

 

「私はナイアを信じれる。神様だからとか、魔術が使えるからとか優しいからとか、勿論ご飯が美味しいからでもじゃなくて、"ナイア"だから、信用してるの」

 

 初めて真っ直ぐに、芦花の瞳に私が映った。

 

 それがどうしようもないほど嬉しくて、胸が踊って、滅茶苦茶に心臓が跳ね回った。

 

「……」

 

「どう〜?もう魔力は充電できた?」

 

 その自己解釈の設定、まだ信じてたのか。

 

 再び前に向き直り私の膝に収まる彼女は、私の手を擦る。

 

「もう、少しだけ…このままでいても良いかな…?」

 

「…良いよ〜、あと十分だけね。お腹空いてきちゃったから」

 

 身体に触れる彼女の熱が、どうしようもないほど私に人肌の熱を移してくれた。

 

 




な~んでここまでしてて付き合ってないんだコイツ等。っていう疑問は無しでお願いします(汗)
ナイアはまだ恋心を自覚してません。っというか本編通り、この感情に名前をつけてません。
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