神に恋した芦の花   作:レガシィ

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お久しぶりです!!!
やっと、やぁぁあっっと繁忙期を抜けました!
普通に本職が忙しいのはありがたいのですが、趣味の時間と死んでた睡眠時間を取り戻すことはできそうです!
超かぐや姫!のグッズもちょいちょい買ってましたし、コレクションが増えてきてホクホクですねぇ。
ともあれ十話、お楽しみください!



第十話 ただ一時の戯れ

 昨晩の彼女の提案。

 

 いわゆるお出かけの日だ。

 

 朝食を共にしているが、妙に言葉が喉に詰まる。

 

 私は上手く笑えているだろうか、変な会話になっていないだろうか。こういう時こそのポーカーフェイスと、意識と切り離した私の言葉だというのに、それさえ客観視できない。

 

 私の表情を見て芦花がずっと笑っているのが、なんだか悔しい気もする。

 

「さて、そろそろ出かける時間かな。待っているから、芦花も準備しておいで」

 

「あっ、ダメ。ナイアは先に駅前にいて」

 

「え、何でだい?」

 

「なんでも!こういう時は待ち合わせするの。ほら、早く行った行った!」

 

「あ、あぁ…」

 

 私は基本的には魔術で姿を変えるから一瞬、芦花はメイクを含めて大体1時間半、長い時間を待たせるのが嫌なのか?既に化粧は済ませていたし、服装だけだろう、その程度別に待てるというのに何故だろうか。

 

 身バレの防止も含めた黒マスクに、いつもより少しカジュアルなスーツ…芸がないだろうか。

 

 しかしこれといっておしゃれに興味はない。

 

 〈え、そうなんだ〉

 

 〈私の服の大半は芦花が選んだものだからね〉

 

 〈あとお義父さんね〉

 

 時間をずらして待ち合わせをする。存在感を適当に消す魔術で芦花以外から認識を薄くして待っていると、後ろから彼女の声が聞こえた。

 

「お待たせ」

 

「あぁ。それで、は……」

 

 舐めていた。どうやら待ち合わせというのは、一種の心理テクニックらしい。でなければ、ここまで私の心を乱せるわけがない。髪型も、服装も化粧も。稚拙な表現だが全てが輝いて見える。

 

「…ナイア?」

 

 しまった、不安にさせただろうか。

 

 すぐにいつもと同じ様に彼女を褒めるが、どうやら見抜かれていたらしく、観念して言葉にするほかない。

 

「珍しいね、いつもならすぐに言うのに」

 

「それを聞くのかい……?」

 

「駄目?」

 

「…見惚れてしまったんだ。侮っていたよ、ここまでとは」

 

 満足してくれたようで、彼女の眩しい笑顔がさらに楽しそうに花開く。撮影の時も似たような笑顔だったし、きっと楽しんでくれているのだろう。

 

「ありがと、ナイアもカッコいいよ」

 

 とてもシンプルな褒め言葉。芦花は素直に人を褒められる。きっと私以外に言うこともあっただろうに、そんな顔で言われると柄にもなく嬉しくなってしまう。

 

 そろそろ行こうと腕を差し出すと、彼女は意図を汲んで取ってくれた。恥ずかしいと断られそうな気もしたが、それは杞憂だったようだ。

 

 予定の通りに映画を鑑賞する。

 

 芦花は映画に集中したいタイプらしく、私と同じくドリンクだけ。

 

 中身はミュージカルといいつつも、実際はラブ・ロマンスで、身分違いの恋を描いたものだ。

 

 構成もキャストの演技も素晴らしい。現実とは違って予測ができないから映画や小説は好きだ。

 

 ミュージカルとは少し違うが、芦花は満足しているのだろうか、暗闇とはいえ彼女の顔ばかり見ていては、感想を求められた時に困るから仕方ない。

 

 終わりまで綺麗な映画だった。

 

 が、芦花からは少々不評なようだ。

 

「女の子はそういうの無視してでも好きな人と幸せになりたいんです〜」

 

「そういうものか…」

 

 そういうの。というものがどこまでを指すか分からないが、彼女にとってはお金や身分は些細なことらしい。

 

 …私と君のこの関係は、無視できる問題なんだろうか。

 

「あっ、このラメいい色。あれも新作出てる!」

 

「気に入っていただけてるようで何より。欲しいものは?」

 

「ん〜…今度の動画で紹介したいけど、今日は荷物になっちゃいそうだからやめとく」

 

「気にしなくて良いのに」

 

「この場所が知れたってだけで充分」

 

 相変わらず遠慮しているのか、買い物はしない。

 

 本心なんだろうが、もっと強請ってくれてもいいのに。

 

 〈確かに。なんで?〉

 

 〈初めてのプレゼントはナイア自身に選んで欲しかったから〉

 

 〈…そういうことだったか…〉

 

 〈芦花って結構ロマンチストだよね〉

 

 ゲームセンター。ツクヨミで"神戦"を遊んでいるから意外でもないが、芦花はゲームが好きらしく、こういう場所でも喜んでくれる。

 

「ナイアもやろ、これ」

 

「ダンス?」

 

「そう、私結構これ得意なんだよね〜」

 

 流行りの音楽に合わせて床のタイルをリズムよく踏む。シンプルながら中々センスが問われる。

 

 芦花なら音楽系のライバーでもきっと人気者になれるだろう。

 

「さすが、初見なのにハードモードに楽々付いてくるね」

 

「君の真似をしているだけだよ。だが困ったな、君ばかり見ているせいでミスも同じになってしまう」

 

「む、言ったね!じゃあ次はお互いの譜面違うやつにして、勝負しよ!」

 

「ククッ、望むところだ」

 

 最高難易度とはいえ、0.01秒単位の動体視力を持つ私にとっては欠伸が出るほど簡単な児戯。しかし、踊るのとは違う、ただスコアを出す"作業"。

 

 その点やはり彼女は美しい。魅せられてしまう。

 

「あの2人すご〜」

 

「男の方すごくね?マスクしながらあんな激しい譜面軽々踊ってる」

 

「てか面良すぎだろ、お忍びのアイドル?」

 

 Excellent!

 

 Perfect!!

 

 結果は芦花が2ミスで、私がノーミス。

 

「負けた〜!」

 

「いや、私の負けだよこれは」

 

「点数ナイアのほうが高いよ?」

 

「ダンスとは人に魅せるものだ。観客の視線は君の方に集まっていたし、私はどうにも機械的だったからね」

 

「…じゃあ引き分けだね」

 

「ふ、そうだね、引き分けだ」

 

 ゲームセンターを出て、次は何をしようかと考え始めるが、さっきのゲームで息が上がっているし、汗もかいているはずだ。

 

 目星【成功】

 

「少し休もうか。飲み物を買ってくるからここにいてね」

 

「え、凄い、良くわかったね。それも魔術?」

 

「君から目が離せないだけだよ」

 

「もう、またそういうこと言う……」

 

 近くのドリンクテナント。芦花の好きそうな柑橘系のドリンクと、交換できるように真逆のスムージー。

 

 しかし少し離れてしまったな、急いで戻らなければ。

 

 目星【成功】

 

 聞き耳【失敗】

 

 アイデア【失敗】

 

 どうやら、また厄介事らしい。

 

 気分が良い時にこういうのを招き寄せるのはもはや才能だ。以前の私なら少しは加減してやれたが、今日はそういう気分じゃない。

 

「私の連れに、何の用だ?」

 

「「え?」」

 

「ちょっ、ナイア!」

 

「大丈夫だ。君には指一本──」

 

「違う違う!二人共私のバイト先の人!」

 

 …は?しまった、完全にやらかしてしまった。

 

 彼女の私生活に踏み入ることはしないと約束したのに、私が身近にいるなんて知られるのは非常に不味い。

 

「本当に申し訳無い…」

 

「そんなに落ち込まないでよ〜…守ろうとしてくれたのは嬉しかったよ。ちょっとタイミング悪かっただけでさ」

 

「すまない…」 

 

 謝る事しか出来ない。二人も理解してくれているが、どうにも芦花の関係者というだけで申し訳無さが付き纏う。そんな横で話を聞いていたが、どうやら撮影予定のモデルが来れなくなったらしく、芦花に代役を頼みたいと。

 

 正直、とても不本意だ。楽しい時間だったのに、他者の不幸に首を突っ込みたくない。が、彼女は優しいから、きっと断れば一日を心から楽しめなくなる。

 

「芦花、私は大丈夫だよ。これも縁だ、大切にしないとね。私はその間、適当にその辺を…」

 

「アラ、何言ってるのナイアちゃん。貴方はこっち。最低限で他は適当でしょ。整えたげる」

 

「…ん?」

 

 吹き抜けのモールの中央に準備された、教会風の大掛かりなセット。

 

 スッキリとした白いウェディング衣装に花束を持ってベールを被った芦花。

 

 そしてその横に、何故か色々弄くられた私がいる。

 

 迷惑をかけたから特に拒否はしなかったが、完全に部外者の私がここにいていいものか。

 

 …まぁ、彼女のこの姿を見れたのは私にとって幸運だ。

 

「芦花?さっきから静かだけど、どうかしたのかい?衣装が苦しいならスタッフに…」

 

「ちょ…近い近い近い!強い強い!」

 

「え、あっ、すまない」

 

「そっちはそのままでいい!」

 

 指定されたポーズ、握る手の力が強いのかと思えばそうではない。なら、強いとはなんだ?何をそんなに動揺しているんだ。

 

 〈芦花すっごいキレ〜!〉

 

 〈この時のドレス姿も綺麗だった。ツクヨミの結婚式では5回お色直ししたね〉

 

 〈やりたいこと全部詰め込んだもんね〉

 

 〈リアルでは規模が小さかったし、あれだけ盛大にやればファンも満足でしょ〉

 

 〈まぁ…私は親族がお義父様しかいなかったしね、呼んだ友人もほぼ芦花と共通していたし〉

 

 〈私は親子で出席すると思わんかったよ…〉

 

 撮影が進む中、プロを目指しているだけあって彼女も落ち着きを取り戻している。

 

 凛とした表情の中に眠る柔らかな笑み、普段と違う特別な化粧に衣装。胸が高鳴る。

 

 あぁ、やはりどうしようもなく美しい。

 

 この時間が楽しくて、いつか終わると思うと切なくなる。

 

「ナイアちゃんこっちいらっしゃい。芦花ちゃんのソロ撮影しましょ」

 

 少し惜しいが、ここの責任者の彼…彼女に従う。

 

 休憩用のベンチから見る芦花のソロ撮影。モールにいる男女問わずを魅了する姿。

 

 言葉にしてはいけない。私は無貌の生物で、彼女は人間だ。

 

 忍び足【成功】 

 

「熱っぽい視線。妬けちゃうわね」

 

「……貴方、本当に人間か?」

 

 この私の背後を取る人間なんて普通はいない。いや、私の注意が散漫なだけか。別に命を狙われているわけでもないし。

 

「アナタって芦花ちゃんとどういう関係?」

 

 随分と踏み込んだ質問だ。だが、いっそここで言葉にして否定した方が、彼女の為だ。

 

 ビジネスパートナー、協力関係。曖昧だが間違いではない。彼女に強引に契約を持ちかけたのだし、少なくとも完全に白い関係ではない。

 

「あら、曖昧ね。ハッキリしないオトコはモテないわよ」

 

 貴様に何が分かる。

 

 ハッキリと言うその姿勢は嫌いじゃない。が、これでも考えていることは多いんだ。惑うようなことを言うんじゃない。

 

「…私は他と違う。これ以上、彼女の近くで共に生きるのは、彼女にとってきっと良くない影響を与えてしまうだろう。芦花の…日常を壊してしまう」

 

 そうだ。とっくに壊してしまった彼女の日常を、これ以上壊すわけにはいかない。

 

「無為な日々を過ごし、ただ好奇心で動いただけだと言うのに……自分がこんなにも罪深いとは思わなかった。知らなかったこの感情に、知ってしまった名前をつけてしまえば、きっと私は戻れない」

 

 全て吐き出して、これっきりにしよう。

 

 芦花には悪いが…今日限りだ。これ以上は私が耐えられない。

 

「その感情の名前はね、"恋"よ」

 

「…っ!!貴様……!!」

 

 拳【決定的成功/クリティカル】

 

 判定 【回避不可】

 

 ダメージ 【1D6+1D3=7】

 

 バヂィンッ!

 

「うるせぇよ、小僧」

 

 私が今この時まで名付けるのを拒んだ感情を、最後の壁をやすやすと破壊した。

 

 と、いうかなんだそのデコピン。並の人間なら脳が揺れたり血を噴き出してももおかしくないぞ、何考えてるんだこいつ。

 

「逃げんな、目ぇ背けんな。芦花ちゃんにとって、てめぇはとっくに"日常"だ」

 

「っ!!?」

 

「ライバーだがイケメンだが妖怪だか神だか、何処の誰だか知んねぇが、惚れた女一人幸せにする覚悟がねぇ腰抜けの玉無しがよぉ。うだうだ言ってねぇで腹ぁ括りやがれ」

 

「…君、本当に同一人物か……?」

 

 思わず口にしてしまった。初めてだ、誰かに対して恐怖というものを覚えたのは。

 

 〈かっけぇ〜!やっぱオカマって最強じゃん!〉

 

 〈オカマ言うな〉

 

 〈てか、ナイア君そんなこと考えてたの。めっちゃギリギリの綱渡りじゃん〉

 

 〈まぁ…あぁ〉

 

 〈…お義父さんにお礼言わなきゃ〉

 

 芦花にとって、私は日常。この這い寄る混沌が?日常を破壊する非日常の表れが?側にいるのが当たり前だと、私を?

 

 いや、もう知っていた。私や彼女の気の迷いじゃない。私は

 

 芦花のことが好きだ。

 

 頬が、胸が、全てが熱くなる。焼けそうな程に熱を持ってしまった、認めてしまった。

 

「…礼は言わないぞ」

 

「いらないわよ」

 

 このタイミングで彼女が手を振っているのが目にはいった。

 

 足が軽い、胸が高鳴る。視界がやたらと光って見える。

 

 天文学的な齢の私がよもや、恋などというものに感情を支配されることがあろうとは。

 

「なんか、広告映像にダンスシーン入れたいんだって」

 

 ダンスシーン。当然断ろうとする彼女。先ほどのゲームとは違う様式、どちらかといえばワルツに近いのだろう。

 

「流石に私も踊ったことないし、今ことわ…え、なになになに」

 

 断ろうとしていた。そう続くであろう言葉。が、もう決めたんだ。遠慮しない。星々の運命すら掌に乗せる私を本気にさせたんだ、君を諦める正当な理由がない限り、絶対に逃さないからな。

 

「私と踊ってくれるかな?お姫様」

 

「ちょっ……!」 

 

「ちなみに……」

 

 芸術[ダンス]【成功】

 

「答えはYESしか用意していない。合わせて、私に身を委ねるだけでいいよ」

 

 音感のある彼女に、先ほどのゲームと照らし合わせるようにリードする。大袈裟なくらいに見物客達に魅せる。

 

 彼女の笑顔がずっと眩しい、でも目を背けたくはない。

 

 善は急げとも言う、我慢できないのは私の悪い癖だ。今日、彼女に伝えよう。ありきたりなデートコースに、少しだけ奇をてらったプレゼントもある。

 

 …受け止めてくれるかは分からないが、それでもやはり、君に伝えたい。

 

 ──

 

 名刺をもらい、撮影はつつがなく閉じた。

 

 少しだけ足早に、私のバイト先のカフェへ到着する。

 

「そういえば君には…どうかしたのかい?」

 

「すっごい偶然…ここ、私が高校の時に友達とよく通ってたとこ」

 

「えっ…」

 

 なんと知っていた。世界は意外と狭い。

 

 見知ったスタッフ達が私と芦花の来店にざわつく。

 

 窓際の席を予約していたおかげでスムーズだったが、サプライズが崩れてしまった。

 

「…まさか、君が知っているとは…」

 

「あはは……そういうこともあるよ。でもセンス良いね、ここ選んだのは正解。花丸つけてあげる」

 

 〈芦花の花丸だ!!〉

 

 〈魔性の女だ〜〉

 

 〈可愛いよね、花丸〉

 

「…ハハハ、君には敵わないな。なぜだか今日は、いつにもまして君の笑顔が魅力的に見えるよ」

 

「ふふ、だって笑顔は一番の化粧だもん」

 

 気恥ずかしいから彼女の笑顔を崩したかったのに、とんだカウンターを貰ってしまった。本当に敵わない。

 

「ご注文はお決まりですか〜?ナイア君、芦〜花っ」

 

 酒寄先輩が今日はシフトに入っていたらしい。

 

 そして、どうやら芦花とも仲がいい。紹介の手間が省けるのは助かるが、何か妙な違和感がある気がする。

 

「彼女とは少し複雑な縁でね、今日は1日、私の我儘に付き合ってもらってしまったんだ」

 

「どっちかって言うとソレ私だけどね?」

 

 しばしの談笑。ピークタイムをずらしたおかげでそのくらいの暇はある。

 

 よほど仲がいいのだろう、さっき言っていた高校の時の友人というのも彼女のことだ。 

 

 そのはずだ。

 

「にしてもナイア君、見事な慧眼だけど、芦花はレベル高すぎだよ〜?」

 

「ちょっと彩葉!」

 

「ハッハハ!それは君がいるからかい?」

 

「そのとーり!もし芦花を泣かせたら、その頬には花丸じゃなくて真っ赤なモミジマークつけるたげから」

 

 脅しの言葉と、芦花が美人だというのはやはり昔かららしい。私の知らない芦花を知っているのは少し悔しい。

 

 私の知らない数年間、たったそれだけのことのはずだ。

 

 でも、少しだけ、君の心に聞くのを許してほしい。

 

「おぉ、怖い。愛されているね、芦…花…」

 

 心理学【決定的成功/クリティカル】

 

 名をつけたこの感情を受け止める覚悟はあった。だが…その瞳も声も表情も、彼女に向けるそれらは、私が知らないものだ。

 

 彼女にだけだ。それがどんな意味か知らないほど、私は無知ではない。

 

 フラれても、邪神と人間の違いを指摘されても構わないと、そう思っていたのに。

 

 その感情を向ける相手が他にいたのなら…もう少しだけ、早く知りたかった。

 

 〈え、いや…その…〉

 

 〈もう気にしていないよ、盛大に失恋したと思っていただけだ〉

 

 〈うわぁ…一番複雑な時期に…うわぁ…どんまい…〉

 

 振り切るしかない。星の数ほど、時の流れも人間と違う私ならすぐにこの程度の感情は忘れられる。

 

 そう、彼女はただの親しい友人だ、協力関係だ。利害の一致だ。

 

 パスタもデザートも、味がしない。

 

 好きなはずの夕焼けも、綺麗に思えない。

 

「勿論、超楽しかったよ。映画見て、ショッピングして、撮影なんかしちゃって、初めて会ったときみたいに二人でお茶して……うん、最高だった」

 

 今日のプランはどうだった。そんな問に、そんな顔で最高だなんて言葉にしないでくれ。

 

 彼女の瞳が見れない。夕焼けの反射する愛おしい表情が、瞳が…もう、見れない。

 

 逸らした視線に気づかれたが、適当に誤魔化すことしかできない。

 

「ナイアさ、働きすぎだし配信しすぎだし。寝てないでしょ?人を知りたいから人並みの生活してるのに、それじゃ本末転倒だよ」

 

「驚いた、完璧に隠せていると思っていたのだけれど」

 

「美容系ライバー舐めんな〜、髪とか肌とかで分かんの。やっぱり人間じゃない頃の感覚抜けてないんだね〜」

 

 そうだ…そうだ、忘れてはならない。私は人間じゃない。君と違うんだよ。同じ時なんて過ごせないし、私は君を連れていってはいけない。

 

 だから…ほんの一時の戯れなんだ。

 

 会計も済ませ、彼女の手を取る。伝わる柔肌の体温が、私の肌を焼くようにさえ感じる。

 

「いいんだ。最後までエスコートさせてくれ、君は私の……大切な友人なのだから」

 

 そうだ…友人なんだよ。あと少しの間だけ、君と友人でいさせてくれ。私の些細な我儘を、満たしてくれ。

 

「そっか……ありがと」

 

 〈…はぁ…辛い…〉

 

 〈ごめんって…〉




色々考えましたが、ナイア視点は恋が実るまでの予定になりました。やっぱり、優しい彼は無駄に辛い部分は見せたくないでしょうし、かぐや姫達もその辺分かってくれると思います。
ということで、ナイア視点はあと数話、次に芦花視点を書きたいとおもいます!(予定です。崩れる可能性は大です)
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