因みに、冒頭の竹取物語の後日談。あれは私の家にある本を見て思いついた一つの考察というか妄想です。もしそうなら…っていうオタクの思いつきです。
2ヶ月前。
かぐやの義体完成と、ナイアと芦花の結婚を祝っていたあの日。ナイアは世界の理に触れた。
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竹取物語には、実は後日談がある。
愛情に触れ、感情を知ったかぐや姫は月へと羽衣を着せられ地球の記憶を無くして帰ることになる。
しかし、かぐや姫は不死の薬を手紙と共に悲しみに暮れる帝に渡した。売れば巨万の富を、飲めば永遠を。
しかし帝はそれらの選択を拒否し、家来に天へ最も近い火山へ手紙と共に捨てるように命じ、姫に会えないならば金もこの命も惜しくないと、永遠を捨て去った。
ここで矛盾が生まれる。
かぐや姫は地上での記憶が無くなるのに、帝と愛する人に会えない気持ちを分かち合おうとした。
おかしな話だ。月の姫がそこまで賢くないわけがあるか?
かぐや姫が本気で帝に会いたいと、もう一度会えばきっとまた恋をすると、そう考えたならば。
薬を飲んで、何千何万年もの未来に、"私に会いに来て"と、一抹の小さな思いを込めたのなら?
「ククッ…君はどう思う?弱竹の、本物のかぐや姫」
スーツに紅い瞳、狂気さえ孕む美貌。不敵に彼は笑った。別の次元からあっさりと干渉し、幾千の月の護衛達を意に介さず、傷付けることなく制圧した目の前のソレは、かぐやに嗤いかけている。
「■■■■■」
「あぁ、大丈夫。こちらの言葉に合わせる必要はない。理解できる。少し彼女と話がしたいだけ、ほんの一時間程度だ。許せ」
「…■■■」
「感謝するよ」
数多の人の声が多重に聞こえる言葉、月人の言葉は地球の言葉に変換できない。月人側が彼に合わせるならともかく、彼が合わせている。その異質さに、かぐやは手を止め、最上位の存在であろうソレも沈黙する。
「…何?かぐやすっげぇ忙しいんだけど」
「単刀直入に言おう、かぐや姫。私はナイア。這い寄る混沌で、無貌の生物で…綾紬芦花の婚約者だ」
「無貌の生……へ?は?婚約って、あの婚約?」
「その婚約」
「いちゃらぶちゅっちゅー仲良しの婚約?」
「まぁ、その婚約だ」
「…皆知ってんの?」
「見せつけているわけじゃないが、ツクヨミ内の今季ベストカップルにも選ばれているよ」
「…誰と誰が?」
「芦花と私が」
「…そっ…そそ、そんなのありぃぃいい!?」
異質な存在。かと思えば一転して旧友の名前を出してきた彼に、右手に嵌められた指輪を凝視して何度も確認するかぐやと、見せつけているわけじゃないと言いながらも自慢げなナイア。
「宇宙人と人間の恋で言えば私の先輩だろう君」
「スケールが違うじゃん!」
「まぁ落ち着け。お茶でも…いや、それはネタバレか」
温度も味覚もない月でさえ、彼ならそれらを用意できる。しかし、彼女達の約束を尊重して手を止めてかぐやの前に座る。
「さて、時間もないし話を戻そう。かぐや姫殿。君はさっきの話どう思う?」
「不死の薬がどうたら〜ってやつ?う~ん…難しいこと考えさせんなよ〜、こっちは仕事さっさと終わらせて彩葉に…」
「酒寄彩葉は今、君の義体を作ろうとしている」
「…え、彩葉疲れておかしくなっちゃったの?かぐやちゃんの人形作っちゃうくらい好きだったってこと!?」
「中々こじれるな、君と話すと。要約するとだな…」
タイムスリップによるヤチヨとかぐやの関係、地球でおよそ1年の経過、ナイアーラトテップという時間や輪廻に囚われない特殊な存在。
「ヤチヨが…かぐやで?彩葉は大学生で…芦花はナイアの婚約者で…え、その話かぐやにするのまずくね!?」
「問題ない。君の記憶は消すからな」
「意味分っかんね〜!結局何が言いたいん?」
頭をガシガシと掻きむしった彼女に、ナイアが指を立てて語る。
「君に会ってみたくなったというのは本音。そして、さっきの話は実現出来るという話だ」
「うん?」
「彼女は不死の薬を捨てず、飲んだんだ。物語は再び始まっているんだよ」
「…で…でも、話の通りだとかぐやは隕石にぶつかって、八千年生きて、ヤチヨが…」
「私は世界の外側だ。この輪廻に観測できない異物が入り込んだこの世界は、同じ世界じゃない。ヤチヨはヤチヨとして、君は君として存在できる」
「…もう一回、ちゃんと会えるの…?」
「"また新しい景色の、物語を描こう"。その思いこそ私が愛した感情そのもの。余計なお世話だと怒られるかもしれないが、君達を応援したくなってしまった」
いつの間にか用意した彼専用の椅子に足を組んで腰掛けながら、指をくるくると回して彼女の歌の歌詞を綴る。
「で…でもさ、それを、彩葉とかぐやは…」
「あぁ、きっと言うだろうね。自分でハッピーエンドにすると。それ自体は素敵なことだし、否定しない。私はほんの少し、手助けするだけだ」
「い…彩葉は、かぐやのこと好きなの…?」
「あれ程一途な人間も珍しいだろうよ」
「…彩葉は、かぐやの身体を作れる?」
「作れる」
ノータイムでナイアは言い切る。両手を閉じて手を広げる。瞬間、現れた一つの本。ロゴも何もない、ただの革の本を彼は指先でくるくると回す。
魔導具【アカシックレコード】
「この本にはこの宇宙の過去から未来まで全てが記録されている。彼女が義体を作れる未来があるかどうか、確認することも容易だ。が、私は信じている。君達"人間の可能性"を」
ピッ…ボゥッ!
「「!?」」
宇宙創生の記録を、あろうことか彼は燃やして捨てた。
「代償だ。私は二度と未来を簡単に知れないし、この世界の行く末を知ることもできない」
「■■■■■」
「まぁ、あくまで私が持っている物だけだがね。この世界にはあと二冊ある」
「あ、そうなん…いやだからって燃やすことなくない!?」
「私は賭けたんだ。彼女が刹那の人生の間に、人を作るという偉業を成し遂げることに」
かぐやの疑問も最もながら、ナイアは心の底から楽しそうに嗤い、本体とでもいうべき無数の無貌を覗かせる。
「十年か二十年か、三十年かその先か。君へ会うための旅路は果てなく長いだろう。義体を完成させ、君に"直接"会いに来る。ロードマップは用意した。私はその背中を押すだけ。まぁ、私は二十年後が妥当だと思っているがね」
燃やしたカスをパラパラと払いながら、人の姿に戻った彼は悪戯な笑みを見せる。
「…あはははっ!超〜傲慢!!…いいよ、乗ってやろうじゃん。かぐやはねぇ…十年!」
「…それは夢を見過ぎじゃないか?」
「はっはぁ~ん??さては彩葉を知らないなぁ!?」
「まぁ、関わりは深くないが…」
「なら聴かせてあげる、彩葉の超人エピソード!」
「ならば私も語らねばなるまいね、芦花との愛しい日々を」
椅子を消したナイアはかぐやの向かいに座り、目線を合わせる。
嬉々として彼女は語る。たった一ヶ月。ひと夏に満たない極彩色の日々。時に不満を、時に怒りを、そしてそれを覆い尽くすほどの愛情を。
彼も負けまいと、永久の孤独を奪い去った、愛する女性への恋情を語った。
「良いなぁ〜、かぐやもリアタイしたかった!」
「なら、君が地球に来れた暁には思い出話としてビデオにでもしよう。時間も暇も持て余している頃だろうしね」
「おっ、良いじゃん!ならかぐやのも見せちゃる!」
「■■■■■」
「あぁ、すまないね。長居しすぎた。さて、楽しみにしていたまえ、かぐや姫殿。この這い寄る混沌が、君の日常を崩す手助けをしてあげよう」
立ち上がり、彼は魔術を行使しようとする。
かぐやも同時に立ち上がり、ナイアに予想外を贈る。
「かぐやだよ」
「?」
「確かにかぐやは月の姫だけど、彩葉に貰った名前はかぐや。姫なんて敬称はいらないから」
「…ふはっ…その通りだ。君が呼ばれたいのなら、応えよう。改めて、姓はまだない。私はただのナイアだ」
「苗字は彩葉のを貰う予定だから酒寄!かぐやだよ〜!」
「覚えておこう。酒寄かぐや。それでは、また会うその瞬間まで、永遠にさよならだ」
瞬き一瞬。彼は記憶を奪い去ってその場から消えた。
「…?あれ、かぐや何して…って、仕事!手ぇ止めちゃ駄目じゃん!」
「……■■」
「ん〜?さぁ?でもさ、なんかすっごい良い気分!」
かぐやは何をしていたのかと頭に疑問符を浮かべるが、正体の分からない高揚感に身を任せ、彩葉との思い出の曲を口ずさみながら仕事を再開した。
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「へぇ…かぐやちゃん元気で良かった〜。どうだった?本物のかぐや姫は?」
「あぁ。動画の通りの、随分なお転婆姫だったよ」
地球に戻り、夕飯を終えた頃に二人はいつもソファで座って話す。決まったように、芦花はナイアの右側に座り、彼はその距離を少しでも離さないように左手でことを済ませる。
「約束といっても遥か未来だ。酒寄さんにはそのうち伝えるつもりだ」
「結構壮大な計画だよね。義体を作って、彩葉を別次元の月まで連れて行くって」
「私だけなら難しいことはないし、人でも出来ないことではないからね。ギリギリ世界の理が崩れない範囲だし、酒寄さんが否定する可能性も十分ある。記憶を消すのはまぁ…ズルだが、彼女と話してみたかったんだ」
「良いんじゃない?ていうか、彩葉多分反対しないと思うよ?」
「おや、随分ハッキリと言うね?」
「だって、彩葉は色んな人に支えられてきたって解ってる人だから…?」
優しい目で笑う芦花。ナイアは触手で抱き寄せた芦花の肩に頭をグリグリと悪戯に押しつける。
「嫉妬?」
「…君が悪い」
「ごめんごめん」
ナイアの知らない芦花の表情はまだまだある。芦花の一挙手一投足を見逃さないナイアは、信頼があるからこそ、芦花への感情を隠すことをやめていた。
「さて…それでは、私もそろそろ本格的に仕事をしよう」
「仕事って…ライバーじゃ駄目なの?」
「あれは趣味だし、バイトも息抜きだ。不安定だし、ちゃんとした仕事をしないとね」
不安定な息抜きといいつつ、人間のやり方に合わせても片手間に数十万を一日で稼ぐ男がナイア。しかし、社会的に信用がない立場なのは事実で、大抵の仕事は彼にとり欠伸が出るような児戯。そこで彼が仕事に選んだのは。
「脚本家だ。これなら芦花との時間も容易に取れるし、私の知識だけでは簡単に成り上がれない世界だ」
「出来ることやってもつまらないって?」
「その通り。その点、これは私の未知だ。なんせ、私の想像のつかない物語が、世界には溢れていることがハッキリしている」
「ふふっ、ナイアらしい」
楽しそうに語る彼を、芦花は嬉しそうに眺める。
「でもね…実は脚本家は、私の夢の為の通り道なんだ」
「目標があるってこと?アカデミー賞とか?」
「それも悪くはないけど、もっと先…芦花、君を主役にしたいんだ」
「…へ?私!?」
一瞬の沈黙の後、芦花が驚いた直後に流れるように立ち上がり、彼はお気に入りのワルツを察した芦花と小さく部屋の中で踏み始める。
「君が私のシナリオの中で踊る。きっと素敵だ、見る者全てを魅了して、私の芦花は世界一だと言わせてみせる」
「でも、それだと私、すっごく有名にならなきゃいけなくなるよ?」
「芦花ならなれるとも!そうだ、せっかくなら二人の夢にしよう!」
「二人の…」
「そう!私の書く最高の物語の、最高の主役。素晴らしい世界がきっと私達なら描けるとも!」
月に行き、かぐやと語り合ったことで増した愛おしさに、ナイアの夢。
交わした絶対の約束、"二人で幸せに"。それを体現しようと笑う彼に、芦花も釣られて笑顔が綻ぶ。
少し前までの彼女ならば、自らを下げて挑戦することすら拒んでいた。しかし、一歩を踏み出す勇気と、その尊さを彼女はもう知っている。
「相変わらず傲慢で、滅茶苦茶でスケールが段違いに大きくて…最高!」
「ハハハハ!そうこなくてはね!」
高らかに、楽しそうに笑った彼は芦花を抱きしめて口にする。
「…良いものだね、同じ未来を見れるというのは」
「うん…ナイアのおかげ」
「私の?何故?」
「…教えな〜い」
「そんな、隠しとは無しだろう!?」
照れ隠しに芦花は頬にキスをして寝室へと足早に去り、それを慌ててナイアは追いかけていった。
徒歩旅行ももうすぐ終わりです。
足が痛い、美味しいもの食べた温泉気持ちよかった。
っていうガチの個人的な日記です。
見なくていいです(最初に書けよ)