神に恋した芦の花   作:レガシィ

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ついにイヤホン販売しましたね!
皆さんは誰を選びます?
私は全部!(白目)
徒歩旅行の目的は実は実家で修行が始まることでして、長らく使っていなかった部屋を片付けつつお仕事に励んでおります。
更新頻度は1週間以内を心がけているので、のんびりお待ちください。


第十六話 怒りを買った痴れ者

 人間になる。

 

 明確な目標が出来た。元より人を知りたいと思っていた私が、自分の存在を明確に変えることを目的として生活している。

 

 何度か試したが、どうにも上手くいかない。

 

 喜怒哀楽も愛も憂いも知った。人としての感情は充分知れた。あとは肉体の機能と魂だけだというのに…私にもできないことがあるとは。

 

 私の瞳に映る彼女は日増しに綺麗になっていく。

 

 比喩ではなく、健気なことに私の前では他所行きの化粧を整えているのが愛おしい。

 

「どうしたの?」

 

「あぁいや、美人は三日で飽きるなどと言う話を聞いたことがあるが、こと君に限っては当てはまらないなと不思議に思ってね」

 

 あの日から毎日想いを伝えているが、それでも耳を赤く染めてくれる。控えるべきだと分かってはいるが、君のその表情か見たくて、溢れる想いを受けて欲しくて言葉を漏らしてしまう。

 

 昨日までは少し予定を詰め、明日は互いに休み。

 

 何故なら、諫山さんが参加したがっていた帝君主催の神戦があるから。

 

 一度個人的にSETUNAモードで遊んだことがあるが、元の性能に差がありすぎた。肉体に関係がないとはいえ、私の思考速度と反射神経では正直話にならん。 

 

 〈リアルチートめ〉

 

 〈私達があのレベルになるのにどれだけ練習したと…〉

 

 〈仕方ないだろう。そもそも戦闘経験なら私のほうが遥かに多いよ〉

 

 〈戦闘…蹂躙の間違いじゃなくて?〉

 

 〈そ、それより、皆神戦で慣れてるし、今度ドリームランドにでも行くかい?私がちょっとしたシナリオを用意してあげるよ〉

 

 〈あれって観光気分で行けるとこなの?〉

 

 〈意外といるんだよ。特別な方法で来る人間や夢を通じて精神だけ来る人間とか〉

 

 〈1回行ったことあるけど楽しかったよ。なんていうか、異世界って感じ。魔法使いとか騎士とかいたし〉

 

 〈え!行ってみたい!かぐやも魔法使いたい!〉

 

「真実すっごく張り切ってるからさ、彩葉も頑張って予定あけてくれたし」

 

 あの二人には生涯頭が上がらないだろう。

 

 今回の大会は補欠ながらに頑張ってほしいと思うし、その為の応援グッズも芦花と用意した。

 

 彼女のセンスだし間違いないだろう。

 

「っと、そろそろいい時間だ。芦花といると、時が経つのはあっという間で仕方ない。いっそ世界の時を止めてしまおうか」

 

「ふふ、ありがと。おやすみ、ナイア」

 

 冗談ではなくそれなりに本気の言葉だ。さすがに彼女が望まないだろうし、私自身人間になろうとしている身、迂闊に巨大な魔術を使うつもりはない。

 

 いつも通りに彼女を部屋へと見送り、私も配信の為に部屋へと戻る、いつものルーティン。

 

 芦花の部屋に入ったのは風邪を引いて五感を閉じた一度きり。

 

 彼女の部屋に招かれるその時は

 

「…無粋だな。焦り過ぎだ」

 

 時間はいくらでもある。ゆっくり、彼女の歩幅に合わせよう。

 

 ──

 

 速いもので、既に当日。

 

 3人は開会式の為にステージに並んでいる。帝君は過去にスポーツ少年だと聞いていたから、その名残でこういうイベントは欠かさない。と、雷君が言っていた。

 

 注目株は芦花達と、阿久魔君達。

 

 芦花と作った3人の応援うちわやタオルを身に纏っているのをオタ公さんに紹介されたせいで、握手や写真を求められるのは少し困ったものだ。

 

 芦花達から試合は始まり、着々と勝ち進んでいっている。特に酒寄さんの腕前は見事だ、二人の立ち回りを上手くカバーしながら本人の役割もこなしている。

 

 同時進行で二組ずつ。あっという間に決勝。

 

 やはり注目株の2チームが残ったか。

 

 彼女達と彼ら、実力としてはプロゲーマーだし向こうの方が上だろう。

 

 本当に勝ちたいなら頼ってくれればいいが、まぁこれも思い出だ。必要以上の干渉はしない。

 

『この対決に俺が勝ったら!結婚を前提にお付き合いしてくださぁぁい!!!!』

 

「……あ"ァ"?」

 

 は?なんだあの…は?

 

 勝手に話を進めるな、おい、その言葉を言うのに私がどれだけ頭を捻らせ絶望し困惑と焦燥を重ねたと思っている。

 

 いや、待て落ち着け、正直さと誠実さは美徳と捉えることも──

 

『ROKAたん……!』

 

 あぁ駄目だ、無理。

 

 魔術【無欠の投擲】

 

 投擲【自動成功】 

 

 魔術【空間の掌握】

 

 魔術【無貌】

 

 誰の許しを得て彼女に触ろうとしている。

 

 誰の目の前で、彼女に近づこうとしている。

 

 殺すぞ。

 

 〈〈〈〈〈怖っ〉〉〉〉〉

 

 〈地球に来て…というか、生まれて初めてだったよ、ここまで激情に駆られたのは〉

 

 〈頭いい人が急に語彙無くなるの怖いね…〉

 

 〈その程度の認識なら、充分君等も深淵に触れている側だがね〉

 

 〈あの武器って何?〉

 

 〈色々だ。宇宙(実家)は何も無くてね。暇つぶしに魔術や魔道具を作ってた。魂を焼いたり身体を急速に老化させたりするものだが、どれもその程度のものだよ〉

 

 〈その程度って…一番やばいのは何なの?〉

 

 〈星一つ消し飛ばせる爆弾とか私を半分殺すまでに至った毒とか〉

 

 〈自分に使ってんのが一番怖いんですけど…〉

 

「ナイア!」

 

 46【成功】

 

 減少値【3】

 

「なっ、ナイアさん!?なんでアンタが……!」

 

 黙れ。今すぐその腸を引きずり出して使い魔に食わせ、下賤な脳髄は私が直接喰らってやる。それだけで済ますものか、骨身どころか魂でさえ無限地獄の底に葬って…!!

 

 むにっ

 

「駄目、言い過ぎだって。それも全部引っ込めて、あとヤチヨ困ってるってば」

 

 頬に走った僅かな痛み。優しい力で私を宥めようとしている。ついで私の口角を無理矢理あげて笑顔を作らせてきた。そんなことをしなくとも、君が言うだけで私は…あぁいや、怒られているんだった。でももだっても言い訳だ…すまない、芦花。

 

「…………ひゃい……」

 

 世界中探しても私を可愛いというのは君だけだし、芦花にはかっこいいと思われたい。

 

 なのに、もしかしたらなんて不安で情けない返事と衝動で動いてしまった。

 

『俺が勝ったらROKAたんを返してもらうからなぁ!!』

 

 なんだかゴチャゴチャ言って勝手に解決したみたいだが、渡すつもりは毛頭ない。というか芦花にその気がないんだから諦めろ。

 

「…返すも何も、君のじゃない」

 

 どこまでも神経を逆撫でする男だ。

 

 無性に腹が立つ。ここまで腹の中に怒りが燃えたのはそれこそいつ以来か。

 

 電子の空間であれ、二度と口が開けないように精神を蝕んてやろうか。

 

 ヒュルルッポンッ!

 

『うんうん!愛しい人を取り合う男の戦い!実にいと尊し!でもでも〜、姫を護るのは騎士の役目だとやっちょは思うな〜!』

 

 いよいよヤチヨが乱入したか。簡易的とはいえ、私が一度は掌握したツクヨミの権限をこの短時間で取り戻すのは流石だな。そしてその目配せの意味…仕方ない、悪いのは私だし、軽く収めるか。

 

「私の手で逝ける名誉、彼の世でしかと触れまわれ。その挑戦、受けて立とう! 

 

 魔術【精神混濁(小)】

 

 軽く脳を揺さぶる言葉。私の正体を知るような深淵に触れている者には効かない規模だが、この場を収める程度ならこれで充分。

 

「ヤチヨ、私は補欠だが出場して構わないね?」

 

「もっちろん!で〜も〜、ルールは守ってね?」

 

「約束しよう」

 

 魔術など使わずとも私が負けるはずがない。

 

 芦花もだが、私を邪神と知りながら少々その力を過小評価している節があるように思える。

 

 まぁ別に構わないんだ。

 

 だから、面白みはあるが手加減の意味も込めたこのスキル構成と役職に、そこまで言わなくてもいいと思うんだ。

 

「「「「……え、弱っ」」」

 

「何このスキル構成!?意味分からん!隠密つけてるくせになんで瞬歩も付けてんの!?」

 

「しかも幻影スキルって、動き分かり易すぎる上に3体しか出せない意味ないやつじゃん。武器も沢山持ってるけど、奇術師は基本近接弱いよ?」

 

「極めつけはウルト!なんでこれにしたの!?」

 

 普通にやると圧勝するだろうし、なにより面白そうだから。なんて言葉を信じてくれるのだろうか。それよりも迫ってきた二人の剣幕と芦花の純粋な疑問の目が刺さる。

 

「ま…まぁまぁ、ハンデには丁度いいだろう。向こうは悪魔で私は邪神だ。格が違うとも」

 

 確かにこのゲームにおいて彼女達は私より1日の長があるし、酒寄さんの作戦に異論はない。

 

 というか、私としては彼を叩きのめせればそれでいい。

 

 それに、嫌な気配も感じるから出来ればさっさ終わらせたいが…このイベントも彼女達を彩る思い出だ、過度な干渉はしたくない。

 

「さて…開戦といこうか」

 

 ルールはさっき確認したからわかる。

 

 別に勝利するのは簡単な話だが、阿久魔君にいっぱい食わせてやらなければ気がすまない。

 

 雑兵達は問題にもならない。相対した2人の武器は両斧と棍棒か。

 

 ガキィンッ!!

 

「「!!?」」

 

 問題ない。私はコントローラーのボタン配置を弄って触手も動かせる。人間にはできない芸当だが、魔術じゃないからご愛嬌だろう。

 

 〈ん?なにこの画面端の数字〉

 

 〈あぁ、何秒後にどんな動きをするかの軽い予測だよ。私の視界だからね〉

 

 〈え、物理的に見えてんの?〉

 

 〈そういう事もできるというだけだよ〉

 

 〈あとなんか早送りじゃない?〉

 

 〈感覚を研ぎ澄ませると視界がゆっくりになりすぎるんだ。だから早送りにした〉

 

 〈ゾーンみたいな状態にいつでも入れるってことね。基礎性能が違いすぎるわやっぱ〉

 

「う~ん、いまいち火力にかけるねぇ……だが、仕事はできたかな」

 

 私の計算が正しければ、2人が櫓を沈める頃だ。3.2.1…

 

 ボボォンッ…!

 

 0。うん、完璧。予想外など無かったね。

 

 そしてここで、私は一度退場しよう。

 

「よ、そ、みぃぃぃ!!!」

 

 肉を斬らせて骨を断つ。というやつだ。この方が都合がいい。

 

「おいおいおい……流石に素人丸出しじゃねぇのか?この状況、お前も天守閣に合流するのがセオリーだろ」

 

「ハッハハ。残念なことに、私は火力がないものでね。攻城では役に立たないんだ」

 

「だからって三人に時間稼ぎ挑むつもりっスか?」

 

「ハッハハ……!勘違いも甚だしい。私は勝つつもりさ、君達の魂、一口ずつ頂く腹づもりだ」

 

 3人同時に相手にするのは難しくはない。というかこの二人なら問題ない。動きの癖も今までの試合で分かっている。問題はあの男。VR故に分からないが、奴は深淵に触れている気配がする。それも偶発じゃない、自ら踏み込んだ愚か者。

 

『あぁっ!!やはり奇術師職は攻防が弱い!じわじわと蓄積していたダメージと今の連携攻撃でもうHPがギリだ!!しかし、天守閣陥落までもう秒読み!!勝負あったか〜!!?』

 

「…一戦目はくれてやる。頭も冷えた。これだけ時間を稼がれるとは思ってなかった。舐めてたよナイアさん。2戦目はもっと本気でぶっつぶす」 

 

 存外冷静なものだ。熱しやすく冷めやすい。というタイプ…過大な評価をくれてやるつもりはないし、私が望むのは君の屈辱的な顔だ。

 

 ウルト。私のスキルはどれも攻撃性に欠けるが、このウルトだけは攻撃に特化したもの。

 

「3タテ。というんだったかな」

 

「流石でございます…敬愛の君よ…」

 

 聞き耳【成功】

 

 失せろ。魔術師や他の神格が手を出していい場所じゃない。ここ(地球)は私の縄張りだ。

 

 自陣に戻った現状。芦花と私の残機が一つずつ減っている。

 

 向こうはユーゴが二機、他二人がさっきので一残ずつ削れている。

 

『だぁ〜!!!一本どころか百本取られたぜナイアさん!!!いろPもROKAたんも想像の倍強ぇ!』

 

 思ったより精神的なダメージが無さそうでムカつくが、まぁすっきり終われるならそれはそれで良しとしよう。

 

『まじでそんなつもりねぇって!1回目はしてやられたりだったけどよぉ、このままストレートで負けるわけにゃあいかねぇのよ。待っててくれよぉ、ROKAたん!必ず俺の──』

 

 そういうのはいらん。

 

 バリンッ!!

 

「あ、しまった」

 

 また酒寄さんに怒られた。遠くでヤチヨが凄い顔で睨んできているが、私は悪くない。アイツが全部悪い。

 

 続く二戦目。コウガ君と愚者(ユーゴ)の位置が入れ替わった。

 

 が、やはり展開はそう変わらん。

 

 先程までと同じように、彼を倒すだけ。

 

 が、やはり人間は成長が速い。ゲームとはいえ、正確にミスを潰して次に繋げてくる。

 

 あぁ…悪くない、楽しいな。予想外を私に与えてくれる。

 

『ROKAたんはなぁ、俺の人生を華やかに彩ってくれる天使なんだ』

 

 天使…ね。ろくでもないぞあんな奴ら。位で言えば神は確かに私よりは高位だが、私より遥かに弱いし信仰を集めるために天変地異を起こす輩だぞ。何度消滅させてやろうかと迷ったが、その度に口八丁で逃げていく。

 

 その下僕と芦花を同列に扱うのは不愉快だ。

 

 天使を知らないからと分かってはいるが。やはり不愉快だ。

 

『芦花は芦花だ。天使などという別物の傀儡に例える時点で、君には彼女が見えていない』

 

 意地悪な発言だと自負している。私だって芦花の全てを知っているわけではないが、君よりは知っている。

 

『…デートで食事を共にした際の、黄昏を映す宝石のような瞳。小さな花火を見た時の無邪気な笑顔、ご飯を作るのを失敗した時の気まずそうな困り顔や、寝起きのぽやっとした表情…あ、これ言ってもいいのか?』

 

 なんてね。芦花は怒るかもしれないが、笑えば誤魔化されてくれる。多分。

 

 〈ねぇ!!〉

 

 〈ごめんごめん。もう5年も前の話だ、いいじゃないか〉

 

 〈凄く自然に嘘つくじゃん。しかもこれ全体チャットもわざとでしょ〉

 

 〈わざとだね。牽制の意味を込めてる〉

 

 〈だからネットで重油男って言われるんだよ〉

 

 現実では芦花が私の頬をつねって肩に頭突してきている。動揺で下手な暴力だが、それが逆に愛おしい。それに、満更でもなさそうなその表情を見れば、嫌だったんじゃなくて恥ずかしかったんだというくらい分かるとも。

 

「…心配しなくても、私はナイアから離れてなんていかないから」 

 

「ッ…」

 

 本当にこの娘は…!!もう神戦なんてわりとどうでもよくなってきたな。さっさと終わらせたい気分だ。現実で彼女を腕のなかに収めてのんびりしたい。

 

『俺の天使を返せぇぇええ!!』

 

『やれやれ、憧れや崇拝ばかりの思想か…』

 

『『『実に冒涜的で、傲慢だ』』』

 

 結局の所、この戦いの決め手は頭脳でも体力でも技量でもない。

 

「最終ラウンドかぁ…!?」

 

「いいや、ただの仕上げだとも」

 

「あぁ!そうかい!!」

 

 両斧【成功】

 

 受け流し【成功】

 

「使ったな!!殺った!!」

 

 いかに相手の心の隙間をつけるかだ。そうだろう?

 

「芦花」

 

 ウルト発動【必中】

 

 スキル発動【BD+1】

 

 SG【成功】

 

 ダメージ【4D6=17】

 

 17HIT!!

 

「ROKA…たん…ッ!?」

 

決着だ(It's.showdown)

 

 ショートソード【成功】

 

 ダメージ【2D4+1D3=8】

 

 8HIT!

 

 流石だ、私の合図を見逃さなかった。

 

「ナイア!」

 

 ここが初めてツクヨミで残念だと思ってしまった。君が力いっぱいに抱きしめてくれる温もりを感じられない。

 

 でも、それすら悪くない。それほどまで今の私は気分が高揚している。

 

「行こう、ナイア!」

 

 後はミニオン達を散らしながら天守閣を攻め落とすのみ。酒寄さんも合流に気付いている。

 

 最高の結末を、君と──

 

 ドクンッ…!!

 

「……は?」

 

「ナイア!?」

 

「喚ばれた…?ッ!芦花、抱えるよ」

 

 このタイミングのこの魔術式。

 

 そんなことはどうでもいい。不確定な要素が多い以上、芦花の無事を目標に据えろ。

 

 この身に代えてでも、守り抜け。




KASSENシーンを大幅にカットしたんですけど、結局2話に跨ってしまいました(汗)
でも、いよいよと言いますか。多分皆さんがお望みのシーンはすぐそこまで迫ってますよ〜。
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