神に恋した芦の花   作:レガシィ

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前売り券買えました!
この数日でなんかまた色々情報が更新されましたね。
なんかグルメ漫画系のほぼ続編がビビビコミックで連載されるみたいですし、フィギュアも沢山…お財布が厳しいですね。
余談ですが私今シアタールーム化計画をしてまして、自分の部屋にプロジェクターとスピーカーを置いて超かぐや姫観ようとしてるんです。なんか小屋を物色してたら昔のでっかいスピーカー出てきちゃって(笑)使わなきゃなっていう、自分の好奇心もアホだなと思ってます。




第一九話 ハッピーエンドの最低条件

いつまでこうしているつもりだろうか。

 

彼女の空の温もりを手離したくない。

 

魂も私の手にある。なのに、次の選択が恐い。倫理や法すら無効に出来るはずなのに、きっと彼女は笑ってくれるはずなのに、ただ私の"自己(エゴ)"が、迷わせているんだ。

 

「……」

 

肩に触れた何かの感触。

 

私と芦花の家に、誰かが入ってきた。

 

芦花と過ごした大切なこの部屋を、何処ぞの誰とも知らぬ者に穢されるかも知れないと脳が理解していても、次の行動を拒んでいた。

 

…いや、この感じ…

 

「……帝君…か…?」

 

「!…酒寄朝日、リアルの方だ。彩葉の兄、分かるか?」

 

知っている。彼女たちが兄妹というのもなんとなく分かってはいた。

 

諫山さんと酒寄兄妹。

 

きっと、芦花を思って集まってくれたんだろう。

 

「…すまない、顔を整える。少しだけ待っていてくれ」

 

私は…どんな顔をしていただろうか。君が好きだと言ってくれた表情は、声は、瞳は…

 

「…何があったか、話せるか?」

 

冷静で優しい男だ。こんな得体の知れな化け物の身を案じ、おぞましいこの姿を見て正気が揺らいでいない。

 

君のように、心の強い男になれたなら。

 

「…………あぁ……ただ少しだけ、待ってくれないか。まだ…現実を整理できていないんだ…」

 

芦花のために用意した食事も、サプライズも、部屋も花も、夏の暑さと私の魔力で全て腐り枯れた果てた。

 

ただ、何もない牧歌的な平和を望んだだけなのに。

 

私はもう、君とこの夏の向こうには行けない。

 

私には…その資格が無い。

 

「……芦花は、望むだろうか…。一度、確実に彼女は死んだ。これは……理外の業だ。人として誤っていることくらい、私にだって分かる」

 

「で、でも今回は仕方ないじゃん!通り魔なんて…」

 

君達がそれを言うのは絶対に違う。

 

君達も私に毒されて、酷い思想に酔っている。

 

「仕方ない…?そうだ…狂った通り魔の狂刃なら仕方ないかもしれないな……車に撥ねられても仕方ないかも。災害に巻き込まれても仕方ないのか?病気で若くして死んでも仕方ない!寿命で死んでも仕方ない!?そうやって!仕方ないなんて都合のいい言葉を言い訳に!愛という感情を物種に!!彼女の命を弄ぶのも仕方ないのか!!?」

 

今の私には出来ないんだ。

 

少し前の私なら迷わなかった。

 

人になろうとした、なれると勘違いした愚か者は私だ。

 

芦花、君を…失えないんだ。もう、もうこれ以上君を私の欲望を満たす人形に出来ない。

 

「…こんなに苦しくなるのなら、知りたくなんてなかった…辛くて辛くて……もう死にたい。…芦花を失うのが…失う運命を自分の手で壊すのが…怖くてたまらないんだ…」

 

もう、文字通りに死ぬほど後悔した。

 

神々に醜態も晒したし、均衡も自ら壊してしまった。

 

壊すことしか出来ない、大馬鹿な、愚か者を、どうか許さないでくれ。

 

「…分かっている…分かっているんだ…そう決めていた。ただ…これで…この物語は終わりだ。魂を戻して……君達の記憶を消す」

 

ハッピーエンドの最低条件。

 

それは"物語"があることだ。

 

当然といえばそう、始まりがないと、終わりは無いのだから。

 

「私はもう……ダメだ。これだけ自分で並べた御託も意味をなさなかった。彼女を生き返らせると、決めていた。もう間違いは起こせない。私は……君達と…彼女とは、生きられない」

 

無かったことにする。君達とも、芦花とも、この世界とも。酷く傲慢で残酷な選択だということくらい解っている。

 

それでも、この選択が君達にとって一番いい。

 

感情じゃない、そうあるべきなんだ。

 

「待って、待ってよ、それは話が違うじゃん!!」

 

「今からもっと楽しくなるんだよ!?それなのに黙っていなくなるの!?責任取らなきゃ駄目だよ!!」

 

君達の説得も分かるんだ。でも、幾千幾億の幸せを積み重ねても、たった一度の不幸が全てを奪い去る。

 

そんな経験は、二度とさせられないし…私が耐えられない。

 

「ナイア、お前はどうなる?お前自身も記憶を消して終わりにするのか?」

 

「……無理だ、出来ない…私には…出来ないよ。彼女との思い出が消えるのなんて……耐えられない……」

 

すまない…全てを忘れられない記憶能力を持つ私にとって、魔術で無理矢理記憶を消すのは存在の損失にすら等しい。

 

君達と生きた"ナイア"を、忘れたくないんだ。

 

「KASSENの時の言葉は?アンタ自身のプロポーズは?届けたプレゼントは?なんや全部その程度だったんか?そないな程度の覚悟やったんやな」

 

「…………そう、言われても……」

 

「仕方ないなんて甘いこと言うつもりやあらへんやろな?手が出ぇへんわけやないで」

 

「……それで、君の気が済むのなら……」

 

拳【成功】

 

ダメージ【1D3=2】 

 

バキイッ!

 

「「!!?」」

 

…やっぱり、私の肉は人を傷つけることしかできない。

 

気を抜けば君達の大切な身体に触れることも叶わない。

 

強い君は、私に力も言葉も届ける覚悟がある。

 

本当に…尊敬する。

 

「…どうあってもそう言うのなら…強硬手段しかない」

 

どれだけ君の心が気高くとも、私の力の前には無力だ。

 

せめて、私は苦しむから。二度と思い出さないで、絶対に私を赦さないでくれ、

 

アイデア【成功】

 

言いくるめ【決定的成功/クリティカル】

 

「待って!!その、ゲーム…!ゲームをしよう!?」

 

「…ゲーム?」

 

「そう、この場にいる全員と!…そんな強制的な取り付けじゃ納得なんてできない。それに…負けたら諦めもつく…かも…」

 

「KASSEN、モードはTENKATORIだ」

 

ーー

 

何故、私はこの勝負を受けた?

 

あたかも私が引き受けてあげたように彼らを操作し、こうやってツクヨミの地で準備している。

 

まさか、止められれば許されると?

 

まさか、負ければ仕方ないと諦められると? 

 

乾いた笑いすら出ることのない、酷い傲慢だ。

 

「クッ…グゥゥッ…ア"ァ"ァ"…!!」

 

「重症よのう、妾の本体とは思えぬわ」

 

「まぁまぁマダム、何でも真似事をし続けるとあぁなるものですよ」

 

「…私の愚かさを、嗤いに来たか」

 

「まぁ、そんなところです」

 

チクタクマンと赤の女王。私の化身の中でも一際自我を強く持ち、私に干渉してくる者達。

 

「貴方、わざと負けるつもりでしょう」

 

「…そんなわけないだろう」

 

「おやそうですか、負けたから仕方ない。なんて、体の良い言い訳が作れそうなのに。私が貴方ならそうしてます」

 

「ククッ、人間程度のかような小娘より、妾の奴隷となる方が貴様には…」

 

「黙れ」

 

「ッ…失礼。お許しを」

 

私と同格とはいえ、化身の分際でベラベラと喋りすぎだ。父にも母にもなるつもりなどないが、とやかく言われる筋合いはない。

 

「気が気でないんだ。嗤うのなら手伝え、終わらせる」

 

「良いですよ。他の暇な方々にもお声がけしましょうか」

 

そう、全て…終わりにしなければならない。

 

記憶を奪えば芦花の身体にはまた虚が溜まる。

 

それを満たしてくれる誰か、親友の二人では心の拠り所になれど縋れる誰かにはなれない。

 

黒鬼も同じだ。信頼に値するが心を預ける気至れない。

 

ヤチヨも、本当のAIであるならばそれはまた別の解決になり得たが、彼女は人間だ。

 

「…あぁ…嫌だな…」

 

阿久魔ヨウガ。彼の熱意はきっと本物なんだろう。私を恨む気持ちもあるだろう。その上でこの選択をするしかないんだ。

 

でも…声も温度も言葉も香りも、私以外の誰かに向けられると考えると…

 

「…クソッ…あぁっ…!」

 

堪らなく、嫌で仕方ない。

 

ーー

 

「正気は削れない程度に調節する。君達の武器も、邪神私に通じるようにプログラムを組んでおいた」

 

「…なんで…」

 

優しくするほど、されるほど、辛くなる。

 

君達の"ナイア"は、もう死んでいる。

 

出来ることなら、殺してくれ。

 

「待って、ナイア君。一つだけ聞かせて」

 

「…なんだ」

 

「……芦花のこと、好き?」

 

「………………でなければ、ここまで苦しんでいない」

 

嘘は吐かない。

 

ギャリリイィィィンッッッ!!!

 

来たか。彼が来るよう意識を操作するくらい、魔術を使うまでもない。

 

同じ女性を心から愛した仲だ。

 

悔しさも悲しさもある。

 

だから、君に託そうと思っている。

 

阿久魔ヨウガ。

 

KASSENの開始。邪神を崇めるキャロルを代わりに鳴らして彼らを迎える。

 

「遠く、懐かしい過去にすら思えるな…」

 

魔術(スキル)【無欠の投擲】×3

 

魔術(スキル)【鏡合わせ】×6000

 

魔術(スキル)【肉体の強化】

 

ダメージ【2000D8=8991】

 

ダメージ【2000D8=5899】

 

ダメージ【2000D8=6624】

 

6000発の槍。

 

なんてことない、私が投げただけのただの槍。

 

脆い。チートを使った最高戦力さえ、指先で死んでしまう。

 

「…あとは任せる。好きにしろ」

 

「はいは〜い」

 

魔術【壊れた時計】

 

お父様を眠らせ続ける。その為だけに、私は存在していた。演奏も、平定も、時には星一つさえ滅ぼしてきた。

 

ただ、なんとなく、それが自分の役割だったから。

 

お父様から生まれ落ちた、闇と無名の霧には持てなかった、自我()

 

気まぐれで、覗いたその先で君に会えた。

 

それは…致命的な失敗だった。

 

こんな感情で死にたくなるなら、最初から知らなければよかった。

 

名前を呼ぶのが、呼んでもらえるのが、こんなにも愛おしくて辛いとは思わなかった。

 

どうか…どうか、私を忘れて、幸せになってほしい。

 

ただ一つ、初めて私には叶えられない、願いなんだ。

 

「ナイア君……約束守ってくれんだよね、男に二言はないよね」

 

「……」

 

「今ここに、12の刻は刻まれた。人に非ずして、神に非ずの愚か者。悲しきかな、くらぶるかな?憐れよの、私」

 

「……タイムアップだ」

 

ガチンッ!

 

YOU LOSE

 

「なんで…まだ三十分くらいしか…!」

 

「"壊れた時計"この魔術は時間の間隔を早め、鈍らせる。君達人間の体内時計などアテにならんのだよ。最初からじわじわと、ゆっくりと、時間切れによる防衛の成功が、私の狙いだったのだよ。のう、私?」

 

「…………」

 

意地の悪い化身だ。…それでも、私の一部。言っていることに寸分の違いもない。完全な敗北を期さなければ、君達はまた、私を惑わすだろうから。

 

「おい……待てよ、そんな、ふざけんなよ……!」

 

「契約は契約だ…!」

 

魔術【無貌】

 

1人目。酒寄彩葉

 

恨めしく、そして尊敬に値する。

 

かぐや姫との再会…頑張ってくれ。

 

バクンッ!

 

2、3人。駒沢雷、乃依

 

雷くん、君の友人が一人消えること、許してくれ。

 

乃依さん、最年少でありながらその"自分"を持つ姿勢、非常に好ましかった。

 

そして

 

4人目、帝アキラ…酒寄兄。

 

君の純粋な正義。誰よりも尊敬していた。

 

黒鬼達に、栄光あれ。

 

5人目、阿久魔ヨウガ

 

「阿久魔ヨウガ……いや、安久津陽くん」

 

「俺の…」

 

「……彼女を……頼むよ」

 

…すまない、何も…言えない。

 

6人目、諫山真実

 

「安心。かどうかはわからないが、肉体や精神に異常はない。私と深く関わった者達は…10分もすれば、忘れていく。諫山さん」

 

「うっ……うぅぅ……芦花ぁ……ごめんね……ごめん……」

 

「……ありがとう。ただ一時……夢を見せてくれて」

 

バクンッ

 

「……」

 

「これで、満足ですか。ナイア君」

 

君が私に向けるのは怒り…最もだ。私の身勝手で君の大切な人達を傷つけたのだから。

 

理解しろ等とは言わない。私だって自分が解っていない。だから、満ち足りた。とは言わない。

 

「……さぁ。ただ…虚しいよ、果て無く」

 

「……理外の理…ここまで太刀打ち出来ないとは」

 

顔が見れない。

 

「大方、羽虫の魔法陣で私に魔術を使わせないとかそういったところだろう。残念ながら、この身体は人より遥かに頑丈だし、死を知らない。ただの出来レースになる」

 

「……だから、自分を殺せる武器を授けたと?」

 

「…無意味だったがね。さぁ、終わりだ……もう、全部終わり。百年後か千年後か、ツクヨミが残っていればまた会うこともあるだろう。さらばだ、弱竹のかぐや姫。この這い寄る渾沌との契約、違えてくれるなよ」

 

魔術【 】

 

最後の、片付けをしよう。

 

「ごめん……ごめんね芦花……ごめん……」

 

「「…………」」

 

「……」

 

この台所で、君と沢山味を知ったし、味わった。

 

このソファと机で、君と沢山物語を知った…!

 

この窓際が、君の瞳を美しく彩った…!!

 

この部屋で、君の笑顔を沢山見たんだ…。

 

「…っ…」

 

泣くな、自分の決断に、彼女の幸せに、疑問を抱くな。

 

私の痕跡を消す手を緩めるな。

 

それは(狂気)の沙汰ではない。

 

「……」

 

さようなら、私の小さな奇跡の日々。

 

これがこのシナリオのエンディング。始まりすらなくなった最低の終わり。

 

ただ一時、たった3ヶ月の物語だったんだ。

 

〈えぇ~!?なにそれ超バッドエンド!!諦らめんなよバカァ!!〉

 

〈うん…もう、何度目かな…一応言うけど、私今生身だから、君達のその拳は普通に痛いんだよ〉

 

〈いや、心の中でこんなこと考えてたのムカつくなって…〉

 

〈阿久魔さんに託そうとしたのもなんかさ…人を見る目ないんだね〉

 

〈心が痛い〉

 

〈ね、芦花も一発!〉

 

〈ぅぐ、ここは甘んじて…芦花?〉

 

〈ごめん…ぅあ…ナイア…ごめんね…〉

 

〈ろ、芦花、泣かないでくれ…君じゃなくて、私が全部悪いんだよ、私の身勝手が…〉

 

〈ううん、違うの。ナイアが、私の為に苦しんだのに、死ぬほど、死にたくなるほど辛い決断だったのに…〉

 

〈だったのに…?〉

 

〈涙が出るほど…嬉しいのが申し訳なくて…ごめん〉

 

芦花の涙の理由を聞いて唖然とする。

 

あまりに壮大な物語を見せられている人間の反応ではない肝の据わり方に、改めて一同は痛感して言葉にする。

 

〈〈〈〈流石…邪神の花嫁…〉〉〉〉

 

ーー

 

だったのに。

 

「ようこそ、再びツクヨミへ」

 

何故、君がいる?(羽虫の儀式を再現して喚んだんだ)

 

何故、喚んだ?(決まっている、彼女の話だ)

 

|今、私が取るべき態度は《顔を見せるな、声を聞かせるな。"ナイア"を、再び起こすな》

 

「…契約を違えたか、月見ヤチヨ」




次回、ナイア視点、最終話!
の、次は芦花視点ですのでまた少し更新の時間をいただきます!

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