アクスタやらグッズやら見つかって一言。
「あんたこんなん集めてんの?」
仕返しに一言。
「平野◯耀の等身大パネルを本気で欲しがってんだから同罪でしょうが。部屋の一角から何人の平◯がこっち向いてると思ってんだよ」異常、愉快な家族の会話でした。
最後のゲームだ。
しかもルールは鬼ごっこときた。
私には解る、解ってしまう。
彼女達は、まともな手段で勝とうとは思っていないだろうことが。
私の肉体はあらゆる権限を無効にするし、三人称の視点で見れる上、私の周り半径100メートル圏内の人間の視界の共有は済ませている。
わざと負けるなど、無様な真似は晒さない。
"君"には…こんな姿を見せられない。
「…デパート…」
彼女がこれを身に着けたら、この髪飾りで髪をまとめたら、この色は自分の瞳をどんなに美しく彩るだろうか。
考えるな。そんな機会は、永劫訪れないのだから。
「誰かへの贈り物ですか?」
「………いや……冷やかしだ。すまない」
ピコンッ…
『初めて貴方にもらった、大切なもの』
22【成功】
減少値【3】
「何故、今になって…」
右手の写真。すらりとして細長い綺麗な指。
マニキュアや、指輪の跡。
「…お客さん?」
「ッすまない、あぁ…えと…そこの、簪を一つ」
「?まいどありー」
翠の簪…何故買った。下らない。いつまでも未練がましく過去にすがるな。過去も現在も未来も私には変わらん
──大好きな人の初めてのプレゼントだよ──
ギヂッ…
…捨てるのは、全て終わってからでもいいか。
たった1枚の写真がここまで"効く"とは…!
鮮明すぎる、まるでついさっきのような光景が浮かぶ。
これほど自分の記憶能力を恨んだことはない。
「やめろ…思い出すな…」
「──!!」
「─!」
「──!!!」
「…■■■」
「ひっ…!!」
減少値【5】
狂気内容【逃走】
ただ、目障りだった。ただ、何となくだった。ただ、"あの時"に似ていた。
それだけだ。意味なんてないんだ、無いはずなんだ…!
ガンッ!!
「…ッ…」
『貴方の温もり、確かに覚えてるよ』
次は左手…私も、忘れるわけが無い。忘れてしまいたいのに、私自身がそれを許さない。
──私はどこにも行かないよ──
嘘をつくな、私を置いていっただろう。
私を…孤独に、したくせに…
79【失敗】
減少値【10】
「くそっ…駄目だ……」
心臓が煩い。握り潰してしまいたい。
時間が経つのが怖い、恐くて仕方ない。
世界の時を止めても、このゲームは終わらない。
「この…エフェクトは…」
「おっ!お目が高いねお客さん!これね、匂いをなんとか再現しようとした商品なの!」
「匂い…」
「そうそうそう!でさ、記憶と一番直結するのは匂い!で、日常で香り高いものと言えば〜これよ!」
記憶と直結するとは、私には関係のないもの。
私の記憶は、全て同じ場所に位置しているんだ。
だから、そう、そのはずなのに
ピロンッ…
『貴方がいつも私の為に淹れてくれるお茶。凄く良い香りで好きだよ』
左利きに揃えられたカップに、君の為の紅茶。砂糖やミルクも、君の為の数だ。
──美味しい紅茶だね──
当たり前だ…君の、君だけの為に淹れているものなんだから。
いつのまにか、君と過すあの時が大切で、好きでもなんでもないコーヒーが、かけがえのない時間の一部になっていたんだ。
「…匂いなんて…無いくせに…!!」
この香りは…今の私には刺激が強過ぎる…。
「ハァ"…ハッ…ァ"ァ"……出店…通り……」
ここには、味覚も、嗅覚も、触覚さえもないはずだ。
いくら電子の肉体の私でも、味わおうとしなければないはずだ。
「……一つ、くれないか」
「まいど!200ふじゅ〜ね!」
思った通りで、間違いなんてない。
不味くも美味くもない。
なのに、"味"がここまで記憶に刻みつけられているのは、彼女の…
ピロンッ…
丸焦げの、オムライス。
『貴方が好きな食べ物。こんなのが本心で好きなんて、笑っちゃう。けど…嬉しかった』
「なんで…なんでなんだ……」
88【失敗】
減少値【8】
「何故、私に…罰をくれない……罪に殺してくれない…忘れてくれないんだ……!」
私も、彼女もだ…。
もう、やめてくれ…もう、耐えられない。もう、また見失いたくない…。
「ツクヨミの夜はまだまだこれから!!花火までの時間でさえ、暇になる暇なんて与えません!!」
「オタ公さんか…相変わらず…」
バシンッ!
やめろ!!もう忘れると無かったことにすると誓ったはずだ!!呼ぶな!思い出すな!!私の記憶に刻んだその文字を想起するな!!!
「押し殺して秘めてるだけじゃあ始まらない!!」
「始まらない…そうだ、この物語は…始まらないことで終わりを迎えるはず。それが…彼女にとって一番…いちばん……!!」
最良の──
ピロンッ…
『愛してる。大好き、ずっとずっと。貴方に届けたい言葉が沢山ある、だから…』
「…あぁ…あぁぁぁ…!」
選…択…
ピロンッ…
「待ってる」
「芦花…」
駄目だ、無理だ。私には…無理だ!!
「芦花…芦花!芦花!!芦花!!!」
止まらない。涙もこの感情も君の名を呼ぶのも。
謝ることしかできない、すまない…すまない、芦花…!!
また、また君に会いたい。君の瞳を、声を香りを温もりを、また…!!
魔術【無貌】
「■■!!■■!!!」
──はぁ…最悪、誕生日なのに──
──ねぇ…今度料理教えてよ──
──明日、一緒に何処か遊び行こ──
──サイコーじゃん──
──花丸つけてあげる──
──笑顔は最高の化粧だもん──
──笑顔の方が良いよ、可愛い──
──カッコイイよ──
──私達たった二人だけの場所──
──好き、愛してる──
君の最低も最高も不幸も幸運も絶望も希望も全部全部全部全部全部全部!!また私が──!!
「…ッ……っ」
あの場所で浴衣姿で、生身の君が私に微笑んだ。
人の貌も、形もしていない。狂信者が神と崇める異形の姿。
なのに…やっぱり、君は変わらない笑顔で、私を迎えてくれた。
「ね、勝負しようよ。先に落ちたら負け。なんでも言うことを聞いてあげる」
駄目なのに、拒むべきなのに、身体が君を求めてしまっている。
少しでも怖れてくれれば、まだ、引き返せたかもしれないのに。
パチパチチッ…
綺麗だ。
「あはは、キレ〜」
この一瞬が…永遠に続いてほしいとさえ思ってしまう。
「この一瞬が、ずっと続けばいいのにね」
でも…過ぎゆくから、人も、君も、全てが美しいんだ。
「あっ、でも貴方は過ぎ去るからこそ美しいって言うタイプだったね。まぁ、どっちでもいっか」
パキパキパキッ
……ボダダッ…ボタッ…ぽたたっ…
「…泣いてるよりも、笑顔の貴方が見たいんだけどなぁ…。その紅い眼、すごく好きなんだ。いつも私だけを見ててくれるから」
愛しい声だ。愛しい瞳だ。愛しい言葉だ。
なのに、そんな愛しい君が…呼んでくれない。
悲しくて…泣きたくて、泣いてしまって、止まらなくて…言葉に、出来ない。
ポトッ…
「あっ、落ちちゃった。私の負けかぁ…ねぇ、何して欲しい?」
ただ、たった一つだけだ。
お前のような理外の怪物が、人並みの幸せを望んでいいわけがない、忘れろ…忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ。
「……名前を………呼んでくれ…………」
無理だ。
「ナイア…大好き」
ヒュルルルッ……ドォンッ……!!
「捕まえた、ナイア」
「…わ…私で…私で良いんだろうか……君と生きるのが…こんな男で…」
「ナイアが良い。貴方でいいなんて、他でもない貴方自身が言わないで。私にはナイアしかいないの」
「約束も…沢山、沢山破ってしまったのに…」
「全部許すよ。その代わりに、その分これから沢山約束を重ねて、全部守ってくれればいいよ」
「君を…閉じ込めてしまいたくなる……君が…人で……なくなってしまうかも…」
「…私ね、ナイアとなら永遠を生きてもいいし、今すぐに死んでもいいと思ってる」
「そんな事があって良いわけがない!!
君が、君を…!!
「んぐっ…!?」
「あんまり私をナメないでよ。ナイアの幸せは、私の幸せなの。貴方が幸せになれない世界なら、いつ逝ったって、壊れたって構わない」
「そっ…そんなのは駄目だ…!!君を…!」
「だったら!」
なれない暴力で、荒っぽい言葉で。君らしくない、君の言葉で。
「私のこと、ちゃんと幸せにしてよ!!」
君は私を、受け入れてくれた。
一目見て、黄昏に溺れた淡い紫紺の瞳に惹かれてしまったんだ。
一目見て、君しかいないと私の直感が告げていた。
誰でもいいわけがない、私の方こそ、君でなければ…私は駄目なんだ。
…こんなに遠回りをして、君を傷つけて、迷ってしまった。
もし…もう一度、チャンスがあるのなら、君と共に歩むことが許されるのなら…
「必ず…君を幸せにする…そう、君に誓う」
「私だけじゃないよ。二人で、幸せになろうよ」
君はこんな時でも、私が欲しい言葉をくれる。
「あぁ…約束…する…」
私がこの星に来てすぐの頃に覚えた約束の合図。
いつからか、芦花と私を繋ぐ大切なものになっていた気がする。
でも何かないだろうか…芦花との今を誓える何か。
簪…
「さっき…君を想って買ってしまったんだ。今はこれで我慢してくれ。必ず君に相応しいものをまた贈るから…」
「…ありがと…でも、我慢なんて言わないよ。これも大切な思い出だから」
「…君には敵わない、本当に…」
カチンッ、ヒュルルッ…ドォンッ…!!
12時ぴったりに夜空に咲いた大輪の花。宇宙にいても、身体を失い無貌と化しても、7月11日。生涯忘れるつもりはなかった、君がくれた大切な、大切な日。
「ハッピー・バースデー、マイ・ディア…なんてね」
「…ありがとう、芦花…」
────
〈ここから紆余曲折あって結婚しましたとさ、めでたしめでたし〉
〈紆余曲折の部分は?〉
〈どれだけ人の過去をあけすけにすれば気が済むんだ君は。本当にもうこれ以上は特にないよ〉
〈彩葉と私に魔術教えたり、ちょっとした神話絡みの事件に巻き込まれたりとか〉
〈何はともあれ、私から見た3カ月は概ね以上だ。結局2時間半もかかってしまった〉
〈なくても良いんだよ?〉
〈駄目だよ。約束しただろう?君が言ったんだ。なんでもすると〉
〈それ言われると何も言えないんだけど…〉
〈大丈夫〜、やっちょが協力したんだから一本の短編映画の気分で見れるよ!〉
〈それは楽しみだ。が、長時間の連続した視聴は身体に悪い。ここらで少し、休憩しよう〉
〈〈〈〈〈さんせ〜!〉〉〉〉〉
パチンッ!
当然のように一瞬だけ権限を奪って指を鳴らし、テーブルの上にお菓子と飲み物を用意する。
慣れたもので、ヤチヨもエラーコードを迅速に消した。
「それにしても、味覚の実装もすぐだったね。お見事」
「ふふん、今はヤチヨの義体制作中…また支援してくれますか…」
両手を合わせて懇願する彩葉に、二つ返事でナイアと芦花は承諾する。
「こっちからお願いしたいくらいだよ、せめて資金だけでも手伝わせて」
「もちろん、楽しみにしているよ。知恵も資金もね」
「世界一のモデルと脚本家とゲーマーがスポンサーでまだ資金がカツカツなの凄いよね。うちはちょっと厳しいけど応援してるよ」
「まぁ…かぐやのボディだけで普通なら一生暮らせるからね」
「かぐやの身体そんなすんの!?」
「素材など、その気になれば私が現地調達の上加工もできる。だから気にするな」
「…ナイアって何ができないわけ?」
「さあね、自分でもよく分からん」
足を組んで優雅にコーヒーを飲む彼はかぐやの問いかけに答える。
全知全能と呼ぶに値する存在が自分の力を不可思議で返す不思議に一同は苦笑いで返す。
次のシーンの準備の為に、ナイアは手を振って模様替えをする。
「そんな簡単に権限奪わないでくださいませんか〜?」
「濫用はしないとも。さ、そろそろ再開しよう」
5人の視線がプロジェクターに移り、そのまま新たな映像が再生された。
ナイア視点、完!
本編と比べたらやはり後書きですし、まばらな投稿だったので気づいてもらい難かったですかね。
ですが高評価もいただけていますし、私としては誰か一人でも読んでくださる限りは書きつづけたいですし、楽しいです!
露骨になりますが、本当に心の支えというか、ウキウキするというか、とにかく嬉しいので応援コメントや評価、よろしくお願いします!
次は芦花視点です…けど、ナイア視点で色々書きすぎたんで、かなり省くかもですね(願望)