多分10話くらいかな?の予定です。
実家に戻ってからりあるで仕事が中々忙しくてですね(言い訳)
1週間以内は心掛けてますので、どうぞこれからもよろしくお願いします!
それでは、ご賞味あれ!
4月5日。
私の始まりの日。
人生がという意味でも、大きな括りで言えば2度目の恋。という意味でも。
──
とにかく特別な日だった。
高校を卒業して専門学生になっても、彩葉と真実との関係は変わらない。
今日は誕生日で、2人共急がし合間を縫って私に会ってくれた。3人でそれぞれ誕生日を祝う習慣は変わっていない。そう、少しも後退していないし、進展もしていない。
「……」
終わっている。終わったはずなのに、我ながら女々しいというか、重たいというか…引きずっている。
この想いを成就させたいにしろ忘たいにしろ、神様に願っても、きっと変わらない。何もしてくれない。
「…綺麗」
私の記憶が正しければ、これは黄昏時と呼ぶ時間。
私見だけど、一日で一番曖昧な時間。
まるで、いつまでも過去を引きずってるのに、身体だけは前に進もうとしている私みたいだ。
「…なんてね」
詩を詠むような趣味はないと、自分で自分を嘲笑してみる。
目星【成功】
「ろ…ROKA…だよね……?」
声色でなんとなく、失礼かもしれないけど解る。
私を見る視線や、少し鼻にくるような臭い。
自分のやっていることのリスクは知っている。こういうのは一度や二度じゃないし、対処法はなんとなく心得てる。
ただの知らんぷりで、大体は諦める…はずなのに。
「う、嘘だ。ツクヨミの投稿で見た場所と同じ……それに、その化粧……お、同じだ!」
心臓が跳ねたのが自分で分かった。
手は震えるし、変な汗も出てきた。喉は焼けるように痛い。いや、そんな言葉はいらない 。
ただ、怖い。
「い、嫌……」
間違えた、確実に。
知らぬ存ぜぬで通せるようなものじゃない。
少なくとも目の前のこの人はそうだった。
「……は、は?そんな、そんなわけないよ……ROKAと僕は運命なんだ、そんなこと言うはずないんだぁ!!!」
振り上げた腕、容易に"次"が分かる。
どうしよう、なんで、私がどうして。
色んな疑問の言葉が脳裏をよぎった。
しかしどれだけ待っても、私のどこにも痛みはなかった。
幸運 【決定的成功/クリティカル】
「…?」
「だ…誰だよぉ!!痛ぁっ!!痛い!!」
何が起こったんだろう、恐る恐る私は目を開いた。
目の前には静止された腕。
それを掴み止めていたのは、背の高いスーツの男。
思わず声を上げてしまいそうなほど整った優しそうな顔に、得体の知れない存在。
何より…黄昏に微笑む彼の瞳は、まるで陽にかざした宝石のようにどこまでも深く、紅い。
それが少し、恐かった。
「知り合い?もしそうなら邪魔してしまったかな」
そんなわけがない。この男だって正直得体が知れない。
でも、警察が通れるような人がいないし頼れる人がいない。だから、これは仕方なくだと、首を横に振った。
「ハッハハ!そうだよね。ねぇ、君。助けてほしいかい?このままだと、彼は君を襲う勢いだ」
言うに事を欠いて、目の前の男は私に向かって取引や脅迫にも似た言葉を投げかけた。
ただの悪戯好きな優しさなら良いけれど、何を要求されるか分かったものじゃない。
それでも人間というのは単純で、今どうにかなればという思考で生きているらしい。私は、思わず言葉にしてしまった。
「た…助けて……」
お安い御用だ。
彼は不敵な笑みでそう言葉をこぼした。
私に背を向け、男にその顔を向けているのだろうか。
映画よろしく血生臭いような展開ならどうしよう。
そう思って、現場を見ないように下を見た。
「…ぇっ…?」
23 【成功】
減少値 【3】
影が揺らめいている。
タコのようなイカのような、枝のような脚のような、手のような炎のような、そのどれでもないような。
ズルズル、ぐちゃぐちゃ、ゴキゴキ。どの音にもハマらない音。
変な汗が止まり、代わりに背筋が凍った。
空息を飲み込んで言葉に詰まった。
音が止み、背けた視点を戻すと彼は楽しそうに笑っていた。
「おや、存外丈夫なんだね?幸運なのは良いことだ。最も、君は今、幸せとは言えないかもしれないが」
「何か…私に用ですか」
見下しているというよりも、興味を持ったような喋り方。
いつの間にかさっきまでの震えはなくなって汗も引いたし、思考も戻ってきた。
「ハッハハ!そう急がないで。立てるかい?場所を移そうじゃないか」
問いには答えず、流されるままに出された手を取って立ち上がる。
パッと見た感じでは華奢にさえ思えるのに、かなりの重量のある荷物を彼は片手で持ち上げた。
思えばさっきの男を止めた時もピクリとも動いていなかったし、実はかなり力が強いのかもしれない。
「〜♪〜♫」
ご機嫌に鼻歌なんか歌って、ご丁寧に車道側を歩いてエスコートしてくる。
整いすぎてもはや怖い顔面とニコニコとした表情。
街の人の視線が痛い。
聞けばお金や下心じゃないと言うらしい。ならなんなんだ。宗教ならお断りだし、闇バイトや危かいことも当然お断り。やけに安心してしまう声に私は騙されたりなんか…
目星【成功】
「?」
突然足を止めて彼が見上げた先。
「…カフェ?」
特に話題に上がるわけでもない珍しくもないチェーンのカフェ。
釘付けになっているのがなんだかおかしく思えるてしまい、私はつい軽率に誘ってしまった。
「お…誘い、いただけて光栄だね、お言葉に甘えてしまおうか」
上擦ったような声。案内されるままに入ると、彼は店内を不思議そうに見回した。観葉植物やカウンター、ショーケースのお菓子。
何がそんなに珍しいのか、紅い瞳を輝かせている。
個室を希望し、向かい合わせに座る。彼は喫茶店にあるよく分からない星座占いの機械を一瞥し、下らないと鼻で笑った。
正直そんなに占いを信じる方ではないし同感ではあるけど、それに興味を示す人も珍しい。
ケーキは好きだし、この時間はアフタヌーンタイムで安い。だからケーキセットを頼んだけれど、女性の店員さんに熱烈なアプローチを受けた彼は、ランチタイムギリギリのサンドイッチセット。
露骨にがっかりしているというか、へこんでいる。
特にこだわりもないので交換すると、笑顔で頬張り始めた。
「甘い物に目がなくてね」
なんというギャップ。
所作やエスコート能力。声や少し妖しげな雰囲気、何より顔。
自分はインフルエンサーで、ジャンル柄そういう人を知ってるし会ったこともあるけど、これほどまでに整った人は見たことがない。
でも、それ以上にこの人は異質だ。
「話っていってたけど、まず…貴方は誰?」
「…良いね。話が早いのは助かるよ。では、嘘偽りのない真実を語るとしよう」
そう言って彼は指を鳴らした。
意味の分からない挙動だと浮かべた思考を奪い去った。
音が消えた。文字通りに、個室の外の喧騒も気配すらも消え去った。
「私は■■■■。っと、人間には発音できないか、そうだな…ナイアと呼んでくれ」
なんて?人間?それにまるで今名づけたような加減だ。
「…貴方って、人間?変なこと聞いてる自覚はあるんだど、浮世離れしてると言うか、今目の前にいること自体に違和感があるというか……」
「良い洞察力だ、合っているよ。私は、誰でもあって誰でもない。どこにでもいて、どこにもいない。千の顔を持つ無貌の生物だ」
は?待って、いや待ってくれてはいるんだけど、待ってほしい。それが本当なら、私の目の前にいる貴方は何?
「無貌の…生物?宇宙人とか、神とかじゃなくて?」
もっと聞くべきことがあるだろうに、なんでそんなことを私は聞いた?。
その後も淡々と彼は述べた。
宇宙や平行世界、寿命や時間に空間、それどころか種族や異世界と来た。意外となんだっているにしても程がある。
「まぁ、理解は難しいだろうね」
当たり前のことをクツクツと笑いながら言ってくる。
目の前でケーキを食べて話しているこの人が神様だなんて、信じる証拠はあるけれどすぐには飲み込めない。
「えと…その、じゃあ、神様は…」
「ナイアと呼んでくれよ」
拘りがあるのか、すこしむすりとした顔で彼は訂正させてきた。
そして聞いた。何故、私だったのか。
私が知る限り、他にも沢山いたはずだ。
「…私はね、人間が好きなんだ。舞う花びらが落ちる程の刹那のような時を確かに刻み、繋げ、自らの罪を積み重ねていく。愚かしくも美しく、愛おしい。だから、もっと深く知りたくなったんだ。君達を…私がまだ知らない、感情というものを」
「……」
「それで、君を助けたお礼として私の手伝いをしてもらおうと思ってね。私は今半分人間でね、人の世で活動する拠点が欲しいのだよ」
一括すると"好奇心"。
でも私にはなんだか、寂しいように見えた。
私には想像もつかない長い時間の孤独なんて分からないし、誰かの思考を読めるわけでもない。
でも、独りが寂しいってことはわかる。
人間を知りたくて、私の家を拠点にしたいなんて傲慢で身勝手な神様。
なのに、彼の紅い瞳はどこか遠くを見ていて、心が離れているように見えて…その虚を、勝手に私と重ねてしまった。
「…分かった。良いよ。ただ、私も学生だし、その前に女だし、少しルールは出させてもらうけど」
「本当かい!?いやはや、納得いただけて良かった!」
食い気味に笑い、声のトーンが上がる。さっきまでの威厳のある顔はどこにいったのか。急に満面の笑顔を咲かせて、その顔に思わず言葉を漏らしてしまった。
「…綺麗…」
「傾国さえ促せる君の笑顔の方が私は美しいと思うがね」
「なっ…!」
「?」
映画や漫画のような歯の浮くようなキザなセリフを吐いてくる。可愛いだとか綺麗だとかは言われ慣れているけど、そこまで詩的に言われるのは不慣れだ。
しかもその紅い瞳と声で、明らかな本心で言われるのはことさらに心臓に悪い。
…いや、明らかに"上位"な存在だし、犬や猫を愛でるのと変わらないかも。人間の中にもペットを神格化する人は一定数いるし。
「…そういえば名前を聞いていなかったね。君の名前は?」
今更かい。
「綾紬芦花。芦の花で芦花。まぁ、その……よろしく」
「改めて、よろしく頼むよ。芦花」
「はぁ~……誕生日なのに……」
差し出された手を皮肉を込めてわざとらしく誕生日だという情報をとともに取る。
しかし、彼は自分の存在をよく理解いるようで、ただ余計なことを言っただけだったみたいだ。
「おや、めでたいじゃないか。君の人生の最悪を、私という最悪が塗り潰した。あぁ、きっと私達は仲良くなれるとも。この"這い寄る混沌"の力を、君のバースデープレゼントにしようじゃないか」
「……超、傲慢……」
一言、抵抗虚しく私はそれしか言えなかった。
いつの間にかお会計が済まされ、店を出る時も前を行って優雅なエスコート。ムカつく程に整った所作に怒りも湧かない。
全ての疑問が解けているはず。
何故私なのかも、何故ここにいるのかも、何者なのかも。答えは出ているのに、それでも"解らない"が脳内を支配する。
「…芦花?」
「うゎっ、な、何?」
この顔面のいきなりのドアップは心臓に悪い。
指差した先はオートロックのかかった扉。
「あ、家ね。開けなかったの?」
「鍵は持っていないよ?」
「いやなんか、開けられそうだし」
「開けるのは簡単だが、流石に居候の身だ。最大限君への失礼は控えるとも」
同居を押しかけたとは思えないほど謙虚な姿勢。
自分が異物だと理解してるようで、さっきから態度が紳士的すぎて怒る理由も特に見つからない。
どこか憎めず、話しやすいのも"神"様の器質なのか。
引っ越したばかりで新しい匂いのする部屋を見回しながら彼の居場所を探す。人間の生活をしてみたいというなら眠ることもあるはずだ。
ロフトは可哀想だし、押し入れなんて某猫型ロボットみたいな所に押し込めるのは彼の体格からしても酷だろう。
二つも部屋はいらないし、魔法が使えるなら荷物も特に問題ないだろうし、一部屋を彼に貸そう。
「じゃあ、ここの部屋使っていいよ」
「…部屋を使っていいのかい?倉庫やロフトの上くらいを覚悟していたが」
そんなところで寝られたら逆に気になる。
それよりも目の前のダンボールの山をどう崩そうか…
バツン!
「!」
またまだ荷開きをすませていないダンボールの山に辟易としていると、急に目の前のダンボールが開いた。
どう考えても彼の仕業だ。
「私も手伝おう」
一歩も動かず、摩訶不思議な力を振るう。
試しに冷蔵庫の位置や棚の組み立てもお願いしてみたら軽々と器用に動かしていく。魔術で生み出した透明な触手とやらが動いているらしい。
「君は魔術の才能もあるし、頑張れば半月くらいで1.2個くらいはちゃんと使えるようになるよ」
「い、いらないかな。勉強あるし」
「そう、それは残念」
正直なところ興味はあるけど、ここで興味を示したら自分がどうなるか分からないしやめておく。
「さて、これで終わりかな?」
「あ、ありがとう」
ものの十数分。引っ越し業者でもすれば繁盛するんじゃないだろうか。
なんて馬鹿なことを考えていると夕食の時間に気づく。
「おぉ、家庭的だ。何か得意な料理でも?」
「実はそんなに得意じゃないんだよね〜」
健康や肌には気を使っている。自分で作るならスムージーやグラノーラの類だし、食事もあまり脂質はとらない。というか、料理はそこまで得意じゃない。おしかけの居候とはいえ、私の手料理を食べさせるのは気が引ける。
「…それはいけないだろう。食の為に命をかける連中も今までたくさん見てきたぞ私は」
見かねたのか、呆れたような顔をした彼は私の代わりに料理をするらしい。
それならと離れようとした私の手を軽く引いてくる。
「…芦花、少し袖をまくるよ」
赤く残った手の跡、心当たりはある。
でもこれは有名になったらどうしても付き纏う問題だし、今まで似たようなこともあった。
自分を売っているんだから、仕方ない、この程度で音はあげない。
「すまない…気が付かなくて…」
「ちょっとそんな顔しないでよ、大丈夫だって。明日には…あれ…?」
情けない、今さらになって怖い。
男の人特有の力のある腕も、あの怒声も、ギラついた目も、鮮明に思い出せてしまう。彼が与えた衝撃を受け止めた今、身体が勝手に怖じけてしまう。
やめて、見ないで。
「ろ、芦花…!?す、すまない、離れたほうが…!」
見ないで欲しい、なのに、離れないで欲しい。
我儘で弱いところを見せてしまっている。家族にだって、2人にだってこんなところ見せたことないのに。
つくづく、今日は運が悪い。
「う、うぅん、違う。ナイアじゃないよ…ただ、今さらになって…おかしいよね、ごめん…」
不安そうな濁り揺れた紅。呆れられてしまうだろうか、他人の失望が怖い。私より頑張っていて、凄い人なんていくらでもいるのに、この程度って突き放されるのが怖い。
「大丈夫だよ。君はおかしくない、謝らなくていい。私の配慮が足りていなかったんだ」
…優しい言葉。今日初めて会ったのに、相手は人じゃないなにかなのに、どうしてこうも安心してしまうのだろう。彼の言葉には嘘がない。この言葉が本心なんだと、私の直感がつげている。
「お願い、もうちょっとだけ、このままでいて…」
「…お安い御用だ」
不器用に、まるで花を扱うような優しい抱擁に酷く安心する。体温や心拍、人外だなんて名乗っておきながら、私と変わらない。
彼の持つ感情も身体も、少しズレている言動も。
私と、人間と変わらない。
理外の力で私の嫌な記憶を上書いて、人の力で慰めてくれたこの邪神…ナイアとの生活を、私は受け入れた。
〈んー、お見事。二人撃沈〜〉
〈ごめん芦花…〉
〈すまない芦花…〉
〈これはちょっとやっちょとかぐやも…〉
〈うぅぇん…ごめぇん…〉
〈真実は何でそんな平気なの?〉
〈私終わりよければってタイプだし〜?〉
〈でも、場面は選んでるし、すぐだから。ほら、はじめるよ〉
〈容赦ないね…〉
通例の出会いは長々ですね。反省です(汗)
前置きの通り、そんなに長くはしません。芦花が特に心が動いた場面を中心に書くつもりです。
毎度のことですが、感想や高評価が非常に励みになっております。
ぜひ、私を応援すると思ってなにとぞお好きなときでいいので(笑)
それではまた次回お会いしましょう!