仕事が忙しすぎる!じゃあ書いてないで掃除進めろよ。
なんていう言葉は泣いてしまいますので無しでお願いします。
YouTubeのショートも超かぐや姫が投稿を頻発していていよいよ再上映が近づいてきてる感じがしますね。また財布が軽くなること間違いなしでございます。
それでは、第四話お楽しみください!
今日はナイアの言っていたコラボの日。
部屋から出ると、彼は自室ではなくてリビングにいた。
ナイアは配信以外は結構リビングにいる。
前に座って、スマコンをつけて目を閉じている顔を見てみる。
「やっぱり、凄く綺麗な顔…」
造形美というのか、本当に誰から見てもイケメンだと思う。百面相というほど顔が崩れることはないけど、私だけが彼の焦る顔も素の笑顔も知っている。
「気付かない…眠る必要がないんだっけ…呆れる。人間を知りたいからって、人間の生活から離れちゃったら意味ないじゃん」」
そのこと少しだけ優越感があるものの、この気持ちをはっきりとさせられないままでいる。いや、正確にはもう分かってはいる。ただ…あの子と同じ"好き"なのか、あの子の時と同じような顔で笑っているのか。ナイアが、私をどう思っているのか。
心臓を握られるような苦しいこの感覚は嫌というほど知っている。
「はぁ…そろそろ行こ」
でも、この感覚が同じなのか分からない。
終わって、終わった直後に、また別の人を好きになる。
そんな傲慢は最低だ。まるで、彩葉(前の人)を簡単に忘れられるような軽い女のようで。
「芦花!ほんとにありがと〜!こんないい席どうやって取れたの!?」
「たまたまだよ。彩葉も来れたら良かったんだけど、バイトは仕方ないよね」
「…なんかさ、芦花ちょっと変わったね」
「え、そう?」
彩葉はバイトがあってこれなかったのが少し残念だが、真実は予定を無理矢理空けてきた。3人で集まれると思ったけど、仕方ないと受け止める。
席に座って彼らの登壇を待っていると、真実は笑った。
「うん。私からしたらさ、前の彩葉はふっと消えちゃいそうだったんだけど…芦花は潰れちゃいそうって思ってた。かぐやちゃんが月に帰っちゃって、彩葉が立ち直って…良いことなのは勿論なんだよ。でも、だけど…辛かったね、芦花」
辛かったね。
その言葉が何を意味するか、真実が私の何を知っているかを私は知っている。
「…………」
「二人共大好きだもん。なのに、私になんにも言ってくれないからさ、心配だったの。だから、誰でもいいから、何でもいいから、いつでも頼って」
私も二人のことが大好き。二人が大切で、大切にしたい。そして今、貴方のおかげでちゃんとはっきりした。
私は、ナイアのことが好きだ。
彩葉に向けたあの感情と同じ感情。抱いてはいけないと思っていたこの感情。
色んな言い訳を続けて、踏み込めなかった後悔はもうしたくない。
私はもう、逃げない。
認めた時、熱い涙が現実の私の頬を伝うのを感じた。
この想いを諦めたくないと身体が嘆いている。
この空間には無い感覚のはずなのに、指先が冷たくなるほど拳を握って、私は感謝の言葉を紬いだ。
「……うん……ありがと、真実」
「えへへっ、ほら始まるよ!」
本当に…良い友達と出会えた。
『よう小兎共!!始めるぜ、今日も最高の宴を!!!』
「ぎゃ"ァ"ァ"ァ!!帝様ぁぁ!!」
帝さんの登場でちょっと過激に騒がなければもう少し余韻に浸れたんだけど、彼女の性だからそれは仕方ない。
キラキラとした衣装の彼は、どこか古さを感じるいつもの装いとは違ってなんだか可笑しく思える。
トントン拍子に紹介される中、ナイアは至って平坦な抑揚と言葉で進める。
「…?なんか全然…」
ナイアらしくないというか、私の前と違うというか。
楽しんではいるんだけど、何か引っかかるような感じ。
具合でも悪いのか、彼の見方が変わったからだろうか、それにしては鈍いというか。とにかく、なんだか違和感がある。
そんな調子のまま、集められたライバー達が持ってきたお題のコーナーが終わった。
あの面子の中で一番活動歴が短いとは思えないほどリードが上手いのはもう驚かない。
「ふふっ、ちょいちょいズレてるなぁ」
『続きまして〜、ナイア様のゲームコーナー、チャレンジャーは誰かなぁ〜!?』
ヤチヨの合図と共に無作為に選ばれた人達とライバーのゲームコーナー。ボドゲやシンプルなレトロゲーがチョイスされる中、ナイアだけが単独で無双する姿は容易に想像できていた。
トランプや将棋、チェスにNGワードゲーム。
ハンデがいくらあっても相手は最低でもIQ400はある宇宙人だし、勝てるわけがない。
「握手やチェキね…」
頼めば彼は無償でやってくれるだろうな。そんなことを考えてたその時。
幸運【決定的成功/クリティカル】
「『え?』」
「凄いじゃん芦花!ほらほら、行ってきて!」
「えっ、ちょっ……」
『……ろ、ROKAさん、だね…よろしく……』
『あ、はい……』
『『…………』』
真実に押され、壇上に上がる。オタ公さんは私を認知しているから、少し詳しい説明と共に次のゲームである花札をするための舞台に互いに正座して対面する。
ヤバイ、さっき色々自覚したばっかなのに今は顔を見れない。
ナイアも面食らって固まってるし。いつもの調子が出ない。
『美人とイケメンがなんで沈黙してんだよ。撮れ高だからなんか喋れ。変わってやろーか?』
うるさい、それはやだ。
そうなるくらいなら無理矢理にでも話題を作って話してしまおう。
アイデア【失敗】
『……い……良い天気ですね(?)』
?
『…ふっ、あっははは!ずっと夜だし!はーっ…良いよもう、変に誤魔化す方がおかしくなる。リア友なんですこの人』
思わず吹き出してしまった。いつもの会話も出来ないほどに固まる彼が可愛いくて。
もういいや、ツクヨミの個人情報はヤチヨがなんとかしてくれるだろうし、リアルではナイアがなんとかしてくれる。だったら、今は素直にこの時間を楽しもう。
パシン、パシンッ……
小気味よく勝利を重ねていく。
花札は実力半分運半分みたいなゲームだし、今回は私にツキがきているようだ。
『はい、こいこい』
『芦花、君普通に強くないか?』
凄く、シンプルに楽しい。
そしてせっかくなら驚かせたいし、私達の関係を進めたい。
まずは、一歩。踏み込むところから。
少し深く息を吸って吐いて、勇気を出してみる。
『……これってさ、勝ったら握手とか出来るんだっけ』
『ん?あぁ、そういう企画だからね』
『じゃあ……』
「明日、一緒に何処か遊び行こ」
『っ!?あぁっ!?』
驚きすぎ。こっちに意識を割いててリアルで私が目の前にいるのに気づいてなかったんだ。
向かい合っていた席を立ち、耳元で囁いてみたら肩をビクリと震わせる彼の動揺が面白い。
『はい、雨四光。私の勝ち〜』
『えっ、あっ、こいこいは!?』
『しないよ、はい握手。私席に戻るね、放送頑張って』
『えぇっ!?ちょっ、芦花ぁ!?』
少しくらい私で頭を悩ませればいい。
感覚がないツクヨミ内で貴方に触れるくらい、許してよね。
気分が良いまま降段し、残りの放送を席で見届ける。
困って顔を抑える彼に手を振ってみると、小さく振り返してくれた。
「芦花、知り合いだったの?」
「ん?まぁね〜、友達」
浮かれきっている。上がった広角が下がらない。
早く放送が終わって、彼と明日の話をしたい。
高鳴る鼓動を抑えながら、真実と別れ、先にログアウトして私は目を開けた。
目の前で静かに目を瞑る彼を見つめながら、その時を待った。
「ふぅ……っ、芦花」
「お疲れ様。楽しかった?」
ただの質問に、彼は長々とした説明の後に楽しかったと答えた。
そして、花札をしたあの瞬間が一番だと。
きっと本心だ。それがどうしようもなく嬉しい。
私も、あの時間が一番楽しかったから、同じ気持ちだったことが嬉しい。
「ふふ、それで、明日何処行く?」
「は、ハッタリじゃなかったんだね……?」
「当たり前じゃん。ナイアのことだし、本当だった時のことくらい考えてたでしょ?」
出かけて、映画を見て、ご飯を食べて、1日を楽しかったと終わらせる。
なんてありきたりで、なんて素朴で普通の計画。
でも、そこに貴方がいるだけで、私にとっては最高のお出かけ(デート)だ。
「ふふ…サイコーじゃん、そうしよ。明日、よろしくね!」
いつ以来か、ここまで心が踊るのは。こんな幼稚な言葉と態度で誰かと接するのは。
緩みきったこの顔を貴方は見せないように、私は逃げるように部屋に戻った。
バタンッ…
「……ん〜〜!」
ベッドの上で枕を抱いて落ち着かない気持ちをぶつける。
どんなメイクにしよう、どんな服にしよう、どんな会話をしよう。
魅せたい姿も、伝えたい言葉も両の手から溢れてしまう。
この世界に夢中の貴方を、どうやって振り向かせよう。
「…よしっ、頑張ろうっ」
〈おっとめ〜〉
〈あはは…改めて見るとちょっと恥ずかしいかも〉
〈かぐや達も全部見せたもーん〉
〈かぐやとヤチヨから見た景色は随分とキラキラしていたね〉
〈ナイア様も大概でしてよ〜〉
〈宇宙人から見た地球は凄く楽しいんだろうねぇ〉
〈〈すっごい楽しいよ!〉〉
〈同感だね〉
そろそろと小鳥の囀りが薄くなる季節。
起こすには心許ない声量の天然の目覚ましで目を覚ました。
殆ど眠れなかったけど、不思議と全然眠くはない。
朝食を取りながら、彼にお願いをする。
「ナイアは先に行ってて。11時集合ね」
我ながら無理矢理だけど、ナイアは必ず約束の時間より20分ほど早く着く。だからこうやって追い出して、待ち合わせのシチュエーションを作るしかなかった。
他に良い方法思いつかなかったんだもん。
「一緒に出ないのかい?」
「いいからいいから」
「気にせずとも、君の準備を待つくらい何でもないさ。時間は気にせずゆっくり…」
「いいから!集合11時ね!」
「あ、あぁ…分かったよ」
シュンとする彼の背後に垂れ下がる尻尾が見えるかのようでちょっとした罪悪感。
部屋に入ってメイクを整える。いつ着ようか迷っていた新しい上着、ナイアは露出の多い服や強い匂いを嫌いなのは見てれば解った。だから今回は肌じゃなくて、ギャップで勝負する。
髪やイヤリングはいつもと反対に、普段はあまり身に着けない小物やパンツスタイル。
メイクはいつも通りだけど、前髪を少し上げてなるべく彼と顔を合わせやすいように踵の高い靴を履く。
「よしっ、完璧」
準備そのものはもう終わっているけど、5分だけ遅刻していく。ネットの情報を鵜呑みにしているわけじゃないけど、わざと予定より遅れるのはテクニックの一つらしい。
本当は今すぐ行ってなるべく一緒にいたい。でも我慢我慢…
カチコチ…
「…やっぱ行こ。そうだよ、ナイアは約束守る人の方が好きだし、そもそも人間の価値観だもんね。うん、そうだ」
誰にしているのかも分からない言い訳を呟きながら、足早に家を出る。
元々遅刻なんてしたことはないし、私の性に合わない。
「あれで変装のつもり…?」
若干カジュアルな私服スーツ。後ろに流した髪はよく見ると意志を持つようにうねっている。
日本人離れした長い脚に、マスクをすることで余計に目につく紅い瞳。それでも彼を誰も認識していないのは、多分魔術だろう。
すっかり私の日常になってしまったものだけど、よくわからない不思議なことは全部魔術ということにすれば逆に楽なことに気づいた。
「ふーっ…よしっ」
手鏡で前髪を整え、柱にもたれる彼の後ろから声をかける。
「お待たせ」
「あぁ。それで、は……」
なにそれ、あぁで終わり?こっちは凄い頑張って準備したんですけど。
いつもはペラペラと出てくるのに、なんで…?
「…ナイア?」
「あっ、いや……んんっ。涼しげな髪型と、この間見ていた新作の上着かな、今日も綺麗だね、芦花。流石はファッションリーダーだ」
「珍しいね、いつもならすぐに言うのに」
「……それを聞くのかい……?」
「駄目?」
「……見惚れてしまったんだ。侮っていたよ、ここまでとは」
少しカマをかけてみたら、大成功だったみたい。
褒めてくれたから心臓が跳ね回りそうなほど脈拍が上がるのがよく分かった。
見てほしいところをちゃんと褒めてくれたし、思った通り目が良く合う。
「ありがと、ナイアもカッコいいよ。いつも通りでいいのに、気を使わせちゃった?」
「いや、そんなことはない……こともないか。君の隣に立つなら、それ相応の姿でいなければと思っただけだよ。それより、そろそろ行こうか」
ここまでの距離感は想定してなかった。差し出された腕を組むのはさすがにまだ恥ずかしくて、裾を掴んだだけなのに。
彼の超人的な五感なら指先からでも心臓の音が伝わってしまうんじゃないだろうか。
2回目だから、少しは慣れがあるかもと思っていたのに、そんなことはなかった。
男らしい大きな手と身体。吐息が聞こえるくらいの距離で、マスク越しでさえはっきりと聞き取れる落ち着く声を囁かれるように話される。
温度差で風邪を引いてしまいそう。
「ナイア」
「?」
「今日は1日、楽しもうね」
私なりの、戦いの火蓋を切って落とした。
1週間以内投稿はギリギリ続けられているからセーフ…!