神に恋した芦の花   作:レガシィ

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月見(酒寄)ヤチヨ(義体)
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edu11(+100)siz12
耐久力30.MP0.DB無し
職業 ツクヨミ管理者.酒寄研究所所長私的助手.ライバー
コンピューター99芸術[歌唱]80芸術[ダンス]65
図書館55電子工学99制作[料理]60聞き耳55歴史65
"人類学99生物学99考古学99地質学99天文学99博物学99物理学99法律99薬学99"("ネット接続時に限る")
趣味技能
心理学65精神分析70隠す60説得55目星55
KASSEN90クトゥルフ神話技能10


第六話 無償の愛

 Day3

 

 昨夜の会議通り二手に分かれる一同、早起きの癖がある二人は先に書庫へと向かう。

 

 図書館【失敗】

 

 図書館【失敗】

 

「なんもない〜」

 

「そういえば…」

 

「どしたん?」

 

 この膨大な書庫で隅々まで本を探し、一冊一冊読み込むも、目立った成果はなく時間だけが過ぎる頃、芦花が不意に思い出した場所へと向かう。

 

「かぐやちゃん、ここ」

 

 指さした丁度一冊分だけぽっかりと空いている空白。

 

 かぐやと二人でその意味を考察する。

 

「なにか嵌めたら本棚が動くとか?」

 

「そんなわけないじゃ~ん、本が一冊足りてないだけっしょ?」

 

「…そっか、普通そうだよね。サリアちゃんの部屋に本は無かったし、意図的に抜き取られてるってことになって、その本は何処に?」

 

「誰かが借りっぱなしにしてるとか?」

 

「メイドさんや執事さんに聞いてみよっか」

 

「ここは探さなくていいの〜?」

 

「私達だけじゃどうしても人手が足りないし、ある程度絞らないと…って、そろそろ三人が起きる時間じゃない?」

 

「んぇ、分かるの?」

 

「あれ、こんなもんじゃないっけ」

 

 昨日と似たような感覚で芦花が先導し、二人は部屋へと戻る。

 

 3人は既に彩葉達の部屋で集合し、今日の探索箇所を話し合っていた。

 

「あ、おかえり〜。収穫あった?」

 

「残念だけどなんにも。違和感はあるけど、確証がないかな。皆は?」

 

「今日はまずサリアちゃんの説得。あの様子だとあの子自身のタイムリミットが近そうだし、まずは"呪い"をなんとかしないと」

 

「その後はヤチヨ達も書庫を探して、アルコアさんに会おうかなって。資料探しは彩葉が得意だし」

 

「じゃあ私達は…」

 

「この島を探索しようよ。魔術師云々がいるなら、もしかしたら人が住んでない所にもそういうのがあるかも!」

 

「…確かに。オコジョくんがいればある程度は身の安全が確保されるし」

 

「…くれぐれも気をつけてね。それとかぐや、定期連絡はちゃんとすること」

 

「うぇ?」

 

「とぼけないの。昨日記録処理サボったでしょ」

 

「あっ、あはは、そうだっけ?忘れてた〜」

 

 彩葉の小言に対して後頭部を右手でポリポリとかきながらおちゃらけるかぐや。困ったように笑いながら、5人は食堂へ向かう。

 

 必ず視界の中に入るメイドや執事。あいも変わらず重い扉を開ける。食堂に、サリアはいなかった。

 

「あれ?」

 

「お客様方、もしやお呼びするのが遅れてしまいましたでしょうか?申し訳ございません」

 

「あ、いえいえ、私達が急いだんです。それより、サリアちゃ…さんは?」

 

「お嬢様ならお部屋に。執務に集中するため、朝食は自室で取ると。ふふ、お身体は心配ですが、民思いの主を持てて誇りに思います」

 

 彼女の身体を知っている一同ならば、サリアのそれが嘘であることくらい理解できている。

 

 精神的なのか肉体的なのか定かでないながらも、部屋から動けないまでに蝕まれている身体をどうすることもできないもどかしさが胸を締め付ける。

 

「そう…ですか…」

 

「失礼しました。皆様、朝食はおとりになられますか?1日の始まりを豊かなものにと。滅多に来ない客人の為に料理長が張り切っているんです」

 

 時間が惜しい。しかしその中でも島民たちは生きている。当たり前に明日があると、領主と騎士を信頼している。

 

 上品に笑うメイドに席へと案内され、5人は食事を取りながら日本語で会話する。

 

「分かってたつもりだったけど…」

 

「うん、いざ事情を知って皆を見ると…重いね」

 

 自信喪失の様子で沈み込むが、その雰囲気はかぐや姫にそぐわない。そう、いつもの調子で笑おうとする彼女の頭を彩葉が撫でる。

 

「でもっ!それを何とかするために、かぐや達が…!」

 

「大丈夫。言ったでしょ、バッドエンドにはさせやしないよ。やろう、皆。ごちそうさまでした!」

 

 彩葉の言葉に無言ながら信頼の肯定を示し、一同は立ち上がり行動を開始した。

 

 探索箇所 サリアの私室

 

 階層の違う彼女の部屋へ、三人は真っ直ぐに向かう。

 

 目星【成功】

 

「……やっぱり無い…」

 

 一人立ち止まった真実は、キョロキョロと廊下を見回して違和感の正体に気がついた。彼女だからこそ、そう本人も理解した。直後、彩葉が簡潔に目的を定める。

 

「やっぱりサリア本人の説得は不可欠。って、真実?どうしたの?」

 

「あ、ごめん、今行く」

 

「よし、行こっか」

 

「オッケー!」

 

「…うん、良いよ」 

 

 指で丸を作るヤチヨと握る手に力を込める真実。意を決し、彩葉が私室をノックする。迎え入れる言葉が返ってくるのを確認して部屋に入ると、サリアが走らせていた羽根ペンを止めて三人を迎え入れた。

 

「おはようございます、旅人様方。あら…御三方だけですか?」

 

「芦花とかぐやはちょっと…あぁいや、うん。サリア、貴方を助ける為に動いてる」

 

「…えぇ、なんとなく。察しはついていました」

 

 一瞬、躊躇したが彩葉は信用の為にも真意を語る。そして静かに頷き、サリアは言葉の意を汲む様子を見せる。

 

 聡い彼女は、三人の目的も理解しているようで、続けて首を横に振る。

 

「既に私の本意は告げました。真実も語り終え、これ以上はありません。ろか様を見た限り、ナイア様は思慮深く愛情深い方の様子。何もしなければ、このまま貴方がたはこの島から離れられるのです」

 

「確かに、貴女の口から昨日何度も出された答えです。でも…私達はやっぱり、これが運命だなんて思いたくない」

 

「ヤチヨもね、皆のおかげで今があるの。味も温度も無い、退屈な──」

 

「ヤチヨ様」

 

 彩葉の言葉に小さな溜息を、ヤチヨの名を呼ぶことでばっさりと切ったサリア。今までの柔和な様子から一転して、3人に向けたのは黒い感情。

 

「もう良いのだと、そう言ったはずです。皆様が私や島を思ってくれているのはわかります。でも、どうしようもない。どうにか出来たとして、私は自分の罪から目を背けるつもりはありません」

 

 とても齢12の少女とは思えない貫禄と覚悟。全てを諦めながら、決して民を見捨てない強さと領主としての確かな自覚を持っている彼女の言葉。数百年間時の檻に囚われていてもなお、彼女の芯は少しも曲がっていない。

 

「…昨日も言った通り、それほど悪い生活ではありませんから」 

 

 積み上げられた執務の跡、村人達からの信頼、アルコアの忠義。一体いつから眠れていないのか、目元には深い隈。

 

 少しも変わらない笑顔の裏に隠している彼女の傷を、三人は嫌でも理解する。そしてそれを否定することは、彼女の存在そのものの否定にすら等しい。

 

 アイデア【成功】

 

 アイデア【失敗】

 

 アイデア【失敗】

 

 投げかける言葉を失う二人。しかし突然真実が一歩踏み出し、サリアを優しく抱きしめた。

 

「…まみ様?」

 

「サリアちゃん、私は貴女のことを少ししか知らないし、皆と違ってただの平凡な主婦だよ。でも、でもさ…自分の子がそんな顔をしてたら…私はきっと凄く悲しい」

 

 一層抱きしめる力を強くして、言葉と毅然とした態度を失う彼女に言葉を届け続ける。

 

「誰だって笑う権利は持ってる、それはきっと間違いじゃないよ。でも貴方みたいな子供に、"泣かない義務"があるなんて私は思わない」

 

「っ、貴方に何が…!」

 

「独り…なんだよね。アルコアさんや城の使用人、村の皆もいる。でも…貴方には、親がいない」

 

 廊下で立ち止まった時に気づいた違和感の正体。それは、彼女や彼女を含めた両親の絵が一つもなかったこと。それを指摘されたサリアは行き場の無い空いた両手でドレスの裾を強く掴む。

 

 言葉の後、真実はボロボロと堪えきれずに涙を流しながらも、彼女へ愛情を向けるのを止めない。

 

「ごめん…泣きたいのはサリアちゃんなのに。ごめんね…!」

 

「なぜ…貴方が泣くのですか、私は…」

 

「良いんだよ…!」 

 

 真実は普段穏やかで、声を荒げることも少ない優しい女性。いつもムードメーカー的存在で、自分を大きく主張しない。その彼女が、絶対の自信で彼女を肯定する。

 

「子供なんて、いっぱい我儘を言って好きに笑って好きに泣いていいの!気持ちを押し殺して、自分が悪いって塞ぎ込むのは絶対に貴方のすることじゃない!!」

 

「だっ、だって、私は領主で、皆を守るべきで…」 

 

「すごく立派だよ。私なんかじゃ分かんない難しいことも沢山あるだろうし、やってるのは解ってるよ。でも、今くらいはさ」

 

 真実は向き直り、しっかりとサリアの瞳を見つめる。

 

「甘えていいよ…本物なんて思わなくていい、今だけでいいから、甘えておいで。胸なら…貸してあげられるから」 

 

 真実はあえて数歩離れて手を広げる。

 

 まるで無数の手に後ろへ引きずられるように、サリアは前へと進めない。その躊躇いを、一つずつ彼女の言葉で乗り越えていく。

 

「わ、私は貴族の淑女です、そんな、旅人様にはしたないこと…」

 

「私なんてただの主婦。子供が気にすることじゃないって」 

 

 一歩。

 

「…誰かに…甘えたことなんて…」 

 

「全部受け止めてあげるのが母親だよ、どんとこい!」

 

 また一歩。

 

「私みたいな罪人が…!」

 

「子供の我儘だもん。間違えちゃったなら、ごめんなさいでいいんだよ。私はそれを、笑って許してあげられるから」

 

 立ち止まり、また一歩。

 

「わ…わたしは…!!」

 

「サリア」

 

「ッ…」

 

「…おいで」

 

 たった一言だった。自分の否定を繰り返し続け、誰かに心を預けられない理由を探し続けた。自分は貴族で、淑女で、魔術師で、罪人で。そんな自責を、柔らかな笑みと無償の愛が上書いた。

 

 軽く身体を預ける音。直後に部屋に木霊する不器用な泣き声とそれを受け止める優しい声色。

 

「よしよし…ほら、もっと強くてもいいよ」

 

「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ…!」

 

「大丈夫だから。何がしたいのか、言ってごらん?」

 

「ほ、本当…はっ、"つくよみ"にもっといたかった…」

 

「うん、また行こうね」

 

「もっとお菓子も食べたい、皆のらいぶも見たい…!」

 

「私のおすすめ、まだまだあるよ」

 

「本当は…本当は…!私も、いっぱい友達がほしいぃっ…!!」

 

「きっと沢山できるよ、こんなに…サリアは良い子なんだから」

 

 嗚咽混じりに、ただただ小さな我儘を吐き出していく。

 

 数百年間、渇いた願いと罪で自分を殺し続けた少女。そんな彼女に真実は、理屈でも共感でも感情でもない、ただ、無償の愛を届けた。

 

 一連の様子を見ていた二人も静かに涙を流しつつ、二人だけの空間を邪魔しないように見守っていた。

 

 小一時間ほどサリアを宥め続け、泣きつかれて彼女は真実の胸のうちですやすやと寝息を立てていた。

 

「ごめん、二人共。説得…は、出来てないよね」

 

 謝りながらも、真実の言葉と表情には後悔は欠片もない。

 

 彩葉もヤチヨも説得をしようとしていた自らの行いを恥じ、彼女の母性を目の当たりしたことで自覚する。

 

「ううん、良いんだよ。むしろ、私達は躍起になって"助けて"って言わせようとしてた。そうだよね…12歳なんて、まだ小学生くらい…真実の子供っていくつだっけ?」

 

「今年で3歳。二人共やんちゃだし、まだまだ赤ちゃんで、毎日抱っこってせがんでくるくらい」

 

「でも、同じ状況になったらきっと、真実ちゃんは同じ言葉を届けてあげるんだよね。甘えていい、泣いていいって」

 

「…そうかも。ねぇ彩葉、悪いんだけどさ」  

 

「大丈夫。私とヤチヨで探索するよ。真実は側にいてあげて」

 

「ありがとう、お願いね」

 

 起きて誰もいない寂しさを彼女に味わわせたくないと、真実はベッドまで運んでサリアに添い寝する。

 

 その様子を見届けて二人は改めて探索を開始する。 

 

「近場なら書庫かな。かぐやと芦花が探し終えてるけど、一応見とこうか」

 

 ヤチヨが先導し、書庫の扉を叩く。

 

 初めて見た二人はその蔵書量に圧倒される。芦花やかぐやと違い普段から論文や書物、データ上の膨大な情報に触れる機会の多い二人は一目で理解してがくりと膝をつく。

 

「無理だわ」

 

「こ、これは予想外だねぇ〜…」 

 

 幸運【成功】

 

 手も足もでない上、どこから探せばいいか検討もつかない二人。項垂れていた彩葉はここは後回しと結論づけて立ち上がろうとする。その時、偶然、目に入ったものがあった。

 

「…?何あれ」

 

「どうしたの?お馬さんごっこ?」

 

 四つん這いのまま書庫の最下段にうっすら見えたソレを確認しに行く彩葉と、茶化しながら後をついていくヤチヨ。

 

「なにこれ…沢山の人?」

 

「左に続いてるね。えと…なんだろ、槍かこれ、Lanceってかいてるし」

 

「次は象かな?その次は松明で、次は砂時計、これは山ぶどう…?」

 

 アイデア【失敗】

 

 アイデア【失敗】

 

「「……」」

 

「分からん。なんだこれ」

 

「うぇ~ん、やっちょにも分からんのです〜」

 

「なんかのヒント?…やっぱり本読むかぁ…」

 

 あらゆる本を下から順に読破し続けるが、頭の片隅に意図の分からない落書きが残り続け、2時間以上が過ぎてしまう。

 

「ぐわぁ〜…駄目だ。無理無理、時間が足りなすぎる」

 

「どうする?」

 

「時間もないし、次に行こう…」

 

「次って?」

 

「…取り敢えず、庭で花でも見る?」

 

「さんせ〜い!」

 

 疲れた二人は思考を投げ出して庭へ向かった。

 

 ──

 

 一方、何かあるかもと言ったかぐやが先導しながら二人と一匹は森を探索していた。

 

「…確かに、何かあったね」

 

 歩き始めて2時間弱、黒いゴムのような翼の生えたのっぺらぼうの化け物数体の死体を足元にしながら芦花が呟く。

 

 腰が抜けたようによたよたと芦花の手を掴むかぐやと、得意げに仁王立ちするオコジョ君。

 

「夜鬼だっけ。ナイアは気に入らないって言ってた神話生物。いよいよもってこの島には何かあるって感じだね」

 

「な、なんでそんなに冷静なの?」

 

「まぁ、色々あったからね」

 

 芦花は過去にあった彼との恋幕を思い出してくすりと笑う。恐々とした光景ながらも、弱さを微塵も感じさせない彼女の正気度は少しも擦り減っていないのが目に見えてわかる。

 

「行こっか。まだ何かあるかもだし、今度は私達が先頭になるね」

 

 今度は安全を加味してオコジョ君と芦花が先導する。道中、夜鬼の襲撃以外にも野生動物や違和感のある植物など、芦花だから気づける危険が二人を襲う。

 

 しかしそこは邪神の嫁、どれも危険を知っている上に対処も的確。丁寧な性格が功を奏してナイアの小話にいくつも出ていたことを覚えていた。

 

 進展もないまま小一時間進み、静けさが辺りに満ちた頃に、事件は起きた。

 

「…静かだね。どうしようか、これ以上進むと戻る時には日が暮れちゃうし…かぐやちゃん?」

 

 ぶつぶつと小さく呟きながら、立ち止まる芦花の横をかぐやが素通りする。

 

 地形が悪く、注意を怠れば足元を文字通りにすくわれる土地。

 

 ガラッ…!

 

「かぐやちゃん!!!」

 

 そんな場所で注意散漫が生んだ当然の悲劇。突然現れたように見えた崖の先をかぐやが踏んだ瞬間崩れる。理解が追いつかない彼女より先に、芦花が飛び出した。

 

「…え?」

 

 走り出したと同時にかぐやの手を引き寄せて、代わるように芦花が崩れた崖先から落ちて行ってしてしまった。

 

 




今回の情報
・サリアの信用を得ることができた。
・芦花が崖から落ちてしまった。
・かぐやの様子が少しおかしい…?
PS
全く関係ない雑談なんですけど、自分今日誕生日なんですよ。2日おきの投稿で偶然この日に投稿する予定だったのでついでのご報告を時間も10時10分に合わせてみました(笑)。そこそこ長く続けていますね、5年くらいでしょうか。(何年かサボってましたが)今は書くのが楽しいですが、時間が取りにくくてですね。中々安定した投稿が難しいのが現状です。
ですが、面白いとかこのキャラや展開が好きとか、それこそ物語の考察とか。皆様と繋がれるこの趣味は大切にしていきたいですね。
改めて、今後ともレガシィをよろしくお願いします!
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